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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第二十章 未来へと繋がる、色
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第二十一話 なんとか、できるかな?


 キジムナーさんたち曰く、台風で大変な目に遭ったと。

 それは被災したということだろうか。


「もしかして、被災されたのですか?」

「おうちのガジュマルが、ダメになっちゃったよー」

「住むところが無いので、街に出てきたのですよ」

「困っちゃったよー」


 のほほんと言うけれど、やっぱり被災されたようで。

 どうやら彼らが住むガジュマルの古木が、台風でダメになってしまったらしい。


「……うちの農園も、かなりやられました」

「海水が流れてきて~、果樹も元気が~ないですね~」


 果物農家さんも同様で、果樹園に色々被害があったようだ。

 旦那さんは困った表情、奥さんは相変わらずのほほんとした顔で説明する。

 まあ、みなさん何らかの被災はされたようだね。


「お爺ちゃんのお家も~、折れちゃいまして~」

「しょうが無いので今は妻ともども、娘夫婦の家にやっかいになってますな」

「そうなんですか……」


 お爺ちゃんの住処である古木も、やられてしまったようだ。

 思い出のある木だろうから、さぞかし辛かったろう。


「これこれ~。この大木が、お爺ちゃんの~、家だったのよ~」

「りっぱなたいぼくです~」


 話の流れで、奥さんがスマホで写真を見せてくれた。かなり立派なガジュマルの古木が写っているね。

 その前に果物農家さん一族が並んでいて、素敵な家族写真だ。


「そしてこれが、台風で折れた後よ~」

「あやー! はんぶんになってるです~!」


 しかし次に見せてくれた写真には、縦に半分になってしまった古木が写っていた。

 災害の凄まじさが良く分かると共に、貴重な大木が失われた記録でもある。


「そういう困ったときだから、何か楽しいことあればなって思ってたよー」

「可愛いキジムナーとか、噂に飛びついちゃったなー」

「でも、もっと楽しいこと起きたー」


 しかしキジムナーさんたちはめげていない様子だ。

 辛いときだからこそ、楽しいことを求めたんだね。

 だから面白そうな噂を聞いて、ホテルに集まってしまったのか。

 前向きに生きていこうって感じがする。


「お家が育つまでは、こうして暮らすよー」

「しょうがないさ~」

「だからよー」


 のんびりした感じで語るみなさんだけど、大変なのは事実だ。

 ガジュマルの古木だから、一朝一夕にどうこうするのは普通は不可能。

 時間がどうしてもかかっちゃうよね。


 ただですね、ここで一つピンと来たわけですよ。


「……ハナハお嬢様、一つ相談がございまして」

「あえ? そうだんです?」

「あ、大志さんの考えていること分かりましたよ」


 ハナちゃんはキジムナーさんたちの生態を知らないのでピンと来ていないけど、ユキちゃんはもうおわかりのご様子。

 ということで、ハナハお嬢様にちょこっとご説明致しましょう。


「えっとね、キジムナーさんたちは、大木の中に住んでいるわけなんだよ」

「あい」

「それで、今はその大木が折れちゃったりしたわけだ」

「まっぷたつです~」


 もいちどスマホの写真をみて、エルフ耳をへにょっとさせるハナちゃんだ。

 そしてここからが本題ですな。


「じゃあ、ガジュマルの木をにょきにょきできたら、解決するわけだ」

「あや! にょきにょきしちゃうです!?」


 にょきにょきというキーワードを聞いて、ハナちゃんかぶりつきになる。

 お目々キラッキラの、エルフ耳がピンと立ったね。

 そうなんですよ。ハナちゃんに、ガジュマルの木を育てて貰えば良いのではと!


「お嬢様、大木をにょきにょきし放題な案件ですが、いかがなさいましょうか?」

「やるです~! にょきにょきしまくるです~!」


 にぱっと笑顔で、にょきにょきしまくる宣言のハナちゃんだ。

 大木生やし放題とか、そうそう実行する機会がないからね。

 もうワクワクしちゃっておりますな。


「うふふ~、うふふ~。たくさんそだてるですよ~」


 ぴょいっとじょうろとスコップを取り出し、もうやる気満々。

 とにかくにょきにょきしたくてたまらない感じだね。


「そうですね、ハナなら何とか出来るかも」

「おつきあいしましょう」


 ヤナさんとカナさんの同意も得られて、問題はないね。

 この思いつきに付き合ってくれるみたいだから、ご一緒して貰おう。


「大志さん、私もお手伝いしますよ」

「ありがたい。ユキちゃん助かるよ」

「ふふふ」


 ユキ先生もお手伝いしてくれると言うことで、心強い。

 何とかなりそうな気がする。


「では、みんなの同意も得られました。と言うわけで、ガジュマル何とかする作戦を考えたいと思います」

「あい~! にょきるです~」


 とりあえず作戦会議だね。

 まあ、ハナちゃんににょきにょきして貰う、というだけの話なんだけど。

 特に難しい事はしない。


「はい?」

「にょきにょきとは、一体……」


 そして勝手に話が進んでいることに、果物農家の奥さんと旦那さんきょとんとする。

 まあ、ハナちゃんのにょきにょきスキルを知らないと、わけ分からないよね。

 軽く説明しておこう。


「えっとですね、もしかしたら……ガジュマルの木は一晩で育つかもですよ」

「一晩で?」

「またまた~ご冗談を~」

「ば~ぶ~」


 極めて雑な説明をすると、やっぱり冗談と受け取られてしまった。

 果物農家さんご夫婦と、赤ちゃんみんなからつっこみを受ける。

 でもまあ、俺たちは自信満々なわけで。実績あるからね。


 と言うわけで、ハナちゃんの特技とかを色々説明した。

 もやしどっさり事件、農作物すぐ出来た事件、森が出来た事件、キャベツに埋もれた事件等々。

 我々にょきにょき特捜部が辿った事件の歴史を、色々写真付きで解説する。


「……良くわかりませんが、試してみる価値はありそうですね」

「上手くいったら~、めっけもんということで~」

「ばぶ~」


 いまいち信じて貰えてはいないけど、無理もない。

 でも作戦の承認は下りたので、やれるだけやってみよう。


「ひとまず、明日の朝お伺いします」

「あ、家が車を出しますので、時間を決めましょう」


 こちらが向かうつもりだったけど、旦那さんが迎えに来てくれるようだ。

 ここはお言葉に甘えよう。


「ハナちゃん、早朝のお仕事になるけど大丈夫かな?」

「だいじょうぶです~。ハナ、はやおきするです~」


 元々ハナちゃんは早起きする子なので、問題はないようだ。

 とっても偉い子だ。褒めちゃうから!


「ハナちゃんえらいね~。なでなでしちゃうよ」

「うふ~」


 あたまをなでなでしてあげると、エルフ耳をぴこぴこさせてご機嫌ハナちゃんだ。

 あとは、ヤナさんたちやユキちゃんも大丈夫かな?


「みなさんも、大丈夫でしょうか」

「問題ないですね」

「いつも、あさはやいですから」

「私も大丈夫ですよ」


 みんなも大丈夫なようなので、俺たちはオーケーだね。

 それじゃあ、予定を詰めよう。


「では、明日のこの時間に――」


 そうして明日の予定を伝えたり、お仕事内容の確認を行う。

 結構早朝だけど、しゅぱっとお仕事して朝食までにはホテルに戻りたい所だ。


「――では、明日はよろしくお願い致します」


 予定をすり合わせ、時間も決めて。

 あとは明日を待つばかり。

 お仕事の話はこの辺にして、あとは食べ放題飲み放題を楽しもう。


「あなた~、代行頼んだから、たくさん飲んでね~」

「俺たちもタクシーで農家さんちに行って、泊めてもらうよー」

「せっかくだものなー」


 奥さんは代行を頼んだようで、帰りも安心だね。

 他のキジムナーさんたちは果物農家さんちにお泊まりするようで、こちらもタクシーを手配したようだ。

 それなら、明日みんなにハナちゃんの特技を披露できるね。


「うふふ~、あしたがたのしみです~」

「今日は早く寝ないとね」

「あい~」


 ハナちゃんは明日のにょきにょき祭りが楽しみなようで、うふうふしながらお料理を食べている。

 俺もたくさん食べて、明日に備えよう!



 ◇



 食べ放題もそろそろ終わりの時間。佳境に突入。


(お、おそなえもの~)


 神輿も食べ過ぎでピクピクする中、詰め込みラストスパート!

 そろそろ甘いもので締めようかと思っていたときのこと。


「しょくごにあまいものだよ! おかしつくったよ!」

「おすそわけ~」


 妖精さん謹製の、妖精ぱふぇがデリバリーされてきた。

 甘いものが欲しくなるタイミング、きっちり読んでいるね。

 さすがスィーツエキスパートの種族だけある。


「あまくておいしいです~」

「おお! 家の果物がこんなに豪華なパフェに」


 果物農家さんご一家も、自分たちが作った果物が豪華な妖精ぱふぇに生まれ変わり、かなり喜んでいる。


「上手に組み合わせて~あるわ~」

「甘さと酸っぱさの加減が、絶妙だねえ。緻密なお菓子だよー」

「ほめられちゃった! ほめられちゃった!」

「きゃい~」


 感想を聞くと、果物を上手に組み合わせた緻密な作品らしい。

 なんだか凄そうだ。俺も食べたい。


「タイシさんには、これだよ! これだよ!」


 と思っていたら、イトカワちゃんがすすいっとパフェを差し出してくるわけだ。

 そのお品、見た目は――土石流。


「すっごくしっぱいしたけど、おいしいかもね! じしんはあるかもね!」

「すっごく失敗したんだ」

「まれにみる、しっぱいだよ! まれにみる!」


 そのまれに見る失敗作、土石流パフェを食べて欲しいんだね。

 わかった。腹をくくるよ。


「では、頂きます」

「タイシがんばるです~」

「見守っています!」


 ハナちゃんとユキちゃんが見守る中、稀に見る失敗作を――実食!

 ――あら不思議、とっても美味しいわ。


「味はとっても美味しい。味は。一、二を争う水準でイケるチョコパフェだね!」

「きゃい~!」


 どうしてこういう見た目になるかは分からないけど、味は大丈夫。

 とろりとしたチョコが、バニラアイスに良く絡んで濃厚。

 しかしトッピングされた小惑星形状の岩石、もとい果物がクドさを抑えていて。

 味だけ見れば、相当な完成度のチョコパフェである。


「ちなみにチョコはつかってないけどね! まったくつかってないよ!」


 ――え? すっごいチョコ味するんだけど。

 なにこれ怖い。


「……これ、チョコ使ってないの?」

「ないよ! おしょうゆはつかったけどね! おしょうゆ!」


 醤油ってチョコ味だったっけ?

 わからない、イトカワちゃんの技術力がわからない……。


「ま、まあ細かいことは気にしないでおこう。美味しいのは確かだからね」

「タイシかんがえるのやめたです~」

「……本当に、チョコ味がしますねこれ」


 思考停止をハナちゃんにつっこまれ、ひょいっと土石流パフェを味見したユキちゃんが首を傾げ。

 色々びっくりしたデザートだけど、楽しく美味しく食べ放題は締めくくることができた。


「うわっ! 料理が全部消えたよー!」

「光ったさー!」


 どうやら神様も最後に全部持っていったようで、これにて本日の食べ放題は終了。

 キジムナーさんたちには刺激的な光景だったらしく、目をまんまるにして驚いている。

 ……そういえば、村では普通だけど世間一般では普通ではないよね。

 この辺、だいぶ麻痺している感がある。


「異界のカミまで旅行をしているとは、さすがに驚きましたな……」

「入守さんの家は、不思議すぎますね」

「珍しいもの~、みれたわ~」


 果物農家さんたちも、まあ驚いている。

 神秘業界もドン引きの、食べ放題完食でござる。


「ま、まあこれにて本日のイベント終了ですね。後はみなさん、ぐっすりお休み下さい」

「「「はーい」」」


 とまあ今日も色々あったけど、本日はこれにて全てのイベント終了だ。

 明日は早いから、さっさと寝ちゃおう!



 ◇



 果物農家さんやキジムナーさんを見送り、部屋に戻った。

 あとは寝る前に、みんなから預かったカメラのデータを移したりしておく。


「おっと、二テラバイトのハードディスクがもう埋まりそう」

「みなさん、動画や写真撮りまくってますからね」


 ユキちゃんも自分のデータは、自前のノートPCに移しているようで。

 良い写真があったら、後で共有して貰おう。


「……あえ? ユキのしゃしん、タイシばっかりうつってるです?」

「た、たまたまなの。たまたまそうなっているだけなの!」


 ハナちゃんがユキちゃんPCの画面を覗き込んで、なんだかワイワイと賑やかだ。

 その間に、俺はハナちゃんカメラのデータも移しておこう。


「ハナちゃん、たくさん写真撮ったね」

「うふふ~、たのしいおもいで、いっぱいです~」


 データを転送し始めると、たくさんの写真があった。

 ハナちゃんカメラ、メモリはもう残量がほぼないね。

 今日もいっぱいの思い出を残せたようだ。


 そうしてノートPC経由でハードディスクにデータを移し終え、サムネイルがずらっと表示される。


「ほら、ハナちゃんの写真がたくさんだよ」

「タイシ、しゃしんみせてほしいです~」

(わたしも~)


 データを移し終えたことを伝えると、ハナちゃんがぽててっとやってきた。

 神輿もほよほよ飛んできて、PCの周りをくるくる回っているね。

 大きな画面で画像を見たいようなので、画面を二人の方に向けてあげよう。


「あや~、このしゃしんは、ぶれちゃってるです?」

「それは後でくっきり処理するから、心配しなくていいよ」

「ひとあんしんです~」

(わたしがうつってる~)


 そして、ハナちゃんご機嫌でPCを操作し写真をスライドさせはじめる。

 神輿も自分が写っている写真を見て、キャッキャと大はしゃぎ。

 何枚かの写真は撮影失敗しちゃっていたけど、それもまた思い出。


「うふふ~」


 ……というか、ハナちゃんもう普通にPC使えているな。

 いつ覚えたんだ?


 とまあ、ハナちゃんパソコン普通に使えている現象に驚いていた時のこと。


「……あえ?」


 ハナちゃんの手が、とある画像の所でピタリと止まる。

 そして、顔を画面にぐぐっと近づけた。

 何をしているんだろう?


「ハナちゃん、どうしたの?」

「タイシ~、これ、これなんだかへんです~」


 なんだか変? 何が変なんだろう?

 画面に表示されているのは、食べ放題会場の写真。

 そしてハナちゃんが指さす先は――偉い人ちゃんが、写っていた。


「どの辺がおかしいの? 自分には普通に見えるけど」

「しっぽです~! しっぽのさきが、いわかんあるですよ~」


 しっぽの先? どうやらハナちゃん的に、違和感があるらしい。

 ただ、俺が見た感じは普通に……いや、まてよ?


 俺も、今日の夕食時に何か違和感を感じた事を思い出す。

 結局なんだか分からないまま来たけど、確かにその感覚があったのだ。


「しっぽの先だね」

「あい~」


 もう一度、偉い人ちゃんテイルをよく見てみる。

 しかし、さすがにしっぽの先は今の画像サイズだと良くわからない。

 拡大してみよう。


「ちょっと写真を大きくするよ……ほいっとな」

「あや! おっきくなったです~」


 しっぽが写っている部分を拡大すると、ぐっと見やすくなった。

 ……ただ、微妙な感じだ。ぱっと見は、やっぱり普通な感じ。


「お二人とも、何をされてるのですか?」

「あ、ユキちゃん。ちょっとこれ見てよ」


 ユキちゃんも覗き込んできたので、一緒に見て貰う。


「これはしっぽですか?」

「そうなんだよ。俺とハナちゃん二人とも、何かおかしいなって感じているんだ」

「私には、普通に見えますが……」


 しかし、ユキちゃんも首を傾げるばかりだ。

 この画像のままでは、ちょっと何とも言えない感じだね。


「……じゃあちょっと、画像処理をしてみよう」


 目で見て分からない部分も、画像処理で浮かび上がってくる事がある。

 ちょっくら加工しちゃいましょう!


「ここをこうして、これがこうで……」


 新たに画像処理ソフトを起動し、拡大部分を切り出す。

 まずはエッジ強調やノイズフィルタをかけ、体裁を整える。

 それから、ガンマ値を弄くってみると――。


「……これ、くっきりと境界が出てるね」

「しっぽの先だけ、なんだか異なっています」


 偉い人ちゃんのしっぽの先に、境界線が出ていた。

 先っちょだけ、別の色をしているって事だ。

 ガンマ補正して初めて分かるくらいの微妙な差だけど、強調するとはっきりわかる。


「あえ? そういえば……おふろにはいっているとき、しっぽのさきがへんだったです?」

「え? 変だったの?」

「あい~、なんかおかしかったです~」


 そして新情報。どうやら、しっぽの先が変だったらしい。

 ……入浴前の写真は、どうだろうか?


「ちょっと確認してみよう」


 さくっと入浴前、カヌー遊びしているときの画像を探して加工してみる。

 すると――。


「この時点では、境界線がないね」


 入浴前の写真では、しっぽの先に異変はなかった。

 境界線が出ておらず、違和感もない。

 これは……何を意味する?


「何だろうね、これは」

「わかんないです~」

「しっぽの色が変化したんですかね?」


 三人そろって考えるが、良くわからない。

 しっぽドワーフちゃんのウロコは蓄熱により変色するので、それが原因かな?

 入浴後に変化しているから、そうなのかも。


 と、みんなで首を捻る。

 そのときのこと。


(およ? およよよ?)


 なんだか神輿が、画像を見てぴこぴこし始めた。

 モニタの前でぴこっと滞空し、謎の声もおよおよ言っている。

 どうしたのかな?


「神様、どうしちゃったのかな?」

「どうしたです~?」


 様子が変なので、ハナちゃん経由で間接的に問いかける。

 すると、くるりんと神輿がこちらを向いて――。


(かわってない~)


 ――という、謎の声が聞こえた。


「あえ? かわってないです?」

(かわってないよ~。おかしいよ~)

「おかしいです?」


 謎の声曰く、変わっていない。おかしいとのことだ。

 一体何が、変わっていないのか。

 しっぽの先は、色が変わっているよね?


(いろが、かわってないよ~)


 ――!!!!


「……あえ? いろがかわってない……です?」

「あ、ホントですね……大志さん、これって……」


 ハナちゃんとユキちゃんも、こちらを見た。

 そうだ、偉い人ちゃんのしっぽの色……初めて出会ったときから変わっていない。

 ずっとずっと――黄色のまま。


 慌てて、旅行初日からの写真をスライドさせる。

 その写真の全てを見ても、黄色のまま。


「これも……これも!」


 空港で気絶していた時も、飛行機で気絶したときも。

 海岸で日向ぼっこした後も、温泉に入った後も。

 ずっとずっと――黄色。


 あれだけ熱を吸収する機会がありながら、色の変化がない!?

 他の子たちは、みんな赤く変化しているのに!


 ……偉い人ちゃんには、何か秘密がある。

 もしくは何か――体に、問題が起きているのでは。

 これは確かめないといけない。


 ……しかし、どうやって確認したらいいのだろうか?

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