第十一話 連れて行くには、どうするか
「りょこう! いきたい! いきたい!」
「すてきなけしきだね! きれいだね!」
「わきゃ~! こんなばしょ、ほんとにあるさ~!?」
「およいでみたいさ~!」
集会場に妖精さんとしっぽドワーフちゃんたちを呼び寄せ、本を見て貰った。
そらもう大騒ぎだ。
「問題ないみたいですね」
「きまりです~!」
お話しをしたヤナさん、にっこにこ。
ハナちゃんも早々に話が決まって、大喜びだね。
しかし、お留守番の子たちもいる。
「わたしたちは、ここでのんびりするよ! するよ!」
「そもそも、ここがもくてきち~」
他の数千人いる妖精さんたちは、この村でのんびり過ごすらしい。
まあ、言われてみればそうだ。
彼女たちは「この村に」遊びに来たのであって、「ここが目的地」だ。
さらに他へ遊びに行くとは、考えていないわけだね。
言うなれば、目的を持って北海道旅行に来たのに、現地の人に「グアムとか行こうぜ」と誘われるようなものか。
そりゃ、ここで遊ぶよって言うよね。
今見たいのは美瑛の美しい風景であって、南国の珊瑚礁は別の機会に、というお話し。
当たり前の事だった。
まあ特に揉めることもなく話が通ったので、一安心だね。
あとは、俺たちが留守をしている間のお仕事、ちょっとお願いしておこう。
「それじゃあ、羽根に治療が必要な子が来たら、引き留めておいてくれるかな?」
「わかったよ! わかったよ!」
「おもてなし~」
俺とメカ好きさんがいないので、治療業務もお休みだ。
その間は、のんびり村を楽しんでいて貰おう。
「何かあったら、リザードマンたちに言えば良いよ。自分に連絡取れるから」
「れんらくだね! れんらく!」
「リザードマンたちはあっちの湖畔か、向こうの湖でお店やってるから」
「なかよくします~」
淡水大好きリザードマンたち、当然ドワーフの湖でも遊ぶ。
ドワーフちゃんたちが留守の間、周囲の監視や環境維持のお仕事を頼んである。
あとはこの村の状態も見回りしてもらって、報告を貰う予定だ。
「留守番してくれるあいつらには、仕事が終わったらスーパー銭湯巡りの旅を報酬とするぞ」
「我先にと立候補してくれたね」
「こっちのスーパー銭湯、俺たちの世界じゃ実現不可能な楽園だからな」
話を通しておいてくれたのは、高橋さんだ。
ちたまスーパー銭湯巡りを報酬に、村の守りを頼んである。
「うちの社用スマホをあいつらに預けるから、大志も番号登録しといてくれ」
「わかった」
連絡手段は、高橋さんの会社で使っている法人契約したやつ。
リザードマンたちは普通にスマホが使えるので、この辺心配が無くて良いね。
ちたまの土木工事にかり出されて仕事したりするから、ちたま道具の扱いにも慣れているわけだ。
おまけに力持ちだから、結構現場で重宝されていると聞く。
とまあ、それはそれとして。
お留守番をしてくれる妖精さんたちにも、報酬を渡さないとね。
「みんな、お留守番のお礼は――このお菓子や材料だよ!」
「きゃい~!」
「おだんご! おだんご~!」
「たくさんある~!」
報酬のお菓子や材料を見て、お留守番妖精さんたちきゃいっきゃい。
たくさん持ってきたからね。俺たちが留守の間、のんびり食べて欲しい。
「おうさま! ありがと! ありがと!」
「おしごとがんばるね! がんばる!」
「きゃい~」
早速お菓子や材料を分け合うため、妖精さんたちは列に並ぶ。
言われなくても行列を作る、えらい子たちだね。
「さて、これで留守中の守りは何とかなったね」
「じゅんちょうです~」
一つ一つ課題をクリアしていき、目標へと近づいている実感がある。
この調子で、準備を進めていこう!
◇
「大志さん、思ったより代金が安くなりそうですよ」
「え? ユキちゃん本当?」
「はい。……ほとんど、子供料金になりますので」
「あ~、そういやそうか」
ドワーフちゃんたちと妖精さんたち、体がちっちゃい。
全員子供料金で通ってしまう。
「想定していたより、旅費はかなり圧縮できますね」
「そりゃ助かる」
「おまけに、団体ツアーとして割安になりますよ。今は閑散期なので、団体予約も取りやすいです」
ユキちゃんが何社かにプランを問い合わせたらしく、見積もり比較が出てきた。
思ったより、安く済むね。
「これなら……予算は四百万円もあれば足りるかな?」
「二泊三日なら、そうですね」
二泊三日で、ちょっと豪華なプランのツアー代金はそれくらい。
でもこれなら……。
「……そこにあと百万円足して、三泊四日にしちゃおうか?」
「大丈夫ですか?」
「問題ないよ。マジックショーの売り上げもあるし」
あれは大変儲かった。またやりたい。
そのおかげで、今回の旅行も多少余裕はある。
「ユキちゃんの旅費も、もちろんうちが負担するよ」
「ありがとうございます!」
お礼を言うユキちゃんだけど、さんざんお世話になっているのは俺の方で。
これでも恩返しは出来ていない。
機会を見て、コツコツ恩返しをしていこう。
「フフフ……南国の夕焼けとか、シチュエーションとしては最高……」
「まあそうだね。見に行くのも良いかも」
「ですよね!」
……おおう、ユキちゃん耳しっぽがぽふんと出現だ。
やけに気合いが入っているけど、そんなに夕日が見たいのかな?
「た、大志さん。一緒に夕日を見ませんか?」
「良いよ。楽しみだね」
「きたー!」
みんなで一緒に見る夕日とか、楽しそうだ。
あとでハナちゃんとかにも、お誘いをかけておこう。
「着々と、ゴールに近づいてますね!」
「そうだね。一つ一つ、積み重ねていこう」
「はい!」
旅行の準備は、ユキちゃんの言うように着々とゴールに近づいている。
楽しい旅行にするためにも、一つ一つ課題をクリアして積み重ねよう。
ちょっとした見落としがあったりすると、後々困る。細かいところも見逃さずに、予定を詰めないと。
俺は危機管理には自信があるからね。
「フフフ……書類一式も揃っているし、順調」
あ、もうツアー契約とかの書類とか揃えてるんだ。
ユキちゃん準備が良いね。
◇
「ぎゃう~!」
「海竜も参加オーケーだってさ」
「よろしくね」
「ぎゃ~う!」
泳ぎのレジャーと言えば、この子は欠かせない。
今回もまた、スピードの向こう側に連れて行って貰おう。
「よろしくです~」
「いっしょにおよぐさ~」
「ぎゃうぎゃう」
仲良しのハナちゃんも、キャッキャと喜び。
しっぽドワーフちゃんたちも、知らない仲ではない。
みんな海竜ちゃんの参加を歓迎だね。
旅行中は、一緒に仲良く過ごしましょう!
と、おなじみのメンバーが揃ってきてホクホクしていると――。
「わきゃ~……」
ちっちゃなしっぽドワーフちゃんが、羨ましそうな目でその様子を見ていた。
リーダー格なお母さんドワーフちゃんの、一番下のお子さんだね。
一緒に、遊びたいのかな?
「ねえ、どうしたの?」
「わ、わきゃ~……」
どうしたのか聞いてみても、なんだか上目遣いで物言いたげな様子。
しっぽもゆらゆらと揺れて、迷いがあるね。
おねだりしたいけど、遠慮しちゃってる感じだ。
……これは聞き出した方が良いね。
「何かお願い事があるなら、ダメ元で言ってみて」
「わきゃ~……わがままいって、いいさ~?」
「もちろん良いよ。それはとっても、大事なことかもしれないからね」
どうやら、わがままかもって思っているようだ。
それでも聞いておきたい。見落としがあるかもしれないからね。
「……わかったさ~」
どうやら話す決心をしたようで、しっぽがピンと立った。
さてさて、どんなお願いなんだろうか?
「ちょっとこっちに、おいでさ~」
と思っていると、ちっちゃドワーフちゃんが後ろを向いた。
そして茂みの方に向かって手招きしたわけだけど。
何をしているのかな?
「クワ~」
やがて、茂みの奥からペンギンちゃんがぺたぺたと歩いてくる。
この子を呼び寄せていたのか。
「いいこさ~」
「クワワ~」
やってきたペンギンちゃんを、なでなでするちっちゃドワーフちゃん。
撫でられた子は嬉しいのか、ヒレというか羽根をぱたぱたさせて喜ぶ。
仲良しさんだね。
……して、この子を呼び寄せた理由とは、何だろうか。
「それで、この子がどうしたの?」
「タイシさん、りょこうに――このこもつれてって、いいさ~?」
「え? この子を?」
「いっしょに、うみってところで、およぎたいさ~」
あ~、そう言うことか。
ペンギンちゃんと一緒に旅行をして、共に海で泳ぎたいと。
「きっときっと、すごくたのしいさ~」
「クワ~」
ちっちゃドワーフちゃん、楽しい旅を想像しているのか、お目々がキラッキラ。
ペンギンちゃんも、こちらを見上げてキラキラお目々だ。
確かにそれは楽いこと間違いなしだけど、可能だろうか?
動物を旅に連れて行くのは、なかなか大変だ。
彼らがストレスを感じないよう気を配って、他にも色々世話をしないといけない。
俺たちは良くても、相手がどうだか……。
「クワックワ~」
……まあ、ペンギンちゃんも乗り気か。
それならまあ、良いか。
しっかり面倒を見るならって条件を付けて、良しとしよう。
「きちんとお世話、出来るかな?」
「もちろんさ~! いっしょうけんめい、おせわするさ~」
「クワ!」
問いかけてみると、より一層しっぽをピン! と立てて約束してくれた。
ペンギンちゃんも「迷惑かけないよ!」て感じでお返事だ。
よし、じゃあこの子たちを信じましょう!
「それなら良いよ。一緒にこの子も、連れて行こう!」
「わきゃ~! ありがとうさ~!」
「クワ~! クワワ~!」
許可を出すと、ちっちゃドワーフちゃんとペンギンちゃん、手を取り合ってキャッキャと喜ぶ。
旅の仲間、増えました!
「わきゃ~! わきゃ~!」
「クワ~!」
ちっちゃドワーフちゃんとペンギンちゃん、俺の周りをてこてこぺたぺたと歩き回って嬉しさをアピールだね。
それじゃあ、旅行中どうお世話するかとか、プランを立てて貰おう。
「一緒に旅をするにあたって、どうお世話するかを考えて、あとで教えてね」
「わかったさ~!」
「クワ~」
計画を立てて貰って、実際に試してみて。
そうすれば、必要な物や手順も見えてくるだろう。
自分で方法や計画を考える、良い経験にもなるはずだ。
ちっちゃドワーフちゃんとペンギンちゃん、がんばってね。
◇
ここはとある村の、とある湖。
旅行に向けて、わきゃわきゃと話し合いが進んでおりました。
「タイシさんから、許可をもらったさ~」
「クワ~」
「よかったさ~」
ちっちゃいドワーフちゃん、仲良しのペンギンちゃんと一緒に旅行に行けそうだと、お母さんに報告していますね。
「それで、どうやって連れて行くさ~?」
「タイシさんの話では、カゴに入って貰う必要があるらしいさ~」
「クワ~」
あらかじめ大志から教わった、動物ちゃんを連れて行く方法。
そこからさらに、ペンギンちゃんにあった計画を立てないといけません。
生態を知る人でないと、出来ないことでした。
「食べ物はどうするさ~?」
「お魚を持って行く予定さ~」
そうして着々と、計画を立てていくのですが……。
ひとつ、問題が出てしまいました。
「クワ~……」
「わきゃ? 眠れないさ~?」
「クワワ~」
大志から借りた、ペットのお出かけケージなのですが……。
どうも慣れていないせいか、ペンギンちゃんがおねむ出来ないようです。
移動時間が長いので、すやすや眠ることはとっても大切。
でもそれは、ちょっと難しいみたい。
「狭いところが、だめさ~?」
「クワワ~」
普段は広い湖で、のびのび泳いでいるペンギンちゃんです。
小さくて狭い移動用ケージ内では、落ち着かないみたいですね。
「困ったさ~……」
「クワ~……」
壁にぶつかってしまった事に、ドワーフちゃんとペンギンちゃんはお困り顔。
でも、解決はなかなか大変です。
一生懸命考えますが、その日は上手い手が思いつかず、過ぎ去っていくのでした。
――そして翌日。
「思いつかないさ~」
「クワ~」
朝から悩むドワーフちゃんとペンギンちゃん、一晩考えて居たようです。
解決策が見いだせず、ほとほと困っておりすね。
水辺で二人、水面を眺めながら頭を抱えます。
そんなお悩み中の所へ、カヌーに乗ったお客さんがやって来ました。
「おはようです~。おさかな、貰いにきたですよ~」
「エビとかもあったら、頂けますか?」
ライフジャケットを着た、ハナちゃんとヤナさんです。
どうやら水産物を受け取りに来たようですね。
ヤナさんの釣果がボウズでも、ここに来れば確実にお魚が手に入ります。
ドワーフちゃんたちのおかげで、村はより一層食卓が豊かになっているのでした。
「わきゃ~……」
「クワ~……」
しかしお悩み中のちっちゃドワーフちゃん、頭の中は課題でいっぱい。
わきゃきゃと悩んで、じっと水面を見つめたままです。
「あえ? 二人ともどうしたです?」
そんな様子に、ハナちゃんも心配になったようです。
カヌーから下りて二人にぽてぽてと近づき、声をかけました。
「わきゃ? ハナちゃんさ~?」
「あい~。なんだか、調子よくないです?」
ようやくハナちゃんに気づいたドワーフちゃん、顔を上げてハナちゃんを見ました。
普段の明るい様子とは違い、顔色は冴えません。
「わきゃ~……それが、ちょっと困っちゃってるさ~」
「あや~、お困りごとですか~」
「水鳥を旅行に連れて行きたいけど、ちょっと難しそうさ~」
「クワ~……」
良い機会だと思ったのか、ドワーフちゃんがお悩みごとを話し始めました。
「これがこうなって、そうなってるさ~」
「むつかしい、問題です~」
ハナちゃん、ふむふむと耳を傾け事態を認識します。
佐渡への長旅を経験しているだけに、その難しさも理解出来るようですね。
「むむむ~。移動中は、なかなか落ち着くのが難しいです~」
「村の外は、騒がしいさ~」
「狭いカゴで寝るのも、大変かもです~」
「わきゃ~」
ハナちゃん旅の経験があるだけに、ちっちゃドワーフちゃんより……もうちょっと細かいところが見えているみたいですね。
エルフ耳がてろんと垂れ下がり、ハナちゃんもお困り顔になってしまいました。
「むむむ~……」
「わきゃ~……」
「クワ~」
こうして、お困り顔が一人増えてしまいました。
三人仲良く、悩み始めます。
「じっくり考えるのは、良いことだよ。納得がいくまで、突き詰めてみなさい」
そんなお悩みチームを見たヤナさん、ちょっとしたアドバイスと励ましの言葉を贈りました。
子供たちが自分で悩んで、解決策を探す。
その様子を見守ることにしたようです。
「わかったです~」
「もっとたくさん、かんがえてみるさ~」
「クワワ~」
励ましの言葉を貰って、三人とも顔を上げました。
ちょっと、表情が明るくなりましたね。
「タイシさんも、それを期待してお任せしたんだと思うよ。だから、出来るところまでは自分たちの力でやってみよう」
「あい~!」
「そうするさ~!」
「クワクワ~!」
多分大志に聞けば、すぐに解決してくれるのでしょう。
でもそこはぐっと堪えて、まずは自分たちで何が出来るかを探す。
それがいずれは、自立するための大きな力となるのですから。
「一緒に考えるです~」
「助かるさ~」
「クワ~」
ちいさなちいさな、自立の芽。
気長に育てていこうとする姿が、そこにはありました。
「じゃあ僕はお魚を貰ってくるから、ハナは一緒に考えてあげなさい」
「あい~!」
「ありがとうさ~」
「無線を置いていくから、何かあったら連絡するんだよ」
「ありがとうです~」
そうしてヤナさんはお魚を貰い、無線をハナちゃんに渡して。
カヌーに乗って帰って行きました。
残された三人、水辺であれこれ考え始めます。
「これとか、どうです?」
「クワ」
「ちょっとキツいですか~」
「じゃあじゃあ、これならどうさ~」
「クワ~……」
「むつかしいさ~?」
ああでもないこうでもないと、会議は堂々巡り。
でも、仲良く話し合いは進んでいきます。
結論はなかなか出ませんが、ハナちゃんという仲間が加わり、知恵も増えました。
三人寄れば文殊の知恵。ちょっとずつ、前進していきましょう!
そして、お昼ちょっと前になるころ。
「……あえ? そう言えば――」
おや? ハナちゃんのエルフ耳が、ぴこんと立ちました。
なにか――閃いた見たいですね。
「わきゃ? どうしたさ~」
「何とかなるかも、しれないです~」
「ほんとさ~!?」
「クワ~?」
何とかなるかもと聞いて、ちっちゃドワーフちゃんとペンギンちゃんはしゅたっと立ち上がりました。
ハナちゃんの前へと集まって、きたいのまなざしで見上げます。
「ちょっと、お父さんにお願いして、連れてきて貰うです~」
「わきゃ? 連れてきて貰う? 誰をさ~?」
「クワワ~?」
ハナちゃん、おもむろに無線を取り出しました。
どうやら、誰かを連れてきて貰うようです。
「来てみれば、わかるです~!」
さてさて、ハナちゃんはどんな手を思いついたのか。
上手く行くと、良いですね。
◇
旅行の準備は着々と進み、いよいよ日程を決めようかという段になって。
計画を詰めるために村に訪れる。
「タイシタイシ~! おかえりです~!」
「ハナちゃんただいま。元気でなによりだよ」
「あい~! ハナはげんきです~!」
いつも通り、ハナちゃんが一番にお出迎えしてくれる。
今日も元気いっぱいで、可愛らしい。
「ギニャ~」
「フクロイヌもこんにちは。なでなでしてあげるね」
「ギニャニャ~」
フクロイヌも一緒だったので、なでなでしてあげたら大喜びだ。
いつもの平和な、村の光景だね。
「わきゃ~。タイシさんこんにちわさ~」
「クワ~」
そうしていつもの光景を楽しんでいると、ちっちゃドワーフちゃんとペンギンちゃんもやってきた。
仲良く手を繋いでいて、ほんわかするね。
「二人ともこんにちは。今日も仲が良いね」
「おともだちさ~」
「クワワ~」
挨拶すると、キャッキャとお返事してくれる。
ほおずりしあって、仲よしさんアピールだ。
「タイシ、ちょっときいてほしいこと、あるです~」
仲良しな光景に和んでいると、ハナちゃんが話しかけてきた。
聞いて欲しいこと? なんだろう。
「聞いて欲しい事って、何かな?」
「りょこうに、このこをつれていくおはなしです~」
「クワ~」
ハナちゃんはペンギンちゃんをなでなでしながら、そう言った。
あれ? ハナちゃんがなぜ、その話を?
「わきゃ~、いっしょにかんがえてもらったさ~」
「クワ~」
ちっちゃドワーフちゃんが補足してくれたけど、なるほどそう言うことか。
ハナちゃん、課題のお手伝いをしてくれたんだ。
えらい子だね!
「ハナちゃんえらいね~。なでなでしちゃうよ!」
「うふ~」
頭をなでられたハナちゃん、エルフ耳がてろんと垂れてたれ耳に。
ご機嫌ハナちゃんだね。
「うふ~、うふふ~」
とまあひとしきりハナちゃんをなでた後、本題に入る。
「それで、この子を連れて行く方法、考えてくれたかな」
「あい~! いいてが、みつかったです~」
「これでだいじょうぶかどうか、かくにんしてほしいさ~」
「クワ~」
どうやら良い計画が出来たようで、みんなニコニコだね。
それじゃあ、方法を聞いてみるかな。
「して、その良い手とは何かな?」
「えっとですね~」
ハナちゃんおもむろに、フクロイヌを抱きかかえる。
そして――。
「――フクロイヌのフクロに、はいってもらうです~」
「ギニャ」
と、ニコニコ笑顔で教えてくれた。
「――え? フクロイヌ」
「そうです~。これなら、どうぶつさんも、あんぜんです~」
「クワ~」
ペンギンちゃんも、こくこくと頷いている。
要するに、フクロイヌに何とかして貰おうって話か。
「タイシさん、このほうほう、だいじょうぶさ~?」
そしてちっちゃドワーフちゃんから、判断を求められた。
俺が良いと言えば、それで決まるからね。
しかし、フクロイヌか……。
言われてみれば、動物を運ぶのにこれほど実績がある存在もいない。
なんたって、ピンチになった生きものたちを助けて、おまけに異世界まで運んでいるからね。
正直言うと……俺が知っている範囲では、フクロイヌが最強のアニマルキャリアーだ。
これほどの能力や安全性を持った存在や技法は、他に知らない。
当のフクロイヌだって、環境の変化に動じない強い生き物だ。
というか妖精さんたちすら、水没したお花畑から助け出して、ちたまへ運んだ実績があるわけで。
頼れるなら、これほど頼もしい事も無い。
俺としては、もしケージが駄目だったら増幅石をつけてもらって、子供と設定して連れていこうかと思っていたのだけど。
ストレスを与えない方法として考えたら、こっちのほうがずっと良いな。
「……問題なし、どころか最適だね。今出来る手段では、一番じゃないかな」
「それじゃあ! いいさ~?」
それが一番だと回答すると、ちっちゃドワーフちゃんが俺を見上げる。
期待に満ちて、お目々がキラッキラだね。
よし、太鼓判を押しておこう。
「もちろんだよ。フクロイヌにお願いする方法で、いこうじゃないか!」
「わきゃ~! やったさ~! ハナちゃん、ありがとうさ~!」
「どういたしましてです~」
「ギニャニャ~」
「クワ~」
ペンギンちゃん参加に対する課題クリアが確定し、みんな大喜びだ。
またまた新たな旅の仲間が加わって、賑やかになるね!
引き続き、楽しい旅になるようコツコツと課題をクリアしていこう。
「りょこう、たのしみさ~!」
「たくさん、あそぶです~!」
「ギニャギニャ~」
「クワ~、クワ~」
課題をクリアして、ハナちゃんもドワーフちゃんも手を取り合ってキャッキャして。
ペンギンちゃんもフクロイヌも、俺の周りをくるくる回る。
「なんとかなって、よかったね」
「ちゃんとかんがえて、えらいわ~」
そんな様子を、大人エルフのみなさまもにこにこしながら見守る。
とってもほんわかする、一幕だね。
こうしてまた、一歩目的に近づいたのだった。
しかし。
――俺はまだ、飛行機の説明をしていない。
大はしゃぎな所悪いけど、最大かつ最強の……課題があるわけで。
いつごろ説明しようかな。
村人たちに立ちはだかる、おヒコーキという最強の試練。
彼らはまだ、その乗り物の姿を――知らない。
あいかわらず報われない耳しっぽさん