第三十一話 黒変
ここはとある世界の、とある場所。
「わわわわっきゃああああ!」
なんだか大騒ぎになっていました。
偉い人ちゃんがわきゃわきゃと大慌て!
周りのみんなも心配そうです。
「う、うち、どうなっちゃうさ~!」
ぷるぷる震える偉い人ちゃん。
彼女の全身は、なんと――。
◇
楽しいニライカナイ観光からホテルに戻り、部屋へ到着。
ここで一休みしたあとは、ひとっ風呂浴びてさっぱりする予定だ。
「ふ、ふふふふ……夕焼けの砂浜でツーショット」
「きれいにうつってるです~」
(すてき~)
ユキちゃんはカナさんからカメラを借りて、PCにデータを移したようだね。
ニライカナイの夕焼けを眺めていた時の写真を見て、ハナちゃんとキャッキャしている。
神輿もぴこぴこと覗き込んでいて、微笑ましい光景だ。
「いや~、なんだかすっごい遊びましたね」
「あしたでおわりとおもうと、なごりおしいものがあるわ」
「そうだな、なごりおしいよな」
「あらあら」
「ふがふが」
ヤナさんたちも思いっきり遊べたようで、名残惜しみつつもほくほく顔だ。
俺も同じ気持ちだけど、明日もイベント用意してあるから楽しみにして欲しい。
「明日はちょっと観光しますから、まだまだ催しはありますよ」
「それは楽しみです」
「しゃしんたくさんとります!」
イベントの予定を伝えると、みなさんウキウキ顔だね。
まあその後は恐怖のおヒコーキが待っているのだけど。
そこは言わないことにしておこう。
「そうそう、これからお風呂ですよね。タイシさん、一緒に行きましょうか」
「そうですね。夕日を眺めながら暖まりましょう」
ヤナさんからお風呂のお誘いがあったので、一緒に行くとしましょうか。
そして風呂上がりの食べ放題が待っている。
楽しみだなあ。ここのブュッフェはなかなか美味しいからね。
「ハナも、おふろはいるです~」
「私たちも一緒に行こうか」
「あい~!」
(おふろ~)
ハナちゃんもお風呂が楽しみなのか、んしょんしょと着替えとかを準備している。
エルフ耳がぴこぴこしていて、可愛らしい。
神輿はバスタオルを抱えているね。木造だけど、体は拭く必要があるようだ。
「では、準備が出来たら行きましょうか」
「そうしましょう」
ということで俺たちもお風呂の準備をして、みんなでワイワイと大浴場へ向かう。
「おふろ~おふろ~、ぽかぽかです~」
(のんびりする~、のんびり~)
ハナちゃんと謎の声の陽気な歌を聞きながら、目的地へ到着。
それじゃ、ここで別れよう。
「お風呂の後は、夕食会場前で集合しようか」
「わかりました」
「そうするです~」
ユキちゃんは部屋が別なので、集合場所は決めておかないとね。
みんなもそこに集まるだろうし。というか十分前から並ぶ勢いだ。
……あれ? もしかして村人たち、時計とかもう理解出来るようになっていないかな?
食べ物に関する事柄は一瞬で覚えるから、油断ならない。
恐らくもう時計とか見て、行動出来るようになっているのではないだろうか。
「ではタイシさん、行きましょう」
「あ、そうですね」
「それでは、また後ほど」
「おふろいくです~」
村人たち、もう時計とか分かってるんじゃ無い疑惑はさておき、ヤナさんに誘われるがまま脱衣所へと赴く。
ユキちゃんたちも女湯へと入っていったので、あとはお任せだ。
俺たちは俺たちで、この素敵なお風呂を楽しもう。
「あ~、けっこう日焼けしました」
「水着の跡、くっきりですね」
一緒に脱衣所で裸になると、ヤナさんは結構日焼けしていた。
赤くなっているから、後で軟膏とか渡しておこうかな?
「タイシさんはあんまり、日焼けしてないですね」
「ハナちゃんとユキちゃん、それに神輿に日焼け止めを塗りたくられまして」
「そう言えば、なんだかワイワイとやっていましたね」
元々俺はそんなに日焼けしないのだけど、ハナちゃんたちの日焼け止めコーティングのおかげで紫外線ブロックしまくりだね。
塗っている最中、耳しっぽさんは黒いオーラ全開だったのは気になる所だけど。
「ハナちゃんたちも日焼け止めは塗っていましたので、日焼けは大丈夫かもですね」
「私は塗るの忘れちゃいましたよ」
ヤナさんが日焼けしているのは、忘れたからか。
まあそんなに酷い焼け方でもないので、すぐに治るだろう。
ちなみにハナちゃんの背中に日焼け止めを塗ってあげたとき、くすぐったさに負けてハナちゃん大爆笑しておりました。
それとユキエ先生からもせがまれたので背中に塗ったら、耳しっぽ全開。
大変良い毛並みでございました。
神輿は自分で塗ってた。木造なのに日焼け止めが必要かどうかは、議論の余地があるけど。
「お風呂に入ると、ちょっとヒリヒリするかもですね」
「これ位なら、まあ大丈夫かなと」
そんな雑談をしつつ、大浴場へ足を運ぶ。
足を踏み入れると、夕日の海岸を一望できる、素敵な光景が広がっていた。
あの海の向こう、どこかに存在するニライカナイを思い出しながら、のんびり暖まろう。
「おー、あたまあらったら、さっぱりしたじゃん」
「けっこうすなとか、ついてたからな」
体を洗いに洗い場へと足を運ぶと、マイスターとマッチョさんが頭を洗っていた。
かなり泡立っているけど、シャンプー付けすぎではないだろうか。
まあ細かいことは気にせず、俺たちも体を洗う。
お、なんだか汚れがかなり落ちてる気がするな。
マイスターじゃないけど、すっごいさっぱりした。
「おっし、さうなはいるじゃん!」
「いきなりか」
そして一足先に体を洗い終えたマイスターとマッチョさん、サウナに直行した。
けっこう玄人な楽しみ方するね。
まあ俺とヤナさんは、まずのんびりとお風呂に浸かろう。
体を洗い終えて、夕日を眺めながら浴槽へ入る。
「ども、お先してたよー」
「ここのお風呂、なかなか良いよねー」
お風呂に入ると、出稼ぎキジムナーさんたちがのんびりしていた。
エルフ男衆もほんわか暖まっていて、村の男たちは全員いるっぽいね。
「おとーさん! せなかながしてあげる!」
「じゃあたのもうかな」
息子さんに背中を流して貰って、ほくほく顔のお父さんエルフ。
「キャー! つめたい!」
「ここは、からだをさますためにあるんだって」
「そうなんだー!」
好奇心のままに水風呂に飛び込むお子さんにつきあって、一緒にぷるぷるするお父さんエルフも。
子供はこういう所だと大はしゃぎだからね。
一緒にお風呂を楽しんでいるようで、微笑ましい家族の姿があった。
俺も子供の頃は、親父とああして遊んだものだ。
あの子たちもお父さんと遊べるうちに、思いっきり思い出を作ることができれば何よりかな。
だって大人になったら、それはなかなか出来なくなるのだから。
まあ俺は親父といまだにバカやるけどね!
そしてお袋に一緒に怒られるわけだ。親子揃って成長が無いとも言う。
「大志、なんか今失礼なこと考えなかったか?」
「いや、なにも?」
親子だからか、親父が何かを察したがごまかす。
ごまかし通すのだ。
とまあ、それはそれとして。
「おっし暖まったな。俺はちょっくらサウナ行ってくる」
高橋さんがサウナに行くようだ。
わざと湯船で体を温めてから行く理由としては、彼にとってはちょっと温度が物足りないからだろう。
そうして体を浴槽で温めてからサウナに行けば、温度が物足りなくても滝汗は出る。
お風呂とサウナを併用する、玄人なやりかただ。
この技を知っていれば、どこのサウナでもわりと楽しめるという。
「あー、俺も行こうかな。そういや最近サウナ入ってなかったし」
「俺もそうするかな」
高橋さんに釣られて、親父と俺もサウナに行くことにした。
ドキッ! 男だらけの滝汗大会開催だね。
むさくるしいイベントだけど、男湯なのでしょうが無いのだ。
「あっちー」
「まだまだ、まだまだ」
サウナに入ると、マイスターとマッチョさんがじりじりと蒸されていた。
彼らは十二分計を見ながら、水風呂へ飛び込むその時を測っている。
「おや、タイシさんたちも来られましたか」
奥の方では、ヤナさんも蒸しエルフとなっていた。
汗もかいていないところを見ると、入ったばかりみたいだね。
そんなみなさまと一緒に、俺たちもジリジリとグリルに突入だ。
「あっちー」
「もうちょっと、もうちょっと……」
「ふー」
「暖まりますねえ」
サウナ室の中では、男たちがそれぞれ一人の世界で戦う。
各自時計を見つめて、この灼熱の世界から脱出する機を窺うのだ。
俺と親父、そして高橋さんは湯船で体を温めた後なので、開始二分でもう滝汗だけどね。
そうして数分、良い感じにグリルされていたときのこと。
「……あり?」
タオルで顔の汗をぬぐっていたマイスターの様子が、なんかおかしい。
どうしたんだろ――え?
◇
ここはとある沖縄の、とあるホテルの大浴場。
女湯では、ハナちゃんたちがのんびり過ごしておりました。
「ハナ、頭洗ってあげる」
「あい~」
洗い場では、カナさんとハナちゃんが仲良く洗いっこをしておりました。
ハナちゃん子供なのに、シャンプーハット無しでも頭が洗えちゃいます。
偉い子ですね!
「神様は、ハナがあらってあげるです~」
一緒に来た神輿は、ハナちゃんがごしごし洗います。
神輿もぴかぴか光って、嬉しそう。
「私たちも洗いっこだね! あわあわだね!」
「羽根を洗ってあげるね! 綺麗な羽根!」
「きゃい~」
そんな様子を見たのか妖精さんたちも真似をして、お互い洗いっこですね。
きゃいきゃいと、仲間の美しい羽根を洗ってあげています。
ボディーソープの付けすぎで、イトカワちゃんは泡に包まれて姿が見えなくなりましたけど。
ほどほどに付けるのが、良いですよ。
「もしもにそなえて……もしもに……」
その横ではユキちゃんが念入りに体を洗っていますが、備えるのは良いことですね。
いざというときが来るかどうかは別として。
「今日もサウナで、お肌ぷるっぷるよ~」
「おー!」
「美しくなるのー!」
そして先に来ていた女子エルフたちは、サウナで盛り上がっております。
お肌ぷるぷるの儀式に、余念がありませんね。
お腹のお肉もぷるぷるですが、それはどうやら諦めたようですけど。
「はーい、洗い終わったわ」
「おかあさん、ありがとです~」
そうしているうちに、ハナちゃんたちも洗い終えました。
キャッキャとはしゃぎながら、お風呂へざぶん。
海に沈む夕日を眺めながら、のんびりぽかぽか暖まります。
「あや~、いい湯です~」
「落ち着くね」
「あい~」
お風呂に肩まで浸かって、ハナちゃんのエルフ耳もぐんにゃり。
ぽわわとした表情で、のんびりですね。
「おふろ、あったまるね! ぬくぬくだね!」
「ただようだけ~」
「のんびり~」
その周囲を、妖精さんがぷかぷか漂っております。
たまにハナちゃんの頭上にのって、湯冷まししたり。
きゃいっきゃい妖精さんたちも、お風呂ではまったり過ごすようです。
「うちらは、やっぱりサウナさ~」
「やみつきになるさ~」
ドワーフちゃんたちは、今日もサウナで汗を流すようですね。
村には無い施設なので今のうちに楽しむようです。
偉い人ちゃんも、青しっぽをぱたぱた振ってサウナ室へ入っていきました。
あ、神輿もほよほよと飛んでサウナ室へインですね。みんなで蒸されるようです。
「それじゃハナ、私たちも行ってみましょうか」
「あい~」
その様子を見て、カナさんとハナちゃんも後から行くみたいです。
カナさんだって、お肌ぷるぷるになりたいですからね!
「も、もうだめ~」
「お肌ぷるぷる……ぷるぷる……」
「水風呂……水風呂」
「あ、そろそろ良いわね」
「行くです~」
先に入っていた蒸され女子エルフが水風呂へ飛び込むのを見計らって、ハナちゃんたちもサウナへと。
その室内では、ドワーフちゃんたちがわきゃわきゃと長サウナをしておりました。
「このお部屋、どんな作りなのさ~?」
「今のうちに、見ておくさ~」
「村に帰ったら、作ってみるさ~」
もうすっかり、サウナが気に入ってしまったドワーフちゃんたち。
村に帰ったら、試作する気満々で室内を調べておりますね。
でも結構難しいかもですよ。大志にお願いすると良いかもです。
「わきゃ~、お肌ぷるぷるさ~」
そんな中、偉い人ちゃんが端っこでじりじりと蒸されておりました。
彼女だけ他のドワーフちゃんたちとはちがい、美容目的ですね。
偉い人は色々苦労があるのかもしれません。
「……わきゃ?」
「あえ?」
そんな平和な風景の中で、やがて異変が起き始めました。
偉い人ちゃんが、タオルで顔を拭いた後のこと。
そのタオルを見て――固まりました。
「お姉さん、なんで手ぬぐい――真っ黒です?」
「わきゃ~! お姉さんなんて、良い子さ~。……それはそれとして、なんでさ~?」
偉い人ちゃんのタオルが、真っ黒だったのです。
さっきまでは、白かったのに……。
偉い人ちゃんも、首を傾げました。
「あえ? と言うか……顔も真っ黒です?」
「わきゃ?」
「全身、黒くなってきてるさ~?」
「……わきゃ?」
やがて、偉い人ちゃんの体に起きた異変が、他の人にもはっきりと見えるようになりました。
そう、偉い人ちゃんの体が――真っ黒に変化してしまったのです!
「ち、ちょっと鏡で見てみるさ~!」
慌てて偉い人ちゃんはサウナ室から飛び出し、洗い場へ。
そこにある鏡を覗き込んでみれば――真っ黒。
まるで墨を頭からかぶったような状態でした。
「わわわわっきゃああああ!」
ようやく自分の姿を認識して、偉い人ちゃん大慌て!
黒しっぽをぷるぷるさせて、うろたえちゃいます。
「う、うち、どうなっちゃうさ~!」
真っ黒偉い人ちゃん、洗い場の所であわあわと右往左往。
一体彼女に、何が起きているのでしょうか――。
◇
サウナ入浴中、マイスターがなんかおかしな事になっていた。
まるで墨をかぶったかのように黒くなってしまったのだ。
「なんぞこれ?」
「めっちゃくろいよな」
「いっつも、へんなもんばっかくってるから」
「それな」
しかしマイスターがおかしな状態になっても、エルフたちは慌てない。
彼が変なのはいつものことなので「またなんかやらかしたな」ぐらいにしか考えていないのだ。
「お体は大丈夫ですか?」
「あ~、なんかだるいじゃん?」
しかし、今回は体がだるいと言う。これはちょっと、よく観察しないと。
と言うことで、マイスターをよく見てみると……。
「あ、これ黒い汗が出てるみたいですよ」
「そうなの?」
「試しに洗ってみましょう」
「おう」
よく見ると、黒いのは汗のようだった。確認してみるためにも、みんなでよってたかってマイスターを洗ってみる。
すると――。
「ほら、落ちました」
「すっきりした」
案の定、真っ黒な部分が洗い流されて綺麗になった。
「あれ? でもまたくろくなったぞ」
「まじで」
しかし、すぐにまた黒い汗が出てきてしまう。
ただ、若干前より薄くはなっているね。
汗をかけばかくほど、黒さは薄くなっていくようだ。
それなら、こうしよう。
「水分補給をしっかりして、普通に戻るまで汗をかきますか」
「そうすべ」
「ほんじゃ、またサウナいくべ~」
湯船には浸かれないので、サウナで汗をかかせては、洗ったりを繰り返す。
そうして一時間ほど、マイスターの様子を見つつお風呂に入って。
最終的には――。
「やあみんな。なんだか、うまれかわった、きぶんだよ」
「だれだおまえ」
「しらないひと」
「なんでさわやかなひとに、なってるん?」
――きれいなマイスターが出来上がった!?
◇
お風呂を上がって、大浴場入り口前の自販機で一休み。
コーヒー牛乳をんぐんぐと飲んで、湯冷まし中だ。
「ははは、みんなどうしたんだい? ぼくはいつものぼくだよ」
「あきらかに、いつもそうではなかった」
「ほんとだれ? おまえ」
「なんだか、キラキラしてんぞ」
それと黒マイスターを洗い続けたら、きれいなマイスターになった。
少女漫画に出てくるような、さわやか王子様って感じだ。
おまけに性格もなんだか、さわやかになっている。
……誰この人?
「あ、大志さんも上がりましたか」
「良い湯だったです~」
(ぽっかぽか~)
きれいなマイスターを別人扱いしていると、ユキちゃんたちも出てきた。
みんなもほっかほかだね。
「やあみんな、よいおふろだったかな?」
「タイシ、このひとだれです?」
「えっと……初めまして?」
そして二人に話しかけたマイスターを見て、知らない人と認識。
だよね、変わりすぎだよ。なんで爽やかになってんのと。
ひとまず、男湯で起きた現象について説明しておく。
「――こんな事があってさ」
「あえ? それって……」
「同じよね、ハナちゃん」
「あい~」
説明したら、ハナちゃんとユキちゃんがまん丸お目々になった。
同じとか言っているけど、どう言うことだろう?
「ねえ、そっちでも何か起きたの?」
「あい~、たいへんだったです~」
「何が起きたかは、もうすぐ分かると思います。少々お待ちを」
どうやら、女湯でも何か事件が起きたらしい。
何が起きたかは、すぐに分かるという。
それでは、待ってみよう。
「あったまったわね~」
「おはだぷるぷるとか、すてき」
「こんにちは、おじょうさまがた。よいおふろだったかな?」
「だれかしら~?」
「べつじんみたいにさわやかとか、ふるえる」
待っている間、きれいなマイスターが腕グキさんとステキさんに挨拶。
腕グキさんは別人として認識したようだけど、ステキさんはわかったようだ。
あまりのさわやかさぶりに、ぷるぷるしている。
そんな事件がありつつも、そのまま待っていると――。
「わきゃん」
なんだか、つやっつやお姫様なドワーフちゃんが出てきた。
すっぴんぷるぷるお肌で、しっぽを抱えてうふうふと、ご機嫌な感じ。
でも、誰このひと? 記憶にないのだけど。
「あ、大志さんあの方ですよ、あの方」
「みるです~」
どうやらあの方が、見ればわかるというお話の対象らしい。
どれどれ、よく見てみよう……て。ドワーフちゃんなのに、身長は百六十センチくらいだ。
ということは、この人――偉い人ちゃんじゃないか!
「わきゃ~ん」
そのお姿は、いつもの猫背とは違ってしゃんと背筋が伸びて。
お化粧で隠されていないお肌は、十代のぷるぷるお肌のようなツヤ。
おまけに――。
「……しっぽが、緑になっている」
「わきゃん」
「そうです~!」
「大志さん、色が、色が変わったんですよ!」
偉い人ちゃんの青かったしっぽ。ドワーフちゃんにとっては不吉だった、あの色。
それが……緑に変わっていた。
「わきゃきゃ~ん」
つやつやお姫様の偉い人ちゃんは、その緑しっぽを抱えながらほっくほく笑顔。
嬉しくて、嬉しくてたまらないのが良くわかる。
これ、一体何が起きたの!?
マイスターがきれいになってしまった




