第三十話 がんばれキツネさん
にょきにょきしたり、お昼をご馳走になったり。
観光もして、海遊びもたっぷり楽しんだ。
おまけに沈没船からお宝も引き揚げたりして、ニライカナイをとことん満喫中。
今は拠点のすてきビーチに戻って、のんびりした時間を過ごしている。
「ぴゅい~」
「ぴゅいぴゅい」
「ぎゃうぎゃう」
「クワワ~」
海竜ちゃんとペンギンちゃんが、スナメリちゃんの群れと仲良く元気に泳ぎ回る姿を眺めながら、砂浜で一休み。
……そういや、スナメリが居るのは海が豊かな証拠って聞いたことがある。
神秘の領域であるニライカナイは、豊饒なる海をたたえた楽園なんだろうね。
「わきゃ~! このおさけ、やばいほどおいしいさ~!」
「海底で長いこと熟成されていましたので、濃厚ですな! 芳醇とかそういうレベルではないほど香り高い」
「キジムナー火を入れると、さらに美味しくなるねー」
そして隣では、偉い人ちゃんとヌシさん、あとガイドキジムナーさんたちが海中熟成古酒を味見中だ。
貴重なお酒なのでちびちびと大事に飲んでいる。
そういや海中だと、お酒は陸上より早く熟成するらしいね。
せっかくなので、ニライカナイでもそう言う事業やってみたらどうだろうか。
「海中熟成酒とか、試しにやってみるのも良いかもですね。容器と場所の問題はあるかもですが」
「そうですな。このようなえもいわれぬ美酒になるのであれば、試したくはなります」
「難しそうだけどね-。でもこれを飲んじゃうとなー」
提案してみると、ヌシさんもキジムナーさんたちも乗り気だ。
すっかり海中熟成酒の虜になっているね。
ただまあ、言うとおり難しいとは思う。
簡単にできないから、誰もやってないんだよね。
「わきゃ? こっちのおさけは、どうやってねかせてるさ~?」
おや? 俺たちの話を聞いて、偉い人ちゃんからお問い合わせが来たぞ?
どうやって寝かせるかと言えば、倉庫に置いておくだけだけど。
そうか、偉い人ちゃんは村での醸造に参加はしていなかったから、こっちの技法は知らないんだ。
ちたまではどうやっているか、軽く説明しておこう。
「お酒を木の樽や甕とかに入れて、倉庫とかでほっとくだけですよ」
「わきゃ? それだと、ばしょとってこまらないさ~?」
「まあ困ることも多いですね。倉庫だって大きくするにはお金がかかりますから」
こういう制限があるから、熟成酒を作るのは大変だよね。
寝かせる類いのお酒は、場所はとるしすぐに出荷できないし需要予測なんて無理だしで、超効率悪い事業になってしまう。
それでも長いこと事業を続けられているメーカーは、正直凄いなといつも思う。
「おそとでねかせると、じかんかかってしょうがないさ~?」
「そのへんは我慢して、なんとか熟成させてますね。なんせ海中で熟成させるのは大変なので」
海中熟成酒を事業化している業者さんもあるけど、大規模にはやっていないね。
その辺のお店で気軽に買えるようなものではないかな。
「そうなのさ~? うちらは、みずうみのなかでやってるさ~」
「え?」
おや? 今なんか気になることを聞いた。
湖の中でやっている?
「えっと……湖の中で、お酒を熟成しているのですか?」
「そこいがいに、おきばがないのさ~」
「置き場が無い……そのお話、もう少し詳しく聞いてもよろしいでしょうか?」
「もちろんさ~」
ということで、しっぽドワーフちゃんたちの酒造話を偉い人ちゃんに教えて貰った。
ドワーフィンでは川がよく氾濫するので、地上に置いておくことはできない。
しかしツリーハウスは大きさや重量に限界があるので、家にも置いておけない。
じゃあどこに保管しておくかと言えば、湖に沈めるのだという。
そこなら流れもそれなりに穏やかだし、置き場に困らない。
そして――水中で保管するための容器もあると言う。
アダマン製の密閉容器らしい。
「……その容器って、現物はありますか?」
「さすがにそれは、もってないさ~。ほかのこたちも、ないとおもうさ~」
残念だけど、今は手持ちが無いっぽいね。
これはまた村に帰ってから聞いてみることにするか。
「村に帰ったときにでも、詳しくお話を聞かせて頂けますか?」
「もちろんさ~」
現物を見ないことには、性能もわからないからね。
これは作って貰って確かめるしかないだろう。
時間がかかりそうだから、ひとまず置いとくとするかな。
「タイシタイシ~、いっしょにあそぶです~」
ドワーフちゃん酒熟成の提案をペンディングにしたところで、ハナちゃんから遊びのお誘いだ。
浮き輪を抱えているから、海遊びかな?
「ハナちゃん、海遊びの提案かな?」
「あい~! いっしょにおよぐです~」
問いかけると、ハナちゃんキャッキャと浮き輪を掲げた。
それじゃあ、ユキちゃんも誘ってのんびり遊びましょう!
「ユキちゃんも一緒にどうかな?」
「もちろんです!」
ということで三人で海へ繰り出し、まったり海遊びを始める。
ハナちゃんを浮き輪に乗せて、ユキちゃんは俺の背中。
「うふ~。うみあそび、たのしいです~」
「こういうゆっくりしたのも、良いよね」
「ですね」
そうしてのんびりちゃぷちゃぷと、海に浮かんでいると――。
「ぴゅい~」
「ぎゃうぎゃう~」
「クワックワ~」
(ども~)
動物たちが寄ってきて、一緒に泳ぎ始める。
スナメリちゃんの背中には、神輿が乗っかってキャッキャしているね。
神様も動物たちと遊んで、思いっきり海を楽しんでいるようで何よりだ。
「おねえさん、こっちさ~」
「い、いまそっちにいくさ~」
動物たちに続いて、ミタちゃんが泳いでやってきた。
偉い人ちゃんは、カヌーでよたよたと旋回をしている。
まっすぐ進めないのね……。
「わきゃっ! こぐやつがながされたさ~」
そして手を滑らしてオールをパージ。
推進力および方向転換の手段を失ったカヌーは、そのまま流されていく。
「あや~、なんだかそっちだけ、ながれがはやいです?」
「わ、わきゃ~……うち、このままさよならするさ~?」
なすすべも無く流されるカヌーの上で、偉い人ちゃんうろたえる。青しっぽもぷるっぷるだ。
その様子は大変可愛らしいので、ちょっと眺めよう。
「わわわきゃ~」
「今そっちに行きますね」
ただまあ、あまり眺めていると可哀そうなので、さくっと泳いでカヌーを捕まえる。
あとついでにオールも回収だ。
「タイシさん、たすかったさ~」
救助されてわきゃわきゃ喜ぶ偉い人ちゃんだけど、とことん運動しない人である。
とまあなし崩し的に大所帯になり、みんなで楽しく海遊びとなった。
「タイシタイシ~、すもぐりするです~」
「よーし、綺麗なお魚見よう」
「あい~」
「あ、こっちにたくさん泳いでますよ」
「うちも、みてみたいさ~」
(わたしも~)
珊瑚礁に暮らす熱帯魚を観賞したり。
ちなみに偉い人ちゃんは素潜りも苦手だったので、抱えて潜った。
これも接待だからね。甘やかしちゃうよ!
「なあなあ、このかいって、おいしそうじゃん?」
「それは毒があるうえ、チクっと刺してくるやつだよー」
「おわあああああ!」
「だからいったのに」
「あぶないわ~」
「ふるえる」
マイスターは相変わらず毒に目が無かったり。
「わきゃ~、このおさけ、さいこうさ~」
「のうこうなかおりさ~」
「すてきさ~」
「とっておきの、泡盛だよー」
砂浜では、ドワーフちゃんたちが酒盛りを始めていたり。
「ちたまのうみって、すげえな~」
「おれのフネ、だいかつやくなのだ」
「ゆめみたいだ~」
エルフたちがほっくほく笑顔で、海に漂っていたり。
「かたをもみますよ」
「おれはあしを」
「あしつぼ」
「おお! これは効きますな!」
お爺ちゃんキジムナーさんが、マッチョトリプルヒーリングを受けていたり。
なんだか背筋がシャキッとしてた。効くでしょう、それ。
とまあとっても楽しい、南国ビーチリゾートとなった。
しかし楽しい時間には終わりが来るというもの。
「あ、そろそろ夕方だね。いったん砂浜に戻ろうか」
「そうするです~」
「名残惜しいですね……」
散々遊んで、時間はもう夕方。ホテルに戻る時間が近づいてきた。
名残惜しさを感じつつも、砂浜へと戻る。
そしたらですね。
「おっきなやつ、つくったよ! つくったよ!」
「これならながされないね! ながされない!」
「かんぺき~」
妖精きんぐだむに、巨大な砂の建造物が出来上がっているぞ!?
さっきまでなかったのに。
高さ二メートルもあるじゃないか!
「あ、ながされたです?」
「これでもだめだったね! はかないね!」
「だいはくりょくだね! ずどどどっていってるね!」
「しっぱいしたやつ~?」
と思ったら即座に流された。
その質量で流されるとか、何をどうしたら可能なのだろうか。
わからない、妖精さんの技術力がわからない……。
◇
「それではみなさん、もう少ししたら帰還します」
「なごりおしいな~」
「さいこうだったわ~」
「じかんがたつのはやすぎで、ふるえる」
良い時間になったので、みんなに帰還の準備をしてもらう。
とは言え、カヌーに乗りこむだけなのであっさりしたものだ。
あと三十分したら、ホテルに帰ろう。
それまでは、この美しい夕日を眺めていようかな?
「あ、あの……。大志さんちょっとよろしいですか?」
と思っていたら、ユキちゃんがおずおずと話しかけてきた。
なんでございましょう?
「ユキちゃんどうしたの?」
「え、ええとですね……」
そのままもじもじとしてしまって、後が続かない。
どしたんだろうね?
急ぐことも無いので、次の言葉を待っていると――。
「タイシタイシ~、いっしょにゆうひ、みるですよ~」
(すてきなふうけい~)
「え? あ、あの?」
神輿と一緒にハナちゃんがぽてぽてとやってきて、夕日を見たいとお誘いが来た。
そうだね、こんな美しい砂浜で夕日を見るのも、オツなものだね。
……何故かユキちゃんはおろおろしはじめたけど。どうしたのかな?
「あっちからみると、さいこうのふうけいです~」
(こっち~)
「え? え?」
そうしてハナちゃんと神輿が移動を始めたので、後に続こう。
――とその前に。
「じゃあユキちゃんも一緒に行こうか」
「え?」
せっかくだからユキちゃんも一緒に夕日を見よう。
手を掴んで、ハナちゃんたちが歩き出した後を追う。
「お、おおう……これはコレで」
「どしたの?」
「あ、ええと……夕日が綺麗ですね!」
「そうだね。すっごくロマンチックだよ」
「ですね!」
良くわからないけど、ご機嫌キツネさん、耳しっぽがふあっさあ! と出た。
しっぽが五本、最高記録だね! 毛並みが素晴らしいよ!
でもそのうち三本にはねっ毛があるね。気になるね!
「ふ、ふふふふ……。これよ、これが求めていたもの……」
またまた良くわからないけど、そのまま二人で手を繋いで歩いていき、ハナちゃんたちと合流だ。
「タイシ~、ここからみるゆうひ、さいこうです~!」
(すてき~!)
「確かにそうだね! これは絶景かな!」
「ふふふふ……」
ビーチの真ん中へん、そこはニライカナイの島々と沈む夕日が同時に一望できる、最高のロケーションだった。
しばし三人で、その光景を見つめる。
赤く輝く太陽が海と砂浜をオレンジ色に染め上げ、ゆらゆら揺れる海面に映し出される。
背景には、そこだけ赤く染まらない虹の架け橋が輝き。
優しい波の音が、周囲を包み込む。
素晴らしい光景、素晴らしいシチュエーション。
ニライカナイに来て、本当に良かった。
「きれいです~……」
(うっとり~)
「わぁ……」
ハナちゃんと神輿、そしてユキちゃんもこれにはうっとりだね。
そうして四人で、しばし神秘の夕日を見つめて。
素敵な素敵な、一日を過ごせた。
「しゃしん! しゃしんとりますよ! はいわらって~!」
「あや~、おかあさんはりきってるです~」
「カナは村に帰ったら、ここの絵を描くんだって」
……まあ、カナさんはこの風景もバッチリ写真に納めているけど。
プロカメラマンみたいな感じで、夕焼けや俺たちをパッシャパシャと撮影だ。
絵描きの血が騒ぎまくっているね……。
とまあ、それはそれとして。
「うふふ~。よいおもいで、できたです~」
(たのしかった~)
「夢が叶いました……」
ふと気づくと、いつの間にかハナちゃんも手を握ってきていて、神輿は何故か頭の上。
左にユキちゃん、右にハナちゃん。上に神輿の構成だね。
四人仲良く、夕日を見つめる。
「さて、名残惜しいけど、そろそろ戻ろうか」
「あい~」
(かえる~)
「ふふふふ……」
このままずっと見つめていたいけど、暗くなる前にホテルに帰らないと。
夜の海をカヌーで渡るとか、怖いのだ。オバケでそうだからね!
「じゃあこのまま帰ろうか」
「なかよしです~」
「ふふふ……」
三人で手を繋いだまま、あと神輿を頭の上にのせたまま集合場所へと戻る。
ハナちゃんもユキちゃんも、こぼれんばかりの笑顔だね。
神輿もキャッキャとしているので、良い思い出が作れたようだ。
よきかなよきかな。
さて、それじゃあホテルに戻ろうか!
「フフフ……これでまた一歩」
あと耳しっぽさん、若干オーラが黒いのはなぜ?
◇
「このたびは、お力添えありがとうございました」
「助かったよー」
「また来てねー」
「歓迎するよー」
ヌシさんや、ニライカナイ在住のキジムナーさんたちに見送られ、島を後にする。
これからホテルに戻って、今回の沖縄旅行、最後の夜を楽しもう!
「たのしかったです~」
「こちらこそお世話になりました。またご連絡します」
「ありがと~」
「おさけ、おいしかったさ~」
「すてきなところだったね! おもしろかったね!」
カヌーを漕ぎながら、みんなも手を振り返す。
この観光はご満足頂けたようで、全員ほっくほく笑顔だね。
というかお土産も沢山もらったので、そっちの意味でもほっくほくだ。
「いや~、ニライカナイって凄いところでした……」
「良いところだったでしょ?」
「ばぶ~」
そして里帰りをした果物農家さんたちも、ほっくほく笑顔だ。
旦那さんは、まるで夢でも見ていたかのような顔だけど。
まあ普通の人なら、びっくりするよね。
「ほい、あの霧を抜けたらすぐにホテルのちかくだよー」
みんなでニライカナイに浸っているうちに、領域の境界へと到達していた。
先導するキジムナーさんが指さす先は、夕日に染まったオレンジ色の霧。
なかなかどうして、幻想的だ。
「ぴゅい~ぴゅい~」
「ぴゅい」
そして領域ギリギリまで、スナメリちゃんがお見送りしてくれる。
くるくると俺たちの周りを泳いで、とってもかわいらしい。
「見送りありがとね。みんなも元気で」
「ぴゅい」
「ぴゅ~い」
スナメリちゃんにも手を振って、しばし別れを惜しんだ後。
流れに任せるまま、霧の境界へ突入。
ひんやりした涼しい空気のなかを進んで、やがて――。
「……もどったです?」
「そうだね、ホテル前の海に帰ってきたよ」
「なんだか夢みたいでしたね……」
領域を抜けた先は、ホテル前の海。遠目に俺たちが泊まっている拠点が見えていた。
後ろを振り返っても、もうそこにニライカナイは存在しない。
ただただ広い、夕焼けに染まった大海原があるだけだった。
「ふしぎなところだったな~」
「たのしかった~」
「すてきなおもいで」
「ゆめをみている、みたいだったさ~」
「なぞだね! なぞ!」
みんなも後ろを振り返り、もうそこには存在しないニライカナイを心に抱く。
ほんの一時だけ体験できた、幻がかつてそこにあったのだ。
「電話すれば、いつでも行けるよー」
「来たくなったら、連絡してねー」
……幻のニライカナイ、というシチュエーションに浸っていたけど、電話一本で行けるそうだ。
わりと身近で気軽な幻でござった。
まあ通販しているくらいだからね! そりゃそうだよね。
「今日も夕食ビュッフェ参加するから、よろしくねー」
「いっぱいお話しようよー」
「自腹で参加するよー」
色々台無しになったところで、キジムナーさんたちから次のご予定が。
今日も一緒に夕食をしてくれるようで、賑やかになるね。
みんなで楽しく、お食事しましょうだ。
「あ、ほてるがみえてきたです~」
「あっというま」
「らくちんさ~」
そうこうしているうちに、ホテル前ビーチへ到着。
ほんとあっさりだね。
さてさて、それじゃあホテルに帰って、温泉に入って夕食に備えよう!
「ではみなさん、夕食前にひとっ風呂浴びましょうか」
「そうするです~」
「さうな、はいるさ~」
「おふろだね! ぽっかぽかだね!」
みんなそれで良いようで、キャッキャとホテルに入っていく。
「わきゃ~、なんだかからだが、かるいかんじがするさ~」
「そうなのさ~?」
「そうなのさ~」
偉い人ちゃんはなんだか調子が良いようで、鼻歌を歌いながらてこてこと歩いている。
ミタちゃんの問いかけにも、元気に答えているね。
キジムナー火の効果が出ているなら、良いのだけど。
「あ~。なんか、からだがおもいじゃん?」
「おまえがちょうしいいときって、あったっけ?」
「いっつもだるそうよね?」
「そうよね~」
逆にマイスターはなんかだるそうだ。
しかしマッチョさんやステキさん、腕グキさんが揃って言うように、彼はいつでもだるそうだ。
……誤差かな?
「ふふふ……ちょっと予定とは違ったけど、あれはあれで良かったわ……」
そんなみなさんに混じって、ふっさふさぁ耳しっぽさんは足取り軽くロビーを歩いていく。
黒いオーラは見えないから、一安心だ。
昨日はお疲れな感じだったけど、キツネさん今日は元気いっぱいだね!
と、ユキちゃんの様子に安心しながら、ロビーを歩いていくと……。
「あえ? タイシこれなんです?」
「……なんだか、特設コーナーが出来てますね」
ハナちゃんが何かを発見した。
ユキちゃんによると、特設コーナーらしいけど。朝はそんなの、なかったよね?
ちょっと見てみよう。
「どれどれ……ん? なんだこれ」
「『キジムナーまんじゅう』と書かれています」
(おそなえもの?)
果たして、特設コーナーはキジムナーグッズが売られていた。
キーホルダーにおまんじゅうに、おせんべいにポストカード。
ぬいぐるみに、キジムナーのイラストが描かれたお酒とかも。
支配人さん――キジムナーさんグッズで商売始めてる!?
しかも良心的価格!
「なんだか、有名になったよー」
「面白いこと、起きてるなー」
「ここの支配人さん、面白い人かもねー」
そしてこのグッズをみたキジムナーさんたち、なんだかキャッキャしている。
自分たちのことを好意的に捉えられていて、嬉しいようだ。
そりゃそうだよね。友好的な目で見られたら、まんざらでもないのは普通のこと。
まあこの調子で、キジムナーさんたちとの友好が深まれば良いかもだ。
「あえ? なんでペンギンさんのぬいぐるみが、ここにあるです?」
「クワ?」
「大志さん……キジムナーさんのぬいぐるみの中に、赤いしっぽの生えた子がいますよ」
「わきゃ?」
……若干、間違ったキジムナー像が伝わっているようだけど。
気にしないことにしよう。
耳しっぽさんちょっと報われた