第十八話 現地のひと
楽しいバーベキューを終えて、午後はカヌー遊びをする。
いつの間にか量産されていたエルフカヌーにみんなで乗って、瀬底島や周辺の海をクルージングだ。
ちなみに俺のカヌーには、ハナちゃんユキちゃん、神輿にフクロイヌが乗船する過密船となっている。
満員御礼だね!
「おれのじまんのフネ、がんじょうにつくっといたのだ」
「やるな~」
「さすが」
おっちゃんエルフ渾身のカヌーも、威風堂々と海に浮かんでいる。
彫刻とか凝っていて、なかなかの腕前だね!
「わきゃ~、かっこいいフネさ~」
「フネをもつのは、かあちゃのゆめだったさ~」
「あこがれのフネさ~」
しっぽドワーフちゃんたちも、カヌーに乗って大はしゃぎ。
どうも彼女たちにとっては、フネはあこがれの品らしい。
……なぜそこまでフネにあこがれて、それでいてなかなかフネを持てないのか。
わりとこれ、ドワーフィンに横たわる――大きな課題、なのかもと思う。
何か理由がありそうな気がするので、いずれ確認はしておいた方が良いかもだ。
おそらく、ドワーフィンの気候風土がそうさせているような気がするけど……。
「タイシ、どしたです?」
「何かお考えごとですか?」
(だいじょうぶ~?)
おっと、俺の前に着座しているハナちゃんとユキちゃんが、こちらを窺うような顔をしている。
俺のあたまにしがみついている神輿も、ぴこぴこと覗き込んできた。
「ギニャニャ?」
フクロイヌもカヌーの上をトテトテ歩いてきて、俺を見上げる。
ちょっと心配かけちゃったかも。……フネに関する考察はまた後でだね。
「あ~、まあちょっと考えごとしてたけど、村に帰ってからまとめようかなと思うよ」
「そのときは、ハナもおてつだいするです~」
「私も力になりますので、どしどし頼って下さい」
(おまかせ~)
いまは思いっきり、沖縄を楽しまないと。
考察は後でも出来るけど、リゾートライフは今しか出来ない。
楽しむことに集中しよう。
しかし、謎の声はお任せとか言うわけで。丸投げされてしまった。
「二人ともありがとうね。遠慮無く頼っちゃうよ」
「まかせるです~」
「一緒に、色々考えましょう」
(おまかせ~)
心強い仲間もいることだし、みんなで力を合わせればきっと大丈夫。
そう思えば、肩に掛かった……色々な重圧も――ふっと軽くなる。
俺一人でがんばる必要はなく、人の力をどしどし借りて行こう。
でも謎の声さんも、ちょっとは考えるの手伝って下さい。
たまにナイスアシストしてくれるので、頼りにしてるんですよこれが。
「ギニャギニャ」
「フクロイヌもありがとうね。頼りにしているから」
「ギニャン」
最後にフクロイヌをなでなでしてあげて、このお話はひとまずおしまい。
そろそろ高橋さんと海竜ちゃんのガイドとともに、海に繰り出しましょうか。
「ではみなさん、海に繰り出しましょう!」
「「「おー!」」」
かけ声と共に、カヌーを漕ぎ出し冒険に出発だ。
意気揚々と、村人たちのフネは海に繰り出す。
みんなでこの美しい海、堪能しちゃうよ!
「わ、わきゃ~……まっすぐすすまないさ~」
……偉い人ちゃん、よたよたとオールを漕ぐけど前に進まない。
この人、もしかしてかなりの運動音痴なのでは……。
◇
「わきゃ~、らくちんさ~」
偉い人ちゃんのカヌーは、俺が操縦するカヌーで牽引することにした。
あのままだと遭難しちゃうからね。
そして自分で漕がなくて良くなったのが嬉しいのか、偉い人ちゃんわっきゃわきゃと黄色しっぽを振って喜んでおられる。
この調子で、どしどし接待していこう。
「おっし、ひとまず島を一周するぞ!」
「ぎゃうぎゃう!」
「だいぼうけんじゃん」
「しまをいっしゅうしちゃうとか、すてき」
ガイドの高橋さんと海竜ちゃん、おおはりきりで先導していく。
思いっきり泳げるとあって、テンション高いね。
「クワクワ~」
あと二人といっしょに、ペンギンちゃんも随伴だ。
思いっきり泳げるのが嬉しいのか、イルカみたいに水上へジャンプしたりと元気いっぱい。
かわいらしいね。
「いっしゅうするんだね! おもしろそうだね!」
「ひっぱられるがまま~」
そして妖精さんたちは、二隻のゴムボート上でキラキラのんびりしている。
一隻は高橋さんが押して、もう片方は海竜ちゃん牽引だ。
「おまかせじょうたいだね! らくちんだね!」
ちいさな妖精さんたちにとっては、ゴムボートも巨大客船だ。
潮風を羽根に一杯受けながら、キラキラ白粒子を振りまいているね。
「わきゃ~、やっぱりフネはらくちんさ~」
「いいフネさ~」
「たのしいさ~」
ドワーフちゃんたちも、慣れた様子でカヌーを操る。
フネを個人所有していないだけで、操船技術はみんな持っているようだね。
「うふふ~、みんなでだいぼうけんです~!」
「海も凪いでいますので、絶好のカヌー日和ですね!」
(さわやか~)
ハナちゃんとユキちゃん、そして神輿も、ご機嫌で風を受けている。
カヌーの一番前はハナちゃん、その次がユキちゃん、最後に俺。
あと頭上には神輿、という座席順だ。
この座席順だと、俺の前にはシルクのような毛並みの耳しっぽふわふわするわけで。
ぶ、ブラシかけたい。すごくブラッシングしたい……。
俺はブラッシングには少々自信があるんだよ。
「ふ、ふふふふ……視線を感じる。それも熱い視線」
おっと、ガン見がバレた。気配を察知されたぞ。
でもなんかご機嫌耳しっぽさんだ。ゆるされた!
ふわふわ毛並みに、熱視線送っても良いんだ!
「ふふふふ……」
「ユキ、ごきげんです?」
(よこしま~)
なぜか俺に流し目をするユキちゃんを見て、ハナちゃん首をかしげる。
よくわかんないけど、先生はご機嫌だからね。
そっとしておきましょう。
「ギニャニャ?」
おや? フクロイヌがこっちにやってきて毛並みをふわふわさせる。
……まさか、ユキちゃんの耳しっぽに対抗かな?
「君の毛並みも素晴らしいよ。なでなでしちゃうからね」
「ギニャン」
頭や背中をなでてあげると、フクロイヌはご機嫌でしっぽをピンと立てる。
こっちの毛並みもまた素晴らしい。まあ、水にぬれるとぺったりなんだけどね。
とまあいろいろありつつも、我らの船団は順調に海を進んでいき。
途中で岩礁の合間にあるビーチで休憩しながら、とうとう瀬底大橋に到達した!
「あれが今朝通過した、あのおっきな橋だよ」
「うっきゃ~! したからみると、でっかいです~」
「大迫力ですね!」
「わきゃ~! すっごくがんじょうそうさ~!」
「クワックワ~」
橋を見上げて、ハナちゃんもユキちゃんも、そして偉い人ちゃんも大はしゃぎ。
たしかに大迫力。
いつの間にか俺のカヌー脇に来ていたペンギンちゃんも、大喜びだ。
(すてき~)
神輿も思わず飛び上がって、ほよほよと光り、周囲を旋回しながらはしゃぐ。
謎の光る飛翔体事案発生だね。
「まじすげえな~」
「こんなん、つくれるもんなのか」
「じっさいに、めのまえにあるわよ」
「かっこいいね! でっかいね!」
「きょだいすぎ~」
エルフたちも妖精さんたちも、その偉容を珍しそうな顔で見上げる。
こういうアングルで橋を見る事ってあんまりないから、新鮮だね。
「こういう橋も、作りてえなあ」
「ぎゃう~」
そして建築家の高橋さんと、リザードマン世界でも橋のお世話になっている海竜ちゃん、キリリとした表情だ。
彼らにとって、橋は最重要インフラ。彼らの想いは、俺たちが想像するよりずっと重い。
謎の大渦によって寸断された世界を繋ぐ、解放と交流の象徴なのだ。
とくにこの橋は、海にかけられた大きな橋だからね。いろいろリザードマン世界と重ねて見てしまうこともあるのだろう。
「……いつまでも眺めていたいけど、時間もあるからな。次へ行こう」
「ぎゃう」
すてきな橋を眺めて、二人はお目々キラッキラ。
名残惜しそうにしながらも、次の行程へ進む。
「そいじゃ続けていくぜ! 途中でシュノーケリングとか色々やるぞ!」
「ぎゃう~!」
「はやいね! きあいじゅうぶんだね!」
「なみしぶきが、たのしいね! ずぶぬれだね!」
気合いを入れ直した二人は、また海をすいすいと進む。
ざっぱんざっぱんゴムボートに波がかかるけど、妖精さんたちは大はしゃぎ。
体が小さいから、ちょっとしたしぶきでも滝のような感じだろう。
絶叫系大好きの妖精さんたちだから、超楽しいよね。
「おれらもいくぜ!」
「まかせとけ!」
「うみってすてき!」
「うちらもいくさ~」
そして高橋さんたちの後に、みんなも続く。
すすいっとカヌーを操り、けっこうな速度で移動開始だ。
「タイシタイシ、ハナたちもいくです~!」
「追いつきましょう」
(どどんと、おねがいします~)
そうして高速巡航を始めたみんなを指差し、ハナちゃんとユキちゃんから追撃の指令だ。
謎の声からは、どどんとお願いってオーダーもあったから、どどんと行こうかな。
ではでは、ロケットスタート!
「それじゃあ行くよ! はい超加速!」
ちょっと本気を出して、どどんと発進!
これにも音を上げないエルフカヌーとこのオール、強度凄いな!
おっちゃんエルフ渾身の力作カヌー、かなりの高性能だ。
「あや~! ものすごい、かそくです~!」
「カヌーでジェットスキーみたいな加速! 何かおかしいですけど楽しいですね!」
「わわわきゃ~! やばいほど、はやいさ~!」
(おもってたより、はやい~)
乗客と牽引されているみなさん、さすがにこの加速にはびっくり。
しかしエルフカヌーは安定しているので、怖くは無いみたい。
キャッキャと大はしゃぎして、加速の迫力を楽しんでいる。
「うふふ~、ゆめみたいです~」
「最高ですね!」
「わきゃ~、りょこうについてきて、よかったさ~」
(たのし~)
大はしゃぎの四人を引き連れ、カヌーは南国の海を突っ走る。
「あや~、きれいなおさかな、たくさんです~」
「やっぱりちょっと沖に来ると、魚の数が違いますね!」
「わきゃ~、すばらしいさ~」
(おさかな~)
そうして島を周りながら、シュノーケリングや素潜りをしたり。
ちょっと沖合なので、魚の種類も海岸とはずいぶん違って。
青い海の中にある、珊瑚礁とそこに暮らす熱帯魚と戯れ。
「ぎゃう~」
「うわわわ、はええええええ!」
「とんでもねえええええ!」
「あばばばばば」
海竜ちゃんと高橋さんに引っ張って貰い、スピードの向こう側体験をしたり。
エルフカヌーが安定しすぎていて、ジェットスキー並の速度でも転覆しない。
結果、とんでもない記録が出たようだ。
「――……」
ちなみにこの体験により、偉い人ちゃんはさわやかな笑顔のまま気絶していた。
怖かったのか、それとも楽しかったのか判断に迷う。
半々くらい?
「水上スキーって、楽しいですね!」
「もっかいやりたいです~!」
さらに海竜ちゃんや高橋さん牽引にて、水上スキーぽい遊びもしたり。
ユキちゃんとハナちゃんがこれにドハマりして、何回もせがんでいた。
「タイシタイシ~、じょうずにすべれたです~!」
「おお! ハナが上手に波乗りしてる!」
「しゃしん! しゃしんとりますよ!」
ハナちゃんはバランス感覚が良いのか、すいすいと波の上を進む。
その様子に、ヤナさんとカナさんも大はしゃぎだ。
キャーキャー言いながら、アクションカメラを向けているね。
「わっきゃあああああ!」
ちなみに偉い人ちゃんは、即落水な感じ。
やっぱり、かなり運動が苦手なご様子。
「わたしたちも、なみのりするね! むりやりするね!」
「じりきですすむよ! じさくじえんだよ!」
「ほとんど、とんでるけどね! ほとんど!」
そして妖精さんたちは、真似して葉っぱ水上スキーを開始。
誰にも牽引されることなく、羽根を羽ばたかせて自力で前進するという荒技。
自ら推進力を生み出せる妖精さんならではの、強引アクティビティーが生まれた。
「しっぱいした~!」
ただ波乗りに失敗すると、水面がジャンプ台となり綺麗に空へと打ち上がる。
体重が軽い妖精さんだから、簡単にローンチしちゃうね。
イトカワちゃんは大体、天空に向かって打ち上げられているよ。
(わたしも~)
神輿も水上を高速スライドし始めた。
光る謎の飛翔体が大勢なので、その光に釣られて魚も集まってくる。
カヌーから水中を覗いてみると、もうお魚の楽園だよ。
「せっかくだから、素潜りして遊ぼうぜ」
「ぎゃう~」
「いいかもです~」
この大群を見て、高橋さんと海竜ちゃんから素潜り遊びの提案だ。
ハナちゃんも賛成しているので、そうしようかな。
「じゃあみんなで素潜り遊びしよう」
「するです~」
「おっし、もぐるぜ~」
ということで、みんなで素潜り遊びを急遽開催。
(く、くすぐったい~)
神輿がムラサメモンガラにつつかれまくっているけど、楽しそうにほよほよ光って。
「ギニャギニャ」
「すごく潜れるんだね。すごいよ」
「ギニャン」
フクロイヌが意外と深く潜れてびっくりしたり。
「おれのまわりだけ、さかなのしゅるいがちがうじゃん?」
「それ全部、食べたらアレする魚だぜ」
「よってきてるわ~」
「ぜんぶアレするおさかなとか、ふるえる」
「なにこれこわい」
マイスターの周りだけ、毒のあるお魚が集まったり。
お魚も、ポイズン好きなマイスターにシンパシーを感じたのかな?
臆病で、普通は人から逃げるウミヘビちゃんとかもいる。ここだけデンジャーゾーンだよ。
とまあ、散々瀬底島の海を楽しんで。
夕方近くまで遊び、島の一周も達成して。
そのままカヌーに乗って、ホテルのビーチへと戻ったのだった。
◇
ビーチに到着すると、良い感じの夕日が海を照らしていた。
「めっちゃたのしかったです~」
「さいこうだったさ~」
「おもしろかったね! さんざんあそんだね!」
「こぎすぎて、うでがガクガクじゃん」
「あした、きんにくつうかもね~」
今日の海遊びはみなさん大満足だったようで、ニコニコ笑顔で上陸だ。
あとオールで散々漕いだだけに、腕が疲れるのも当然で。
この後は、温泉にのんびり浸かって疲れを癒やそう!
「ゆ、夕焼け……これはチャンス」
……俺のとなりにいる耳しっぽさんは、何か別のことを考えているようだけど。
きょろきょろとビーチや夕日を見て、なんだかせわしない。
ひとまず、そっとしておこう。若い娘さんだから、いろいろあるのだろう。
「そんじゃ、そこのシャワーで砂とかを落としたら、いったん着替えようぜ」
「お疲れでしょうから、温泉に入ってのんびりしましょう」
耳しっぽさんはさておき、高橋さんと親父が次の行動をアナウンスする。
そうそう、水着から普段着に着替えないとね。
というわけで、砂をシャワーで落としてホテルへと戻ることに。
この後は着替えて、夕食まで自由時間。
温泉に入ったり夕日を眺めたりして、のんびり過ごそう。
「夕焼けのビーチ、そして全員が散らばる。今こそ、その時……ふふふふふ」
おや? 耳しっぽさんから黒いオーラが。
暗黒キツネさんがふふふと微笑みながら、しっぽをふあっさふあっさ振っている。
……これは危険信号だね。俺は危機管理に自信があるんだよ。
たぶんこれ、疲れて眠気が出てるんだよ。そのせいで、オーラが黒いんだ。
働かせ過ぎちゃったかな……。
ここはひとつ、温泉にのんびり浸かって貰い、ゆっくり疲れを癒やしてもらわないとね!
「ふふふふ……」
(きけんだよ~)
「ギニャニャ」
ほら、謎の声も危険だよって言ってる。フクロイヌだって首を横に振ってNGサインだよ。
ダーク耳しっぽさんには、今日は夜更かしせずに早めの睡眠を勧めておこう。
でも、ダーク状態の毛並みも、ツヤツヤふあっふあで良いんだよな。
オーラがあるというか。もう、ブラッシングしても良いと思うんだよ、俺は。
そんな事がありつつも、ホテルへ到着。
自動ドアを通り抜け、ロビーへ足を踏み入れる。
すると、黒キツネさんがこっちにすすすっとやってきた。
なんだろう? これからの相談かな?
「あ、あの……大志さん。このあとちょっと――」
そうしておずおずと、ユキちゃんが上目遣いで何かを話しかけたとき――。
「――でーじ可愛いキジムナー、どこにいるよ~」
「噂、たしかかぁ?」
「ホントにいるばー?」
ぞろぞろと、ロビーでたむろしている一行が目に入った。
そのお姿と言えば。
服装は普通のポロシャツとGパンとか、Tシャツとかなんだけど。
「どぅしが見たって言ってたよー」
「しんけんか?」
「まさかやー」
……みなさま、赤い髪をしておりまして。
あ、あああ。
――本物キジムナーさんが来ちゃってるー!!!!!
「やばい……これはやばい……」
「? タイシどうしたです?」
ロビーに集う、本物キジムナーさんたち。
ハナちゃんは本物さんを見たことがないから、俺の慌てようが分からないのも無理は無い。
というか話を聞くと、可愛いキジムナー出没の噂を確かめに来てしまったようだ。
正直言って、これ緊急事態だよ!
このホテルに、神秘がなんだか集まり過ぎちゃってるでござる!
「ユ、ユキちゃんあの人たち……」
「あああああ! 本物!」
正体を知っているユキちゃんも、一行を見て超びっくり。
あわわわわわ……話でかくなりすぎて、本物が来るとか、震える。
……この騒ぎ、どうしよう。
「あ、大志さんお戻りになられましたか」
「はいさい~」
「ば~ぶ」
この予想外の事態にあわあわしていると、ふと後ろから声がかけられた。
振り返って見てみると――果物農家さんご一家が。
「おじー、この方が大志さんだよ~」
そして奥さんが、なにやらとなりの人に俺を紹介している。
おじーってことは、お爺ちゃんってことかな?
「はいさい~」
そのお爺ちゃんは、陽気に手を上げて挨拶してくれたのだけど。
「――!」
その姿を見て――心底おどろいた。
なぜなら――。
「た、大志さん……まさかこの方」
「そのまさか……かな?」
お爺さんの髪は赤く、そして小柄で。
俺のよく知る――キジムナーさん、だった。
……これは一体、どう言うことなの?