表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第二十章 未来へと繋がる、色
313/448

第三十話 がんばれキツネさん


 にょきにょきしたり、お昼をご馳走になったり。

 観光もして、海遊びもたっぷり楽しんだ。

 おまけに沈没船からお宝も引き揚げたりして、ニライカナイをとことん満喫中。

 今は拠点のすてきビーチに戻って、のんびりした時間を過ごしている。


「ぴゅい~」

「ぴゅいぴゅい」

「ぎゃうぎゃう」

「クワワ~」


 海竜ちゃんとペンギンちゃんが、スナメリちゃんの群れと仲良く元気に泳ぎ回る姿を眺めながら、砂浜で一休み。

 ……そういや、スナメリが居るのは海が豊かな証拠って聞いたことがある。

 神秘の領域であるニライカナイは、豊饒なる海をたたえた楽園なんだろうね。


「わきゃ~! このおさけ、やばいほどおいしいさ~!」

「海底で長いこと熟成されていましたので、濃厚ですな! 芳醇とかそういうレベルではないほど香り高い」

「キジムナー火を入れると、さらに美味しくなるねー」


 そして隣では、偉い人ちゃんとヌシさん、あとガイドキジムナーさんたちが海中熟成古酒を味見中だ。

 貴重なお酒なのでちびちびと大事に飲んでいる。

 そういや海中だと、お酒は陸上より早く熟成するらしいね。

 せっかくなので、ニライカナイでもそう言う事業やってみたらどうだろうか。


「海中熟成酒とか、試しにやってみるのも良いかもですね。容器と場所の問題はあるかもですが」

「そうですな。このようなえもいわれぬ美酒になるのであれば、試したくはなります」

「難しそうだけどね-。でもこれを飲んじゃうとなー」


 提案してみると、ヌシさんもキジムナーさんたちも乗り気だ。

 すっかり海中熟成酒の虜になっているね。

 ただまあ、言うとおり難しいとは思う。

 簡単にできないから、誰もやってないんだよね。


「わきゃ? こっちのおさけは、どうやってねかせてるさ~?」


 おや? 俺たちの話を聞いて、偉い人ちゃんからお問い合わせが来たぞ?

 どうやって寝かせるかと言えば、倉庫に置いておくだけだけど。

 そうか、偉い人ちゃんは村での醸造に参加はしていなかったから、こっちの技法は知らないんだ。

 ちたまではどうやっているか、軽く説明しておこう。


「お酒を木の樽やかめとかに入れて、倉庫とかでほっとくだけですよ」

「わきゃ? それだと、ばしょとってこまらないさ~?」

「まあ困ることも多いですね。倉庫だって大きくするにはお金がかかりますから」


 こういう制限があるから、熟成酒を作るのは大変だよね。

 寝かせる類いのお酒は、場所はとるしすぐに出荷できないし需要予測なんて無理だしで、超効率悪い事業になってしまう。

 それでも長いこと事業を続けられているメーカーは、正直凄いなといつも思う。


「おそとでねかせると、じかんかかってしょうがないさ~?」

「そのへんは我慢して、なんとか熟成させてますね。なんせ海中で熟成させるのは大変なので」


 海中熟成酒を事業化している業者さんもあるけど、大規模にはやっていないね。

 その辺のお店で気軽に買えるようなものではないかな。


「そうなのさ~? うちらは、みずうみのなかでやってるさ~」

「え?」


 おや? 今なんか気になることを聞いた。

 湖の中でやっている?


「えっと……湖の中で、お酒を熟成しているのですか?」

「そこいがいに、おきばがないのさ~」

「置き場が無い……そのお話、もう少し詳しく聞いてもよろしいでしょうか?」

「もちろんさ~」


 ということで、しっぽドワーフちゃんたちの酒造話を偉い人ちゃんに教えて貰った。

 ドワーフィンでは川がよく氾濫するので、地上に置いておくことはできない。

 しかしツリーハウスは大きさや重量に限界があるので、家にも置いておけない。

 じゃあどこに保管しておくかと言えば、湖に沈めるのだという。

 そこなら流れもそれなりに穏やかだし、置き場に困らない。


 そして――水中で保管するための容器もあると言う。

 アダマン製の密閉容器らしい。


「……その容器って、現物はありますか?」

「さすがにそれは、もってないさ~。ほかのこたちも、ないとおもうさ~」


 残念だけど、今は手持ちが無いっぽいね。

 これはまた村に帰ってから聞いてみることにするか。


「村に帰ったときにでも、詳しくお話を聞かせて頂けますか?」

「もちろんさ~」


 現物を見ないことには、性能もわからないからね。

 これは作って貰って確かめるしかないだろう。

 時間がかかりそうだから、ひとまず置いとくとするかな。


「タイシタイシ~、いっしょにあそぶです~」


 ドワーフちゃん酒熟成の提案をペンディングにしたところで、ハナちゃんから遊びのお誘いだ。

 浮き輪を抱えているから、海遊びかな?


「ハナちゃん、海遊びの提案かな?」

「あい~! いっしょにおよぐです~」


 問いかけると、ハナちゃんキャッキャと浮き輪を掲げた。

 それじゃあ、ユキちゃんも誘ってのんびり遊びましょう!


「ユキちゃんも一緒にどうかな?」

「もちろんです!」


 ということで三人で海へ繰り出し、まったり海遊びを始める。

 ハナちゃんを浮き輪に乗せて、ユキちゃんは俺の背中。


「うふ~。うみあそび、たのしいです~」

「こういうゆっくりしたのも、良いよね」

「ですね」


 そうしてのんびりちゃぷちゃぷと、海に浮かんでいると――。


「ぴゅい~」

「ぎゃうぎゃう~」

「クワックワ~」

(ども~)


 動物たちが寄ってきて、一緒に泳ぎ始める。

 スナメリちゃんの背中には、神輿が乗っかってキャッキャしているね。

 神様も動物たちと遊んで、思いっきり海を楽しんでいるようで何よりだ。


「おねえさん、こっちさ~」

「い、いまそっちにいくさ~」


 動物たちに続いて、ミタちゃんが泳いでやってきた。

 偉い人ちゃんは、カヌーでよたよたと旋回をしている。

 まっすぐ進めないのね……。


「わきゃっ! こぐやつがながされたさ~」


 そして手を滑らしてオールをパージ。

 推進力および方向転換の手段を失ったカヌーは、そのまま流されていく。


「あや~、なんだかそっちだけ、ながれがはやいです?」

「わ、わきゃ~……うち、このままさよならするさ~?」


 なすすべも無く流されるカヌーの上で、偉い人ちゃんうろたえる。青しっぽもぷるっぷるだ。

 その様子は大変可愛らしいので、ちょっと眺めよう。


「わわわきゃ~」

「今そっちに行きますね」


 ただまあ、あまり眺めていると可哀そうなので、さくっと泳いでカヌーを捕まえる。

 あとついでにオールも回収だ。


「タイシさん、たすかったさ~」


 救助されてわきゃわきゃ喜ぶ偉い人ちゃんだけど、とことん運動しない人である。

 とまあなし崩し的に大所帯になり、みんなで楽しく海遊びとなった。


「タイシタイシ~、すもぐりするです~」

「よーし、綺麗なお魚見よう」

「あい~」

「あ、こっちにたくさん泳いでますよ」

「うちも、みてみたいさ~」

(わたしも~)


 珊瑚礁に暮らす熱帯魚を観賞したり。

 ちなみに偉い人ちゃんは素潜りも苦手だったので、抱えて潜った。

 これも接待だからね。甘やかしちゃうよ!


「なあなあ、このかいって、おいしそうじゃん?」

「それは毒があるうえ、チクっと刺してくるやつだよー」

「おわあああああ!」

「だからいったのに」

「あぶないわ~」

「ふるえる」


 マイスターは相変わらず毒に目が無かったり。


「わきゃ~、このおさけ、さいこうさ~」

「のうこうなかおりさ~」

「すてきさ~」

「とっておきの、泡盛だよー」


 砂浜では、ドワーフちゃんたちが酒盛りを始めていたり。


「ちたまのうみって、すげえな~」

「おれのフネ、だいかつやくなのだ」

「ゆめみたいだ~」


 エルフたちがほっくほく笑顔で、海に漂っていたり。


「かたをもみますよ」

「おれはあしを」

「あしつぼ」

「おお! これは効きますな!」


 お爺ちゃんキジムナーさんが、マッチョトリプルヒーリングを受けていたり。

 なんだか背筋がシャキッとしてた。効くでしょう、それ。


 とまあとっても楽しい、南国ビーチリゾートとなった。

 しかし楽しい時間には終わりが来るというもの。


「あ、そろそろ夕方だね。いったん砂浜に戻ろうか」

「そうするです~」

「名残惜しいですね……」


 散々遊んで、時間はもう夕方。ホテルに戻る時間が近づいてきた。

 名残惜しさを感じつつも、砂浜へと戻る。

 そしたらですね。


「おっきなやつ、つくったよ! つくったよ!」

「これならながされないね! ながされない!」

「かんぺき~」


 妖精きんぐだむに、巨大な砂の建造物が出来上がっているぞ!?

 さっきまでなかったのに。

 高さ二メートルもあるじゃないか!


「あ、ながされたです?」

「これでもだめだったね! はかないね!」

「だいはくりょくだね! ずどどどっていってるね!」

「しっぱいしたやつ~?」


 と思ったら即座に流された。

 その質量で流されるとか、何をどうしたら可能なのだろうか。

 わからない、妖精さんの技術力がわからない……。



 ◇



「それではみなさん、もう少ししたら帰還します」

「なごりおしいな~」

「さいこうだったわ~」

「じかんがたつのはやすぎで、ふるえる」


 良い時間になったので、みんなに帰還の準備をしてもらう。

 とは言え、カヌーに乗りこむだけなのであっさりしたものだ。

 あと三十分したら、ホテルに帰ろう。

 それまでは、この美しい夕日を眺めていようかな?


「あ、あの……。大志さんちょっとよろしいですか?」


 と思っていたら、ユキちゃんがおずおずと話しかけてきた。

 なんでございましょう?


「ユキちゃんどうしたの?」

「え、ええとですね……」


 そのままもじもじとしてしまって、後が続かない。

 どしたんだろうね?

 急ぐことも無いので、次の言葉を待っていると――。


「タイシタイシ~、いっしょにゆうひ、みるですよ~」

(すてきなふうけい~)

「え? あ、あの?」


 神輿と一緒にハナちゃんがぽてぽてとやってきて、夕日を見たいとお誘いが来た。

 そうだね、こんな美しい砂浜で夕日を見るのも、オツなものだね。

 ……何故かユキちゃんはおろおろしはじめたけど。どうしたのかな?


「あっちからみると、さいこうのふうけいです~」

(こっち~)

「え? え?」


 そうしてハナちゃんと神輿が移動を始めたので、後に続こう。

 ――とその前に。


「じゃあユキちゃんも一緒に行こうか」

「え?」


 せっかくだからユキちゃんも一緒に夕日を見よう。

 手を掴んで、ハナちゃんたちが歩き出した後を追う。


「お、おおう……これはコレで」

「どしたの?」

「あ、ええと……夕日が綺麗ですね!」

「そうだね。すっごくロマンチックだよ」

「ですね!」


 良くわからないけど、ご機嫌キツネさん、耳しっぽがふあっさあ! と出た。

 しっぽが五本、最高記録だね! 毛並みが素晴らしいよ!

 でもそのうち三本にはねっ毛があるね。気になるね!


「ふ、ふふふふ……。これよ、これが求めていたもの……」


 またまた良くわからないけど、そのまま二人で手を繋いで歩いていき、ハナちゃんたちと合流だ。


「タイシ~、ここからみるゆうひ、さいこうです~!」

(すてき~!)

「確かにそうだね! これは絶景かな!」

「ふふふふ……」


 ビーチの真ん中へん、そこはニライカナイの島々と沈む夕日が同時に一望できる、最高のロケーションだった。

 しばし三人で、その光景を見つめる。


 赤く輝く太陽が海と砂浜をオレンジ色に染め上げ、ゆらゆら揺れる海面に映し出される。

 背景には、そこだけ赤く染まらない虹の架け橋が輝き。

 優しい波の音が、周囲を包み込む。

 素晴らしい光景、素晴らしいシチュエーション。

 ニライカナイに来て、本当に良かった。


「きれいです~……」

(うっとり~)

「わぁ……」


 ハナちゃんと神輿、そしてユキちゃんもこれにはうっとりだね。

 そうして四人で、しばし神秘の夕日を見つめて。

 素敵な素敵な、一日を過ごせた。


「しゃしん! しゃしんとりますよ! はいわらって~!」

「あや~、おかあさんはりきってるです~」

「カナは村に帰ったら、ここの絵を描くんだって」


 ……まあ、カナさんはこの風景もバッチリ写真に納めているけど。

 プロカメラマンみたいな感じで、夕焼けや俺たちをパッシャパシャと撮影だ。

 絵描きの血が騒ぎまくっているね……。

 とまあ、それはそれとして。


「うふふ~。よいおもいで、できたです~」

(たのしかった~)

「夢が叶いました……」


 ふと気づくと、いつの間にかハナちゃんも手を握ってきていて、神輿は何故か頭の上。

 左にユキちゃん、右にハナちゃん。上に神輿の構成だね。

 四人仲良く、夕日を見つめる。


「さて、名残惜しいけど、そろそろ戻ろうか」

「あい~」

(かえる~)

「ふふふふ……」


 このままずっと見つめていたいけど、暗くなる前にホテルに帰らないと。

 夜の海をカヌーで渡るとか、怖いのだ。オバケでそうだからね!


「じゃあこのまま帰ろうか」

「なかよしです~」

「ふふふ……」


 三人で手を繋いだまま、あと神輿を頭の上にのせたまま集合場所へと戻る。

 ハナちゃんもユキちゃんも、こぼれんばかりの笑顔だね。

 神輿もキャッキャとしているので、良い思い出が作れたようだ。

 よきかなよきかな。


 さて、それじゃあホテルに戻ろうか!


「フフフ……これでまた一歩」


 あと耳しっぽさん、若干オーラが黒いのはなぜ?



 ◇



「このたびは、お力添えありがとうございました」

「助かったよー」

「また来てねー」

「歓迎するよー」


 ヌシさんや、ニライカナイ在住のキジムナーさんたちに見送られ、島を後にする。

 これからホテルに戻って、今回の沖縄旅行、最後の夜を楽しもう!


「たのしかったです~」

「こちらこそお世話になりました。またご連絡します」

「ありがと~」

「おさけ、おいしかったさ~」

「すてきなところだったね! おもしろかったね!」


 カヌーを漕ぎながら、みんなも手を振り返す。

 この観光はご満足頂けたようで、全員ほっくほく笑顔だね。

 というかお土産も沢山もらったので、そっちの意味でもほっくほくだ。


「いや~、ニライカナイって凄いところでした……」

「良いところだったでしょ?」

「ばぶ~」


 そして里帰りをした果物農家さんたちも、ほっくほく笑顔だ。

 旦那さんは、まるで夢でも見ていたかのような顔だけど。

 まあ普通の人なら、びっくりするよね。


「ほい、あの霧を抜けたらすぐにホテルのちかくだよー」


 みんなでニライカナイに浸っているうちに、領域の境界へと到達していた。

 先導するキジムナーさんが指さす先は、夕日に染まったオレンジ色の霧。

 なかなかどうして、幻想的だ。


「ぴゅい~ぴゅい~」

「ぴゅい」


 そして領域ギリギリまで、スナメリちゃんがお見送りしてくれる。

 くるくると俺たちの周りを泳いで、とってもかわいらしい。


「見送りありがとね。みんなも元気で」

「ぴゅい」

「ぴゅ~い」


 スナメリちゃんにも手を振って、しばし別れを惜しんだ後。

 流れに任せるまま、霧の境界へ突入。

 ひんやりした涼しい空気のなかを進んで、やがて――。


「……もどったです?」

「そうだね、ホテル前の海に帰ってきたよ」

「なんだか夢みたいでしたね……」


 領域を抜けた先は、ホテル前の海。遠目に俺たちが泊まっている拠点が見えていた。

 後ろを振り返っても、もうそこにニライカナイは存在しない。

 ただただ広い、夕焼けに染まった大海原があるだけだった。


「ふしぎなところだったな~」

「たのしかった~」

「すてきなおもいで」

「ゆめをみている、みたいだったさ~」

「なぞだね! なぞ!」


 みんなも後ろを振り返り、もうそこには存在しないニライカナイを心に抱く。

 ほんの一時だけ体験できた、幻がかつてそこにあったのだ。


「電話すれば、いつでも行けるよー」

「来たくなったら、連絡してねー」


 ……幻のニライカナイ、というシチュエーションに浸っていたけど、電話一本で行けるそうだ。

 わりと身近で気軽な幻でござった。

 まあ通販しているくらいだからね! そりゃそうだよね。


「今日も夕食ビュッフェ参加するから、よろしくねー」

「いっぱいお話しようよー」

「自腹で参加するよー」


 色々台無しになったところで、キジムナーさんたちから次のご予定が。

 今日も一緒に夕食をしてくれるようで、賑やかになるね。

 みんなで楽しく、お食事しましょうだ。


「あ、ほてるがみえてきたです~」

「あっというま」

「らくちんさ~」


 そうこうしているうちに、ホテル前ビーチへ到着。

 ほんとあっさりだね。

 さてさて、それじゃあホテルに帰って、温泉に入って夕食に備えよう!


「ではみなさん、夕食前にひとっ風呂浴びましょうか」

「そうするです~」

「さうな、はいるさ~」

「おふろだね! ぽっかぽかだね!」


 みんなそれで良いようで、キャッキャとホテルに入っていく。


「わきゃ~、なんだかからだが、かるいかんじがするさ~」

「そうなのさ~?」

「そうなのさ~」


 偉い人ちゃんはなんだか調子が良いようで、鼻歌を歌いながらてこてこと歩いている。

 ミタちゃんの問いかけにも、元気に答えているね。

 キジムナー火の効果が出ているなら、良いのだけど。


「あ~。なんか、からだがおもいじゃん?」

「おまえがちょうしいいときって、あったっけ?」

「いっつもだるそうよね?」

「そうよね~」


 逆にマイスターはなんかだるそうだ。

 しかしマッチョさんやステキさん、腕グキさんが揃って言うように、彼はいつでもだるそうだ。

 ……誤差かな?


「ふふふ……ちょっと予定とは違ったけど、あれはあれで良かったわ……」


 そんなみなさんに混じって、ふっさふさぁ耳しっぽさんは足取り軽くロビーを歩いていく。

 黒いオーラは見えないから、一安心だ。

 昨日はお疲れな感じだったけど、キツネさん今日は元気いっぱいだね!


 と、ユキちゃんの様子に安心しながら、ロビーを歩いていくと……。


「あえ? タイシこれなんです?」

「……なんだか、特設コーナーが出来てますね」


 ハナちゃんが何かを発見した。

 ユキちゃんによると、特設コーナーらしいけど。朝はそんなの、なかったよね?

 ちょっと見てみよう。


「どれどれ……ん? なんだこれ」

「『キジムナーまんじゅう』と書かれています」

(おそなえもの?)


 果たして、特設コーナーはキジムナーグッズが売られていた。

 キーホルダーにおまんじゅうに、おせんべいにポストカード。

 ぬいぐるみに、キジムナーのイラストが描かれたお酒とかも。


 支配人さん――キジムナーさんグッズで商売始めてる!?

 しかも良心的価格!


「なんだか、有名になったよー」

「面白いこと、起きてるなー」

「ここの支配人さん、面白い人かもねー」


 そしてこのグッズをみたキジムナーさんたち、なんだかキャッキャしている。

 自分たちのことを好意的に捉えられていて、嬉しいようだ。

 そりゃそうだよね。友好的な目で見られたら、まんざらでもないのは普通のこと。

 まあこの調子で、キジムナーさんたちとの友好が深まれば良いかもだ。


「あえ? なんでペンギンさんのぬいぐるみが、ここにあるです?」

「クワ?」

「大志さん……キジムナーさんのぬいぐるみの中に、赤いしっぽの生えた子がいますよ」

「わきゃ?」


 ……若干、間違ったキジムナー像が伝わっているようだけど。

 気にしないことにしよう。


耳しっぽさんちょっと報われた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ