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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第二十章 未来へと繋がる、色
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第二十七話 にょきにょきハザード2


「こちらが、再生して頂きたい地の一つです」

「これは……大変でしたね」

「台風の強さ、見誤ってしまいました……」


 虹をくぐった後、ヌシさんに案内されてやってきた場所は……災害の爪痕がくっきりと残っていた。

 いくつものガジュマルがぽっきりと折れ、横倒しになっていたり。

 かなりの被害が出ているようだ。

 ヌシさんも責任を感じているのか、しょんぼりしてしまう。


「あや~、これはにょきにょきしがい、あるですよ~!」


 しかしその様子を見て、ハナちゃん気合いみなぎっている。

 エルフ耳をぴこぴこさせながら、ぴょいっとにょきり道具を取り出した。

 では早速、にょきにょきフェスティバルを始めよう!


「それではハナハお嬢様、にょきにょき祭りをお願いします」

「あい~! まつりのはじまりです~!」


 祭りの始まりを宣言したハナちゃん、ぽててっと手近なガジュマルの元へ。

 ぽっきり折れちゃってるやつだね。


「にょきにょき~、いいかんじに~のびるです~」


 そしてすぐさま、にょきにょき儀式を始めた。

 ぽわぽわと体が優しく光って、再生の儀が執り行われる。

 すると、折れていたガジュマルの幹から――新芽が育ち始めた!


「お、おお……木が育っていく……」

「にょき~にょき~、のびのびです~」


 そして新芽はどんどん成長し、枝から幹へ、幹から大木へと変化。

 まるで早回し映像を見ているかのごとく、ガジュマルが再生していく。

 ヌシさんはこの様子を、目を丸くして眺めていた。


「にょきったです~」

「こ……これは凄い……」


 やがて再生は終わり、見事なガジュマルの大木がそびえ立つ。

 これにはさすがのヌシさんも、唖然としている。

 まさか、こんなに短時間で再生出来るとは、思っていなかったようだ。


「ハナちゃん、良く出来ました! えらいね~」

「うふ~」


 がんばったご褒美に頭をなでてあげると、ハナちゃんうふうふと喜ぶ。

 まず初めの一歩は、順調に滑り出したね。


「では、つぎもにょきるです~」

「おお……お願い出来ますかな?」

「もちろんです~」


 ヌシさんも、ハナちゃんの実力を認めてくれたようだ。

 目をキラキラさせて、次の再生目標を指さした。


「にょきにょき~、そだつですよ~」

「おお……!」


 そうして、ハナちゃんはご機嫌でにょきりまくる。

 ヌシさんも、大喜びだ。……最初のうちは。


「こっちもにょきにょきです~」

「あ、あれ……育ちすぎでは?」

「さらにこっちもです~」


 ハナちゃんお約束の暴走。

 ここはガジュマルの森だったわけで、木の実はたくさん落ちているわけだ。


「え? もう大体再生は終わって……」

「おまけにこっちもです~」

「あ、ちょっと待って下さい! ちょっと待って!」

「ついでにこっちもにょきにょきです~」

「あ、あああああ……」


 木の実を拾っちゃ育て、育てちゃ拾い。

 ハナハお嬢様のにょきり暴走は、どんどんバイオなハザードを拡大していく。


「せっかくだから、おれらもやっとくか」

「そうするじゃん?」

「きのみ、うえときましょう」


 ハナちゃんの暴走を暖かく見守っていたエルフたちも、つられて木の実を植え始める。

 彼らだって、植物の成長を促進する力はある。

 十数年かかるところを、数年に短縮出来る水準だ。

 エルフたちが植えた木の実も、やがて森になるだろう。時間差ハザードだ。


「やったよー! おうちが増えたねー!」

「もう、住むところ困らないさ~!」

「むしろ、あまりそうな感じだよー」


 そしていつの間にか、このバイオハザードの見物人が現れ始める。

 一緒に来たキジムナーさんたちの他に、この領域に住んでいる現地のキジムナーさんたちもいらっしゃる。

 みなさんワイワイキャッキャと、ガジュマルが育つ様子を見て喜んでいるね。


「にょき~にょき~」

「そ、その辺で! この島はもう十分ですよ! 十分です!」

「あえ? もうだいじょうぶです?」

「え、ええ……大変ありがたいです。ですので、大丈夫ですよ」


 お、ようやくヌシさんが暴走ハナちゃんをストップできた。

 ひとまず、お仕事第一弾は大成功だね!


「いや~……まさかここまで凄いとは」

「自慢の娘ですから」

「しゃしん、とりまくりましたよ」


 ハナちゃんのにょきにょきスキルの凄さを、これでもかと実感したヌシさんだ。

 自分の娘を褒められて? 嬉しいのかヤナさんもカナさんもニッコニコだね。


 でもまだ――お仕事は終わってないですよねえ。

 他にも被害を受けた島が、あるって言ってましたよねえ……。


「では、次の島へ行きましょうか」

「え?」

「にょきるです~」

「……え?」


 このあと、めちゃめちゃバイオハザードした。

 ハナちゃん凄いね!


「けっこう、たくさんうえたな~」

「おっきくそだってね」

「がんばった」


 あと、他のエルフたちが植えたやつも、数年後にえらいことになるだろう。

 これでもう、キジムナーさんたちが家に困ることはないよね。

 今後生まれるであろう新世代の子たちが大人になるころには、良い感じに大住宅地が出来ているはずだ。

 未来への贈り物って感じだよ!



 ◇



 ということで神域にバイオハザードを起こし、お仕事完了。

 わずか二時間の出来事だ。


「なんと言いますか……予想以上でした」

「うふ~」


 ハナちゃんの頭をなでながら、ヌシさんが言う。

 まさかここまでにょきるとは思っていなかったらしく、だいぶ驚いているね。


「これでご依頼された件は完了、と言うことでよろしいでしょうか」

「それはもう! さらにしばらくは、植林の必要もなくなりました。ありがたい事です」

「おっきくそだつといいな~」

「たくさん、うえたじゃん」

「がんばったわ~」


 他のエルフたちが植えた木々の分も、ちゃんと見ていてくれたようだ。

 自分たちの仕事も評価されて、みんなもニッコニコだね。


「大助かりだよー」

「前よりおうちが大きくなって、嬉しいなー」

「おじーたちとも一緒に暮らせますよ、この大きさ」


 肝心の、依頼者キジムナーさんたちは大喜びだ。

 どうやら以前よりもおうちが広くなったらしく、二世帯や三世帯で暮らそうかと思っている人もいるようで。

 一族揃って、助け合いながら暮らせそうだね!


「いやはや、入守さんの家には助けられてばかりで。いずれお礼は必ず」


 締めくくりとして、ヌシさんがお礼を約束してくれた。

 しかし俺はなんもしていない。

 ハナちゃんや他のみなさんが、一生懸命働いてくれたおかげである。

 受け取るのはエルフたち、であるべきだね。


「今回実際に手を動かしたのはこちらの方々ですので、私の力ではありませんよ。お礼なら、あの方々へと言うことで」

「……カミなのに、民と対等な関係、なのですね」

「民と言うより、仲間ですから」


 俺はあの村の君主ではなく、地主ってだけだからね。

 あくまであの地の主役は、そこで暮らす方々だ。

 うちはその地を管理して、お客さんの自立を手助けする存在にすぎない。

 対等な関係が、ちょうど良い。


「なかまだって」

「そういってもらえると、めからあせがでるのだ」

「がんばるわ~」

「そういや、おねがいはされても、めいれいはされたことないじゃん……」


 ……何故かわからないけど、エルフたち号泣。

 いや、最初っからそんな感じの関係だったでしょ。


「ハナたちとタイシ、しましまなかまです~」

「仲間、良い響きだね」

「あい~」


 ハナちゃんとヤナさんはニッコニコだね。

 ひしっと俺の足にしがみついて、ハナちゃんキャッキャだ。

 かわいいなあ。


「まあ色々盛り上がっておられるようですが、無事森も再生されました。これから、みなさんの歓迎会をしたいと思います」


 キャッキャする俺たちをニコニコと見つめながら、ヌシさんから歓迎会の提案が来た。

 おお、なんか楽しそうな催しが始まりそうだぞ。


「ご馳走たくさん用意したよー」

「お魚が好きだって聞いたから、奮発するねー」

「お酒もたくさんだよー」


 そして集まっていたジモティーキジムナーさんたちから、ご馳走があるという情報がもたらされた。

 お昼をご馳走してくれるという話だったけど、思ったより豪華そうな感じ。

 これは盛り上がるぞ!


「ごちそうだって!」

「たのしみだわ~!」

「あまいものあるかな! あまいもの!」

「おさけ! おさけさ~!」

(おそなえもの~!)


 むろんご馳走と聞いて、食いしん坊の村人たちはもう盛り上がっている。

 神輿と妖精さんたちも、ひゅいんひゅいん飛び回って、元気いっぱいだ。


「あと、午後はニライカナイの観光案内もするよー」

「と言っても、観光客が来るような場所でもないから、自然しかないけどねー」

「見所はありますので、楽しめるとは思います」


 そして午後には観光案内もしてくれるようで。

 確かにここは観光客が来られる場所でもないけど、見所はあるっぽい。

 虹の架け橋がある時点でもう外部の人間キャッキャなんだけど、まだまだ素敵な場所もありそうで。

 これは俄然楽しみになってきたぞ!


「と言うわけで、お昼をご馳走になり、午後は観光という予定になりました。みんなで、思いっきりこの地を楽しみましょう!」

「「「わーい!」」」


 みんなにこれからの予定を説明すると、キャッキャとさらにはしゃぐ。

 今日一日、楽しく過ごせそうだね!



 ◇



 歓迎会は、良い感じの広場がある島で行われることになった。

 そこには大勢のキジムナーさんたちが集まっていて、わいわいと料理が運ばれて。

 うちの村人がじゅるりとする中、ヌシさんからの感謝の言葉と共に歓迎会が始まる。


「おさかな! おさかなさ~!」

「この『ひーじゃーじる』ってやつうめえ!」

「ふしぎなくだものだね! あまいね!」


 提供されたお料理を、みんなバクバクと食べていく。

 沖縄料理あり、キジムナーさん独自の料理もありでバリエーション豊富だ。


(おそなえもの~)

「たくさん食べてねー」

「どんどん持ってくるよー」

(わーい!)


 神輿ちゃんは、キジムナーさんたちが次々に持ってくるお料理を食べて、ぴっかぴか光っているね。

 たまに離れた場所のお料理が光って消えていたりもするけど、つまみ食いかな?


「タイシタイシ~、いっしょにおさかな、たべるです~」

「大志さん、ゴーヤチャンプルーもありますよ」


 ご機嫌神輿を見ていたら、ハナちゃんユキちゃんからお誘いが来た。

 二人がお勧めしてくれたのは、でっかい焼き魚とおなじみゴーヤ料理だ。

 せっかくなので、美味しく頂きましょう!


「タイシ~、はい、あ~ん」


 ということでハナちゃんからあ~んしてもらって、焼き魚を食べる。

 魚の種類はよくわかんないのだけど、白身がふわっふわ、あと旨味ぎっしりで美味である。

 塩味が良いアクセントになっていて、けっこうなご馳走だ。

 この塩は……シママースなのかな?


「このお魚、美味しいね!」

「ですです~」


 ハナちゃんもうふうふ笑顔で、お魚をバクバク食べ始める。

 今日はたくさんにょきにょきしたから、お腹ペコペコだったのかも。

 たくさんお食べ。


「こちらのゴーヤチャンプルーも、苦みが抑えられていて美味しいですよ」


 そしてユキちゃんからはゴーヤチャンプルーをお勧めされる。

 謎の圧力により、やっぱりあ~んして食べさせて貰ったところ――。


「あ、確かに苦くない。卵がふわっとしていて、もやしシャキシャキで美味しい」

「ですよね!」


 こちらは塩胡椒で味付けだけど、やっぱり塩が美味しい。

 なんというのだろう、旨味がある感じだ。


「沖縄本島の塩作り、真似したんだよー」

「ヒトはこういうの、得意ですからね」

「手先が器用なんだよなー」


 塩の旨さに感心していると、キジムナーさんから解説を貰った。

 どうやら沖縄本島の塩作りを参考にしているっぽい。

 彼らは彼らで、違う人種である俺たちを評価しているようだ。

 まあそうでなかったら、あれほど頻繁に人と交流する伝承も出てこないよね。


「このおさかなのにもの、おいしいさ~」

「あわもりと、よくあうさ~」

「それは、エーグアーのマース煮だよー」


 こっちの塩が美味しいのは、味付けが塩主体だからかもしれないな。

 醤油で甘辛く煮たものではなく、塩と泡盛が味付けに使われている。


「あら、このお魚はバター焼きなのですね」

「ニンニクで味付けしたのも~ありますよ~」


 ユキちゃんが焼き魚を食べてふむふむしているけど、こっちのお魚料理はなかなか面白い。

 お魚料理とはこう! という常識がまた、違うのだ。味付けが自由というか。


「いらぶちゃーのお刺身もあるよー」

「……青いですね」


 あとは皮の色が青くて南国風のお魚も。これは中部地方じゃ食べられない面白いお魚だ。

 食べてみれば身は淡白でコリコリしていて、なかなか美味しい。


「あり? これってダメなやつじゃなかったっけ?」


 ……そしてマイスターが、俺が食べた後にそんなことを言う。

 そういえば、昨日高橋さんとわーきゃー毒のあるやつ祭りをしてたな。

 出来れば、食べる前に言って欲しかったのだけど……。


「ちゃんと気をつけて捌けば、大丈夫だよー」

「素人は手を出さない方が良いかもねー」

「お店でも売ってるやつだからねー」


 マイスターのご指摘に、キジムナーさんが大丈夫と教えてくれた。

 ああよかった。よくよく考えてみれば、そんな危ないやつ歓迎会で出さないよね。


 とまあ色々ありつつ、楽しく豪華なお昼を楽しんでいく。


「島の料理は、お口に合いましたでしょうか?」


 しばらく食べまくっていると、ヌシさんが様子を見に訪れる。

 ホストだからか、色々気を配っているようだ。

 美味しく食べている旨、伝えよう。


「もちろんですよ。長野では見られない珍しい味付けと料理ばかりで、目移りします」

「おいしいです~」

「それはそれは、良かったです」


 美味しく食べているのは、みんなバクバク消費しているのを見ればわかる。

 というか、こういった現地の料理を食べるのも観光の醍醐味だ。

 もうすでに、観光気分でうっきうきですな。


「私は他の方にも顔を出してきますので、大志さんたちはごゆっくりどうぞ」


 俺たちが楽しんでいる様子を確認できたので、ヌシさんは他の方々の様子も確認してくるようだ。

 せっかくだから、一緒に見て回ろうかな。


「私もご一緒させて頂いて、よろしいでしょうか」

「それはもちろん。ご一緒しましょう」

「ハナもいくです~」

「あ、私もお付き合いします」


 ヌシさんが同行を了承してくれたので、一緒に回ることにする。

 ハナちゃんユキちゃんも付き合ってくれるので、楽しく巡回しよう!


 ということで、まずはエルフたちの様子を伺う。


「ぶたのまるやき、まじうめえ!」

「おにくふわっふわ~」

「かわとか、ぱりぱりしてんじゃん」

「まつりじゃあああ!」


 エルフ軍団は、豚の丸焼きに群がってキャッキャしていた。

 村でも催し物の時にイノシシの丸焼きが出てくるから、みなさん祭り感覚で盛り上がっている。


「大志さんたちも、お食べ下さい」

「もうたべてるです~。ふわっふわです~」


 ヌシさんが言う前に、ハナちゃんはもう輪に加わってバクバク食べていた。……何時の間に。

 でも、エルフの謎ハーブを使わないちたまの丸焼きだって、なかなかすごいでしょ?


「わきゃ~、このおにくとあわもり、よくあうさ~」


 そんな中、青しっぽをご機嫌にふりふりする偉い人ちゃんを発見。

 この人、ほっとくと一人で飲み始める。というか開始間もないのに、凄い飲みっぷり。

 まさにざるである。


「凄い酒豪だねー」

「水のように飲んでるよー」


 偉い人ちゃんの飲みっぷりをみて、キジムナーさんたちも驚いている。

 なにせ、度数の強い泡盛を一気飲みだ。

 さすがドワーフちゃんである。


「大志さん、あの娘さん……お酒をあれほど飲んでも大丈夫なのですか? 年齢的に」


 その様子を見て、ヌシさんが心配した様子で聞いてくる。見た感じは女子高生だからかな?

 まあ……ドワーフちゃん的には大丈夫だよね。

 というか、むしろ熱量維持のため、大量のアルコールが必要だったりするわけで。

 その辺説明しておこう。


「実は、彼女には事情がありまして――」


 ということで、ヌシさんに偉い人ちゃんの事情を教える。

 しっぽドワーフちゃんたちは、熱を蓄積して操る種族であること。

 周囲の熱を貯めたり、アルコールを用いて熱を生み出したり。

 そうして日々の生活や長い夜を乗り越えている。

 しかし、偉い人ちゃんは熱をあまり蓄えられない体質のため、お酒が生命線となっていること。

 今までに分かっている事情を、ヌシさんにご説明した。


「――と言うわけです」

「なるほど、そんな事情が」

「わきゃ~、おさけおいしいさ~」


 ヌシさんも事情は理解してくれたようで、わきゃわきゃとお酒をガブ飲みする偉い人ちゃんをなんとも言えない表情で見ている。

 当の偉い人ちゃんは、しっぽふりふりご機嫌で酒盛り中だけど。

 あんまり自分の境遇にくよくよしない、明るい人だね。


「長野はこれから冬へと向かいますので、色々対策を考えている所でして」

「あちらは寒いですからね。確かに対策は必要かと」

「めっちゃさむいです~」


 ただまあこちらは対策を考えておかなければいけない。

 いちおう魔女さんに、マジカルなヒートのテック製造を依頼する予定ではある。

 それだけじゃ心配なので、まだまだ考えることは多いのだけど。


「というか、毎年冬には悩まされてますよね」

「確かに、何かしら対策する必要が出て、毎年バタバタしている気がする」

「ですよね」


 ユキちゃんがしみじみと言ったけど、言うとおり毎年なにかしら慌てているな。

 初年度はエルフたち、次年度は妖精さんたち、そして今年度はドワーフちゃんたちだ。

 なんだかんだで、楽しく乗り越えてはいるのだけど。


「ああ……冬が……冬が来てしまう……」

「雪かき……極寒の脱衣所……凍る水道管……うう……」


 そして俺とユキちゃん、冬の到来を想像して二人とも鬱状態に。

 冬怖い……ふゆこわい……。朝、おふとんから出られない……。


「あや~、タイシとユキ、うごかなくなったです?」

「そちらの冬は、そんなにですか……」

「です~」


 ふゆこわい……。


「タイシタイシ、かえってくるですよ~」


 ――おっと、ハナちゃんから帰還命令が出た。

 現実に帰ろう。


「わきゃ~、おさかなおいしいさ~」

(おさけ~)


 俺たちの悩みはさておき、偉い人ちゃんは神輿とごきげんで酒盛りを始めていた。

 なんというか、癒やされる。そうだね、俺たちがくよくよしてたらダメだよね。

 さて、二人に元気をもらったところで、話を戻そう。


「というわけで、目下対策を考え中ですね」

「ふゆ……おわらない雪かき……。しかも毎朝……」


 ユキちゃんはまだ雪かきの悪夢から帰ってこないけど、そっとしておき話を進める。


「ふむ……熱を蓄える、ですか……」


 すると、ヌシさんがあごに手をやりながら、そう言った。

 どうやら、何か考えてくれているらしい。


「もしかしたら、一つ使えそうな手があるかもしれません」


 そして、何かを思いついたような表情になった。

 使えそうな手があるとな。それは何だろう?


「使えそうな手、ですか?」

「はい。もしかしたら……ですが」


 ヌシさん、ワイワイキャッキャと宴会の輪に加わる……キジムナーさんたちを見た。

 彼らが、関係しているのかな?


「もしかしたら――『キジムナー火』が、使えるかもしれません」


 キジムナー火? 確か伝承では、キジムナーさんたちが使う炎のことだ。

 その正体はよく知らないのだけど、何か応用が利くのかな?


盛大にお寝坊しました

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