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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第二十章 未来へと繋がる、色
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第十六話 海遊び本番、はじまるよ!


 何も問題は起きていない。


「あや~、あさからおふろ、さっぱりしたです~」

「良い湯だったね」

「あい~」


 ということで、朝ご飯を食べた後は軽くひとっ風呂入ってすっきり。

 ほんわかハナちゃんできあがり。


「あと三十分ほどしたら、みんなでバスに乗って思いっきり泳げる場所に行くよ」

「たのしみです~」


 その後は、みんなでバスに乗って瀬底せそこ島へ行く予定だ。

 ここで海遊びを本格的にする。

 まあ実は良く知らないのだけど、旅行会社さんお勧めなのでツアーに組み込んでみた。

 一日遊べる島らしいから、今から楽しみだ。


「では、私も出発の準備をしてきますね」

「そうだね、そろそろこっちも準備するかな」

「ですね。では、失礼します」


 ユキちゃんも出発の準備をするということで、自室に戻っていった。

 十分前にはバスが来るので、俺も早いところ行動しよう。


「それじゃ、忘れ物無いようにしっかり準備しようね」

「あい~」


 ハナちゃん一家と一緒になって、いそいそと水着やらカメラやらカヌーやらを確認していく。

 そして準備を終えて、みんなでロビーへ集合。


「あ、大志さん、準備終わりました?」


 ロビーへ行くと、ユキちゃんがみんなを集めていてくれた。

 良く気が利く娘さんだ。とっても助かる。


「大丈夫だよ。他のみんなも、大丈夫そうかな?」

「確認しておきました。みなさん大丈夫だそうです」

「確認ありがとう。助かるよ」

「いえいえ」


 ねぎらいの言葉をかけると、耳しっぽがふあさぁっと顕現する。

 今日も素晴らしい毛並みですな!


「バスもロータリーで待っていますので、もう乗車しちゃいますか?」


 そしてユキちゃんが指さす先には、現地ツアーのバスが三台停車していた。

 今から乗車しても問題なさそうなので、乗っちゃおう。


「そうしよう。せっかくだから」

「ですね」


 ユキちゃんとの同意も取れたので、早速乗車を始めよう。

 みんなに声をかけて、乗車開始だ。


「はいみなさん。これからあちらのバスに乗って、思いっきり泳げる所まで行きます」

「空港からこの宿まで乗ってきたやつと、同じですね」

「そうですね。同じバスですよ」


 ヤナさんが見覚えのあるバスを、ふむふむと眺める。

 まあ同じ会社のバスだから、分かり易いよね。


「というわけで、早速乗りこみましょう!」

「「「はーい!」」」


 乗り込みのかけ声をすると、みなさんゾロゾロとバスに乗りこんでいく。

 もう慣れたもので、特にトラブル無く全員がそれぞれのバスに乗りこむ。

 引率が楽で良いね!


「大志さん、全員乗車したのは確認できましたので、私たちも乗りましょう」

「そうしよう」

「いくです~」


 ユキちゃんと俺がダブルチェックして、全員が乗車したことを確認。

 ハナちゃんも一緒にお手伝いしてくれて、無事チェック完了。

 それじゃ、乗りこもう!


 と、バスに向かって移動を始めたときのこと。


「タイシタイシ、あれなんです?」


 ハナちゃんが、ホテル玄関前のとある場所を指さす。

 そこには、支配人さんと数人の人がなにやらお話をしているわけで。


「昨夜、キジムナーが出たという噂を聞きまして」

「従業員が目撃したとの話は聞きました」


 テレビ局のインタビューでござるね。

 ユキちゃんと俺、努めて見ないようにしていたでござるよ。


「あれは、偉い人がお仕事をしているんだ」

「おしごとですか~」

「ささ、ハナちゃん早く乗りましょうね」

「あい~」


 俺とユキちゃんは、一刻も早くこの場を後にしたい。

 ちょっと急かしちゃったけど、ハナちゃんと一緒にいそいそとバスに乗りこむ。


「全員乗車致しました。出発お願いします」

「はい。承知しました」


 ガイドさんに乗車OKの旨を伝え、そそくさとバスは発車。

 瀬底島へGOだよ!


「あや~、あのえらいひと、なんだかごきげんです?」

「ま、まあ良いことあったみたいだからね」

「いいことですか~」


 バスの窓から見える、インタビュー中の支配人さん。

 その顔は、とってもえびす顔だった。



 ◇



 バスに揺られて二十分ほど、大きな橋が見えてきた。


『あちらに見えますのが、瀬底大橋でございます』


 ガイドさんのアナウンスにて、橋の名前が分かる。

 そのまんまですな。


「あや~! おっきなはしです~」

「こんなの、作れちゃうんですね」

「しゃしん! しゃしんとりますよ!」


 ハナちゃんも瀬底大橋の大きさに大はしゃぎ、ヤナさんカナさんもキャッキャしている。


「わきゃ~、またいいものみられたさ~」


 偉い人ちゃんも、窓に張り付いてニッコニコだ。

 黄色しっぽもぱたぱた振っていて、とても分かり易い。


『この橋から眺める海は絶景でございます。あちらをご覧下さい』


 盛り上がる車内に、さらにガイドさんの煽り。

 言われたまま外を見ると、ホント絶景。

 橋の上から見る沖縄の海は、空の青さに溶け込むような美しさだ。


「きれいです~」

「すてきさ~」

(いやされる~)


 そんな美しい海をうっとりと眺めながら、バスはのんびり進んでいく。

 やがて橋を渡り終え、瀬底島へ上陸!

 車で来れちゃう離島だよ。


『このバスは瀬底ビーチへ向かっております。道中も美しい風景がございますので、ご堪能下さい』


 島へ上陸すると、本日の目的地がアナウンスされる。

 旅行会社さんによれば、この島では定番のビーチらしい。


「うきゃ~、たのしみです~」

「きょうもいっぱい、およぐさ~」


 ハナちゃんも偉い人ちゃんも、早く泳ぎたくてうずうずしているね。


「なみのりしようね! なみのり!」

「ぎゃうぎゃう!」


 そして妖精さんは葉っぱを取り出して、波乗り宣言している。どうやら、サーフィンにハマったようだ。

 海竜ちゃんも、今日は思いっきり泳げるとあってテンション高め。

 前ひれをぱたぱたさせて、お目々キラキラだ。


 ということでテンションアゲアゲなみなさんと共に、さらにバスに揺られて。

 瀬底大橋の反対側にある、瀬底ビーチへ到着した。

 駐車場にバスが停車し、みんなでぞろぞろと降車する。


「瀬底ビーチって、全長八百メートルほどあるんですね」

「けっこうでかいね」

「砂浜も天然で、サラサラ真っ白らしいです」

「楽しみだ」


 ユキちゃんがガイドブックを見ながら解説してくれたけど、今日の目的地はなかなかのロケーションらしい。

 沖縄の自然をこれでもかと堪能できそうだ。


「それじゃ、ビーチに向かおう」

「いくです~!」


 期待を膨らませ、みんなでぞろぞろとビーチへ向かって進む。

 なんだか建築途中なのかよくわからない建物があるけど、なんだろねこれ。


「わきゃ~、いしでできたでっかいおうち、すごいさ~」


 偉い人ちゃんはその謎の建物に興味が沸いたようで、わきゃわきゃと見上げてはしゃぐ。

 ちたまの鉄筋コンクリ建築、なんだか気に入ったみたいだ。


「つくりかけってかんじです?」

「これ、なんだろな~」


 他のみなさんも、この謎の建物を眺めつつぞろぞろと移動。

 やがて、コンクリートブロックで出来た車止めの向こうに、ビーチが見えてきた。


「うっきゃ~! うみです~!」

「わきゃ~! うちもいくさ~」


 海が見えて我慢ができなくなったのか、ハナちゃんがぽててっと駆け出し。

 その後を、偉い人ちゃんもてここっと追いかける。

 二人とも転ばないように、気をつけてね。


「おれらもいこうぜ」

「およぐわよ~」

(うみ~)


 他の村人たちも、足早にビーチへと向かう。

 みなさんお目々キラッキラだ。


「た、大志さん。私たちも追いかけましょう」

「え?」


 そして何故か、ユキちゃんも俺の手をとって駆け出す。

 ああいや、そんなに急がなくても海は逃げないわけで。

 でもまあ……若い娘さんに手を引っ張られて走るのもなかなか悪くない。

 引っ張られるがままに、一緒に走って砂浜まで向かう。

 それにしても、ユキ先生は握力があるね。ガッツリつかんで離れないよ。


 とまあ色々あって、砂浜へと足を踏み入れると――。


「うっきゃ~! すっごいきれいです~!」

「これはいいさ~! およぎがい、ありそうさ~」


 先に到着していたハナちゃんと偉い人ちゃん、二人で手を取り合いぴょんぴょんしていた。

 もう大はしゃぎだね。


「まじすげえじゃん」

「うみがキラキラしてるとか、すてき」

「うっとりするわ~」


 他のみなさんも、しばし瀬底ビーチの美しさにうっとり。

 今日はこのビーチで、一日思いっきり海遊びだ。


「ではみなさん、水着に着替えて準備運動をしたら――思いっきり遊びましょう!」

「あそぶです~!」

「たのしみだね! いっしょにあそぼうね!」

「およぎまくるさ~」

「クワワ~」


 では、いよいよ念願の海遊び本番だ。

 クタクタになるまで、遊んじゃいましょう!


「あちらに更衣室がありますので、まずは着替えましょうか」

「そうするです~」

「おきがえだね! きがえちゃうよ!」

「いきましょう!」


 更衣室を指さすと、女子のみなさん、すささっと更衣室へ向かっていく。

 その後を追って、男性陣も更衣室へ。

 ヤナさんたちと、もそもそ着替えていたところ――。


「「「キャー!」」」


 となりの更衣室から聞こえてくる、女子たちの悲鳴。

 デジャヴかな?



 ◇



「あきらめたわ」

「これが、しぜんのせつりなの」

「ありのままのじぶん、たいせつにしたいけど、ふるえる」

「何とでも言いなさい。でもこれは、私の一つの有り方なのよ。そう、新しい私なの。そして新しい美なのよ。すなわちこれもひとつの完成系として――」


 お肉さんたちは、とうとう開き直った。

 ただまあ、言うほどぷよってはいない。若干余っているだけだ。

 それくらいの増加装甲であれば、問題は無いと思いますよ。

 ちなみにエステさんが長々と語っているのは、言い訳しているからですな。


「おかあさん、ぱっつんぱっつんです?」

「け、けんこうてきなしょうこよ」

「ハナ、そっとしといてあげなさい」

「あい~」


 ハナちゃんも、カナさんの横っ腹をぷにぷにしている。

 微笑ましいんだけど、痛ましくもある。

 でもまあ、健康的な証拠というのは確かにそうなのだ。


 太れるようになれたということは、それだけ豊かになったという事。

 これは、俺としては嬉しいことで。

 お腹を空かせて森をさまよい、ヘロヘロになっていたあの頃と比べたら……ずっと良い。

 まあ限度はあるけど、まだまだ大丈夫だね。


「ユキさんは、ほっそりしているわね」

「うらやましいわ~」

「みならいましょう」

「で、ですかね?」


 そして、女子たちはユキ先生を羨望の眼差しで見つめる。

 先生はちょっとタジタジだけど、まんざらでも無い感じ。

 ここは一つ、便乗して褒めておこう。ご機嫌取りとも言う。


「まあユキちゃん美人だからね。そのノウハウを、みんなに分けてあげて欲しい」

「で、ですかね。ふ、ふふふふ……」


 はい耳しっぽ来ました。ふさふさ毛並み、ありがたや~。


「ふ、ふふふふふ……」

「タイシ、なんでおがんでるです?」

「せっかくだからね」


 とまあ泳ぐ前に一騒動あったけど、諦めと開き直りにより無事問題解決。

 ではでは、細かいことは気にせず泳ぐとしましょう!


「ではみなさん、ひとまずシュノーケリングをして楽しみましょうか」

「良いですね!」

「おさかな、みるです~」

「さいしょは、のんびりでいこうじゃん」


 まずは軽くシュノーケリングを提案すると、それで良いようだね。

 しゅぴっと仕舞っちゃう空間から、シュノーケルを取り出すみなさんだ。

 去年買ったやつだね。


「タイシ~、いっしょにあそぶです~」

「そうだね。それじゃあユキちゃんも一緒に遊ぼう」

「はい!」


 いつもの三人で集まって、そのへんでのんびりシュノーケリング。

 透き通った海に潜ってみれば、たくさんのお魚が泳いでいた。

 青や黄色、赤や緑の熱帯魚たちが、光をキラキラ反射させながらこちらに寄ってくる。


「うきゃ~! きれいなおさかな、たくさんです~!」

「クマノミがいました! 可愛いですね!」


 初めて見る熱帯のお魚に、ハナちゃんエルフ耳をぴこぴこさせて大喜び。

 ユキちゃんもこういうのは初めてのようで、耳しっぽをキラキラさせて満面の笑顔だ。


 ――我らは海無し県で暮らす、内陸民。しかも冬は極寒の北国在住。

 南国の海で熱帯魚と戯れるとか、素敵過ぎて目が虚ろになるね!


「うふふ~、うふふ~。たのしいです~」

「夢みたいですね!」


 ハナちゃんとユキちゃんの二人も、例に漏れずうっとり。

 同じ内陸の雪国暮らしだからね。気持ちわかる!

 というか我々長野県民にとって、南国の海とは異世界だ。

 沖縄が我らにとってはファンタジーの世界なのだよ。なのだよ……。

 ああ、これはもう新潟を侵略するしかない。海が、海が欲しい……谷浜だけでもいいから!


 とまあ長野県民が南国の海に触れたせいで、若干精神がハイになりすぎておかしくなってはいるものの。

 熱帯魚と戯れながら、のんびり海を漂って沖縄の大自然を堪能する。


「何これ、夢かな? 今十月だよね?」

「長野では、もうこたつ出してますよね」

「ゆめかもしんないです~」


 俺とハナちゃんとユキちゃん。

 三人ともいい感じにダメになりながら、ぷかぷかとシュノーケリングを楽しむ。

 というかユキちゃんの言うとおり、長野じゃもうこたつ出している時期だ。

 なっがの県では六月にこたつをしまって、十月にまた設置する。八カ月もこたつが稼働するんだよ。

 そんなのおかしいよ。こたつ大活躍だよ!


 と、南国との格差により思考がだんだんおかしくなってきた時。

 正気に戻る出来事が起きた。


「お、うまそうなカニ、めっけたじゃん!」

「え? カニいんの?」

「みせてみせて」


 近くにいたマイスターたちが、なんか盛り上がっているんだよね。

 どうやらカニを捕まえたようだけど……。


「……なあ、このカニ、ピリっとくるぜ」

「おかしくないかしら~」

「いやなよかん、するわ」


 マッチョさん、腕グキさん、ステキさんの三人とも何かを感じ取ったようだ。

 俺も嫌な予感するよ。


「そお? めっちゃうまそうじゃん?」

「おまえがそういうなら、そういうことなんだろうな」

「ほぼ、まちがいないわ~」

「あるいみ、かくじつよね」


 そして三人、すすすっとマイスターから距離を取る。

 そうそう、それが良いですよ。


「ねえねえタイシさん、これおいしいやつだよね?」


 いやあ! こっちこないで!?

 絶対それ毒だから! 間違いないから!


「どしてにげるの?」

「キャー!」


 マイスターが手に持つそのカニさんは、赤褐色で白っぽい斑紋があって。

 あと、爪の先が黒いんだ。良くない感じがするよ!


「おい、お前ら何やってんの?」

「あ、高橋さんちょっとそのカニ、鑑定してよ」


 マイスターからキャーキャー逃げていると、高橋さんがすいっと泳いでやってくる。

 海に詳しい高橋さんなら、このカニの正体が分かるはずだ。


「カニ? どれどれ……」

「うまそうでしょ?」


 高橋さんがカニを覗き込み、種類を特定にかかる。

 そしてマイスターは美味しそうでしょアピール。

 そのアピール、誰一人として信じてはいない。


「あ~、これスベスベマンジュウガニだぞ」


 そしてすぐさま、高橋さんが種を特定する。

 スベスベマンジュウガニ、名前を聞けば美味しそうだけど……。


「これ、食ったらアレするやつだから逃がしてやれ」

「なん……だと……」


 ほら、やっぱり。

 アレするやつと指摘され、マイスターの手からぽろりとスベスベちゃんが落ちて、ぽちゃんと海に戻って行った。


「どうしてそういうの、みつけちゃうのおまえは」

「ゆだんならないわ~」

「アレするカニとか、ふるえる」

「もっとほめてくれ」


 褒めてないよ。褒めてないからね。というか本当に油断ならない。

 どうしてピンポイントで、そういうやつを見つけちゃうのか。

 海に来ても、マイスターはマイスターなのであった。

 

なぜかとばっちりを受ける新潟

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