第十三話 油断大敵いなり寿司
「おりょうり、たくさんあるです~」
「たべほうだい、まだかな~」
「たのしみだね! たのしみ!」
「まちきれないさ~」
あと数分で時間となるけど、みんなうずうず。
並んだお料理を見つめて、お目々キラッキラだ。
ここで、食べ放題について一つアドバイスをしておくことにする。
「えっとですね。こういう食べ放題のコツをちょっと教えます」
「あえ? コツがあるです?」
「たべほうだいなのに?」
「なんだろ?」
コツと言われてみんな首を傾げる。
食べ放題だから、じゃあ好きなお料理を好きなだけ取れば良いじゃんとなりがち。
でも今回はホール貸し切りなので、他のお客さんたちと激しい競争は起きない。
そう言う場合に大事になるのが……計画性だ。
「まずはまんべんなく少量を、お皿に取ってきます」
「ちょっとしかとらないです?」
「そうだよ。まずはお試しで、沢山の料理をちょっとだけ取ってくるんだ」
ハナちゃん心底不思議そう。
沢山お料理があるのに、まずはちょっとだけ取ってくる意味が分からない感じだ。
でもこれ、かなり大事。
「何でかというと、美味しい料理や自分の好みのやつは、食べてみないと分からないからなんだ」
大好きなお料理があっても、味付けが好みかは別の話。
大喜びで最初に沢山取ってきたけど、思ってた味じゃなかったと言うことは良くある。
「もし沢山取ってきて好みの味じゃなかったら、残り全部を食べるのキツいでしょ」
「ハナ、ちゃんとのこさずたべるです?」
「ハナちゃんえらいね~」
「うふ~」
ハナちゃん残さないよ宣言したので、思わずなでなでしちゃう。
ご機嫌ハナちゃん、お耳がぴっこぴこだ。
ただそれは大事なことだけど、そうすると一つ問題が出てくる。
「ただ、それだと他に美味しいお料理があっても、そんなに食べられなくなっちゃうよね」
「あや~、それはあるかもです~」
「だから、まずはお試しでちょっとだけ。そうすれば、失敗は減らせるんだ」
「なるほどです~」
選択の自由を思いっきり享受するには、若干の慎重さが必要ってことだね。
あとは、発見というものもある。
「それに、大穴で美味しいお料理が見つかる事もあるんだ」
「あや! おいしいおりょうり、みつけちゃうです?」
「そうそう、美味しいやつを探す楽しみが出来るよ」
「たのしそうです~!」
ノーマークだったおそばを軽く試してみたら、異常に美味しかったと言うこともある。
この辺、食べ放題とは奥が深い。
そういう発見をするためにも、まずはお試しが大事ってことだね。
「そんなわけなので、まずはお試しでちょっとだけ、が良いと思いますよ」
「ハナ、そうするです~」
「たべほうだい、なかなかあたまつかうな~」
「うちらも、ためしてみるさ~」
「おためしだね! おためし!」
大体みんな理解してくれたようで、まずはお試しあれだね。
まあこの辺は人それぞれに戦略があるとは思うけど、食べ放題初心者はこれが無難だ。
競争が激しい食べ放題の場合は、ターゲットを決めて速攻が必要だけど。
今回の食べ放題はそんな戦いが無いので、大丈夫だと思う。
「大志さん、そろそろお時間ですよ」
「あ、もうそんな時間なんだ。ユキちゃん教えてくれてありがと」
「いえいえ」
みんなに説明している間に、良い時間になったようだ。
ユキちゃんがスマホの時間を見せてくれて、確認完了。
では、開始の宣言をしよう。
「はいみなさん、食べ放題開始します。思いっきり――食べて飲んで下さい!」
「「「わーい!」」」
宣言すると、うずうずしていたみなさんダッシュでお料理のもとへ。
いよいよ、宴の始まり始まりだ!
「ちょっとずつ、とるです~」
「おさかな! おさかなさ~!」
「うおおお、おにくだ~!」
食べ放題開始となり、みなさんプレート片手にお料理をちまちま盛り始める。
ハナちゃんはアドバイス通り、ちょっとずつ幅広く集めているね。
「わきゃ~! みたこともないおりょうり、たくさんさ~」
偉い人ちゃんは、沢山のちたまお料理を見て大喜びしている。
黄色しっぽをぱったぱた振って、目移りしまくりだね。
どれを取ろうか迷っているようで、あっちにうろうろ、こっちにうろうろ。
……迷わなくても、気になったやつ全部取ってくれば良いと思うけど。
「あまいやつ! たくさんあるよ!」
「すごいね! よりどりみどりだね!」
「かたっぱしから~」
そして妖精さんたち、俺のアドバイス完全無視でデザート山盛り中。
チョコレートムースやらケーキやらプチシューやらを、みんなで協力して一つのプレートに盛っている。
いきなりクライマックスな感じだ。
「大志さん、私たちも行きましょう」
そんなみんなを眺めていると、ユキちゃんからお誘いが。
せっかくだから、ご一緒しましょう!
「そうだね。せっかくだから、沢山食べよう」
「おーし酒飲むぞー!」
「ビールで乾杯と行こう」
ユキちゃんのお誘いを切っ掛けに、高橋さんと親父も動き出す。
……二人とも、いきなりアルコールドリンクバーへ直行した。
とことんまで飲むつもりだなこれ。
まあそんな親父と高橋さんは気にせず、俺もお料理を取りに行こう。
「じゃあまずは、神様の分を用意しようか」
「そうしましょう」
(やたー!)
神様分の用意をしようとユキちゃんと話していたら、神輿がほよよっと飛んできた。
沢山取り分けますので、少々お待ち下さいだね。
というわけで、神様分をちょいちょいとお皿に盛る。
ポテサラサンドがお気に入りだったようだから、ポテサラ多めにしてみたり。
二人がかりで盛り付け、神様分の準備完了!
「神様、こちらがお供え物になります」
「沢山食べて下さいね」
神様専用テーブルにお料理を置いて、お供えだ。
(ありがと~!)
早速神輿はテーブルに降り立ち、もぐもぐと食べ始める。
ぴかぴか光って、ご機嫌神様だね。
「他のみなさんにもお供えをお願いしますので、ここで待機していればお料理がどんどん運ばれてきますよ」
(わーい!)
神様の元へは、みんなにも協力してもらってどしどしお供え物を提供だ。
このテーブルで待っているだけで、次々に運ばれてくるだろう。
まわりのみんなにも、声をかけておかないとね。
「というわけで、みなさんもちょくちょく神様へお供えして頂けたらと」
「「「はーい!」」」
声をかけると、みなさん元気にお返事だ。これで神輿甘やかし作戦も開始だね。
では、俺たちも自分の分を取り分けるとしよう。
「それじゃユキちゃん、一緒に取り分けよう」
「はい!」
妙に嬉しそうな感じのユキ先生と共に、ちまちまと料理を盛っていく。
牛肉のローストとか、鴨の生ハムとかビーフステーキとか。
主に肉しか取っていない俺。
「わあ! 白身魚のムニエルとか、食べ放題で初めて見ました!」
「ここのビュッフェ、凝ってるねえ」
「カニもありますね」
「こりゃすごい」
ユキちゃんはサラダも含めて、健康的な感じで取り分けている。
女子力高いなあ。あと、毛並みが綺麗だなあ。ブラッシングしたい。
そうして、耳しっぽがふぁふぁしてるよ権現様と一緒にキャッキャしていた時のこと。
パリっとしたスーツを着たスタッフさんらしき人が、すすすっとやってきた。
それも、何故かお重を抱えて。
……追加のお料理なのかな?
と思っていたら、俺とユキちゃんの所へやってきた。
スーツの人は、初老って感じの男性だ。
「お忙しいところ、失礼致します。差し出がましいかも知れませんが、お気持ちを持って参りました」
その方は、なんかそんなことを仰る。
……差し入れかな? でもそんなサービス、あったっけ?
「お気持ち、ですか?」
「はい。ほんのお気持ちです。よろしければ、受け取って頂けたらと」
ますます意味が分からない。知らない人からお気持ちって、なにそれ?
……でもまあ、とりあえず受け取っておこう。
ここでつっかえすと、相手に恥をかかせてしまう。
「では、ありがたく頂戴致します」
「これはこれは、受け取って頂けてありがたいです」
俺が受け取ったのを確認すると、スーツさんはまたすすすっと戻っていった。
ほんでちらりとネームプレートを見たけど、支配人って書いてあったわけで。
そんな偉い人が、なぜわざわざ……。
「大志さん、今のは何だったんでしょうね」
「正直わからない」
ほんと謎。何これ怖い。
ただ、悪い人には見えなかった。きっとなにか、ワケがあるのだろう。
「まあ……せっかく頂いたのだから、中身を見てみよう」
「そうですね」
分からないことは置いておいて、頂き物の中身を確認だ。
さてさて、何が入っているのかな?
「じゃあ、開けるね」
ぱかりとお重の蓋を開けて、中を確認してみると――いなり寿司が。
それもたぶん、高級品のやつ。
「これ、いなり寿司ですよね? なぜ支配人がわざわざ……」
そしてユキ先生は、いなり寿司ちゃんを見て首を傾げるわけだけど。
俺はもう、このお気持ちの理由が、完璧にわかってしまった……。
「……せっかくだから、一緒に食べよう」
「そうですね。せっかくですから」
耳しっぽをふあっさふあっささせて、いなり寿司ちゃんを覗き込むキツネさん。
しっぽの動き具合からすると、やっぱり好きなんだね。
「しかし油断したな……」
まさか、支配人さんが――霊能力持ちとは。完全に油断した。
おまけに、恐らく同系統のアレを信仰している。
そら慌ててお供え物持ってくるよ。本物がいるんだから。
「? 油断って何をですか?」
「あ、こっちの話だから、気にしなくて良いよ」
「ですかね?」
しかしこの耳しっぽさん、気づいてらっしゃらない。
このうかつさがまた良いのだけど。
「それより、お料理食べようよ。ハナちゃんちのテーブルで一緒に」
「そうですね!」
さくっとはぐらかして、この話はお終いにする。
さてさて、楽しくお料理食べましょうだね!
「……」
柱の影から支配人さんが、ちらっちらっとこっちを見ているけど。
ほんともう、お騒がせして申し訳ない。
このお気持ち、美味しく頂きますので……。
◇
いなり寿司差し入れ事件とか、不思議な突発イベントはあったものの。
美味しい料理が増えたので、結果的には良い出来事ではある。
支配人さんに感謝しつつ、ハナちゃん一家とお料理を食べることにした。
「あや~! これがおいしいです~!」
みなさんお目々キラッキラで、お試しで取ってきたお料理をもぐもぐしている。
ハナちゃんはローストビーフが気に入ったようで、一口食べてはとろんとした表情になる。
可愛いなあ。
「お、おお……ここは天国か……」
「しゃしんとってるひまもないわ!」
その隣のヤナさんはビーフステーキを食べては感動し、お酒を飲んでは感動し。
カナさんも同じ料理を食べて、夫婦仲良く食事は進む。
「ふがふが~!」
「あらあら~!」
「うめえ」
ひいお婆ちゃんやお婆ちゃん、そしてお爺ちゃんは天ぷら盛り合わせではしゃいでいた。
みんなお気に入りの料理が見つかったようで、何よりだね。
「あら! このいなり寿司、美味しいですね!」
「高級品だからね」
ユキ先生は、お気持ちのいなり寿司ちゃんを大喜びで食べている。
支配人さん、チョイス成功ですよ。
心なしか、耳しっぽの毛並みもツヤが良くなりましたな。眼福眼福。
「ちなみに、タイシのもってきたこれは……ラーメンです?」
ご機嫌耳しっぽさんの毛並みを楽しんでいると、ハナちゃんが俺の持ってきたとあるお料理に興味を持った。
これはラーメンというか、そばかな?
「沖縄そばって言うらしい。食べるのはこれが初めてなんだけど」
「ラーメンとはちがうです?」
「正直、わからない」
見た目は太いちぢれ麺の、まさにラーメン。
たぶんラーメンで良いと思うんだけど、食べたことが無いからわからないのだ。
そして食べたことが無いメニューだからこそ、お試しで取ってきたわけだね。
「試しに食べてみるよ。どんな味かな?」
さっそく、沖縄そばちゃんを一口啜ってみる――。
――赤いやつのきつねうどん。
第一印象は、それだった。
ラーメンの味を想像していたら、まさかのカツオ出汁。
カツオの香り高い風味に、やや甘めの醤油味。
麺はちぢれ太麺でラーメン風なんだけど、スープがうどん。
なんという、面白い料理!
「ハナちゃん、これ食べてみてよ。びっくりするよ」
「あえ? どれどれ……」
思わずハナちゃんにも味見を勧める。
俺からお椀を受け取って、ちゅるると一口食べると――。
「――あやー! ラーメンとはなんかちがうやつです~!」
「不思議だよね! 意外性っていうか」
「あい~! おもしろおいしいです~!」
そのまま、ハナちゃんは俺の沖縄そばを完食。
味見じゃなくてガチで食べられちゃった……。
まあ食べ放題なので、また取ってくれば良いのだけど。
「へえ……ラーメンぽいのに、なんか違って美味しいと」
「たべてみましょう」
「ふがふが」
それを見たヤナさんたちも、ふらふらと麺類コーナーへ向かった。
ラーメン大好きエルフさんだからね。興味出たんだろう。
「うお! このラーメンなんかちがうけどうめえ!」
「まじで」
「おれもたべてみよ」
次第に、他のエルフたちにも沖縄そばの噂が広まる。
ぞろぞろと、麺類コーナーに群がるエルフたち。
こういう感じで、色んな味に出会えるのが食べ放題の良いところだね。
「タイシ~、おりょうりとりにいくです~」
そんなエルフたちを眺めていたら、ハナちゃんからお誘いが来た。
ちょうど俺も最初の分を食べきった所なので、一緒に行こう。
あと、ユキちゃんもお誘いするかな。
「ユキちゃんも一緒にどう?」
「そうですね。お付き合いします」
というわけで、三人でお料理を取りに行くことに。
ついでに、みんなの様子も見ておこう。
エルフたちは沖縄そばで盛り上がっているのがわかっているので、ドワーフちゃんたちの所へ行くとするか。
「じゃあ、とりわけついでにみんなの所に顔を出そう」
「あい~」
「そうしましょう」
三人で歩いて、まずはドワーフちゃんの所へ。
そこでは、酒盛りが始まっていた。
「わきゃ~! いろんなおさけがあるさ~」
「おりおんびーるってやつ、いくらでものめちゃうさ~」
「おさかなたくさんさ~」
主にお魚のお料理をつまみにして、お酒を水のようにガブガブと飲んでいる。
サーモンとマグロが人気のようで、みんなご機嫌で食べたり飲んだりだね。
ちょっと声をかけてみよう。
「みんな、好きな食べ物を存分に食べているかな?」
「もちろんさ~。このおさかなのくんせい、とってもおいしいさ~」
「あかいみのおさかな、めずらしいさ~」
「あわもりっておさけも、かおりがよくてさいこうさ~」
声をかけると、わっきゃわきゃと元気にお返事だ。
どうやらドワーフィンでは、赤身魚が珍しいぽいな。
そういや、あっちは大河の世界だからほぼ白身魚ばかりなのかも。
サーモンも実は白身魚なんだけど、まあそこは気にしないことにして。
マグロは正真正銘赤身なので、ちたまの面白いおさかなをご堪能下さいだね。
「……」
ちなみに偉い人ちゃんは、無言でカニを攻略中。
黄色しっぽをピクピクさせて、剥いては食べ剥いては食べ。
カニ好きドワーフの誕生である。
「――! ……」
ちなみに身を取り出すのに失敗すると、黄色いしっぽがピピクッっとなったあとへろりと垂れ下がる。
地味にショックを受けているのが見てわかるのが、とても可愛らしい。
そんなカニ剥き失敗偉い人ちゃんに、魔法の道具を授けよう。
じゃじゃーん! カニフォーク~!
カニスプーンと言っても良いらしい。
「すみません。カニはこの道具があると食べやすいですよ。ほら、こうやって」
「わきゃ~! これはべんりさ~!」
さっそくカニフォークを手に取り、ちまちまほじほじする偉い人ちゃん。
これで、身を取り出すのに失敗しても大丈夫だね!
「わきゃわきゃ……わきゃ」
つおい味方を手に入れて、また偉い人ちゃんはカニとの戦いへと戻っていった。
カニ戦士である。
日本酒熱燗を片手に、カニを食べては日本酒を飲む偉い人ちゃん。渋い飲み方だ。
さすがお年――おっと、若いのにさすがですねえ。
「はい、おりょうりもってきたさ~」
「クワワ~!」
「ギニャギニャ」
そんなカニ戦士ちゃんの足下では、子供ドワーフちゃんが動物たちのお世話をしていた。
せっせとお料理を運んで、ペンギンちゃんとフクロイヌに食べさせてあげている。
なんて偉い子! 約束をきちんと守っているね。
これは褒めてあげないと。
「君、偉いね! ちゃんとお世話してるんだ」
「えらいです~」
「約束守っているのね!」
俺とハナちゃん、そしてユキちゃんの三人で子供ドワーフちゃんをなでなでする。
あと、きちんと大人しくしている動物たちも、なでなでだ。
「わきゃ~」
「クワワ~」
「ギニャギニャ」
褒められたり頭を撫でられたりして嬉しかったのか、子供ドワーフちゃんも動物たちもキャッキャと大喜び。
ほんわかするね。
さてさて、ドワーフちゃんたちは問題なさそうだね。
みんな楽しく飲んだり食べたりしている。
お次は、妖精さんたちを見てみよう。
「それじゃあ、次は妖精さんたちを見てこよう」
「あい~」
「あっちですね」
ユキちゃんが指さした先には、キラキラ粒子のイルミネーションが輝いている。
テーブルから白い粒子がナイアガラ。
そこだけクリスマスだよ。
「……喜んでいることは、ここからでも分かる」
「まぶしいです~」
「キラキラが激しくて、あっちのテーブルで何が起きているのか分かりませんね……」
若干の嫌な予感を抱えつつ、キラキラテーブルへと向かう。
すると――。
「あまいものたべほうだいだね! たべほうだい!」
「しんさくできたよ! しんさくおかし!」
「しっぱいしたやつ~……」
デザートのお菓子を素材に、新たなお菓子を量産している……。
「あああ! 大志さん! パフェが出来てますよ!」
「アイスにチョコレートにケーキ、それに果物をを組み合わせているのか……」
「おいしそうです~」
妖精さんたちは、独自にチョコパフェやらフルーツパフェ、ケーキパフェを生み出していた。
ちょっと目を離した隙に、創作お菓子祭りが始まっている……。
「すごいのできた! みてみて!」
「おいしいね! よくできてるね!」
サクラちゃんはケーキパフェを自慢げに見せてくるけど、出来たそばからアゲハちゃんが食いつくので完成形が分からない。
常に食べさし状態での開示だ。というかもう半分消えた。
どんだけ食べるの早いのさ。
「しっぱいしたやつ~……」
あとイトカワちゃん。……何をどうしたら、小惑星形状のパフェが出来るわけ?
逆に凄いよそれ。岩石パフェだよ。
「しっぱいしたやつ、どうぞ! どうぞ!」
しかもお勧めしてくる。
「どうぞ! どうぞ!」
……この猛プッシュ、食べるしか無い。
「で、では……頂きます」
「おいしいよ! おそらくおいしいよ!」
恐らくってフレーズが怖いけど、とりあえず食べよう。
では――実食!
――サーターアンダギーパフェだー!
チョコのかかったサクサクの表面は甘く、さらにかじると中からとろりとアイスがこんにちは!
クッキーアイスみたいでイケる!
「これ美味しいね! 斬新なお菓子だよ!」
「あじみしてないやつうけちゃった! じっけんせいこうだよ!」
味見はしようよ。味見は。
というか実験って、それ言っちゃだめなやつだよ。
内緒にしとこうよそれ。
大志、お父さんと高橋さんは、二人の邪魔をしないよう気を遣ってくれたんですよ……。