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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第三章  エルフ農業(初級編)
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第四話 割と順調なエルフ達

 お昼を食べ終わってしばらくした頃、大志はエルフ達に言いました。


「それでは、わたしたちはこのへんでおいとまさせていただきます」


 大志とお父さん、おうちに帰るようです。それを聞いたハナちゃん、寂しそうに言いました。


「タイシ、もう帰っちゃうですか~」

「うん、あんまりいえをあけていられないからね。またくるから、いいこでまっていてね」

「あい~」


 なでなで。


 大志は、ハナちゃんの頭を撫でながら言いました。

 大志が帰ると聞いたエルフ達も集まってきて、別れを惜しみます。


「世話になっただ」

「また来てくんろ」

「よっかごくらいに、またきます。ラーメンとかもってきますので」

「「「わーい!」」」


 ラーメンと聞いて喜ぶエルフ達。それまであった、しんみりしていた雰囲気は吹っ飛びました。彼らの頭の中は、もうラーメンでいっぱいです。

 そんな食いしん坊な方々に別れを告げ、車に向かう大志とお父さん。ヤナさんも声をかけました。


「次に来られるまでには、皆で家庭菜園を作っておきますので、確認頂けたらと思います」

「ええ、はたけともやしのできぐあいもかくにんしますので、むりせずぼちぼちやりましょう」

「わかりました。お願いします」


 こうして、大志とお父さんはおうちに帰っていきました。エルフ達は、二台の車が見えなくなるまで手を振ります。


「ラーメン楽しみ~」

「それまで、もやし作りがんばんべ」

「畑も耕さなきゃね」


 大志はまた来てくれるのがわかっているので、前よりは不安もありません。エルフ達は、次の来訪を心待ちにして、大志達を見送りました。

 見送りが終わったところで、ヤナさんが皆を集めて言います。


「では皆さん。これからの予定を確認しましょう」

「畑仕事ともやし作りかな?」

「後、山菜採りだな」

「お掃除とお洗濯も」


 今までやってきたことに、畑仕事が加わりました。お仕事いっぱいですね。ヤナさんは作業ごとに割り振りを決めていきます。


「それでは、明日昼までは、全員で畑仕事をしましょう。出来るところまでで」

「お昼食べた後は?」

「山菜採りは男衆、掃除洗濯は女衆という分け方でどうでしょうか。もやしは各家庭ごとで」

「そうすんべ」

「それで良いわ~」


 皆さんも特に異議は無いようです。大まかな予定は決まりました。


「では、これらの作業は明日からやることにして、今日はもう作業はせず明日に備えて休みましょう」

「「「はーい」」」


 ヤナさんは大志に言われた通り、無理せずぼちぼちやる方針にしました。今日はもうおひらきです。それを聞いたハナちゃん。ご機嫌になって皆に言いました。


「みんな! 温泉入るです~」


 今日は農作業をして汗もかいたし、ちょうどいいですね。夕食までまだまだ時間があるので、ゆっくり入れます。


「そうね、温泉入りましょう」

「良いねえ」

「お肌のお手入れしちゃいましょう~」


 皆うきうき気分になってきました。お昼を食べて、お腹も一杯。そして温泉でくつろぐ。何とも贅沢な時間です。


「それでは、今日は気分を変えて、家族ごとではなく男女ごとに分かれましょう。たまには他の人と温泉に入るのも良いものですよ」


 大志や他の人と一緒に温泉に入ったとき、思いのほか楽しかったのを思い出したヤナさん。皆の親睦を深めるために、こんな提案をしました。


「良いわね~」

「そうすっぺか」

「よーし、歳の近い奴同士で入ろうぜ」


 ヤナさんの提案を聞いた皆さんも、盛り上がってきました。楽しい温泉、気の合う仲間と入るのも、また良い物です。


「じゃあ集会場で順番待ちをしましょう。女衆から先に入って良いですよ」

「じゃあお先に~」

「今日もお肌すべすべよ~」

「キャー! まだバスタオル乾いてないわ~!」


 こうして、エルフ達の一日は過ぎていきました。さあ、明日からはまた大志のいない日々が始まります。

 さてさて、無事に済むでしょうか……。



 ◇



 一日目。


 今日から農作業の始まりです。皆で朝食を食べた後、まだ家庭菜園を作っていないおうちの畑に集まりました。

 これから大志に教わった通りに、畑を作るためです。


「では、畑を作りましょう!」

「作るです~」


 集まった皆に、ヤナさんが言います。ハナちゃんも、ちいさなスコップ片手に、元気いっぱいです。大志が買ってきた園芸用品、早速使うのですね。

 ちなみに、ショベルは足で押せるもの、スコップは足で押せないものだそうです。どうでもいいまめ知識ですね。


「ほんじゃ、畑仕事はじめるべ」

「んだんだ」

「俺この作業、割と好き」


 ヤナさんの掛け声に伴い、皆は作業を始めました。昨日習った通りにやればいいので、特に問題もなく作業に取り掛かります。

 まずは草むしり。ぶちぶちと草をむしるエルフ達、和やかにお仕事をしていきます。


 たった五坪の家庭菜園です。大勢でやれば、あっという間にできますね。人が多いという事は、良いことも沢山あるのです。まあ、ヤナさんがまとめなければ、見事に烏合の衆になるのですけど。


 そうして草むしりはすぐに終わり、次は土を耕す作業です。ざっくざっくと耕していきます。


「今日は何軒のおうちの畑、作れるかしら」

「四軒くらい、いけるんじゃね?」

「草むしって、土起こすだけだしな」

「いや、種撒きあるでしょ。それ忘れちゃうとか、ないわ~」

「土だけ起こして種撒かないとか、やる意味ないわ~」


 肝心の種まきを忘れていた人もおりましたが、エルフ達はワーワーと畑を作っていきました。それほど面積もないので、順調に畑が出来ていきます。


 種を撒くときは、溝掘り職人ことカナさんが張り切っていました。開き直ったとも言います。

 しゅっと一瞬で溝を掘るカナさん、既に熟練の域です。その様子にみんなが感心してほめてくれたので、調子に乗ってしまい不要なところまで溝を掘りました。


 人は調子に乗ると、たいてい余計なことをします。

 後にふと、その時の痛い行動を思い出して「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」と一人で悶絶(もんぜつ)することにならないよう、気を付けたいものです。


 そんな感じで、畑を作って行きます。ひとつのおうちが終わったら、次のおうち。こうして、お昼前位にはもう、予定していた数の家庭菜園が出来たのでした。


「こんだけやれば、今日は良いんじゃね?」

「残りのおうち、明日やればいいわよね」

「ぼちぼちでいいって、タイシさん言ってたしな」


 習ったことは、まあまあうまくできちゃうエルフ達です。畑仕事はそつなくこなせました。

 今日の予定をこなせたことを確認したヤナさん、皆に声をかけます。


「では皆さん、作業も終わりましたし、お昼にしましょう」


 お待ちかねの時間です。

 エルフ達は昨日習った、おやきを作って食べました。調理途中に奥様方が味見をし過ぎて、二個ほど追加で焼いていたのはどうかと思いますが。

 

 お昼の休憩が終わったら、皆はそれぞれの作業に取り掛かります。山菜取りに、お掃除お洗濯。男女に分かれてお仕事です。


 山に入った男衆、こんな感じで山菜取りをしています。


「これ! これ絶対美味(うま)いって!」

「もう見た目からしてダメじゃね」

「それが美味そうに見えちゃうお前はなんなの」


 マイスターがマムシグサを指さして必死にアピール。でもそれもやっぱりアレする毒草です。名前から想像する通り、まむしに似た模様をしている見た目もアレな草です。

 相変わらずの山菜班ですね。


 お掃除お洗濯班の女衆は、温泉に集まって作業をしていました。


「手が冷たくなくていいわね」

「お湯だと、汚れが良く落ちるわ」

「石鹸で洗うと、驚きの白さに! ……ならないわね」


 元から色ついてますからねそれ。白くしたいなら、漂白しないとだめですよ。奥さん。

 そんなお洗濯班のそばでは、お掃除班がお風呂掃除をしています。


「そちらを頼みますね」

「任せて」

「早く温泉はいりたいわ~」


 こうして山菜取りもお掃除お洗濯も、ある意味いつも通りにこなせました。

 今日はほんとに順調です。夕方前には予定していた作業も終わりましたので、エルフ達はおいしい夕食を食べ、きれいにした温泉に入ってのんびりしたのでした。


 今日一日、問題なく過ごせたエルフ達。あとは寝る前に最後のお仕事、もやしの仕込みが残っています。これはおうちごとに仕込むので、みんなおうちに帰ってから始めました。

 ハナちゃんのおうちでは、にょきにょきさせたいハナちゃんが、かいわれ大根と豆もやしの担当になりました。特命任務です。ハナちゃんは大はりきり。


「にょきにょきも~やし~もやしです~」


 豆もやしを、奇妙な歌を歌いながらご機嫌で仕込んでいくハナちゃん。手順は問題ありませんね。

 プランターにお豆を入れて布をかぶせるだけなので、そこで問題が出るようなら何をしてもダメなのですが。

 ご機嫌で豆もやしを仕込む様子を見ていたヤナさん、ハナちゃんに言いました。


「上手く出来たら、ハナが一番に食べていいからね」

「あい~」


 上手く出来なかった場合のことは、特に言われてはいません。ヤナさんはお茶を濁したのです。

 それに気づかないハナちゃんは大喜びで、あるだけ豆もやしを仕込んでしまいました。

 ほかのおうちでは、失敗したら困るからと、半分のさらに半分だけ仕込んだのですが……。ハナちゃんはいきなり全力です。後先考えません。

 勢いに乗ったハナちゃんは、豆苗とかいわれ大根も適当に仕込んで、今日はおしまいにしました。

 もう良い時間。子供はおねむの時間です。

 ハナちゃんはにょきにょきを楽しみにしながら、おねむしたのでした。


「すぴぴ」


 二日目。


「にょっきにょき~のびてるですか~?」


 ぽてぽて。


 朝起きてすぐ、もやしの様子を見に来たハナちゃん。ご機嫌な様子でぽてぽて歩いてきました。

 にょきにょきと芽がでるらしいので、もう気になって仕方がないのです。

 どきどきわくわくしながら、もやしが置いてある場所に着いたハナちゃんでした。


 しかし、そこには……。


「……あえ?」


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