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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第二十章 未来へと繋がる、色
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第七話 空から見る、にっぽん!


「うきゃ~、うきゃ~」

「わっきゃ~」


 窓から見える太平洋沿岸の地形に、ハナちゃんも偉い人ちゃんもお目々キラッキラ。


「ちたまのちけい、おもしれえ~」

「きれいだわ~」

「たかいね! すごいね!」


 他の方々も、キャッキャと大はしゃぎしている。

 まだまだ出発したばかりだけど、機内は大盛り上がりだね。


「フフフフフ……」


 左隣の耳しっぽさんも、もふもふご機嫌。左手を離してくれないけど。

 あのですね、血行がちょっと滞ってまして。

 そろそろ解放して頂けたらなと……。


「あ、あの~。ユキ先生?」

「フフ、決定的」


 ……先生は一人の世界に籠もってらっしゃるようだ。

 しばらくそっとしておこう。

 というか、ツヤツヤ耳しっぽが顕現していて、俺的に眼福ということもある。

 この油断しきって正体をポロリしているところが、また良いのだ。


「そらをとぶって、すごいです~」

「くものうえさ~」


 そうしている間にも、飛行機は三浦半島を通り過ぎ、小田原を通り過ぎ。

 箱根やイズ半島が見えてくる。

 箱根山はこねやまとかは、上空から見るとカルデラというのがはっきりわかるね。

 これは地上からはなかなか分からないので、面白い。

 というか、カルデラでかすぎ。あんなんが噴火したらえらいことになるな……。


「あや~! なんだか、とんがったやまがあるです~!」

「ほんとさ~! でっかい、やまがあるさ~!」


 箱根のカルデラを見てぷるぷるしていると、ハナちゃんと偉い人ちゃんがとある山を発見した。

 フッジッサーンだね。


「まじまじ?」

「てっぺんがしろいわ~」

「とんがってるね! おもしろいね!」


 他の方々も、フッジさんを見てお目々まんまるになった。

 まだ早朝なので雲に隠れておらず、はっきりとその山体が見渡せる。

 ちたまにっぽんの象徴になるだけあって、美しいお姿だね。

 さすがフッジさん。


「タイシタイシ~! あのやま、すごいです~!」

「あの山は富士山といって、自分たちが住んでいる島で一番高い山なんだよ」

「いちばんたかいやまです!? おどろきです~!」


 フッジさんについてハナちゃんに説明したら、一番高いというフレーズに驚く。

 エルフ耳がぴっこぴこして、ビックリハナちゃんだね。


「……今、島って聞こえましたが」

「うちも、そうきこえたさ~?」


 おや? ヤナさんとか偉い人ちゃん、別の言葉に反応したぞ。

 ちたまにっぽんは島国だけど、それがどうかしたのかな?


「確かに島と言いましたが、それがどうかしました?」

「どう見ても、島って大きさじゃない気がしますが……」

「しまって、もっとちっちゃいものさ~?」


 どうも、ヤナさんや偉い人ちゃんの感覚だと、島と言えば小さい物らしい。

 海の無い世界出身の人たちだからかな?

 ……確かに、大洋が無ければ巨大な島は存在しないか。

 彼らの世界だと、島と言えば湖とかにある、そこそこの大きさくらいしかないか。

 良い機会だから、ちたま日本のこともちょろっとお話しておこう。


「あの右手に見える陸地は、間違いなく島ですよ」

「あれが、島……」

「しんじられないさ~……」


 唖然として窓の外を見る二人だけど、まあ日本列島は島としちゃでかい方だね。

 一億三千万人が暮らせる、それなりの土地はあるわけで。

 わりと国土面積はデカい部類の国家ちゃんだね。


「タイシ~。ハナたちも、しまでくらしてるってことです?」


 俺たちの話を聞いていたのか、ハナちゃんも質問してきた。

 そうなんですよ。みなさん島に暮らしているんですよこれが。


「そうだよ。ハナちゃんもみんなも、島の住人だったりするんだ」

「しましまのひとです~」

「そうだね、しましま仲間だよ」

「なかまです~!」


 しましま仲間というフレーズが気に入ったのか、ハナちゃんキャッキャだ。

 お目々キラッキラで、フッジさんとにっぽん列島を見つめている。


「私たちが、島の住人だったとは……」

「おどろきさ~」


 ヤナさんと偉い人ちゃんも、好奇心旺盛な目で窓の外を覗く。

 まだ、そこに見えるのが巨大な島、という実感は持てていない感じだね。

 宇宙から見れば、はっきりと分かるかもだけど。


「ちたま、ふしぎなところです~」

「興味深いですね……」

「ほんとさ~」


 またもや窓に張り付いて、ふむふむとにほんの地形を眺め始める。

 そろそろフッジさんを通り過ぎて、赤石山脈――いわゆる南アルプスが見えてくる頃かな?

 これがあるから、しっずっおっかとなが~のを繋ぐ、良い感じの高速道路が作れないんだよな。

 遠回りせざるを得なくなっている。

 交通インフラ整備における、超が付くほどの難所だ。


 そして南アルプスを通り過ぎてしばらくすると、なごやーが見えてきた。

 上空から見れば分かるけど、でかい都市だ。

 こんだけ平地があれば、そらでかくなるというものか。

 しかし、あっという間に通り過ぎ、知多半島と伊勢湾、そして三重拳が見えてくる。

 空を飛んでいるから、すっごい速い。


「なんだか、どんどん、とおりすぎてくです?」

「速いですね」

「みえたとおもったら、もう、うしろにいっちゃってるさ~」


 みんなも同じ事を思ったようで、口々に「速い」と言う。

 そりゃまあ、そうだね。亜音速で飛んでいるからね。

 実際の速度はどうかな? ちょっとGPSで見てみよう。

 スマホのGPS速度計アプリを立ち上げてっと。


 ……だいたい、時速九百キロ近いね。良い感じに巡航している。


「タイシさん、今って……どれくらいの速さで飛んでいるのですか?」


 ちょうど良くヤナさんが質問してきたけど、どうやって答えようか……。

 歩く速度に例えてみよう。だいたい時速四キロのはずだ。


「歩く速度に対して、何倍くらい速いのかで計算するとですね」

「はい」

「二百二十五倍です」

「はい?」

「二百二十五倍です」

「にひゃく……?」

「二百二十五倍です」

「……」


 ヤナさんが動かなくなった。


「……か、考えるだけ、無駄だと言うことがわかりました」

「むだです~」


 そして思考放棄。でもまあ、確かに考えるだけ無駄である。

 二桁違っているからね。気にしたら負けだ。


「ちなみに、音よりちょっと遅いくらいの速度です」

「あ~! あ~! 聞こえない~!」

「おとうさん、げんじつとうひはじめたです~」


 追い打ちをかけると、ヤナさん耳を塞いであーあー言い始めた。

 今かなりヤバイ速度で移動していることを認めると、気絶するからね。

 懸命な判断である。


「――……」


 しかし俺たちの話を聞いていたらしき偉い人ちゃん、ひっそりと気絶していた。

 計算が得意なだけあって、うっかりなんかの計算してしまったらしい。

 巻き添えである。


「き、気にしない……気にしない……」

「そうそう、それがいいじゃん?」

「かんがえるのを、やめるのだ」

「きにしたら、まけよ~」


 ぷるぷる震えるヤナさんだけど、回りのみなさんはお気楽だ。

 みんな考えるのを止めたらしい。

 そうそう、うかつに計算とかしたら怖いからね。


「……」


 偉い人ちゃんは気絶したけど、エルフたちは無事。

 この辺、ちたま慣れの差はあるかもね。



 ◇



 偉い人ちゃんが気絶してからほどなく。

 客室乗務員さんたちが、飲み物を配り始めた。


「こんそめすーぷでおねがいします」

「わたしも」

「おれもおれも」

「こんそめ! こんそめ!」


 この辺も練習済みなため、村人たちは混乱することも無く好みの飲み物を受け取っている。

 おおむね、コンソメスープ大人気だね。


「わきゃ? いいにおいがするさ~」


 そんなコンソメスープの匂いを検知し、食いしん坊の偉い人ちゃんが飛び起きる。

 黄色しっぽも、ピンと起き上がった。

 チャンスを逃さない人だね。


「お飲み物はどれになさいますか?」

「わわきゃ?」


 しかし偉い人ちゃんは事前練習をしていないので、いざ飲み物を貰う段になってうろたえ始めた。

 ……とりあえず、コンソメスープをお勧めしておこう。


「コンソメって言っておけば大丈夫です」

「わかったさ~。こんそめってやつで、おねがいさ~」

「はい。こちらをどうぞ」

「ありがとさ~」


 こうして無事偉い人ちゃんも飲み物を受け取り、一安心。

 と、思っていたら。


「こちらもどうぞ。おもちゃでございます」

「わきゃ?」


 飲み物と一緒に、おもちゃも出てきた。

 そういや、子供向けにこういうサービスやってたな。

 どうやら飛行機の組み立て式プラモを配っているようだ。

 ……なかなか、出来が良いな。


「あや! おもちゃもらっていいです?」

「もちろんですよ」

「わーい!」


 ハナちゃんもおもちゃを貰い、キャッキャと大はしゃぎだ。

 にっこにこ笑顔で、おもちゃを眺めている。


「おもちゃだって! でっかいね!」

「なぞのおもちゃ~」

「うちも、もらっちゃったさ~」

(わたしも~)

「ギニャギニャ」

「クワックワ~」

「ぎゃう~!」


 子供料金組も全員もらったようで、みんな大はしゃぎだ。

 さっそく取り出して、組み立て始めている。

 羽根をはめるだけなので簡単とはいえ、みなさんなかなかお上手。


「ギニャ」


 ……フクロイヌも普通に組み立てているけど、なんちゅう器用な動物。

 驚くほど賢いぞ……。


 とまあフクロイヌかなり賢い事件に驚いたりもしたけれど。

 思わぬサービスに、おもちゃを貰った子たちは大喜びだ。


「うきゃ~、ひこうきのおもちゃです~」

「たからものさ~」


 ハナちゃんも偉い人ちゃんも、組み上げた飛行機のおもちゃに夢中だ。

 良い記念品が貰えたね。


「こんそめすーぷ、おいしいな~」

「あったまるわね~」

「なんか、はらがへってきたじゃん」


 大人のみなさんも、コンソメスープをすすってほんわかしている。

 マイスターとかは、お腹が減ってきたとか言ってるね。

 ……そろそろ、空弁でも食べようかな?

 もう四国が見えているくらいなので、時間的にはちょうど良いかも。

 ちょっくら周りの人たちに、聞いてみよう。


「そろそろ、お弁当でも食べようかなって思うけど、どうかな?」

「そうですね、ちょうど良い時間だと思います」

「おべんと、たべるです~」


 ユキちゃんとハナちゃんは良いみたいだ。


「あさにもらったやつさ~? たのしみにしてたさ~」

「お弁当、そろそろ良いかもですね」

「たべましょ!」

「ふがふが」


 偉い人ちゃんも、ヤナさんカナさんも。ひいお婆ちゃんも賛成だ。

 他の人は……。


「おべんとう、たべるんだって」

「おう、まってたじゃん」

「くおうぜ!」

「おべんと! おべんと!」


 俺たちの会話を聞いていたのか、みんなも良いみたいだね。

 それじゃ、朝食と行きましょうか!


「はいみなさん、それではお弁当を食べましょう!」

「「「わーい!」」」


 とりあえず号令をかけると、みなさんお弁当を取り出す。

 今回用意した空弁は、焼き肉弁当とイカめしだよ。

 組み合わせがアレなんだけど、お願いしたらこの二つなら用意できるって言われたわけで。

 どっちにしようか迷ったあげく、両方買ってしまったという優柔不断の結果である。


「タイシ~、いっしょにたべるです~」


 そんな優柔不断弁当を二つとも、ハナちゃんぴょいっと取り出した。

 待ちきれない様子でうずうずしているので、俺もさくっと準備しよう。

 と、その前に。


 早弁した神輿に、追加のお弁当を渡さないとね。

 神様の分は俺の空間に仕舞ってあるから、それを取り出して……と。


「タイシ、ずいぶんじょうずになったです~」

「手慣れてきましたね。謎空間の使い方」


 お弁当を取り出すと、それを見ていたハナちゃんとユキちゃんが褒めてくれた。

 実はコツコツ、家で練習してたんだなこれが。

 ちなみに今現在、バスタブくらいの容量が仕舞えるようになっている。


(おそなえもの?)


 おっと、そうこうしているうちに、謎の声がお弁当をロックオンした。

 というか、神輿がこっちに飛んできている。

 この辺の嗅覚が凄いね。もったいぶってもアレなので、早速お供えしよう。


「神様、空弁をお供えします」

(ありがと~!)


 ほよよっと飛んできて、おべんとうを掴んで持っていく神輿。

 今回は神様空間へ転送じゃなくて、現地で食べるようだ。

 機内で食べるお弁当、というシチュエーションを楽しむっぽいね。

 なんだかんだで、神様も旅行を楽しんでいて何よりだ。

 ちなみに四個渡してある。それだけ食べれば、満足頂けるだろう。


 と、神輿を見てほくほくしていたところ。


 ――なぜか焼き肉弁当の、良い香りが漂ってきた。


「わきゃ~、いいにおいさ~!」

「おいしそうです~」


 香りのする方を見てみると、偉い人ちゃんがすっごいキャッキャしていた。

 ハナちゃんも、焼き肉弁当の香りでうっとりしている、

 そして良く見ると、偉い人ちゃんのお弁当から湯気が出ているわけで。

 これはもしかして――温め直した?

 確認してみよう。


「すいません、それって……温め直しました?」

「わきゃ? だめだったさ~?」


 思わず聞いてしまったけど、思った通り温め直したようだ。

 そして、ダメなんてことは全然無い。

 むしろ超便利!


「いえいえ、お弁当がより美味しくなりますよ」

「よかったさ~」

「というか、それ凄い便利ですね。温め直せるのは」

「そうさ~?」


 熱を操れない俺たちとは違い、ドワーフちゃんにとっては当たり前の事。

 凄い便利なんだけど、本人には実感がないっぽいね。


「私たちは自由に熱を操れないので、こういうことは出来ないんですよ」

「それは、ふべんかもさ~」

「まあ、仕方が無いですね」


 ぼくはちたま人だからね。しょうが無いですよ。

 熱を操る能力はないわけですな。


「……あ、いいことおもいついたさ~!」


 ぼくはちたま人と自分に言い聞かせていると、偉い人ちゃんが何か思いついたようだ。

 わきゃっと席を立って、他のドワーフちゃんたちの所へ歩いて行った。


「みんなのおべんとう、うちらであっためてあげるさ~」

「いいかもさ~」

「おてつだい、するさ~」


 おや、どうやらドワーフちゃん軍団は、お弁当ほかほか作戦を実行するようだ。

 話を聞いた他の子たちも、わっきゃわきゃと散開し始めた。

 そしてすぐさま、熱を操れない組のお弁当を温め始める。


「どうぞさ~」

「おお! ありがとう!」

「ほっかほかだね! あったかいね!」

「おいしそうです~」

(ほかほかおそなえもの~)


 ドワーフちゃんたちもなかなか動員力があるので、みんなのお弁当はほかほかに。

 温めて貰った方々、みんな嬉しそうだ。


「タイシさんのおべんとうも、あっためるさ~」

「ありがとうね。とっても助かるよ」

「どういたしましてさ~」


 俺の所にも、ちっちゃな子供ドワーフちゃんがやってきて温めてくれた。

 焼き肉弁当もイカめしも、ほっかほかで良い香りがする。

 これは良いね。冷めないうちに頂くとしよう。


「それじゃあ、食べようか」

「いただきますです~」

「まさか、機内であったかお弁当が食べられるとは思いませんでした。頂きます」


 俺とハナちゃん、そしてユキちゃんと三人でお弁当をもぐもぐ食べる。

 特製焼き肉タレで味付けされた、やわらかな牛焼き肉。

 肉の旨味とタレの旨味が引き立て合い、タレが染みこんだほかほかご飯でかき込む。

 やっぱり、暖かいご飯は美味しいね。


「やきにく、おいしいです~」

「暖かいので、より美味しくなってますね!」


 ハナちゃんとユキちゃんも、とっても美味しそうに食べている。

 なかなかの食欲だね。

 俺もあっという間に焼き肉弁当を食べ終えてしまったので、お次はイカめしだ。

 これは暖めて貰った効果が思い切り出ている。

 甘辛く煮込まれたイカの身は、ぷりっとした歯ごたえ。

 そして詰めてあるモチ米は、出汁をたっぷり吸い込んで濃厚な味。

 ぷりぷりもちもちの食感と、ほっとする醤油味が心地よい。


「これはおいしいさ~」

「ごうかだね! おなかいっぱいだね!」

(おいし~)


 他のみなさんも、もぐもぐとお弁当を食べていく。

 ……深夜にラーメンを食べ、早朝にサンドイッチを食べ、朝食でお弁当を二個食べる。

 ぶっちゃけ、もう一日分の食事を取ってしまっている気が……。


「およげば、チャラよね~」

「そうそう、およげばいいのよ、およげば」

(そうそう~)


 女性陣はもう吹っ切れたようで、泳げば良いのよと自分に言い聞かせながらお弁当を頬ばる。

 そうそう、減量はまたそのうちしましょう。

 というか来月くらいにはもう冬なので、お肉を付けておかないと寒さに負けたりする。

 わりと今からお肉を付けておくのは、悪いことではないかなと。


「うふ~、いいながめです~」

「あ、下は雲海になってますね。絶景ですよ」

「ホントだ、これは見事だね」


 順調に質量を増加させている女子エルフたちはさておき、外の風景は絶景の雲海。

 ちょうど九州のあたりかな?

 こういう絶景を眺めながら食べるお弁当は、また格別だ。


「うわ~、ながめさいこうじゃん」

「いちめんがくもとか、すてき」

「まじきれい」


 村人たちも、窓際の席にかわりばんこに座って外を眺めている。

 もうお弁当は食べ終わったようで、のんびり食休みって感じかな?


「ほしたおさかな、たべるさ~」

「クワックワ~」


 こちらはまだ食事中のようで、子供ドワーフちゃんが魚の干物をペンギンちゃんに食べさせてあげている。

 きちんとお世話をしているようで、良い子だね。


 こうして、楽しく朝食を摂って。飛行機は順調に空を飛んでいく。

 エアポケットにドーンとかを心配していたけど、今のところ大気は安定している。

 大きく揺れたりもせず、順調そのものだ。


「いちじはどうなることかとおもったけど、これはいいものさ~」

「いいものです~」


 今回気絶第一位の偉い人ちゃんも、ほんわかと空の旅を楽しみ。

 離陸が怖かったハナちゃんも、すっかりご機嫌。

 この調子で、那覇空港まで平穏に行って貰いたい。


「……大志さん、あとは着陸だけですね」

「そうだね。あとは着陸だけ……」


 しかし、俺とユキちゃんは気を抜けない。

 実は離陸より、着陸のほうが怖いわけで。

 着陸の瞬間は……ジェットコースターでループにさしかかる瞬間に、よく似ている。

 あの重力変化と衝撃、これが苦手という話は良く聞く。

 そりゃそうだ、絶叫マシンに近い動きをするのだから。


「みなさん、大丈夫ですかね……」

「大丈夫だと良いな」


 ユキちゃんと俺、祈るような思いだ。

 フライトは、もう残すところ一時間を切っている。

 さて、みんなは無事……気絶せずに飛行機から降りられるだろうか。

 もうすぐ、もうちょっとで那覇ですよ。


 飛行機は飛び立ったら――必ず降りなきゃ行けないんですよお。

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