表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第二十章 未来へと繋がる、色
316/448

第三十三話 ゆうめい観光地


 とうとう沖縄旅行最終日。

 朝ご飯を詰め込んだ後は、ホテル前のビーチで海遊びだ。


「残り少ない海遊び、思いっきり楽しんでください!」

「あい~!」

「およぐぞ~!」

「ぎゃうぎゃ~う!」


 みんな気合い十分、わっと海へと走って行く。

 思う存分、泳いでくださいだね!


「タイシタイシ~、いっしょにおよぐです~」

(およぐ~)


 そして早速ハナちゃんと神様からお誘いだ。

 二人で浮き輪にのりながら、エルフ耳がぴっこぴこ、神輿もぴっかぴかだね。

 俺も一緒にのんびり泳ごう。もちろんユキちゃんも誘ってね。


「じゃあユキちゃん、一緒に行こうか」

「は、はい!」


 ユキちゃんの手を引いてハナちゃんの所まで行き、二人が乗った浮き輪を押してあげる。

 ついでに耳しっぽさんを背中にのせて、のんびり遊泳だ。


「あや~、らくちんです~」

(のんびり~)

「フフフ……密着」


 ハナちゃんと神輿、両手を挙げてキャッキャと嬉しそうだね。

 背中の耳しっぽさんは何故か首にしがみついてきたけど、それだと疲れるような気が。

 でも、ふわふわ耳がふぁさっと頬に当たるので、個人的にはほくほくだ。

 良い毛並みしてますね!


「うふふ~、たのしいです~」

(かいてき~)

「フフフ……」


 そうして三人で楽しく泳いでいると、波間に漂う妖精さん軍団と遭遇。

 今度は正統派に平泳ぎしているね。

 ちょっと挨拶しておこう。


「みんなものんびり泳いでいるかな?」

「およいでるよ! のんびりだね!」

「わりといけるね! いけちゃったね!」

「わたしはしずむ~……」


 イトカワちゃんは泳ぎがあまり上手ではないのか、沈みかかっている。

 ひとまず救助しておこう。ひょいっと掬って、頭の上へ。


「ありがとね! ありがと!」


 そうして俺の頭にしがみつき、イトカワちゃんはきゃいっきゃい。

 頭上でキラキラ粒子を大量に放出するため、めっちゃまぶしい。


「きゃい~」


 そんな妖精さんたちとも一緒に、ちょっと深いところまで。

 浮き輪に乗ったハナちゃんと神輿、背中に乗ったユキちゃん、頭の上にはイトカワちゃん。

 周りには泳ぎの上手な妖精さんたちが、きゃいっきゃい。

 結構大所帯になったけど、楽しく遊泳だ。


 そうして深いところに来てみると――。


「おねえさん、こっちさ~」

「わわわきゃ~ん、みんなはやいさ~」

「クワクワ~」

「ぎゃう~」

「ギニャ」


 ミタちゃんと動物たちがすいすいと泳いでいき、偉い人ちゃんがわきゃわきゃと着いていく場面に遭遇した。

 お姫様状態になっても、やっぱり運動は苦手なままなのね。

 でも体の調子は良いのか、元気はある感じだ。

 念のため確認しておこう。


「あの、お体の調子はどうですか?」

「わきゃ~ん、ちょうしはいいさ~。いつもより、はやくおよげているきがするさ~」


 思った通り、調子は良さそうだ。

 でも、いつもより早く泳げてはいませんよ。誤差の範囲内です。気のせいですね。


「わきゃ~ん」

「クワクワ~」


 そのまま見守っていると、ペンギンちゃんが泳いできて偉い人ちゃんと泳ぎ始める。

 かわいいペンちゃんと一緒に泳げて、運動苦手ちゃんもにっこりだね。

 そんな微笑ましい光景を見守り、和んだりする。


 こんな感じで、みんなと楽しく遊んでいたときのこと。


「ははは、みてごらん。きれいなおさかながよってきたよ」


 ……あっちのほうでは、きれいなマイスターに普通のお魚が寄ってきていた。

 昨日までは毒のあるやつ専門だったのに、今日はまともだよ。

 逆に違和感あるね。


「あのひと、にせものじゃないかしら~?」

「だれなんだろうな」

「ふるえる」


 そして偽物扱いされるきれいなマイスター。

 まともになったのに、扱い酷い。

 でもマイスターだからしょうがないよね!


「おっと、これはおいしそうなかいそうだね。どれどれ?」

「たべたわ~」

「あらわないでたべるとか、ふるえる」

「おまえ、そこはかわんないんだな」


 と思っていたら、流されてきた海藻をよく確認もせず、さらに洗わないでそのまま食べた。

 よかった、根っこはなんにも変わっていない。

 無駄に爽やかになっただけで、何でも適当に食べる本質はそのままだ。

 やっぱりマイスターだったね!

 それが良いのかどうかは、わからないのだけど。


 とまあ、きれいなマイスターのいつもの芸を見たところで。

 そろそろ海遊びはお終いの時間となった。


「それではみなさん、名残惜しいですが、そろそろホテルに帰りましょう」

「「「はーい」」」


 たった一時間とは言え、みんな思いっきり遊んではいた。

 名残惜しそうにしながらも、笑顔で海から上がる。


「あや~、たのしかったです~」

「フフフ……密着状態でのツーショット写真。フフフ……」


 ハナちゃん大満足で、足取りも軽くぽててっと海から砂浜へ。

 ユキちゃんも防水カメラの画像を確認しながら、黒いオーラ全開だ。

 朝から耳しっぽさんダーク状態ですな。

 若い娘さんは、良くわからない。


 まあ黒耳しっぽさんは、そっとしておくとして。

 海遊びの後は、体を綺麗にしなくちゃね。

 この後の予定をお伝えしておこう。


「この後はお風呂で体を洗った後、一休みしてホテルを後にしますよ」

「きれいにするです~」

「おふろだね! おふろっ!」

「あったまるさ~」

「わきゃ~ん」


 チェックアウトの時間があるので、あまり長湯は出来ない。

 それでも、ホテルの素敵な温泉をあとちょっとだけ堪能しよう。


 そうしてみんなでお風呂へ入り、体を綺麗にして。


「このサウナってのはすばらしいね。うまれかわったような、さわやかさだよ」

「ま~たおかしくなった」

「みがき、かかってんじゃん」

「だれなの?」


 サウナから出てきたマイスターが黒くなっていたので、洗ったらもっときれいなマイスターになったり。

 さっき蓄えた毒、もうデトックスしちゃったよ。

 効き過ぎでしょこの人。


 ――ちなみに。


「わっきゃ~ん」

「また、くろくなってたです~」

「みんなで洗いました」


 偉い人ちゃんも、さらにつや姫になっておったとさ。

 まだキジムナー火の効果、残ってたのね……。



 ◇



 楽しい海遊び、楽しいお風呂が終わって。

 今俺たちは、ホテルのロビーに集合している。


「このホテルとも、今日でお別れか」

「良い所でしたね」

「すてきなところだったです~」


 四泊五日の旅を支えてくれた、サービス満点のホテル。

 部屋は快適で、お料理も美味しい。温泉だってすばらしい。

 支配人さんも面白――おっと信心深い人で、大満足のホテルだった。


「またのお越しをお待ちしております!」


 そして何故か見送りに来てくれた支配人さんと、ぐわっしと握手だ。

 また機会があったら、お世話になりましょう!


「あ、あの……これをどうぞ」

「こ! これは――!」


 あと、ユキちゃんが支配人さんへと、こそっとお札をあげていた。

 あれ多分、おいな――おっと、商売繁盛的な効果のあるやつだよ。

 本物から貰っているから、こうかはばつぐん! かもね。


「お、おお……本物から……」


 ぷるぷる震える支配人さんだけど、よくしてくれたお礼だね。

 ユキちゃんも、なんだかんだで感謝しているようだ。

 信心深い人だから、これは嬉しいだろう。


 とまあ、霊験あらたかなお札の贈与は見なかったことにして。

 そろそろ、ホテルを後にしよう。


「それでは、お世話になりました。ありがとうございます!」

「ありがとです~」

「たのしかったね! よかったね!」

「いいところだったさ~」

「きてよかったわ~」


 支配人さんに挨拶をし、歩いてホテルを出る。

 涼しいロビーから出ると、ふわっと沖縄の香りと熱さが俺たちを包む。

 これから道沿いを歩いて、観光イベント開始だ。


「またのお越しを~」


 歩いていく俺たちを見送り、支配人さんが手を振ってくれる。

 それは、姿が見えなくなるまで続いた。

 ありがとう、素敵なホテルでした。また、いずれ。



 ◇



 ホテルに別れを告げた後、道を歩いて五分ほど。

 目的の施設が見えてきた。


「みなさん、目的地が見えましたよ」

「あや! なんかおさかなのでっかいやつが、あるです~!」

「カニっぽいのもあるさ~!」

「でっかいね! おもしろいね!」


 施設の入り口には、カニさんやらカメさんやら――ジンベイザメのモニュメントが。

 みなさん、この造形物に興味津々だね。


「目的地はもうちょっと先です」

「こっちですよ」

「あい~」


 そのまま歩いて、海人門うみんちゅゲートを歩いて、エスカレーターで降りる。

 ここが入り口。施設名が書いてあるわけで。


「おや? 水族館と書いてありますね」


 そしてヤナさん、その文字を見てここがどこだか分かったようだ。


 そう、ここは――ちゅら海水族館!

 有名な所だね!


「あや! すいぞくかんです!?」

「そうだよ、ここはすっごく有名な水族館なんだ」

「ゆうめいなところですか~。たのしみです~!」


 俺とヤナさんの会話を聞いて、ハナちゃんお耳がぴっこん。

 去年はマリンピアで大はしゃぎだったから、ここも気に入って貰えると思う。

 思う存分、海の生きものを堪能してね。


「うふふ~、うふふ~」

「私もここに来るのは初めてなので、楽しみです」

「たくさん見て回ろうね」

「はい!」


 うきうきハナちゃんの横では、ユキちゃんもうっきうきだ。

 俺も初めてなので、結構楽しみ。

 チケットは旅行会社さんに手配してもらったので、あとはみんなに配るだけ。

 ではでは、ゲートをくぐって入館しましょう!


「はい、このチケットで入れますよ。どうぞ、はいどうぞ」

「改札のくぐり方は、私の真似をしてください」

「わかったです~」


 俺がチケットを配り、ユキちゃんが実演して。

 みんなすんなりと入館だ。


「あや~! ちっちゃないきものいるです~」


 ゲートをくぐってすぐの所に、浜辺の生きものが展示してある。イノーの生きものたちって書いてあるね。

 ハナちゃんぽててっと走って行って、うきうきと覗き込んだ。


「おや? これはなかなか、おいしそうだね」

「それはヒトデですから、毒がありますよ」


 続いてきれいなマイスター、ヒトデが美味しそうとおっしゃる。

 でもこの生きもの、ステロイドサポニンやら、アルカロイドやらたくさんだね。

 お薬にもなるけど、分量には要注意でござる。


「ははは、そんなまさか」

「あきらかに、やばそうなみためよ~」

「トゲトゲしてるとか、ふるえる」

「やっぱ、ねっこはかわらんか」


 さわやかだけど、やっぱり毒には縁がある。

 そんな残念マイスター。


 とまあ、それはそれとして。

 そこから奥に行くと、サンゴの海や熱帯魚の海等々の展示がされていた。

 シュノーケリングで見たお魚たちが、ゆらゆらと泳いでいる。


「うきゃ~、きれいです~」

「すてきだね! キラキラしてるね!」

「みずのなか~」


 ハナちゃん水槽にかぶりつき、妖精さんたちもかぶりつき。

 みんなでキャッキャと綺麗なお魚を見つめる。

 大はしゃぎだね!


「……タイシさん、タイシさん」


 ――と、ハナちゃんたちを見守っていたら。

 偉い人ちゃんが、つんつんと俺の肘をつついて問いかけだ。

 何でございましょう?


「どうしました?」

「これ、これ……なにさ~?」

「おみずのなかに、いるさ~?」

「わきゃ~?」

「クワワ~?」


 偉い人ちゃんの他にも、しっぽドワーフちゃんたちが唖然と水槽を見上げていた。

 ペンギンちゃんもだね。

 ……そういえば、この子たちは水族館が初めてだったか。


「えっとですね。ここは海の生きものを透明で巨大な容器に入れて、飼育しているのです」

「わきゃん? しいく、してるのさ~?」

「そうです。海の中と似たような環境を作って、お魚を生きたまま観賞できるようにしている施設なのです」

「……」


 水族館について軽く説明すると、ドワーフちゃんたち、ぽかん。

 お目々まん丸、しっぽカチコチで、動かなくなってしまった。


「そんなこと、かのうなのさ~?」


 やがて偉い人ちゃんが解凍して、再確認だね。

 もちろん可能ですとも。


「ええ、可能ですよ。生きものを研究して、設備を作ってすごい努力の上で維持しています」

「わきゃ~ん……」

「うちらじゃ、おけのなかが、せいいっぱいさ~……」

「そもそも、とうめいなようきがないさ~」

「クワ~」


 ドワーフちゃんたち、驚きすぎてしっぽがカチコチ。

 そのままふらふらと水槽の前に歩いて行き、またまたぽかんと水槽を見上げる。

 ……飛行機の時とは、また違ったショックを受けたようだ。

 水棲の文化を持っているだけに、ちたまの飼育技術は衝撃だったようだね。


「わきゃ~ん、わきゃきゃ~……」

「すごいさ~、おさかな、たくさんさ~……」

「すてきさ~……」

「クワックワ~」


 そのまま、ドワーフちゃんたちとペンギンちゃんは水槽を見つめ続ける。

 普段はエコーロケーションで水中を見ている彼女たち。

 こうして水槽越しにお魚を見つめるのは、初めての体験だ。

 しばらくの間、しっぽカチコチのまま、見つめていたのだった。


 やがて――。


「わわわきゃ~ん、すごいたいけんしてるさ~!」

「りょこう、きてよかったさ~!」

「おさかな、おさかなさ~!」


 やがて、しっぽドワーフちゃんたち、大はしゃぎし始めた。

 水族館という施設は、かなりツボったぽいね。

 お魚大好きな種族だけに、わっきゃわきゃと盛り上がる。


「あや~、すっごいもりあがってるです?」

「水辺で暮らす人たちだからね。衝撃的だったみたい」

「私たちでも、ここは凄いかなって思いますよ」


 そんな盛り上がるドワーフちゃんたちだけど、ここはまだまだ序の口だね。

 次は黒潮の海という、この水族館の目玉があるわけで。

 そこも見て貰おう!


「ねえみんな、この先にもっと凄い水槽があるよ」

「わきゃん? ほんとさ~?」

「ほんとほんと、見に行こうよ」

「いくさ~」

「うちもみてみるさ~」


 お誘いをかけたら、みなさんわきゃきゃっとこちらに集まってくる。

 それじゃあ、黒潮の海を見に行きましょう!


「では、こちらへどうぞ」

「いくです~」

「一緒に行きましょう」

「わきゃ~」


 ということで、この水族館目玉の展示を観賞しにいく。

 黒潮の海、その展示とは――。


「うっきゃ~! でっかいおさかな、たくさんです~!」

「ジンベエザメ! あとマンタもいますね!」


 そう、ここは世界最大のお魚、ジンベエザメちゃんが展示してあるのだ!

 大きな体をゆったりと動かす彼らの姿は、そらもう大迫力。

 他にもマグロや小魚たちが入り乱れ、幻想的な光景が目の前に広がる。

 これは凄いね!


「――……」

「……」


 おや? ドワーフちゃんたちがなんだか静かだ。

 どうしたのかな?


「あや~、タイシ。みんなきぜつしてるです?」

「……刺激が強かったみたいですね」


 後ろを振り向けば、そこには目を開けたまま気絶するドワーフちゃんたち。


「クワ~――……」


 後追いで、ペンギンちゃんもシャットダウン。

 どうもこの子たちにこの水槽は、強烈すぎたかもしれない。

 そういや、初めて水族館に来たんだった。

 もうちょっと、慣らし運転が必要だったのだ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ