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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十九章 エルフ旅行
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第十三話 フクロイヌと、再会と


「それでは、あめがあがったられんらくおねがいします」

「またね~!」

「ひさびさに、もりにかえるわ~」


 あっちの森エルフたちや、平原の人たち。

 エルフィンの大雨期間を前にして、続々と里帰りが始まる。


「ああ~、どうぶつちゃんたちが~」

「はいはい、いっしょにかえりましょうね」


 いつの間にか住み着いていた動物好きお姉さんも、平原の焼き物五人衆に引きずられて帰って行く。

 また、雨が上がったら遊びに来て下さいね。


「あにめのよやくろくが、おねがいします!」


 そして予約録画という心強い味方を手に入れたアニメさんも、コスプレしたまま帰還だ。

 明らかに旅に向いていない格好だけど、大丈夫かな?

 ちょっと確認してみよう。


「その装備で、移動は大丈夫ですか?」

「もんだいありません! いどうちゅうも、あにめがみられますから!」

「ええ……?」


 問いかけると、あにめさんがポータブルBDプレイヤーを取り出した。

 いつの間にそんな装備を!

 あと、俺が聞いているのはそこではなく、コスプレ姿で長旅が出来るかって話でして……。


「もりにかえったら、みんなにもあにめをみてもらうの!」

「び、BDボックスまで……」


 あにめさんがシャキンと取り出したるは、キュア的なやつのBDボックス。

 しかも限定版。一体それを、どこで……。


「あにめ~」


 ニッコニコのあにめさん、BDプレイヤーにほおずりだ。

 でもそれ、電気がないと動かないわけでして。


「電源とかは、大丈夫ですか?」

「だいじょうぶですよ。ほら」


 電源について聞いてみると、あにめさんがおもむろにACアダプタを取り出した。

 そしてプラグを手に持ったかと思ったら――。


「でんき、これでたまりますから」


 プレイヤーの充電中ランプが――点灯した。

 この人……この人……。


「たくさん、れんしゅうしたんですよ! あにめのために!」

「さ、さようで……」


 アニメ見たさに、充電スキルをマスターするエルフ。

 何というか、もう本当にアレだ。

 でもまあ、楽しい里帰りになりそうだね。


「ではでは、いってきますね~!」

「またくるです~!」

「あめがあがったら、またよろしく!」


 こうして色々あったものの、たくさんのお土産を抱えてエルフたちが里帰りしていった。

 村はちょっとさびしくなったけど、雨が上がればまた賑やかになる。

 その時を楽しみにして、こちらも旅行に向けて進もう。


「ハナちゃん、もうすぐ旅行だよ」

「たのしみです~!」


 ハナちゃんに話しかけると、すっごい楽しみそうな顔をしている。

 ぴょいっと沖縄ガイドの本を取り出し、ペラペラとページをめくってご機嫌だ。


「うふ~、おきなわ~。みんなやタイシと、おきなわです~」

「思いっきり遊ぼうね」

「あい~!」


 あとは、出発の日を待つのみ。

 数日後が、待ち遠しいね!



 ◇



 そして旅行へ行くに当たって、女子エルフ限定で乗り越えるべき壁がある。


「ギリギリ、はいったわ~」

「わきばらのおにくが、ふるえる」

「やせなきゃ!」


 じわじわと減量してきた女子エルフたちだけど、ちょっと間に合わなそうな気配なのだ。

 なんとか水着は着れているけど、若干あふれ出している感。


「ユキちゃん、どうしよう」

「う~ん……」


 俺ではどうしようもないので、ユキ大先生へと丸投げ。

 しかし大先生も、お悩み顔だ。


「何とかする方法は、あるにはありますが……」

「あるんだ」

「ええまあ」


 どうやら方法はあるらしいけど、なんだか歯切れが悪い。

 言おうか言うまいか、迷いがあるような様子だ。


「――そのはなし、くわしく」

「なんとかなるの?」

「おにく、おにくがあああ~」

「え? え?」


 しかし耳の良いエルフである。

 ユキちゃんのつぶやきは速攻拾われ、集会場へと連れられていった。

 様式美である。


「……背中とか脇のお肉を、こうするとですね」

「「「キャー!」」」

「さらにここからここまで、移動させると……盛れます」

「「「キャー! キャー!」」」


 集会場から会話が漏れ聞こえるけど、盛り上がっているぽい。

 何を「盛り上げて」いるかは、追求しない方が身のためだ。

 これも危機管理である。


 さて、あんまり聞き耳を立てるのもアレだから、離れていよう。

 この集会場は今、デンジャーゾーンと化しているからね!


「くわばらくわばら……」


 そうしてユキちゃんを生け贄に捧げ、ぼちぼちとその辺を歩いて時間を潰す。

 村の中は沖縄旅行一色に染まっており、どこもかしこも旅行の話や準備で大はしゃぎだ。


「おれのしんさく、みてほしいのだ!」

「うっわすっげえフネ」

「またつくったんか」


 おっちゃんエルフは新作の四人乗りカヌーをみんなに見せていて、盛り上がっている。


「おれのフネもみてくれよ」

「おれのも」

「おれもおれも」


 そのままエルフカヌー品評会に突入。

 広場に大量のカヌーが並べられたけど、いつの間にそんなたくさん作っていたのか……。

 まあ、湖畔リゾートやドワーフの湖で活用出来るから、物量があるのは良いことかもしれない。

 その調子で、カヌー製造を続けて下さいだね。


 とまあエルフカヌー品評会を横目に、妖精さんのお花畑へと顔を出す。

 みんなは旅行の準備、出来ているかな?

 ちょっと聞いてみよう。


「みんなこんにちは。旅行の準備はどんな感じかな?」

「よそいきのふく! つくったよ! つくったよ!」

「みずぎも、つくったんだよ! つくったんだよ!」


 妖精さんたちは、旅行のために服や水着を新調したようだ。

 きゃいっきゃいで服を見せてくる。

 なかなか可愛らしいデザインで、良い感じだね。


「可愛い服だね。よく似合っているよ」

「かわいいって! かわいいって!」

「きゃい~!」


 褒めてあげると、みなさん白い粒子をキラッキラ。

 物理的にまぶしい。


「ほかにもあるよ! あるよ!」

「どうかな! どうかな!」


 そしてなぜか始まる妖精ふぁっしょんショー。

 キラキラ妖精さんたちが、きゃいきゃいとモデル歩きをする。

 なんというかわいらしさ。


「ほかにも、おようふくあるよ! あるよ!」

「これとかどうかな! どうかな!」

「おお、それも可愛いね」

「きゃい~!」


 その後、二時間という長きにわたり妖精ふぁっしょんショーが続きました。

 彼女たちの物量を、忘れていた……。


「タイシタイシ~。……なにやってるです?」

「ああいや、ちょっと目がくらんでね」

「だいじょぶです?」

「なんとか」


 二時間妖精さんキラキラフラッシュを見続けていたため、目がちょっとくらんだ。

 ちょうど良いので、目の休憩がてらハナちゃんと少し休もう。


「ハナちゃん、集会場でおやつでも食べようか」

「あや~、そこはまだ、おかあさんたちがなんかやってるです~」

「……まだ終わってないんだ」

「あい~」


 集会場でのんびりしようと思ったけど、まだ女子エルフお肉なんとかしよう会議が行われているらしい。

 ユキちゃん、すまぬ……すまぬ……。


 しかし、集会場が使えないとなると……どうしよう?


「どこに行こうかな?」

「ドワーフさんたちの湖で、のんびりするです~」


 どこに行こうか考えていると、ハナちゃんから提案が出た。

 なるほど、ドワーフの湖でのんびりか。良いかもね。


「それじゃあ、船を出して湖に行こうか」

「あい~」


 というわけで、ゴムボートに乗ってドワーフの湖へと赴く。

 すると――。


「クワワ~」

「ぎゃう~」

「タイシさん、こんにちわさ~」


 海竜ちゃんの背中に乗って、子供ドワーフちゃんとペンギンちゃんがお出迎えしてくれた。

 沖縄旅行にあたって、交流を深める意味で海竜ちゃんにはドワーフちゃんたちと過ごして貰っている。

 もうすっかり仲良くなったようで、ほんわかするね。


「みんなこんにちは。沖縄旅行の準備は、大丈夫かな?」

「じゅんび、できたさ~」

「それはなにより」


 旅行の準備について聞くと、もう出来ているっぽい。

 妖精さんもドワーフちゃんたちも、あとは出発するのみって感じだね。

 あとは、女子エルフたちの「オプショナル質量」問題を残すのみ、か。

 そこだけなんとかなれば、もう心配することもないね。

 でも、念のため困っていることがないか聞いてみよう。


「準備が出来たみたいで良かったけど、何か困っていることとか足りない物はあるかな?」

「わきゃ~、フクロイヌさんが、みあたらないさ~」

「……え? フクロイヌが見当たらない?」

「さがしたけど、みつからないさ~」


 どうやら、フクロイヌが見当たらないらしい。

 そう言えば、ここ数日その姿を見ていない。

 フクロイヌと仲良しのハナちゃんは、居場所を知っているだろうか?


「ハナちゃん、フクロイヌのこと、心当たりある?」

「あや~、ハナもわからないです~」

「そうなんだ」

「みっかまえから、みてないです?」


 ハナちゃんの話によると、三日前から見ていないと。

 どうしたんだろう? 心配だな……。


「困ったな……。というか、それ以前に心配だよ」

「しんぱいです~」

「わきゃ~……」


 いつもギニャギニャと懐いてくる、不思議な有袋類。

 姿が見えないとなれば、心配するのも当然で。

 ……ちょっと、探してみよう。


「それじゃあ、自分たちも探してみるね」

「おねがいするさ~。うちらも、さがしてみるさ~」

「さがすです~」


 というわけで、フクロイヌ捜索が始まる。

 みんなで手分けして、湖や森や湖畔、お花畑などを見回ったけど……。


「みつからないです~」

「どこにも、いないさ~」

「しんぱいだな~」


 色々捜索してみたけど、どこにもいない。

 ほんとうに、どこに行ってしまったのだろうか。


「どこにいっちゃったか、わからないです?」

「ニャ~」

「ギニギニ」

「ギヌ~」


 他のフクロイヌたちにも聞いてみたけど、首を横に振るだけ。

 誰も知らないようだ。


 ――結局その日は、フクロイヌが見つかることはなかった。



 ◇



 フクロイヌが見つからぬまま、夜。

 集会場で一人寝ていた時のこと。


「ギニャ~、ギニャニャ」


 ――ふと、胸に重さを感じた。


「ギニャ」


 あと、なんだかもっさもさする。


「ギニャ~」


 おまけに、なんか顔をぺろぺろされている。

 そして、特徴的な鳴き声。

 頭がぼんやりしているけど、なんとか目を開けてみると――。


「ギニャ」


 ――フクロイヌが、俺の上でしっぽを振っていた。

 行方不明だった、あの子だ。


「……やあ、こんばんは」

「ギニャニャ」


 頭を撫でてあげながら挨拶すると、フクロイヌも挨拶を返してくる。

 どうやら、元気いっぱいな感じだ。

 毛並みもふさふさで問題はないようで、ほっと一安心。


「みんなで、君を探していたんだよ」

「ギニャ」

「姿が見えないから、心配してたんだ」

「ギニャ~」


 フクロイヌに語りかけると「ごめんね」みたいなお返事が来た。

 ちょっとしっぽもへにょっとしていて、申し訳なさそうな感じ。

 まあ、怒っているわけじゃない。心配だっただけで。


「なんにせよ、無事で良かった。怪我とかはしてないよね?」

「ギニャ」


 怪我がないか確認すると、元気いっぱいしっぽをふりふりして返答だ。

 大丈夫みたいだね。ほんとう、良かった。

 すぐにみんなに教えてあげたいけど、今は深夜だ。

 明日の朝にしたほうが良いよね。


「明日の朝、みんなに元気な姿を見せてあげてね」

「ギニャン」


 まるで「わかったよ」とお返事するかのように、フクロイヌが応える。

 これでみんなの心配ごとも、払拭されるだろう。

 後のことは、また明日考えれば良いね。


「それじゃあ、朝になったらよろしくね。それまで一眠りしよう」

「ギニャ~」


 おねむのお誘いをすると、フクロイヌが布団に入ってきた。

 ほほう、これはふっさふさで、あったかい。

 肌寒い夜には、ぬくぬくして結構良いな。

 メインクーンと一緒におふとんに入ったのと、近い感覚がある。


「ギニャ……」


 しばらくなでなでしてあげていると、フクロイヌがおねむした。

 さ~て、俺も朝まで眠ろう。

 では、おやす――ZZZ。



 ◇



 フクロイヌが発見された、翌朝。

 みんなに無事をお知らせする。


「よかったです~」

「しんぱいしてたのよ~」

「げんきそうじゃん」

「ギニャ~」

「よかったさ~」


 みなさん、ほっとした表情でフクロイヌをなでなでする。

 ここ数日姿を見ていなかっただけに、心底安心した表情だ。


「大志さん、フクロイヌは昨日の夜中、集会場に姿を見せたのですか?」

「そうだね。寝ているときに突然だよ」


 ユキちゃんから状況を聞かれたけど、俺も詳しいことは分からない。

 フクロイヌがじゃれついてきて、夜中に起きた。

 これだけだね。


 しかし、それを聞いたユキちゃんは不思議そうな顔をした。


「集会場は閉め切っていたのに、どこから入ったのでしょうか?」

「……そう言えば、そうだ」


 ユキちゃんが指摘してきたのは、フクロイヌの進入経路。

 昨日は肌寒かったので、窓も入り口も全部閉めていた。

 一体どこから、集会場内へと入ってきたのだろうか?


「大志さんが寝ていた別室のふすまは、どうでしたか?」

「閉まってたね」


 つまり、密室だった事になる。

 でもまあ、鍵はかけていなかった。


「賢い動物だから、自分で扉を開けて入ってきたんじゃないかな」

「……まあ、ネコでもイヌでもそういう子はいますね」

「でしょ?」


 色々不思議な点は確かにある。

 なぜ突然行方不明になったのかとか、どうして突如姿を現したのかとか。

 しかし、フクロイヌの生態はほとんど明らかになっていない。

 謎の動物には違いなく、まだまだ彼らのことを知っていく必要はある。

 でも、今はひとまず再会を喜ぼう。細かいことを考えるのは、またいずれ。


「なんにせよ、これで旅行も大丈夫そうだね」

「ですね! ……フフフ、夕日が照らす海岸で……フフフ」


 ユキちゃんがなにかの妄想に入ったところで、この話はおしまいとなった。

 さてさて、これでしっぽドワーフちゃんたちの心配事もクリアした。

 あとは出発日を待つのみだね!


「クワ~」

「ギニャニャ~」


 旅行に連れて行って貰うペンギンちゃんも、フクロイヌが見つかって大喜びだ。

 なにせ、彼がいなかったら一緒に旅行へ行けないからね。


「クワクワ~」


 そしてペンギンちゃん、嬉しさのあまりフクロイヌのフクロへ潜っていった。

 フクロから足だけ出ていて、嬉しそうにぱたぱたとしている。

 なごむなあ。


「わきゃ~、これでひとあんしんさ~」

「いっしょにりょこう、いけるです~」


 子供ドワーフちゃんもハナちゃんも、その様子を見てニッコニコだ。

 一緒にフクロイヌキャリアーを考えた仲だけに、心配もひとしおだったからね。

 なんとかなって、良かった良かった。


「……クワ?」


 ん? ペンギンちゃんの足のぱたぱたが止まった。

 と思ったら、もぞもぞとフクロから出てくる。


「クワワ?」

「わきゃ?」

「あえ?」


 そのままフクロイヌのフクロを見つめて、首を右に左に傾げている。

 どうしたのかな?

 まさか、フクロが合わないとか? でもいまさら、そんな課題が出るはずは……。

 ひとまず、聞いてみよう。


「ねえ、どうしたの? 何か変なことでもあった?」

「クワ~クワワ?」

「あえ? フクロのなかに、なんかいるです?」

「わきゃ?」


 はい? フクロの中に――何かいる?


「クワワ~。クワクワ」

「でっかいのが、つっかかってるです?」

「おくまで、いけないさ~?」

「クワワ~」


 ハナちゃんと子供ドワーフちゃんが通訳してくれたけど……。


 ――大きな「何か」がフクロの中にいて、突っかかって入れない、と。


「……そんなこと、この前はあった?」

「クワ~」

「ないみたいです~」

「こないだためしたときは、そんなことなかったさ~」


 過去の事例に存在したか問い合わせると、みんなして否定だ。

 ペンギンちゃんは首を横に振り、ハナちゃんが通訳し、子供ドワーフちゃんも以前に試したときはなかったと。


 ……嫌ぁ~な、予感が、するぞ。


「大志さん、私……嫌な予感がします」

「ハナも、おんなじです~」


 ユキちゃんとハナちゃんも同じ気持ちのようで、「ええ……?」て感じでフクロイヌを見つめている。


「ギニャン!」


 しかし当のフクロイヌは、「くすぐってね!」的なポーズをする。

 くすぐって、その「フクロの中の存在」を……出せと。


「……どうする?」

「あや~……くすぐるしか、ないです~」

「そうしてみないことには、何が潜んでいるのか……確認出来ません」


 ハナちゃんもこのパターンには、なんとなく予感がしているらしい。

 フクロイヌのフクロからは、何が飛び出すか分からないという経験が効いているね。

 ユキちゃんも同様で、今フクロに潜んでいる存在を確認するには、確かにそれしかない。


「わきゃ? みんなして、どうしたさ~?」

「クワワ~?」


 子供ドワーフちゃんとペンギンちゃんは、このフクロイヌガチャのトンデモっぷりをまだ知らない。

 首を傾げて、俺たちの葛藤を見つめているだけだ。


「ギニャニャ」

「くすぐって欲しいとな」

「ギニャン」

「あや~、せかしてるです~」

「大志さん……どうします?」


 躊躇う俺とハナちゃんに、フクロイヌがくすぐってアピールを続ける。

 というか、なんだか急かしているようで……。


 ――よし! 腹をくくろう!


「何かが起こるにせよ、確認は早いほうが良い。――くすぐろう」

「わかりました。では、私はこちらから」

「ハナは、こっちをくすぐるです~」

「ギニャニャ」


 腹をくくった俺を見て、ユキちゃんとハナちゃんも協力してくれるようだ。

 三人でフクロイヌを包囲し、手をわきわきとさせる。

 それでは――開始!


「いくよ! そーれそれ! 首筋こちょこちょだ!」

「脇腹をくすぐっちゃいますよ!」

「おなかもこちょこちょです~!」

「ギニャニャニャ!」


 三人でよってたかって、フクロイヌこちょこちょの儀を開始。

 くすぐられている対象Fは、もう大喜びでギニャギニャ言っている。

 そのまましばらくくすぐっていると――。


「あ! なんか毛みたいのが出てきた!」

「もっとくすぐるです~!」

「けっこう大きくないですか?」


 フクロから、ちらりと毛みたいなのが出てきた。

 ややぼっさぼさとした感があるけど、中にいるのは生きものっぽい。

 ちょっと大きな動物、かな?


「大きいだけに、なかなか出てこないね」

「引っ張ってみましょうか」

「そうするです~」


 しかし大きすぎてなかなか出てこないため、引っ張り出すことに。

 毛を引っ張るとかわいそうだから、ぐわっしと本体っぽいのを掴んで引っ張ってみる。

 すると――。


「うっわ! でっかいのが出てきた!」

「え……これって……」

「あや~! ひとっぽいのが、でてきたです~!」


 人、みたいなのが出てきた。

 膝を抱えて丸まった格好の、女性っぽい何か。

 これは……。


「……わきゃ?」


 やがて、その「女性っぽい」生きものが目を覚まし、寝ぼけまなこで周囲を見渡す。

 その格好は、キャミソールみたいなトップスをまとい、かぼちゃパンツみたいなのを履いた――。


「わきゃ? あかるいさ~? もう、おひるさ~?」

「あややややや! タイシ~! このひと! みたことあるです~!」

「……なんで、この人がフクロの中に」

「た、大志さん。この人って、あの方ですよね」


 そう、フクロから出てきたのは。

 寝癖でぼさぼさ頭の――偉い人ドワーフちゃん、だった。


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