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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十九章 エルフ旅行
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第十五話 飛び入り参加、それは必然


「おなかいっぱいさ~」

「たくさん、たべたです~」


 楽しい朝食も終わり、偉い人ちゃんはほくほく笑顔だ。

 ハナちゃんもお腹をさすって、幸せそうな顔。

 ほんわかとした、食後のひとときを過ごす。


 ただ、これからの話はまだ煮詰めていない。

 申し訳ないけど、会議を再開しよう。


「では、お腹も膨れたところでお話の続きをしますか」

「そうするさ~」


 ご機嫌偉い人ちゃん、すちゃっと俺の正面に座ってお話しましょう体勢だね。

 ではでは、細かい調整に入りましょう!


 ――そして、色々話し合った。


 ひとまずドワーフちゃんたちの湖にある適当な樹木に、仮設住宅を設置すること。

 本格的な家も建設するけど、そちらはまた詳細に計画を立てる予定。

 また食料は村で援助することと、村の施設は自由に使って構わないこと。

 お金も援助はするけど、お仕事のお手伝いで日当を得る事も可能なこと。

 その他様々な生活必需品も提供するので、不足したり必要な物があったら遠慮無く申し出て欲しいこと。

 等々、生活していく上で必要なことを色々決めた。


「これでひとまず、暮らしていけるかと思います」

「いろいろよくしてくれて、ありがとうさ~」


 生活していくのは何とかなりそうなので、偉い人ちゃんもほっと一安心だね。

 でもまあ、きっと遠慮してしまう事も多いだろう。

 小まめに様子をうかがって、不自由していないか気を遣ってあげる必要はある。


「こちらも、計算のお仕事を手伝って頂けるのは助かります」


 そしてヤナさんも、仕事を手伝ってもらえるとあって喜んでいる。

 村の運営にあたって、あれこれ計算する仕事が毎日あるからね。

 その労力が減るのは、とっても助かるだろう。


「うち、けいさんはとくいさ~。あっちでも、まいにちしてたさ~」

「これは、心強いですね」


 偉い人ちゃんもトップだっただけに、計算の仕事は毎日あったようで。

 これはお任せしても大丈夫そうだね。

 ……まあ、こちらの数字と計算記号を覚えて貰う必要はあるけど。

 それと電卓の使い方とかね。


「タイシタイシ~、おうちつくるのは、いつごろです?」

「タイシさん。私たちもお手伝いしますので、予定を決めましょう」

「あ、そうですね。予定を決める必要がありますね」


 湖畔リゾートに設置してある仮設住宅の一棟を持ってくるつもりだけど、手伝いは必要で。

 ハナちゃんやヤナさんの言うとおり、いつ作るかは予定を立てないと。

 いつ頃が良いかな……。


 こういう作業には高橋さんが欠かせないけど、予定が空いていない。

 沖縄に行く前に、いくつか片付ける仕事があるそうで。

 旅行から帰ってきた後なら、都合がつくと思うけど……。


「高橋さんの予定がつかないので、旅行から帰ってきた後になりますね。みなさんも、旅行の準備で手が回らないと思います」

「確かに、今は旅行の準備とかがありましたね。村のみんなも、そっちで忙しいかもです」

「ハナも、いろいろじゅんびちゅうです~」


 今すぐにってのは、ちょっと難しいかもだ。

 俺もまだ旅行の準備が終わっていないので、大きな作業を差し込むのはやや厳しめ。

 いやはや、すぐに何とかしてあげられたら良かったのだけど……。

 まあとりあえずは、空き家で過ごして貰おう。

 二棟ふたむねのログハウスが今は空いているから、ひとまずはそこで。


 ――と、頭の中で色々考えていたときのこと。


「わきゃ? りょこう、いくのさ~?」


 旅行という言葉を聞いて、偉い人ちゃんが訪ねてきた。

 そうなんです。もうすぐみんなで、沖縄旅行なんですよ。

 楽しみだなあ。


「タイシ、タイシ。ハナ、ちょっと……きづいたことがあるです?」


 沖縄旅行に思いを馳せていると、ハナちゃんがいつの間にか俺のとなりにちょこんと座っていた。

 そして、肘の辺りをちょいちょいとつつく。

 気づいたこととは、なんでございましょう?


「何か気づいたの?」

「あい」

「どんなことかな?」


 ハナちゃんに問いかけると、なぜかエルフ耳がへにょっと垂れた。

 そしてお困り顔に。……なにか、問題ごとなのかな?


「それって、問題ごとかな?」

「あい。……ハナたちがりょこうしてるあいだ、このひとはどうするです?」


 そう言いながら、ハナちゃんが偉い人ちゃんの方を見た。

 俺たちが旅行している間、この人はどうするか。

 そういえば、そうだ……。


「わきゃ?」


 俺とハナちゃんに見つめられた偉い人ちゃん、どうしたの? って感じで見つめ返してきた。

 ……俺たちが旅行に行ってしまうと、置いてけぼりになってしまう。

 せっかく村になじもうと努力しようとしているのに、しばらく放置になるわけだ。

 それは……あり得ないよね。無責任だ。


「一人置いていくわけには、いかないよね……」

「あや~……もしかして、りょこうはちゅうしになっちゃうです?」


 置いていくわけにはいかないと応えると、ハナちゃんうるうるお目々に。

 旅行が中止になるかもと思って、切なそうだ。

 だがしかし、お金はもう振り込んでいるわけで。


 今中止してしまうと……キャンセル料を取られてしまう。

 旅行に行けないのに二百万円ほどお金だけ取られるという、何の益にもならない結果となる。

 つまり、旅行の中止は不可能。


「ハナちゃん心配しなくて良いよ。中止はしないから」

「よかったです~!」


 中止はないと分かって、ハナちゃんキャッキャとはしゃいだ。

 でもまあ、そうするとお話は振り出しに戻るわけで。

 偉い人ちゃんを置いてけぼりにせず、かつ旅行もする。

 これを両立する方法は、ただひとつ。


 ――偉い人ちゃんも、連れてっちゃえばいいのだ!


「というわけで、一緒に沖縄に来て下さい」

「……わきゃ?」


 強制参加である。偉い人ちゃんに――選択肢はない。


「ユキちゃん、今から一人ツアーに追加って出来るかな?」


 決めたからには、すぐさま行動だ。

 ツアー参加者の追加が可能か問い合わせ、その間に予算編成を見直す。


「ちょっと旅行会社に問い合わせてみますね」

「急な話で、ごめんね」

「いえいえ。では、電話をかけてきます」

「わきゃ?」


 ユキちゃんが別室に行き、電話して旅行会社と調整だ。

 それがオーケーとなったら、空弁の追加発注をしよう。

 さてさて、ちゃっちゃと進めないとね!


「……みんなして、なんのおはなし、しているさ~?」

「いっしょに、おきなわいくです~!」

「ギニャ~」


 当の偉い人ちゃんを置いてけぼりにして、話はどんどん進む。

 フクロイヌに異世界へと連れてこられて、落ち着く間もなくさらに遠くの地へと連れて行かれる。

 もうほんと、すいません……。


 でも、沖縄旅行は楽しいよ!

 せっかくだから、共に旅をして楽しく過ごしましょう!


「大志さん、今日中に支払いが可能ならオーケーだそうです」


 ――よし! これで問題オールクリアだ!


「ユキちゃんありがとう! ネットバンクで支払うから、口座と金額を教えて」

「こちらです」

「…………はい、振込完了。空弁の追加発注も、今しちゃうね」

「それが終われば、仕込みは完了ですね!」

「だね!」


 ぱぱぱっと振り込みを済ませて、お弁当の発注もしてしまう。

 ふははは、情報化社会の勝利よ。


「わわわきゃ~……。うちのしらないところで、なにかがきまってるさ~……」


 偉い人ちゃん、自分のあずかり知らぬ所で色々決められている事に、気づいたようだ。

 でももう手続き終えちゃったからね。お金も払っちゃった。


 ……逃がさないよ。


「わきゃ~! タイシさんが、わるいおとなのかおしてるさ~!」

「あきらめるです~」

「そうですよ。諦めが肝心です」

「たのしいりょこうに、しましょうね!」


 俺の表情を見て、偉い人ちゃんがぷるぷる震える。

 そしてハナちゃんもヤナさんも、カナさんだって悪い顔。

 みんな思いは、同じなのだ。


 ――決して、逃がさぬと。


「わわわわわきゃ~! みかたが、だれもいないさ~!」


 偉い人ちゃん、自分の黄色しっぽを抱えてわきゃきゃ~と震える。

 ふふふふ、楽しい旅行に……しましょうねえ。


「これこれみなさん、あまり怖がらせたらいけませんよ」


 そんなホラーな雰囲気の中、ユキちゃんが待ったをかける。

 いや、怖がらせているつもりは……それほど無いです。たぶん。


「とりあえず、どんな旅行をするか説明しないと」

「それは確かに、そうだね」

「旅行の内容さえ分かれば、きっと大丈夫ですよ」


 ユキちゃんの言うとおり、沖縄旅行の説明は必要だね。

 まあ、事後承諾なんだけど。

 ひとまず沖縄ガイドの本を見て貰い、どこに行くのか知って貰おう。

 たしか、ハナちゃんが本を持っているはずだよね。


「ハナちゃん、あの本ってあるかな?」

「あい~! みてもらうです~」


 ハナちゃんに聞いてみると、ぴょいっと沖縄ガイドが出てきた。

 それじゃあ、今回の旅行プランも交えて説明しましょうかね!


「はい、こちらを見て頂けますか?」

「わきゃ? このきれいなやつは? なにさ~?」

「これは、海と言います」

「うみ?」


 ビーチの写真を広げると、偉い人ちゃんがすすすっとやってきて珍しそうな顔で覗き込んだ。

 興味があるのか、黄色しっぽがピクピクとしている。


「海と言うのは――」


 すかさず海について説明し、実際にある場所だと教える。

 とてつもない広さと深さがあること。太平洋だからね。

 それと水はしょっぱくて、魚がもの凄いたくさんいること。

 等々、海の魅力をこれでもかと教える。


「こんなところが、こっちにはあるのさ~?」

「ええ。去年は別の海に遊びに行ったのですが、そりゃもう楽しかったです」

「さど、さいこうだったです~」


 ハナちゃんもキャッキャしながら、写真をたくさん取り出して机に並べた。

 楽しい旅行の風景が映し出された、素敵なコレクションだね。


「わきゃ~、たのしそうさ~」


 偉い人ちゃん、写真に目が釘付けになった。

 海竜ちゃんと遊ぶみんなの写真や、ハナちゃんと神輿が焼きそばを食べている写真。

 カニを捕まえようとしたヤナさんが逆襲されて、ハサミに挟まれている写真とかも。

 海竜ちゃんダッシュに振り落とされたマイスターが、水面で大回転している決定的瞬間とかもあるね。

 ……何枚か爆笑フォトが混ざっているけど、良い思い出だ。


 もっと積極的になって貰うため、ちょいとセールストークをしましょうか。


「さんさんと輝くお天道様に照らされて、この素敵な海辺で日向ぼっこ」

「いいかもさ~」

「すてきです~」


 偉い人ちゃん、日向ぼっこと聞いてしっぽをぱたぱた振り始めた。

 やっぱり、体を温めるのが好きみたいだね。

 ハナちゃんもつられて、エルフ耳をぴこぴこさせている。


「海に入れば、このようなカラフルなお魚と一緒に泳げます」

「みたこともないおさかな、おいしそうさ~」

「どんなあじが、するですかね~」


 ――おっと、食い気を刺激してしまった。

 偉い人ちゃんとハナちゃん、じゅるりとしている。

 ……まず真っ先に、美味しそうという感想が出てくるのはどうなんだろう?

 まあ、気を取り直して説明を続けよう。


「こちらおなじみの海竜ですが、子供の海竜ちゃんの背中に乗って遊ぶこともできます」

「わきゃ~、このかわいいこと、あそべるさ~?」

「おもきし、あそべるです~!」

「すてきさ~!」


 偉い人ちゃんも可愛い動物は好きなようで、海竜ちゃん写真にわっきゃわきゃだ。

 ハナちゃんもフォローしてくれて、二人で写真を見ながらキャッキャしている。

 動物が好きと言うことは、あの子の事も話した方が良いかも。


「おまけに、今回はこの子も参加です」

「わきゃ! みずどり、いるさ~!? めったにあそべない、めずらしいいきものさ~!?」

「いっしょにいくですよ~」

「わきゃ~!」


 ペンギンちゃんの写真を見せると、偉い人ちゃんおもいっきり食いついた。

 もうしっぽがぱったぱた振られている。

 希少な動物と遊べるというのが、相当なバリューのようだ。


「……ちょっと湖まで行って、呼んできますね」

「ユキちゃん、ありがと」

「少々お待ち下さい」


 ユキちゃんもその食いつきぶりに思うところがあったのか、ペンギンちゃんを連れてきてくれるようだ。

 すたっと立ち上がって、家から出て行った。

 俺はその間に、色々お話をしておこう。


「食事は、みんなでお魚とかを焼いて食べますよ」

「おさかな~! おさかなさ~!」

「おいしいおりょうり、つくるです~」


 今度は食欲の方面から攻めると、偉い人ちゃんニッコニコだね。

 しっぽの振りすぎで、だんだん横にずれていってらっしゃる。

 定位置にもどして――と。


「当然お酒も出ますよ。熟成された、強いお酒があるんです」

「わきゃ! わきゃ! じゅくせいされたおさけ!」


 今度はぴょんぴょん跳び始めた偉い人ちゃんだ。

 熟成されたお酒、というのがたまらないらしい。


「ウィスキーとか、ああいうのもよかったさ~」

「たくさんお酒、飲めますよお」

「ゆめみたいさ~」


 今度はくるくる回り始めた。

 もうなんというか、ワクワクしてしょうが無いようだね。

 そうして、くるくる回るバレリーナドワーフちゃんを眺めていると――。


「――はい、お越し頂きましたよ」

「こんにちわさ~」

「クワワ~」


 子供ドワーフちゃんと、ペンギンちゃんがやってきた。

 二人とも、ペコリと頭を下げてとてもお行儀が良い。

 良い子たちだね。


「わわわわきゃ~! ほんとに、みずどりがいるさ~」

「クワックワ~」


 ペンギンちゃんを見た偉い人ちゃんは、くるりんと回ったかと思ったら……。


「ふっかふかさ~」

「クワ~」


 しゅたっとペンギンちゃんの前に移動して、頭をなでなでし始めた。

 なでられたペンギンちゃんは、羽根をぱたぱたさせて大喜びだ。

 これはもう、完全に堕ちているね。

 そろそろ、締めくくっても良さそうだ。


「という感じで、旅行の計画を立てております」

「りょこう、うちもつれていってもらえるって、ほんとさ~?」

「ホントですよ。一緒に、沖縄へ行きましょう」

「わきゃ~! ありがとうさ~!」

「クワクワ~」


 確約が取れたことで、大喜びのご様子だ。

 ペンギンちゃんと手を取って、わっきゃわきゃとはしゃいでいるね。

 これで、旅行参加も問題なしだ。


「旅行、楽しみですね」

「たのしみさ~!」


 あんなに不安がっていたのはどこへやら。

 もうすっかり、偉い人ちゃんは旅行モードに切り替わったね。


「わきゃ~! わきゃ~!」

「クワクワ~」

「あとすこしで、しゅっぱつです~!」

「いよいよですね!」


 こうして、偉い人ちゃんの参加も確定し。

 ハナちゃん家の中は、新たな仲間が増えてキャッキャと大騒ぎだ。


「すてきなりょこうに、するさ~」


 そうですねえ。素敵な旅行にしましょうねえ。

 もう、逃げられませんよお。


 ――飛行機に、乗って貰いますからねえ。



 ◇



 十月某日、夜。現在地は、村の下にある平地。

 バスが三台並んだその場所は、月明かりに照らされた稲穂が風に吹かれてゆらゆらと揺れていた。

 

「ではみなさん、準備は大丈夫ですか?」

「だいじょぶです~!」

「なんかいも、もちものかくにんしました!」

「もんだいないじゃん!」


 そして、村の定住者が全員並んでいる。

 いよいよ、出発の時間だ。


「おっし、班分けに従ってバスに乗ってくれ」

「一号車は大志、二号車は私、三号車は高橋さんが運転します」


 高橋さんと親父も、準備万端だ。

 これからそれぞれバスを運転して、一路羽田を目指すことになる。


「わきゃ~! これが、うわさのバスってのりものさ~!」


 ちなみに偉い人ちゃんは、バスを見るのが始めてだ。

 かなり驚きながら、巨大な車体を見上げている。


「うちらはのったことあるけど、たのしかったさ~」

「りくちをはしるのりもの、すごいやつさ~」

「すわってるだけでいいのは、らくちんさ~」


 他のドワーフちゃんたちは、ラーメン屋さん駐車場でのマジックショーのときに、バスに乗っているから慣れた物だね。

 乗り心地はどうとか、偉い人ちゃんに説明している。

 俺もちょこっと、バスについて教えておこう。


「大きな音がしますが、そういう乗り物だから怖がらなくても大丈夫ですよ」

「わかったさ~。みがまえておくさ~」


 偉い人ちゃん、身構えておくとは言いつつも、バスに乗るのが楽しみでしょうがないご様子だ。

 黄色しっぽをめっちゃ振っているから、見た目でわかっちゃうね。

 でもこれなら、大丈夫そうだ。

 それじゃあみんなバスに乗って貰って、待機してもらいましょう!


「ではみなさん、バスに乗車して下さい」

「「「はーい!」」」


 声をかけると、元気な返事と共にぞろぞろとバスに乗り込んでいくみなさん。

 足取り軽やかで、もうウッキウキだね。


「いよいよしゅっぱつだね! しゅっぱつ!」

「おだんごたくさん、たべようね! たべようね!」

「うみって、はじめてだよね! はじめて!」


 妖精さんたちも、きゃいっきゃいで乗車だ。

 バスの中が一気に明るくなったけど、車内で花火をしているみたい。

 正直まぶしい。まあ、みんな元気で大変よろしいね!


(おきなわ~)


 続いて神輿もほよほよとバスに乗り込んでいくけど、イルカちゃんぬいぐるみを抱えている。

 ……それ、持っていくんだ。

 まあ、お気に入りのぬいぐるみだからね。ふわふわをご堪能しながら、バスの旅をお楽しみ下さいだね。


「わきゃ~! なんかとんできたさ~!」

(ども~)


 ――あ、そういや偉い人ちゃんに、空飛ぶ神輿の存在を教えてなかった。

 まあ、あとで説明しておこう。その可愛いぴこぴこしているのは、神様ですよって。

 きっと驚くだろうな。


 とまあ、それはそれとして。


「ギニャギニャ~」

「クワワ~」

「いっしょに、のるですよ~」

「かかえて、いくさ~」


 フクロイヌはハナちゃんに、ペンギンちゃんは子供ドワーフちゃんに抱えられて、一号車に乗っていった。

 ペンギンちゃん、まずはフクロに入らず楽しむみたいだね。

 怖くなったり眠くなったら、フクロへ潜るんだろう。

 お世話は子供ドワーフちゃんが責任を持って担当するとは言え、こちらでもマメに様子は見ておこう。

 まあ、運転中はユキちゃんに丸投げするしかないのだけど。


「うみについたら、フネにのろうじゃん」

「てんぷくとか、やめてよね」

「それはわからない」

「おまえがフネをうごかすと、まえにすすまないよな」

「うちのむすめを、たのむわね~」


 最後に、マイスターとステキさん、マッチョさんと腕グキさんも乗り込む。

 エルフカヌーで遊ぶ話で盛り上がっているようだけど、そのカヌーは仕舞っておきましょうね。

 必要になるのは、十二時間後くらいですから。


 ――――。


 そうして全員がバスに乗り込んで、三人のドライバーとユキちゃんが残った。

 月明かりが照らす中、それぞれ顔を見合わせる。

 すぐに発車しないのは、ちょっと相談があるからだ。

 その相談とは――。


「……なあ大志、あの偉い人がこの時期にやってきたのって……偶然か?」


 親父が早速、その話題について聞いてくる。

 そう、偉い人ちゃんについてである。


「俺は正直、偶然じゃねえと思ってる」


 続けて高橋さんも、意見を述べる。

 その意見については、俺も同意だ。


「自分もそう思う。それが何故かは分からないけど……無意味にこんなことをするとは、思えない」

「なにせ、さらって来るほどですからね」

「おまけに、もう旅行をキャンセルか日程変更できない時期と来た」

「まるで、狙ったかのようにな」


 ユキちゃんの言うとおり、偉い人ちゃんは自分の意志とは無関係に連れてこられた。

 こんなことは、今までに無かった。

 親父と高橋さんは、やってきた時期に引っかかっている。

 これほどピンポイントで狙われたのは、偶然とは思えないのも無理はない。


 あと、もっとも大事なこともある。

 偉い人ちゃんは、洞窟が閉じた状態で存在していること。

 元の世界に、戻れない。戻さない。

 つまりそれは――。


「――きっとなにか、見つけなければいけないことがあるはずだ。この地球で」


 人が良くて、ついつい振り回されがちな、偉い人ドワーフちゃん。

 彼女もきっと、村に連れてこなければならなかった……理由がある。

 あっちの世界に帰してはならない、何かが。


「旅行中、それとなく気を配ってあげよう」


 何かは分からないけど、気をつける必要はある。

 彼女のことを、気にかけてあげよう。


「ああ。俺たち四人で、ひとまずは注意するか」

「俺らも世話になったから、恩返しの意味も込めてな」

「大志さんたちの手が回らない部分は、私が担当しますね」


 親父、高橋さん、ユキちゃんも同意してくれた。

 まずは俺たちが手分けして、色々観察して、そして考えよう。


「じゃあ、そう言うことで」

「はい」

「ああ」

「おう」


 一通り相談事が終わったところで、この話はおしまい。

 あとは、行動あるのみだ。


「タイシタイシ~! どうしたです~!」


 ――おっと、窓からハナちゃんが手を振って呼びかけているね。

 そろそろ出発しないと、心配かけちゃうかもだ。


「もうすぐいくよ! ちょっと待っててね!」

「あい~! まってるです~!」


 返答すると、ハナちゃんがキャッキャと席に戻っていった。

 さて、バスに乗り込んで、出発するとしましょうか!


 いよいよ、沖縄へ向けて――出発だ!


 偉い人ちゃんのことも気にかけつつ、楽しい旅行にしなきゃね!


 ――ちなみに。


 偉い人ちゃんは、飛行機に乗るということを……まだ知らない。

 なんというか、ちょっと言いづらくてですね。ついつい、言いそびれてしまいましたん。

 でもまあ……どのみち乗るのだから、ぶっつけ本番でも大丈夫じゃないかと思うわけで。

 大丈夫だと良いな。

これにて今章は終了となります。みなさま、お付き合い頂きありがとうございました。

引き続き、次章をお楽しみください。

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