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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第二十章 未来へと繋がる、色
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第三十二話 二人とも、ため込み過ぎなのだ


「わきゃ~ん」


 つやつやお姫様の、偉い人ちゃん。

 そのしっぽは――緑に変化していた!

 何が起きたか良くわからないので、部屋に戻って聞いてみることに。


「えっと、一体何が起きたの?」

「それがですね……彼女、サウナで黒い汗をかいたのです」

「びっくりしたです~」

「そういえば、同じだって言ってたよね」

「です~」


 どうやら、彼女も黒い汗をかいたらしい。

 マイスターと同じだ。


「なるほど、それで見れば分かると」

「そうです~」

「同じですよね」

「わきゃん」


 偉い人ちゃんは、コクコクと頷きながらもニッコニコ笑顔だ。

 緑しっぽを、いとおしそうになでなでしている。


「まるで、うまれかわったきぶんですよ。ははは」

「かわりすぎだわ~」

「ふるえる」


 そしてマイスターは、相変わらずキラキラ光線を出している。

 髪の毛をふぁさっとさせたり、ほんとこの人誰だよ。


 ちなみにマイスターを心配して、ステキさんも俺たちの部屋に来ている。

 腕グキさんはただのつきそい。

 他のエルフたちは、まったく彼を心配していないので放置である。

 いつもやらかすから、まあそのうち元に戻るでしょと言われた。

 俺もそう思う。


「えっと……お体は大丈夫ですか?」

「わきゃん。もんだいないさ~」


 マイスターは明らかに別の問題が出ているけど、それはそれとして。

 念のために聞いてみたけど、偉い人ちゃんは大丈夫のようだ。

 まあ、しっぽが緑に変化している以上、良い兆候が出ているとも言える。

 彼女の悩みだった、青しっぽ問題が解決の兆しを見せているのだから。


「わきゃ~ん、わきゃ~」


 あまりの嬉しさに、しっぽを抱えたままベッドでごろんごろんし始めたけど。

 それほど、嬉しかったと言うことだね。

 あ、転がりすぎて落ちた。


「タイシ~、これってなにがおきてるです?」

「二人に起きたと言うことは、何かありますよね」


 ハナちゃんとユキちゃんは、この現象が何か気になるようだ。

 まあ、ユキちゃんの言うとおり二人に起きている。

 なんらかの原因は、あるはずだ。

 ちょっと考えてみよう。


 二人が変化した共通点としては、黒い汗だね。

 汗が黒くなくなるまでサウナに入って貰ったらしいので、これもマイスターと一緒ぽい。

 すなわち、この黒い汗がキーだ。


「昨日はこんなこと、なかったですよね」

「なかったさ~。きょうはじめて、おきたさ~」


 お姫様偉い人ちゃんが答えてくれたけど、昨日は何も起きていないわけだね。

 写真を見ても、変化は確かにない。


「そうだね、ぼくもきのうは、なんともなかったよ。ははは」

「あ、ドヤがおはかわらないわ~。ドヤがおやめて~」

「そこは、そのままなのね。でもドヤがおやめてね」


 マイスターも答えてくれたけど、なぜかドヤ顔。そこだけいつもの彼だ。

 腕グキさんとステキさんにつっこみを頂いている。

 とりあえず、彼はほっておこう。


「つまりは、今日何か原因となることが起きたって事ですね」

「ハナも、そうおもうです~」


 ユキちゃんとハナちゃんが、意見を揃える。

 俺も同意見だ。

 じゃあ今日、いつもと違う何かがあったと言うこと。

 そこを突き詰めていくと――ニライカナイ、という言葉が浮かび上がる。


「やっぱり、ニライカナイが関係しているよね」

「そうですね、違いはそこしかありません」

「たのしかったです~」

(あそんだ~)


 ユキちゃんも、ニライカナイがあやしいと睨んでいるようだね。

 ハナちゃんと神輿はPC旅行の写真を見て、キャッキャし始めたけど。

 二人とも、PCの画像スライドはすっかりマスターしちゃっている。

 なんというか、物覚えが良い子たちだね。


「ニライカナイが関係しているとして、それは一体なんだろう?」

「あの領域自体の効果なのか、それとも違うのか。微妙ですね」

「そうだね」


 神輿と写真を見てキャッキャし始めたハナちゃんはさておき、検証を続ける。

 何が原因でこうなったか、ニライカナイの領域に何か効果があったのか。

 それともそうでは無いのか、切り分けが必要だ。


「何だろうね?」

「初めて行った領域ですから、難しいですね」

「むむむ」

(むむ~?)


 二人で悩んでいると、ハナちゃん帰還。神輿も加わって、みんなでむむむと考える。

 でもハナちゃんと神輿、旅行写真観賞は続けるのね。


「おじょうさまがた、のみものをどうぞ」

「あら~、ありがとうね~」

「まあ……これはこれで、いいのかな?」


 後ろでは、きれいなマイスターが爽やかに麦茶を注いでいる。無駄な爽やかさ。

 しかしステキさん、だんだんほだされてきているね。

 あれはあれ、これはこれだ。どのみち同一人物なので、特に問題はないとも言える。

 まあそっちはほっといて、こっちは思考を続ける。


 そうして四人で考えていると――。


「あや! タイシ、これあやしいです~」


 ハナちゃんが、あやしそうなやつを候補に挙げてくれた。

 PCの画面をこっちに向けて、画像を見せてくれる。

 そこには、キジムナー火をぷるぷるしながら食べる、俺たちが写っていた。


「これは……」

「キジムナー火、ですか」


 そういえば、みんなでこれを食べたね。

 一番あやしいのはこれだけど、俺たちには何の変化も出ていない。

 妖精さんたちも、別段変化はなかった。


「これが原因だとすると、自分たちに何も出ていないのがどうもね」

「あや~、たしかにそうです~」

「あんなにぷるっぷるになったり、爽やかになったりはしていませんね」


 ホント一体、なんだろうねこれ。

 ちょっとキジムナーさんたちにも、聞いてみる必要があるかもだ。

 さっきは慌てていて、聞くの忘れちゃったんだよね。


「……まあ、夕食時に聞いてみよう」

「そうするです~」

「ですね」


 ということで、引き続き検証していこう。

 楽しい夕食を食べながら、ぼちぼちと。



 ◇



「はいみなさん、お待ちかねの食べ放題飲み放題です!」

「「「わーい!」」」

(おそなえもの~)


 旅行最後の食べ放題飲み放題と言うことで、みなさん気合い十分。

 わああっとお料理を取りに散会し、イベント開始だね。


「神様、こちらをどうぞ」

(ありがと~)

「こっちもどうぞです~」

(おいし~)


 神様にお供えしまくって、無事儀式も完了。

 さてさて、それではさっそく、キジムナーさんたちに聞いてみよう。


「すみません、ちょっとよろしいですか」

「大志さんきたよー」

「どうぞー」


 キジムナーさんたち席に向かい、お風呂で起きた事件を説明だ。

 すると――。


「あ~それは、体の中にある毒を燃やしたんだよー」

「燃えた毒は汗になってでてくるさー」

「黒い汗が出まくったってことは、そうとう溜まってたかもねー」


 という回答が得られた。

 つまり、二人は体内にそうとうな「毒」を抱えていたと言うことだ。

 俺やハナちゃん、他の方々はそうではなかったと。

 まあそう言われると、そうかなと思う。


 特にマイスター。まさにそれ。毒見芸しょっちゅうやってたからね。

 そりゃ蓄積しているでしょうと。

 ……まあ、なんで性格まで変わったかはわからないけど。

 ひとまずそこは置いておこう。マイスターだから、しょうがないよね!

 ということで、マイスターの事は放置して。


「なるほど、さすがニライカナイ製健康食品。凄いですね」

「でしょでしょ」

「自慢の特産品だよー」


 キジムナー火を褒められたみなさま、ニコニコ笑顔だ。

 体内の毒を燃やして、排出してしまう。面白い神秘食品だね!

 でもまあ、これでいちおうの説明はついた。

 そしてすなわち、偉い人ちゃんはとっても不健康だったという話でもある。


「わきゃん。カニがおいしいさ~」


 ほくほく笑顔でカニとお酒を楽しむ偉い人ちゃんだけど、とっても不健康。

 運動をとことんしなかったり、お酒ばっかり飲んでいたり。明らかに体に良くないね。

 そういうのが積もり積もっていた、かもしれない。

 要調査ってところか。


 でもまあ、今回起きた変化は良い感じの出来事っぽいよね。

 偉い人ちゃんのしっぽが緑になったのだから、めでたい事だ。

 お祝いの言葉を贈っちゃおう!


「何にしても、良い変化かなと思います。緑しっぽ、おめでとうございますですね!」

「おめでとうです~!」

「良かったですね!」

「わきゃ~ん、ありがとうさ~!」


 偉い人ちゃんの所へ赴き、みんなでおめでとうの言葉をかけて乾杯する。

 彼女も嬉しそうな顔で、その言葉を受け取ってしっぽをぱたぱただね。


「わきゃ~ん、わきゃ~。おさけもいっそう、おいしいさ~」

「おめでとうさ~」

「おめでとうだね! おめでとう!」

「いままで、よくがんばったな~。おめでと!」


 俺たちの言葉に続いて、他のみんなもおめでとうを贈ってくれた。

 偉い人ちゃん、嬉しくってしっぽをぱったぱただね。

 引き続き、楽しく夕食を過ごして下さいだ。


 ――ということで。

 ひとまずここでの検証は終了しよう。あとは村に帰ってから、細かい事を調べたりだね。

 ただまあ俺の力では詳細に調査が出来ないので、外部の助っ人を頼ろう。

 そう、お医者さんに頼むのだ。

 ……偉い人ちゃん、お医者さんに行って貰いますからねえ。


「あや~、なんだかふおんなくうきです~」

「私、大志さんの考えてること分かりました。いっぺん診て貰った方が良いですね」


 ちたまのお医者さんを知らないハナちゃんは、ふんいきを察してぷるぷる。

 ユキちゃんは知っているから、何をするかは想像がつくだろう。

 採血はまず必須だよね。この辺は、我慢してもらいたいということで。

 ちたま医療技術を使い、数字ではっきりさせないといけないのだ。


「まあ、後は村に帰ってからだね。今日はひとまず、夕食を楽しもう!」

「そうするです~!」

「たくさん食べましょう!」


 引き続き偉い人ちゃんは見守るとして、俺たちも食事を楽しもう。

 支配人さんから案の定高級いなり寿司の差し入れもあったことだし、美味しく頂きましょうだね!


「おにく、おいしいです~」

「なんだかメニューにキツネ……。あ、おうどんが追加になってますね」

「大志さん、一緒に飲みましょう」

「のもうのもう!」


 ハナちゃんがローストビーフを食べてとろんとした顔になり、ユキちゃんは何故か追加されていたキツネうどんをニコニコ顔で食べて。

 ヤナさんや他のエルフたちと飲み比べをしたりして、楽しく夕食を過ごす。


「おじょうさまがた、かじつしゅはいかがかな?」

「あら~、ありがとう~」

「おじょうさまとか、すてき」

「そちらのたくましいかたも、いかが?」

「そういわれると、まんざらでもない」


 きれいなマイスターは、爽やかに食事を取っているね。

 でも正直違和感すごい。誰この人?

 腕グキさんとステキさん、マッチョさんはもう慣れたみたいだけど。


「だれなの?」

「かわりすぎである」

「どくがないてきな?」

「じゃっかん、みならいたくもある」


 他のエルフたちは、きれいなマイスターを暖かく見守っているね。

 つっこみは容赦ないけど、爽やかな立ち振る舞いは見習いたくもあるようだ。

 でもそのうち、元に戻ると思う。


「わきゃん」

「なんだか、きれいになったさ~」

「もともとがこうだったかも、てタイシさんからきいたさ~」

「うらやましいさ~」


 ドワーフちゃんたちは、偉い人ちゃんの変わりようをうらやましがりつつ、一緒にお酒を楽しんでいるね。

 みんなでわきゃわきゃと、賑やかだ。


「そしてしょくごのあまいものだよ! あまいもの!」

「がんばってつくったよ! おいしいよ!」

「おくばり~」


 食べ放題後半では、恒例の妖精さんデザートも振る舞われる。

 日に日に完成度が高くなっていって、見事な出来だ。


「タイシさんには、あんのじょうしっぱいしたやつだけどね! しっぱいしたやつ!」


 まあ俺は、完成品じゃないやつ担当だけどね!


「どうぞ! どうぞ! きょうのは、ほどほどにしっぱいしたやつだから!」


 というわけで、お約束の失敗デザートが俺の前に置かれる。

 さてさて、今日はどんな、土木系スィーツかな――。


 ――って、燃えてる!?

 土石流パフェが青白く燃えてるじゃないか!

 キジムナー火を使った、炎上パフェだー!!!!


 ちなみにカスタードの風味がとろける、美味しいデザートだった。

 カスタードは全く使ってないらしいけどね!



 ◇



 ――翌日、さわやかな朝。

 今日は旅行最終日、午後には飛行機に乗って沖縄を後にする。


「きょう、かえっちゃうですか~」

「名残惜しいですね」

(あそんだ~)


 朝食をもぐもぐしながら、ハナちゃんとユキちゃんは沖縄の日々を惜しむ。

 でもまあ、俺としては謎の声と同様、かなり遊んだと思う。

 おまけに今日も午前中は、イベントあるからね。


「その分、午前中は思いっきり沖縄を楽しもう」

「あい~!」

「そうですね!」

(あそぶ~)


 最終日とは言え、まだまだ遊べる。

 残り少ない時間を、有効に活用しよう。


「食べ放題と飲み放題、夢のような時間でしたね」

「おかあさんは、わりとふとったです?」

「はわわ」


 みんな大好きな卵料理を頬ばって、今日一日の活力を蓄える。

 食べ放題だから、存分に詰め込んでね。


「オムレツ、とりわけておきましたよ。おじょうさま」

「あら~、ありがとうね~」

「なれてきたわ」

「おれも」


 きれいなマイスターは相変わらずだけど、俺も慣れてきた。

 毒っ気がゼロになったら、こうなるんだなと。

 ドヤ顔だけは、変わらないようだけど。


「わきゃ~ん、あかいおさかな、おいしいさ~」

「たくさんたべるさ~」

「このほくほくおりょうりも、おいしいさ~」


 偉い人ちゃんは、ドワーフちゃんたちと一緒に鮭の切り身をもぐもぐ食べている。

 緑しっぽをぱたぱた振って、健康的な朝だね。

 一晩経ってもしっぽの色は変わっていないから、一安心だ。

 朝起きて青しっぽになっていたら、偉い人ちゃんヘコんじゃうかもって心配だったからね。


「そういえば、今日の予定ってどこかに行くのでしたっけ」


 偉い人ちゃんを見守っていると、もぐもぐと目玉焼きを詰め込んでいたヤナさんから質問が来た。

 そうそう、今日はちょっと観光でもする予定なのですよ。


「一時間くらい海で遊んだあと、すぐそこにある施設で観光します」

「たのしみです~」

「有名な所だから、私も楽しみです」


 ここからは見えないけど、近くに有名な観光スポットがある

 ハナちゃんもううっきうきで、ユキちゃんも楽しみのようだね。

 俺も初めて行くところだから、今からワクワクだ。


「きょう、どっかかんこうにいくんだって」

「たのしみだな~」

「なにがあるんだろ」


 話を聞いていたエルフたちも、キャッキャとはしゃぐ。

 そしてはしゃぎながらも、卵料理を詰め込む。たくましい。


「ほっとけーき、おいしいね! おいしいね!」

「このしかくいのも、おいしいね! あまいね!」

「ふわっふわ~」


 妖精さんたちも、ホットケーキやフレンチトーストをメープルシロップべったりにして、きゃいっきゃいで消費していく。

 この子たちもたくましい。というか凄い食欲。

 明らかに、体の大きさよりも食べている。

 それだけ食べたものは、一体どこに消えるのか……。


「きゃい? タイシさんおだんごたべる? おだんご!」

「たくさんあるからね! たくさん!」

「どうぞ~」


 妖精さんたちを眺めていたら、大量のおだんごが。

 コーンフレークを、メープルシロップと一緒に丸めたっぽいやつだ。

 朝食でもデザート作っちゃうのか。

 いつでもどこでも、フリーダムな妖精さんだね!


 こうして楽しい朝食を過ごし、お次は海遊び。

 その後は、観光だね。


 さてさて、今日は沖縄旅行最終日。

 残り少ない時間を、思いっきり――楽しもう!


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