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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第二十章 未来へと繋がる、色
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第三話 あえてC1


 とうとうバスは、美女木ジャンクションに突入。

 五号池袋線へ向かうべく進路を進め、信号待ちをする。

 このジャンクションはちょっと特殊で、信号があるのだ。

 そこを右折すれば、池袋線へ入れる。


 時間はすでに早朝へと移り変わり、朝焼けが見える。

 こんな時間でも交通量は多く、車がどんどん増えてくる。

 さあ、いよいよ陸路の大詰め。首都高に入るぞ!


「あえ? なんだかとつぜん、じどうしゃがふえたです?」

「かっこいい!」

「みちもちょっと、せまくなったかんじ」


 美女木ジャンクションから五号池袋線に入ると、道路事情はガラっと変わる。

 路肩がほぼ無いも同然となり、壁との距離も近くなる。

 まだまだ前哨戦だけど、この時点で首都高の特殊さが垣間見える瞬間だった。


「うっわ、めっちゃとおくまで、まちがみえるじゃん!」

「とおくのたてもの、かすんでみえるとか、ふるえる」


 埼玉県戸田市を抜け、現在地は東京都板橋区へちょうど入ったあたり。

 ここは少しの間直線道路となり、東京の街が遠くに霞んで見える絶景ポイント。

 車内がにわかに盛り上がり始める。


「……なあ、かすんでみえるのに、あのでかさってことはさ……」

「やばくね?」


 そしてエルフのみなさん、良いところに気づきました。

 ここから先、でかいビルの合間をくぐり抜けるのですよ。

 そりゃあもう、初めて走ると色々アレなもので。

 そこんところ、アナウンスしておこう。


『みなさん、これから道が曲がりくねりますので、少々おきを付け下さい』

「いってるそばから、けっこうなまがりみち」

「なんだか、ガタガタゆれるです~」

「はげしくなってきたさ~」


 狭い道幅に、周囲には壁。そして急カーブ。

 乗客のみなさま、不穏な空気に身構え始める。

 ぴしっと体を硬くしたね。

 そうそう、あらかじめ身構えておくと良い感じですよ。


 そして速度注意と書かれた、赤い段差舗装のカーブを二つ乗り越え。

 少し走った所で、志村料金所が見えてきた。

 もの凄い車がゲートをくぐり抜けている中、俺たちのバスもETCゲートを抜ける。

 さすが首都圏、交通量がとんでもない。

 慎重に運転しないとね。


 そうして安全運転を心がけながら、しばらく走行すると――。


“次は板橋JCT.”


 という案内板が見えてくる。

 ここをくぐり抜けると、下り坂になり――いきなりビルに囲まれた形に。

 これぞ首都高という風景が、突如として現れる。


「あやや! あやややや! まわりがしかくいです~!」

「たてものだらけじゃん!」

「でけえええ~」


 いきなりのビル群登場に、ハナちゃん目を白黒させる。

 他の方々も、わーきゃー騒ぎながら窓に張り付いた。


「あや~! かべがぴかぴか、ひかってるです~!」

「きれいだね! ぴっかぴかだね!」

(ちかちか~)


 早朝なので、電飾もキラキラ輝いて。

 キラキラハデハデの道に、ビルの明かりもキラッキラ。

 首都交通と都市が織りなす、イルミネーションが楽しめちゃう。


「わきゃ~! よくわからないけど、なんだかすてきさ~」

「ハデハデです~!」

「まちがキラッキラとか、すてき」


 わりとこの早朝のイルミネーションがウケているらしく、みなさんキャッキャと大はしゃぎ。

 ハデな光景に目が行って、首都高自体のヤバさにはまだ気づいていないようだ。

 まあ、時速五十キロで走っているからね。ぶっちゃけ下道と同じ速度だ。

 ……高速道路とは一体。


 とまあ、実は高速で走れない道路を突き進み、目的のルートを目指す。

 程なくして、板橋ジャンクションを抜けて。

 都心環状サークル1――いわゆるC1に入る。

 まるでサーキットのような道と言われる、あのC1ちゃんだね。


 さあさあ、とうとう首都高バトル――開始だ!



 ◇



『こちら大志、予定通りこのままC1で行く。どうぞ』

『こちら志郎、了解。どうぞ』

『こちら高橋、問題ないぜ。どうぞ』


 二号車三号車と無線でやりとりをしながら、首都高を走っていく。

 次々に分岐が訪れるので、常に確認を取り合う必要があるわけだ。


「あれ? 大志さん……道が違うのでは?」


 そしてその通信を聞いていたのか、ユキちゃんがルート選定に疑問を持ったようだ。

 スマホをぽちぽち見ているから、カーナビアプリで道を確認しているのかな?

 ……確かに、普通はC2に入って山手トンネルルートが最短だ。

 ただ、今回は「あえて遠回り」をする。

 その理由とは――。


「せっかく東京に来ているのだから、街の風景を見せてあげたいかなって」

「あ、そうですね……山手トンネルに入ると、ずっとトンネルですから」

「そうそう。ずっとトンネルじゃ、息が詰まっちゃうよ」


 とまあ、こんな理由でC1を選択した。他にも理由はあるけど、大きな理由の一つだね。

 せっかくの観光旅行なのだから、移動中も楽しんでもらいたいって事で。


 ほかにも、山手トンネルは日本一の長さを誇る。

 ということは、そこで何かが起きたら、もしくは起きていたら――とても危ない。

 便利な道ではあるのだけど、この乗客をたくさん乗せた状態で選択したい道では……無いかなって思う。

 一人の時なら、別に良いのだけど。今回はちょっとね。


「というわけで、今回は朝焼けの東京をお楽しみ下さいプランってことで」

「私もそれが良いと思います」


 ユキちゃんも納得してくれたようで、座席に戻っていった。


「あやややや! ぶつかるです~!」

「キャー!」

「トラックが、トラックがちかいいいい~」

「わきゃ~――……」


 そんなやりとりの間にも、右から左から合流してくる車との距離に驚き、かくんかくんと気絶するみなさん。

 大丈夫ですよ。ちょっと車間距離が縮まってしまっただけなので。

 とまあ合流気絶祭りが起きている中、バスは竹橋ジャンクションへ。

 もうちょっと進むと、霞ヶ関だな。

 見所があるので、アナウンスして気絶から回復してもらおう。


『はいみなさん起きましょう。もうちょっと進むと、面白い物が見られますよ』

「――おもしろいものです?」

「なんだろ?」

「たのしみ~!」


 面白い物と聞いて、一瞬で覚醒するみなさん。

 だんだんと、たくましくなって来てらっしゃる。

 というわけで、竹橋ジャンクションへ突入。

 ここで一瞬――東京タワーが見えるのだ!


『みなさん注目! 正面に光り輝く塔がありますよ!』


 ジャンクションの右カーブを終えた瞬間、遠くに東京タワーが見える。

 たった五秒だけど、はっきりとその姿を確認できた。


「あや~! すっごいひかってるでかいやつ、ほんとにあったです~!」

「なにあれ!」

「あかくてきれい」


 朝焼けを背景に黒く佇むビル群の中に、ひときわ輝く東京タワー。

 ルートによってはそのすぐそばを通り抜けるけど、まあ今回はこれ位で。

 そしてジャンクションを抜けて、霞ヶ関へ。

 ちたまにっぽんの、行政中心地だね。


 アップダウンの激しい道を乗り越え、トンネルを乗り越えて。

 左手に、大きな川が見える。


「わきゃ! かわがあったさ~!」

「おみずさ~!」

「あんしんするさ~」


 一瞬だけど水辺が見えて、ドワーフちゃんたちわっきゃわきゃ。

 というか、首都高の下はだいたい川なわけで。

 実はお水の上を走っているんですよお。

 見えないだけなんです。


「あえ? こんどはどうくつばっかりです?」

「あっぱくかんある」

「なぜかきんちょう」


 そしてこの辺りは、トンネルが多い。

 しかもトンネル内でアップダウンや分岐があったり。

 慎重に運転して、それらトンネル群を突破する。


「うっわ! たてものちかいな~!」

「しかくいまちです~」

「でもキラッキラとか、すてき」


 やがてトンネルを抜けると、よりいっそうビル群が近くなる。

 車から見ると、スレスレをすり抜けているんじゃ無いかって錯覚に陥ったり。

 側壁も低いので、よりビル群との距離が近く感じる。

 なかなかの絶景だね。


「わわわきゃ~……こんなもの、ひとがつくれるのさ~?」


 この辺は高層ビルが林立していて、近くも遠くもビルだらけ。

 偉い人ドワーフちゃんは、もうぷるっぷるで景色を眺めている。

 どうやら、この人工物しかない都市を見て、衝撃を受けているようだ。


 大自然に寄り添って生きてきた方々からすると、信じられない光景みたいだね。

 これほどの高層建築や構造体群を、見るのは初めてだろうから。


「なにをどうしたら、こんなんつくれるんだろ」

「なぞのぶんめいです~」

「でかすぎさ~」


 他のみなさんも、首都圏の構造体に興味が沸いたようで。

 どうやって作るのかとか、わいわいと盛り上がっている。

 この町がどんなところか、ちょっと教えておこう。


『この都市は石と鉄を使って、一生懸命作ったらこうなりました』


 超ざっくり説明。でも、そんなに間違っていないと思う。

 ほぼ、鉄筋コンクリートとアスファルトで出来ているからね!

 とまあ、適当に東京の街を説明したところ……。


「やばすぎ」

「がんばりすぎたけっか」

「どんだけがんばれば、こうなっちゃうのか」


 おおう、エルフたちに頑張りすぎを指摘されたぞ。

 日本は平地が少ないから、しょうが無いんですよこれが。

 徳川さんがとにかく埋立しまくってくれたおかげ、でもあるのだけど。


「わきゃ……いしとてつで、つくれちゃうさ~?」

「そんなにかんたんには、いかないさ~?」

「つくりかた、けんとうもつかないさ~」

「てつをつかうとか、ぜいたくさ~」


 偉い人ちゃんはその建造方法に興味があるようで、黄色しっぽをぱたぱた振って外を見つめ始めた。

 でもまあ、石と鉄だけでは作れません。

 いろいろああしてこうして、それがそうなってあれがこうで、とかあるんですな。

 つまり、あれなんです。大変なんです。


「わきゃ~、いいものみられたさ~」


 しかしお目々キラッキラで、ビルや道路やらを眺める偉い人ちゃんだ。

 まあ、興味があるなら鉄筋コンクリートとはどんなものか、教えるのも良いかもだな。

 旅行が終わったら、ちょいと機会を設けてみよう。


 そして、ただひたすら東京の街を楽しんだあとは。

 首都高を抜け、湾岸線へと突入だ。

 湾岸線はまた首都高とは違った風景が広がるので、これまた面白い。


『これより道が変わります。風景も変わるので、みなさまお楽しみ下さい』


 あらかじめ風景が変わるとアナウンスし、準備は完了。


 やがて……一ノ橋ジャンクション、浜崎橋ジャンクションを抜け――湾岸線。

 連続するジャンクションを突破して、左手に見えるは――レインボーブリッジ。

 湾岸を走るなら、渡ってみたい橋だ。

 もちろん今回のルートでは、レインボーブリッジも渡るよ!


『みなさん、遠くに見えるあのでっかい橋。あそこを渡りますよ』

「うっきゃ~! すっごいはしが、あるです~!」

「あんなん、どうやってつくってんの!?」

「でかすぎ」


 一瞬だけ見えたレインボーブリッジだけど、みなさん大はしゃぎだ。

 もうちょっと進めば芝浦ジャンクションだから、そこを抜けたらいよいよだよ!


 ちなみに、このC1から湾岸線、そしてレインボーブリッジルートは高橋さん提案でもある。

 あこがれの橋を渡るルートがあるのだから、通らない選択肢は無いよね。

 きっと三号車の高橋さんは、目をキラキラさせて運転していることだろう。

 ……脇見運転はしないと思いたい。


 とまあ、そんな事情もあってレインボーブリッジに向けてひた走る。

 芝浦ジャンクションを抜けたら、もうすぐそこだ。

 ほら、見えてきた。


「はしが、ちかづいてきてるです~!」

「いよいよだわ~」

「たのしみ~」


 どんどん迫る巨大な橋に、みなさんうっきうき。

 もうちょっとですよ。


「でっかいみずうみがあるさ~!」

「おみず、たくさんさ~!」

「ひろくて、きもちよさそうさ~」


 それとドワーフちゃんたちは、湾岸を見てわっきゃわきゃ。

 でもそこ、湖じゃ無くて海なんだなこれが。

 ドワーフちゃんたちが初めて見た海は、東京湾というわけだ。

 泳ぐ機会は無いけど、景観をお楽しみ下さいだね。


 そうして期待高まるなか、とうとうバスは――レインボーブリッジへ!

 一気に視界が開け、橋の構造体と朝焼けのコントラストが美しい。


「あや~! きれいです~!」

「まるいやつがある! なんだあれ!」

「すてき~!」


 橋の中央部を過ぎると、下りになる。

 そこから見える風景は――絶景、そのもの。


 朝焼けがもたらす、オレンジ色から青へのグラデーション。

 その美しい空を背景にして、ビル群の黒いシルエットが静かに佇む。

 太陽の光があるけれど、ビルの夜景も楽しめて。

 右手にはフジ的なテレビ局の建物と観覧車もみえて、とても面白い。

 この風景は、わずかな時間しか見られない。

 早朝の数十分間だけ楽しめる、自然と人工物が織りなす芸術がそこにあった。


「わきゃ~! うつくしいけしきさ~」

「これはすごいさ~!」

「すごいね! きれいだね!」

(きれい~!)


 しっぽドワーフちゃんや妖精さん、神輿もこの光景には思わずうっとり。

 石と鉄で出来た大都市でも、こんな風景はあるのです。

 自然の色と人工の色が調和した、不思議な光景だね。

 決して、人工物だらけでも冷たくは無い。

 そこに人がいて活動しているのだから、何かしらの暖かみはあるのだ。


「すごいもの、みられたです~」

「しゃしん、すごいとっちゃった!」

「いっしょうの、おもいでさ~」


 素晴らしい景観を見たみなさま、大変満足して頂けたようで。

 レインボーブリッジ突破プラン、大成功だね!

 わざわざ山手トンネルを使わなかった成果、ちゃんとでました。


 そうしてレインボーブリッジの絶景でひとしきり盛り上がった後は、有明へ。

 ちょっと走れば、さっき遠くに見えていたフジ的なテレビの建物や、観覧車のそばを通り抜ける。


『はい、先ほど遠くに見えていたまるいやつ、もうすぐ側を通りますよ』

「みえてきたです~!」

「おもれえええええ~」

「まるくてホネホネとか、すてき」


 テレビ局と観覧車を通り過ぎるときは、みなさんまたまた大はしゃぎ。

 道も広くなって、開放感もある。

 首都高を抜けて湾岸に入ると、ほっとするよね。

 いっきに圧迫感が消え開放感が出るので、そりゃあ飛ばしちゃう気持ちもわかる。

 でもまあ、安全運転で行こうね。


 そして東京港トンネルを抜け、大井ジャンクションへと。

 ここにも見所が一つある。


「あえ? なんだかほそながいやつ、たくさんならんでるです?」

「なんだろ、あれ?」

「でっかいへび?」


 左手にあるのは、新幹線の車両基地。ずらりと列車が並び、かなり壮観だ。

 ……もしかしたら、いつか新幹線にも乗るかもね。

 そのときになったら、また説明会で気絶祭りかもだけど。


 まあ新幹線に関しては、またのお楽しみに取っておくとして。

 もうすぐ、羽田空港だ。


 東海ジャンクションを通過し、空港北トンネル。

 ここを抜けたら、まもなく空港中央インターチェンジ。

 とうとう――羽田空港へ到着だ!


 ――無事、たどり着けたぞ!


『みなさん、間もなく羽田に到着です。忘れ物が無いよう、お気を付け下さい』

「とうとう、きたです~!」

「なんだか、あっというま」

「みどころありすぎて、ふるえた」


 アナウンスをすると、みなさんがさごそと降車の準備を始める。

 いよいよ羽田空港。ようやく、長距離運転も終わる。

 さーて、空港に着いたらちょっとのんびりしよう!



 ◇



 というわけで、ここは羽田空港第一ターミナル南ウィング。

 バスを駐車してきたので、空港ロビーでみんなと落ち合う。


「あ、大志さんこっちです」

「タイシ、おかえりです~」


 親父や高橋さんと一緒にロビーに足を踏み入れると、ユキちゃんとハナちゃんが手を振っていた。

 さっそく合流しよう。


「お待たせしました」

「いやあ、あのでっかい街、すごかったですよ」

「びっくりしたです~」

「いしのまち、すごかった~」

「ふるえとまんなかった」


 ロビーで待つ村人たちと合流したら、みなさん大はしゃぎ。

 早朝の首都高と湾岸線は、どうやら楽しめて貰えたようだ。

 よかったよかった。


「それで、タイシさん。おきなわって、ここのことさ~?」


 ほっと一安心していると、偉い人ドワーフちゃんからお問い合わせが。

 きょろきょろと周りを見渡して、何かを探している。


「さっきみえた、あのでっかいみずうみで、およぐさ~?」


 どうやらここが目的地だと思っているらしい。

 速く泳ぎたくて、うずうずしている感満載。

 でも残念ながら、ここは目的地ではなくてですね。

 むしろ、ここが出発点というか。


「あ~。えっとですね。ここはまだ、目的地ではないのですよ」

「わきゃ? でも……のりものから、おりちゃったさ~?」


 飛行機に乗ることを知らない偉い人ちゃん、不思議そうな顔をする。

 ここから乗り換えと言うことを知らなければ、その反応も当たり前かな?


「これから、ヒコーキにのるらしいです~」

「チケットってやつをつかって、なんかいろいろするらしいさ~」

「たくさんれんしゅうしたから、らくしょうじゃん?」


 首を傾げる偉い人ちゃんに、村のみんながそれぞれ教えてあげている。

 彼らは色々事前学習したからね。ゲートをくぐる練習だってした。

 わりと自信のある表情をしていて、頼もしい。


「……ヒコーキって、なにさ~?」


 しかし飛行機を知らない偉い人ちゃん、ますます訳が分からなくなった模様。

 黄色しっぽをゆらゆら揺らして、右に左に首を傾げている。


「でっかいとりさん、みたいなやつです?」

「クワクワ~」


 そんな偉い人ちゃんに、ハナちゃんとペンギンちゃんがさらに説明だ。

 ハナちゃんは両手を広げて、ペンギンちゃんも羽を広げて。

 二人揃って、ぱたぱたと動かす。


「クワックワ~」

「こんなかんじです~」


 さらにペンギンちゃんが、ヒコーキのマネをしながらお腹で床をつつーっと滑った。

 そうそう、そんな感じで飛ぶわけですな。

 良い感じでマネできているよ。


「……とりさん? よくわからないさ~」


 しかし飛行機を見たことがない偉い人ちゃん、いまいちピンと来ていないご様子。

 これはあれだね、実際に見て貰った方が早いな。


「時間もありますので、実際にその乗り物を見ましょうか」

「え! みられるの!」


 この申し出に、メカ好きさんがめっちゃ反応した。

 もちろん、離陸の瞬間とか色々見られますよ。


「見物できる場所がありますので、そちらなら思い切り見られます。せっかくなので、行ってみましょう」

「わーい!」

「あ、おれもいくじゃん」

「わたしも」

「ハナもいくです~」


 お誘いしたら、結局みんなで見物することになった。

 それじゃあ、飛行機がどんな乗り物か、一発で分かる所に行きましょうかね!


 第一ターミナルの展望台はまだ開いて居ないので、第二ターミナルの屋内展望室へ行こう。

 そこなら、朝五時から見学できる。


 屋内で見物するのだから、大迫力の生離陸シーンもまあ……そんなに怖くもないだろう。

 怖くないはず。……怖くないと良いな?



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