第七話 空から見る、にっぽん!
「うきゃ~、うきゃ~」
「わっきゃ~」
窓から見える太平洋沿岸の地形に、ハナちゃんも偉い人ちゃんもお目々キラッキラ。
「ちたまのちけい、おもしれえ~」
「きれいだわ~」
「たかいね! すごいね!」
他の方々も、キャッキャと大はしゃぎしている。
まだまだ出発したばかりだけど、機内は大盛り上がりだね。
「フフフフフ……」
左隣の耳しっぽさんも、もふもふご機嫌。左手を離してくれないけど。
あのですね、血行がちょっと滞ってまして。
そろそろ解放して頂けたらなと……。
「あ、あの~。ユキ先生?」
「フフ、決定的」
……先生は一人の世界に籠もってらっしゃるようだ。
しばらくそっとしておこう。
というか、ツヤツヤ耳しっぽが顕現していて、俺的に眼福ということもある。
この油断しきって正体をポロリしているところが、また良いのだ。
「そらをとぶって、すごいです~」
「くものうえさ~」
そうしている間にも、飛行機は三浦半島を通り過ぎ、小田原を通り過ぎ。
箱根やイズ半島が見えてくる。
箱根山とかは、上空から見るとカルデラというのがはっきりわかるね。
これは地上からはなかなか分からないので、面白い。
というか、カルデラでかすぎ。あんなんが噴火したらえらいことになるな……。
「あや~! なんだか、とんがったやまがあるです~!」
「ほんとさ~! でっかい、やまがあるさ~!」
箱根のカルデラを見てぷるぷるしていると、ハナちゃんと偉い人ちゃんがとある山を発見した。
フッジッサーンだね。
「まじまじ?」
「てっぺんがしろいわ~」
「とんがってるね! おもしろいね!」
他の方々も、フッジさんを見てお目々まんまるになった。
まだ早朝なので雲に隠れておらず、はっきりとその山体が見渡せる。
ちたまにっぽんの象徴になるだけあって、美しいお姿だね。
さすがフッジさん。
「タイシタイシ~! あのやま、すごいです~!」
「あの山は富士山といって、自分たちが住んでいる島で一番高い山なんだよ」
「いちばんたかいやまです!? おどろきです~!」
フッジさんについてハナちゃんに説明したら、一番高いというフレーズに驚く。
エルフ耳がぴっこぴこして、ビックリハナちゃんだね。
「……今、島って聞こえましたが」
「うちも、そうきこえたさ~?」
おや? ヤナさんとか偉い人ちゃん、別の言葉に反応したぞ。
ちたまにっぽんは島国だけど、それがどうかしたのかな?
「確かに島と言いましたが、それがどうかしました?」
「どう見ても、島って大きさじゃない気がしますが……」
「しまって、もっとちっちゃいものさ~?」
どうも、ヤナさんや偉い人ちゃんの感覚だと、島と言えば小さい物らしい。
海の無い世界出身の人たちだからかな?
……確かに、大洋が無ければ巨大な島は存在しないか。
彼らの世界だと、島と言えば湖とかにある、そこそこの大きさくらいしかないか。
良い機会だから、ちたま日本のこともちょろっとお話しておこう。
「あの右手に見える陸地は、間違いなく島ですよ」
「あれが、島……」
「しんじられないさ~……」
唖然として窓の外を見る二人だけど、まあ日本列島は島としちゃでかい方だね。
一億三千万人が暮らせる、それなりの土地はあるわけで。
わりと国土面積はデカい部類の国家ちゃんだね。
「タイシ~。ハナたちも、しまでくらしてるってことです?」
俺たちの話を聞いていたのか、ハナちゃんも質問してきた。
そうなんですよ。みなさん島に暮らしているんですよこれが。
「そうだよ。ハナちゃんもみんなも、島の住人だったりするんだ」
「しましまのひとです~」
「そうだね、しましま仲間だよ」
「なかまです~!」
しましま仲間というフレーズが気に入ったのか、ハナちゃんキャッキャだ。
お目々キラッキラで、フッジさんとにっぽん列島を見つめている。
「私たちが、島の住人だったとは……」
「おどろきさ~」
ヤナさんと偉い人ちゃんも、好奇心旺盛な目で窓の外を覗く。
まだ、そこに見えるのが巨大な島、という実感は持てていない感じだね。
宇宙から見れば、はっきりと分かるかもだけど。
「ちたま、ふしぎなところです~」
「興味深いですね……」
「ほんとさ~」
またもや窓に張り付いて、ふむふむとにほんの地形を眺め始める。
そろそろフッジさんを通り過ぎて、赤石山脈――いわゆる南アルプスが見えてくる頃かな?
これがあるから、しっずっおっかとなが~のを繋ぐ、良い感じの高速道路が作れないんだよな。
遠回りせざるを得なくなっている。
交通インフラ整備における、超が付くほどの難所だ。
そして南アルプスを通り過ぎてしばらくすると、なごやーが見えてきた。
上空から見れば分かるけど、でかい都市だ。
こんだけ平地があれば、そらでかくなるというものか。
しかし、あっという間に通り過ぎ、知多半島と伊勢湾、そして三重拳が見えてくる。
空を飛んでいるから、すっごい速い。
「なんだか、どんどん、とおりすぎてくです?」
「速いですね」
「みえたとおもったら、もう、うしろにいっちゃってるさ~」
みんなも同じ事を思ったようで、口々に「速い」と言う。
そりゃまあ、そうだね。亜音速で飛んでいるからね。
実際の速度はどうかな? ちょっとGPSで見てみよう。
スマホのGPS速度計アプリを立ち上げてっと。
……だいたい、時速九百キロ近いね。良い感じに巡航している。
「タイシさん、今って……どれくらいの速さで飛んでいるのですか?」
ちょうど良くヤナさんが質問してきたけど、どうやって答えようか……。
歩く速度に例えてみよう。だいたい時速四キロのはずだ。
「歩く速度に対して、何倍くらい速いのかで計算するとですね」
「はい」
「二百二十五倍です」
「はい?」
「二百二十五倍です」
「にひゃく……?」
「二百二十五倍です」
「……」
ヤナさんが動かなくなった。
「……か、考えるだけ、無駄だと言うことがわかりました」
「むだです~」
そして思考放棄。でもまあ、確かに考えるだけ無駄である。
二桁違っているからね。気にしたら負けだ。
「ちなみに、音よりちょっと遅いくらいの速度です」
「あ~! あ~! 聞こえない~!」
「おとうさん、げんじつとうひはじめたです~」
追い打ちをかけると、ヤナさん耳を塞いであーあー言い始めた。
今かなりヤバイ速度で移動していることを認めると、気絶するからね。
懸命な判断である。
「――……」
しかし俺たちの話を聞いていたらしき偉い人ちゃん、ひっそりと気絶していた。
計算が得意なだけあって、うっかりなんかの計算してしまったらしい。
巻き添えである。
「き、気にしない……気にしない……」
「そうそう、それがいいじゃん?」
「かんがえるのを、やめるのだ」
「きにしたら、まけよ~」
ぷるぷる震えるヤナさんだけど、回りのみなさんはお気楽だ。
みんな考えるのを止めたらしい。
そうそう、うかつに計算とかしたら怖いからね。
「……」
偉い人ちゃんは気絶したけど、エルフたちは無事。
この辺、ちたま慣れの差はあるかもね。
◇
偉い人ちゃんが気絶してからほどなく。
客室乗務員さんたちが、飲み物を配り始めた。
「こんそめすーぷでおねがいします」
「わたしも」
「おれもおれも」
「こんそめ! こんそめ!」
この辺も練習済みなため、村人たちは混乱することも無く好みの飲み物を受け取っている。
おおむね、コンソメスープ大人気だね。
「わきゃ? いいにおいがするさ~」
そんなコンソメスープの匂いを検知し、食いしん坊の偉い人ちゃんが飛び起きる。
黄色しっぽも、ピンと起き上がった。
チャンスを逃さない人だね。
「お飲み物はどれになさいますか?」
「わわきゃ?」
しかし偉い人ちゃんは事前練習をしていないので、いざ飲み物を貰う段になってうろたえ始めた。
……とりあえず、コンソメスープをお勧めしておこう。
「コンソメって言っておけば大丈夫です」
「わかったさ~。こんそめってやつで、おねがいさ~」
「はい。こちらをどうぞ」
「ありがとさ~」
こうして無事偉い人ちゃんも飲み物を受け取り、一安心。
と、思っていたら。
「こちらもどうぞ。おもちゃでございます」
「わきゃ?」
飲み物と一緒に、おもちゃも出てきた。
そういや、子供向けにこういうサービスやってたな。
どうやら飛行機の組み立て式プラモを配っているようだ。
……なかなか、出来が良いな。
「あや! おもちゃもらっていいです?」
「もちろんですよ」
「わーい!」
ハナちゃんもおもちゃを貰い、キャッキャと大はしゃぎだ。
にっこにこ笑顔で、おもちゃを眺めている。
「おもちゃだって! でっかいね!」
「なぞのおもちゃ~」
「うちも、もらっちゃったさ~」
(わたしも~)
「ギニャギニャ」
「クワックワ~」
「ぎゃう~!」
子供料金組も全員もらったようで、みんな大はしゃぎだ。
さっそく取り出して、組み立て始めている。
羽根をはめるだけなので簡単とはいえ、みなさんなかなかお上手。
「ギニャ」
……フクロイヌも普通に組み立てているけど、なんちゅう器用な動物。
驚くほど賢いぞ……。
とまあフクロイヌかなり賢い事件に驚いたりもしたけれど。
思わぬサービスに、おもちゃを貰った子たちは大喜びだ。
「うきゃ~、ひこうきのおもちゃです~」
「たからものさ~」
ハナちゃんも偉い人ちゃんも、組み上げた飛行機のおもちゃに夢中だ。
良い記念品が貰えたね。
「こんそめすーぷ、おいしいな~」
「あったまるわね~」
「なんか、はらがへってきたじゃん」
大人のみなさんも、コンソメスープをすすってほんわかしている。
マイスターとかは、お腹が減ってきたとか言ってるね。
……そろそろ、空弁でも食べようかな?
もう四国が見えているくらいなので、時間的にはちょうど良いかも。
ちょっくら周りの人たちに、聞いてみよう。
「そろそろ、お弁当でも食べようかなって思うけど、どうかな?」
「そうですね、ちょうど良い時間だと思います」
「おべんと、たべるです~」
ユキちゃんとハナちゃんは良いみたいだ。
「あさにもらったやつさ~? たのしみにしてたさ~」
「お弁当、そろそろ良いかもですね」
「たべましょ!」
「ふがふが」
偉い人ちゃんも、ヤナさんカナさんも。ひいお婆ちゃんも賛成だ。
他の人は……。
「おべんとう、たべるんだって」
「おう、まってたじゃん」
「くおうぜ!」
「おべんと! おべんと!」
俺たちの会話を聞いていたのか、みんなも良いみたいだね。
それじゃ、朝食と行きましょうか!
「はいみなさん、それではお弁当を食べましょう!」
「「「わーい!」」」
とりあえず号令をかけると、みなさんお弁当を取り出す。
今回用意した空弁は、焼き肉弁当とイカめしだよ。
組み合わせがアレなんだけど、お願いしたらこの二つなら用意できるって言われたわけで。
どっちにしようか迷ったあげく、両方買ってしまったという優柔不断の結果である。
「タイシ~、いっしょにたべるです~」
そんな優柔不断弁当を二つとも、ハナちゃんぴょいっと取り出した。
待ちきれない様子でうずうずしているので、俺もさくっと準備しよう。
と、その前に。
早弁した神輿に、追加のお弁当を渡さないとね。
神様の分は俺の空間に仕舞ってあるから、それを取り出して……と。
「タイシ、ずいぶんじょうずになったです~」
「手慣れてきましたね。謎空間の使い方」
お弁当を取り出すと、それを見ていたハナちゃんとユキちゃんが褒めてくれた。
実はコツコツ、家で練習してたんだなこれが。
ちなみに今現在、バスタブくらいの容量が仕舞えるようになっている。
(おそなえもの?)
おっと、そうこうしているうちに、謎の声がお弁当をロックオンした。
というか、神輿がこっちに飛んできている。
この辺の嗅覚が凄いね。もったいぶってもアレなので、早速お供えしよう。
「神様、空弁をお供えします」
(ありがと~!)
ほよよっと飛んできて、おべんとうを掴んで持っていく神輿。
今回は神様空間へ転送じゃなくて、現地で食べるようだ。
機内で食べるお弁当、というシチュエーションを楽しむっぽいね。
なんだかんだで、神様も旅行を楽しんでいて何よりだ。
ちなみに四個渡してある。それだけ食べれば、満足頂けるだろう。
と、神輿を見てほくほくしていたところ。
――なぜか焼き肉弁当の、良い香りが漂ってきた。
「わきゃ~、いいにおいさ~!」
「おいしそうです~」
香りのする方を見てみると、偉い人ちゃんがすっごいキャッキャしていた。
ハナちゃんも、焼き肉弁当の香りでうっとりしている、
そして良く見ると、偉い人ちゃんのお弁当から湯気が出ているわけで。
これはもしかして――温め直した?
確認してみよう。
「すいません、それって……温め直しました?」
「わきゃ? だめだったさ~?」
思わず聞いてしまったけど、思った通り温め直したようだ。
そして、ダメなんてことは全然無い。
むしろ超便利!
「いえいえ、お弁当がより美味しくなりますよ」
「よかったさ~」
「というか、それ凄い便利ですね。温め直せるのは」
「そうさ~?」
熱を操れない俺たちとは違い、ドワーフちゃんにとっては当たり前の事。
凄い便利なんだけど、本人には実感がないっぽいね。
「私たちは自由に熱を操れないので、こういうことは出来ないんですよ」
「それは、ふべんかもさ~」
「まあ、仕方が無いですね」
ぼくはちたま人だからね。しょうが無いですよ。
熱を操る能力はないわけですな。
「……あ、いいことおもいついたさ~!」
ぼくはちたま人と自分に言い聞かせていると、偉い人ちゃんが何か思いついたようだ。
わきゃっと席を立って、他のドワーフちゃんたちの所へ歩いて行った。
「みんなのおべんとう、うちらであっためてあげるさ~」
「いいかもさ~」
「おてつだい、するさ~」
おや、どうやらドワーフちゃん軍団は、お弁当ほかほか作戦を実行するようだ。
話を聞いた他の子たちも、わっきゃわきゃと散開し始めた。
そしてすぐさま、熱を操れない組のお弁当を温め始める。
「どうぞさ~」
「おお! ありがとう!」
「ほっかほかだね! あったかいね!」
「おいしそうです~」
(ほかほかおそなえもの~)
ドワーフちゃんたちもなかなか動員力があるので、みんなのお弁当はほかほかに。
温めて貰った方々、みんな嬉しそうだ。
「タイシさんのおべんとうも、あっためるさ~」
「ありがとうね。とっても助かるよ」
「どういたしましてさ~」
俺の所にも、ちっちゃな子供ドワーフちゃんがやってきて温めてくれた。
焼き肉弁当もイカめしも、ほっかほかで良い香りがする。
これは良いね。冷めないうちに頂くとしよう。
「それじゃあ、食べようか」
「いただきますです~」
「まさか、機内であったかお弁当が食べられるとは思いませんでした。頂きます」
俺とハナちゃん、そしてユキちゃんと三人でお弁当をもぐもぐ食べる。
特製焼き肉タレで味付けされた、やわらかな牛焼き肉。
肉の旨味とタレの旨味が引き立て合い、タレが染みこんだほかほかご飯でかき込む。
やっぱり、暖かいご飯は美味しいね。
「やきにく、おいしいです~」
「暖かいので、より美味しくなってますね!」
ハナちゃんとユキちゃんも、とっても美味しそうに食べている。
なかなかの食欲だね。
俺もあっという間に焼き肉弁当を食べ終えてしまったので、お次はイカめしだ。
これは暖めて貰った効果が思い切り出ている。
甘辛く煮込まれたイカの身は、ぷりっとした歯ごたえ。
そして詰めてあるモチ米は、出汁をたっぷり吸い込んで濃厚な味。
ぷりぷりもちもちの食感と、ほっとする醤油味が心地よい。
「これはおいしいさ~」
「ごうかだね! おなかいっぱいだね!」
(おいし~)
他のみなさんも、もぐもぐとお弁当を食べていく。
……深夜にラーメンを食べ、早朝にサンドイッチを食べ、朝食でお弁当を二個食べる。
ぶっちゃけ、もう一日分の食事を取ってしまっている気が……。
「およげば、チャラよね~」
「そうそう、およげばいいのよ、およげば」
(そうそう~)
女性陣はもう吹っ切れたようで、泳げば良いのよと自分に言い聞かせながらお弁当を頬ばる。
そうそう、減量はまたそのうちしましょう。
というか来月くらいにはもう冬なので、お肉を付けておかないと寒さに負けたりする。
わりと今からお肉を付けておくのは、悪いことではないかなと。
「うふ~、いいながめです~」
「あ、下は雲海になってますね。絶景ですよ」
「ホントだ、これは見事だね」
順調に質量を増加させている女子エルフたちはさておき、外の風景は絶景の雲海。
ちょうど九州のあたりかな?
こういう絶景を眺めながら食べるお弁当は、また格別だ。
「うわ~、ながめさいこうじゃん」
「いちめんがくもとか、すてき」
「まじきれい」
村人たちも、窓際の席にかわりばんこに座って外を眺めている。
もうお弁当は食べ終わったようで、のんびり食休みって感じかな?
「ほしたおさかな、たべるさ~」
「クワックワ~」
こちらはまだ食事中のようで、子供ドワーフちゃんが魚の干物をペンギンちゃんに食べさせてあげている。
きちんとお世話をしているようで、良い子だね。
こうして、楽しく朝食を摂って。飛行機は順調に空を飛んでいく。
エアポケットにドーンとかを心配していたけど、今のところ大気は安定している。
大きく揺れたりもせず、順調そのものだ。
「いちじはどうなることかとおもったけど、これはいいものさ~」
「いいものです~」
今回気絶第一位の偉い人ちゃんも、ほんわかと空の旅を楽しみ。
離陸が怖かったハナちゃんも、すっかりご機嫌。
この調子で、那覇空港まで平穏に行って貰いたい。
「……大志さん、あとは着陸だけですね」
「そうだね。あとは着陸だけ……」
しかし、俺とユキちゃんは気を抜けない。
実は離陸より、着陸のほうが怖いわけで。
着陸の瞬間は……ジェットコースターでループにさしかかる瞬間に、よく似ている。
あの重力変化と衝撃、これが苦手という話は良く聞く。
そりゃそうだ、絶叫マシンに近い動きをするのだから。
「みなさん、大丈夫ですかね……」
「大丈夫だと良いな」
ユキちゃんと俺、祈るような思いだ。
フライトは、もう残すところ一時間を切っている。
さて、みんなは無事……気絶せずに飛行機から降りられるだろうか。
もうすぐ、もうちょっとで那覇ですよ。
飛行機は飛び立ったら――必ず降りなきゃ行けないんですよお。




