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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十九章 エルフ旅行
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第十一話 連れて行くには、どうするか


「りょこう! いきたい! いきたい!」

「すてきなけしきだね! きれいだね!」

「わきゃ~! こんなばしょ、ほんとにあるさ~!?」

「およいでみたいさ~!」


 集会場に妖精さんとしっぽドワーフちゃんたちを呼び寄せ、本を見て貰った。

 そらもう大騒ぎだ。


「問題ないみたいですね」

「きまりです~!」


 お話しをしたヤナさん、にっこにこ。

 ハナちゃんも早々に話が決まって、大喜びだね。

 しかし、お留守番の子たちもいる。


「わたしたちは、ここでのんびりするよ! するよ!」

「そもそも、ここがもくてきち~」


 他の数千人いる妖精さんたちは、この村でのんびり過ごすらしい。

 まあ、言われてみればそうだ。

 彼女たちは「この村に」遊びに来たのであって、「ここが目的地」だ。

 さらに他へ遊びに行くとは、考えていないわけだね。


 言うなれば、目的を持って北海道旅行に来たのに、現地の人に「グアムとか行こうぜ」と誘われるようなものか。

 そりゃ、ここで遊ぶよって言うよね。

 今見たいのは美瑛の美しい風景であって、南国の珊瑚礁は別の機会に、というお話し。

 当たり前の事だった。


 まあ特に揉めることもなく話が通ったので、一安心だね。

 あとは、俺たちが留守をしている間のお仕事、ちょっとお願いしておこう。


「それじゃあ、羽根に治療が必要な子が来たら、引き留めておいてくれるかな?」

「わかったよ! わかったよ!」

「おもてなし~」


 俺とメカ好きさんがいないので、治療業務もお休みだ。

 その間は、のんびり村を楽しんでいて貰おう。


「何かあったら、リザードマンたちに言えば良いよ。自分に連絡取れるから」

「れんらくだね! れんらく!」

「リザードマンたちはあっちの湖畔か、向こうの湖でお店やってるから」

「なかよくします~」


 淡水大好きリザードマンたち、当然ドワーフの湖でも遊ぶ。

 ドワーフちゃんたちが留守の間、周囲の監視や環境維持のお仕事を頼んである。

 あとはこの村の状態も見回りしてもらって、報告を貰う予定だ。


「留守番してくれるあいつらには、仕事が終わったらスーパー銭湯巡りの旅を報酬とするぞ」

「我先にと立候補してくれたね」

「こっちのスーパー銭湯、俺たちの世界じゃ実現不可能な楽園だからな」


 話を通しておいてくれたのは、高橋さんだ。

 ちたまスーパー銭湯巡りを報酬に、村の守りを頼んである。


「うちの社用スマホをあいつらに預けるから、大志も番号登録しといてくれ」

「わかった」


 連絡手段は、高橋さんの会社で使っている法人契約したやつ。

 リザードマンたちは普通にスマホが使えるので、この辺心配が無くて良いね。

 ちたまの土木工事にかり出されて仕事したりするから、ちたま道具の扱いにも慣れているわけだ。

 おまけに力持ちだから、結構現場で重宝されていると聞く。


 とまあ、それはそれとして。

 お留守番をしてくれる妖精さんたちにも、報酬を渡さないとね。


「みんな、お留守番のお礼は――このお菓子や材料だよ!」

「きゃい~!」

「おだんご! おだんご~!」

「たくさんある~!」


 報酬のお菓子や材料を見て、お留守番妖精さんたちきゃいっきゃい。

 たくさん持ってきたからね。俺たちが留守の間、のんびり食べて欲しい。


「おうさま! ありがと! ありがと!」

「おしごとがんばるね! がんばる!」

「きゃい~」


 早速お菓子や材料を分け合うため、妖精さんたちは列に並ぶ。

 言われなくても行列を作る、えらい子たちだね。


「さて、これで留守中の守りは何とかなったね」

「じゅんちょうです~」


 一つ一つ課題をクリアしていき、目標へと近づいている実感がある。

 この調子で、準備を進めていこう!



 ◇



「大志さん、思ったより代金が安くなりそうですよ」

「え? ユキちゃん本当?」

「はい。……ほとんど、子供料金になりますので」

「あ~、そういやそうか」


 ドワーフちゃんたちと妖精さんたち、体がちっちゃい。

 全員子供料金で通ってしまう。


「想定していたより、旅費はかなり圧縮できますね」

「そりゃ助かる」

「おまけに、団体ツアーとして割安になりますよ。今は閑散期なので、団体予約も取りやすいです」


 ユキちゃんが何社かにプランを問い合わせたらしく、見積もり比較が出てきた。

 思ったより、安く済むね。


「これなら……予算は四百万円もあれば足りるかな?」

「二泊三日なら、そうですね」


 二泊三日で、ちょっと豪華なプランのツアー代金はそれくらい。

 でもこれなら……。


「……そこにあと百万円足して、三泊四日にしちゃおうか?」

「大丈夫ですか?」

「問題ないよ。マジックショーの売り上げもあるし」


 あれは大変儲かった。またやりたい。

 そのおかげで、今回の旅行も多少余裕はある。


「ユキちゃんの旅費も、もちろんうちが負担するよ」

「ありがとうございます!」


 お礼を言うユキちゃんだけど、さんざんお世話になっているのは俺の方で。

 これでも恩返しは出来ていない。

 機会を見て、コツコツ恩返しをしていこう。


「フフフ……南国の夕焼けとか、シチュエーションとしては最高……」

「まあそうだね。見に行くのも良いかも」

「ですよね!」


 ……おおう、ユキちゃん耳しっぽがぽふんと出現だ。

 やけに気合いが入っているけど、そんなに夕日が見たいのかな?


「た、大志さん。一緒に夕日を見ませんか?」

「良いよ。楽しみだね」

「きたー!」


 みんなで一緒に見る夕日とか、楽しそうだ。

 あとでハナちゃんとかにも、お誘いをかけておこう。


「着々と、ゴールに近づいてますね!」

「そうだね。一つ一つ、積み重ねていこう」

「はい!」


 旅行の準備は、ユキちゃんの言うように着々とゴールに近づいている。

 楽しい旅行にするためにも、一つ一つ課題をクリアして積み重ねよう。

 ちょっとした見落としがあったりすると、後々困る。細かいところも見逃さずに、予定を詰めないと。

 俺は危機管理には自信があるからね。


「フフフ……書類一式も揃っているし、順調」


 あ、もうツアー契約とかの書類とか揃えてるんだ。

 ユキちゃん準備が良いね。



 ◇



「ぎゃう~!」

「海竜も参加オーケーだってさ」

「よろしくね」

「ぎゃ~う!」


 泳ぎのレジャーと言えば、この子は欠かせない。

 今回もまた、スピードの向こう側に連れて行って貰おう。


「よろしくです~」

「いっしょにおよぐさ~」

「ぎゃうぎゃう」


 仲良しのハナちゃんも、キャッキャと喜び。

 しっぽドワーフちゃんたちも、知らない仲ではない。

 みんな海竜ちゃんの参加を歓迎だね。

 旅行中は、一緒に仲良く過ごしましょう!


 と、おなじみのメンバーが揃ってきてホクホクしていると――。


「わきゃ~……」


 ちっちゃなしっぽドワーフちゃんが、羨ましそうな目でその様子を見ていた。

 リーダー格なお母さんドワーフちゃんの、一番下のお子さんだね。

 一緒に、遊びたいのかな?


「ねえ、どうしたの?」

「わ、わきゃ~……」


 どうしたのか聞いてみても、なんだか上目遣いで物言いたげな様子。

 しっぽもゆらゆらと揺れて、迷いがあるね。

 おねだりしたいけど、遠慮しちゃってる感じだ。

 ……これは聞き出した方が良いね。


「何かお願い事があるなら、ダメ元で言ってみて」

「わきゃ~……わがままいって、いいさ~?」

「もちろん良いよ。それはとっても、大事なことかもしれないからね」


 どうやら、わがままかもって思っているようだ。

 それでも聞いておきたい。見落としがあるかもしれないからね。


「……わかったさ~」


 どうやら話す決心をしたようで、しっぽがピンと立った。

 さてさて、どんなお願いなんだろうか?


「ちょっとこっちに、おいでさ~」


 と思っていると、ちっちゃドワーフちゃんが後ろを向いた。

 そして茂みの方に向かって手招きしたわけだけど。

 何をしているのかな?


「クワ~」


 やがて、茂みの奥からペンギンちゃんがぺたぺたと歩いてくる。

 この子を呼び寄せていたのか。


「いいこさ~」

「クワワ~」


 やってきたペンギンちゃんを、なでなでするちっちゃドワーフちゃん。

 撫でられた子は嬉しいのか、ヒレというか羽根をぱたぱたさせて喜ぶ。

 仲良しさんだね。


 ……して、この子を呼び寄せた理由とは、何だろうか。


「それで、この子がどうしたの?」

「タイシさん、りょこうに――このこもつれてって、いいさ~?」

「え? この子を?」

「いっしょに、うみってところで、およぎたいさ~」


 あ~、そう言うことか。

 ペンギンちゃんと一緒に旅行をして、共に海で泳ぎたいと。


「きっときっと、すごくたのしいさ~」

「クワ~」


 ちっちゃドワーフちゃん、楽しい旅を想像しているのか、お目々がキラッキラ。

 ペンギンちゃんも、こちらを見上げてキラキラお目々だ。

 確かにそれは楽いこと間違いなしだけど、可能だろうか?


 動物を旅に連れて行くのは、なかなか大変だ。

 彼らがストレスを感じないよう気を配って、他にも色々世話をしないといけない。

 俺たちは良くても、相手がどうだか……。


「クワックワ~」


 ……まあ、ペンギンちゃんも乗り気か。

 それならまあ、良いか。

 しっかり面倒を見るならって条件を付けて、良しとしよう。


「きちんとお世話、出来るかな?」

「もちろんさ~! いっしょうけんめい、おせわするさ~」

「クワ!」


 問いかけてみると、より一層しっぽをピン! と立てて約束してくれた。

 ペンギンちゃんも「迷惑かけないよ!」て感じでお返事だ。

 よし、じゃあこの子たちを信じましょう!


「それなら良いよ。一緒にこの子も、連れて行こう!」

「わきゃ~! ありがとうさ~!」

「クワ~! クワワ~!」


 許可を出すと、ちっちゃドワーフちゃんとペンギンちゃん、手を取り合ってキャッキャと喜ぶ。

 旅の仲間、増えました!


「わきゃ~! わきゃ~!」

「クワ~!」


 ちっちゃドワーフちゃんとペンギンちゃん、俺の周りをてこてこぺたぺたと歩き回って嬉しさをアピールだね。

 それじゃあ、旅行中どうお世話するかとか、プランを立てて貰おう。


「一緒に旅をするにあたって、どうお世話するかを考えて、あとで教えてね」

「わかったさ~!」

「クワ~」


 計画を立てて貰って、実際に試してみて。

 そうすれば、必要な物や手順も見えてくるだろう。

 自分で方法や計画を考える、良い経験にもなるはずだ。

 ちっちゃドワーフちゃんとペンギンちゃん、がんばってね。



 ◇



 ここはとある村の、とある湖。

 旅行に向けて、わきゃわきゃと話し合いが進んでおりました。


「タイシさんから、許可をもらったさ~」

「クワ~」

「よかったさ~」


 ちっちゃいドワーフちゃん、仲良しのペンギンちゃんと一緒に旅行に行けそうだと、お母さんに報告していますね。


「それで、どうやって連れて行くさ~?」

「タイシさんの話では、カゴに入って貰う必要があるらしいさ~」

「クワ~」


 あらかじめ大志から教わった、動物ちゃんを連れて行く方法。

 そこからさらに、ペンギンちゃんにあった計画を立てないといけません。

 生態を知る人でないと、出来ないことでした。


「食べ物はどうするさ~?」

「お魚を持って行く予定さ~」


 そうして着々と、計画を立てていくのですが……。

 ひとつ、問題が出てしまいました。


「クワ~……」

「わきゃ? 眠れないさ~?」

「クワワ~」


 大志から借りた、ペットのお出かけケージなのですが……。

 どうも慣れていないせいか、ペンギンちゃんがおねむ出来ないようです。

 移動時間が長いので、すやすや眠ることはとっても大切。

 でもそれは、ちょっと難しいみたい。


「狭いところが、だめさ~?」

「クワワ~」


 普段は広い湖で、のびのび泳いでいるペンギンちゃんです。

 小さくて狭い移動用ケージ内では、落ち着かないみたいですね。


「困ったさ~……」

「クワ~……」


 壁にぶつかってしまった事に、ドワーフちゃんとペンギンちゃんはお困り顔。

 でも、解決はなかなか大変です。

 一生懸命考えますが、その日は上手い手が思いつかず、過ぎ去っていくのでした。


 ――そして翌日。


「思いつかないさ~」

「クワ~」


 朝から悩むドワーフちゃんとペンギンちゃん、一晩考えて居たようです。

 解決策が見いだせず、ほとほと困っておりすね。

 水辺で二人、水面を眺めながら頭を抱えます。


 そんなお悩み中の所へ、カヌーに乗ったお客さんがやって来ました。


「おはようです~。おさかな、貰いにきたですよ~」

「エビとかもあったら、頂けますか?」


 ライフジャケットを着た、ハナちゃんとヤナさんです。

 どうやら水産物を受け取りに来たようですね。

 ヤナさんの釣果がボウズでも、ここに来れば確実にお魚が手に入ります。

 ドワーフちゃんたちのおかげで、村はより一層食卓が豊かになっているのでした。


「わきゃ~……」

「クワ~……」


 しかしお悩み中のちっちゃドワーフちゃん、頭の中は課題でいっぱい。

 わきゃきゃと悩んで、じっと水面を見つめたままです。


「あえ? 二人ともどうしたです?」


 そんな様子に、ハナちゃんも心配になったようです。

 カヌーから下りて二人にぽてぽてと近づき、声をかけました。


「わきゃ? ハナちゃんさ~?」

「あい~。なんだか、調子よくないです?」


 ようやくハナちゃんに気づいたドワーフちゃん、顔を上げてハナちゃんを見ました。

 普段の明るい様子とは違い、顔色は冴えません。


「わきゃ~……それが、ちょっと困っちゃってるさ~」

「あや~、お困りごとですか~」

「水鳥を旅行に連れて行きたいけど、ちょっと難しそうさ~」

「クワ~……」


 良い機会だと思ったのか、ドワーフちゃんがお悩みごとを話し始めました。


「これがこうなって、そうなってるさ~」

「むつかしい、問題です~」


 ハナちゃん、ふむふむと耳を傾け事態を認識します。

 佐渡への長旅を経験しているだけに、その難しさも理解出来るようですね。


「むむむ~。移動中は、なかなか落ち着くのが難しいです~」

「村の外は、騒がしいさ~」

「狭いカゴで寝るのも、大変かもです~」

「わきゃ~」


 ハナちゃん旅の経験があるだけに、ちっちゃドワーフちゃんより……もうちょっと細かいところが見えているみたいですね。

 エルフ耳がてろんと垂れ下がり、ハナちゃんもお困り顔になってしまいました。


「むむむ~……」

「わきゃ~……」

「クワ~」


 こうして、お困り顔が一人増えてしまいました。

 三人仲良く、悩み始めます。


「じっくり考えるのは、良いことだよ。納得がいくまで、突き詰めてみなさい」


 そんなお悩みチームを見たヤナさん、ちょっとしたアドバイスと励ましの言葉を贈りました。

 子供たちが自分で悩んで、解決策を探す。

 その様子を見守ることにしたようです。


「わかったです~」

「もっとたくさん、かんがえてみるさ~」

「クワワ~」


 励ましの言葉を貰って、三人とも顔を上げました。

 ちょっと、表情が明るくなりましたね。


「タイシさんも、それを期待してお任せしたんだと思うよ。だから、出来るところまでは自分たちの力でやってみよう」

「あい~!」

「そうするさ~!」

「クワクワ~!」


 多分大志に聞けば、すぐに解決してくれるのでしょう。

 でもそこはぐっと堪えて、まずは自分たちで何が出来るかを探す。

 それがいずれは、自立するための大きな力となるのですから。


「一緒に考えるです~」

「助かるさ~」

「クワ~」


 ちいさなちいさな、自立の芽。

 気長に育てていこうとする姿が、そこにはありました。


「じゃあ僕はお魚を貰ってくるから、ハナは一緒に考えてあげなさい」

「あい~!」

「ありがとうさ~」

「無線を置いていくから、何かあったら連絡するんだよ」

「ありがとうです~」


 そうしてヤナさんはお魚を貰い、無線をハナちゃんに渡して。

 カヌーに乗って帰って行きました。

 残された三人、水辺であれこれ考え始めます。


「これとか、どうです?」

「クワ」

「ちょっとキツいですか~」

「じゃあじゃあ、これならどうさ~」

「クワ~……」

「むつかしいさ~?」


 ああでもないこうでもないと、会議は堂々巡り。

 でも、仲良く話し合いは進んでいきます。

 結論はなかなか出ませんが、ハナちゃんという仲間が加わり、知恵も増えました。

 三人寄れば文殊の知恵。ちょっとずつ、前進していきましょう!


 そして、お昼ちょっと前になるころ。


「……あえ? そう言えば――」


 おや? ハナちゃんのエルフ耳が、ぴこんと立ちました。

 なにか――閃いた見たいですね。


「わきゃ? どうしたさ~」

「何とかなるかも、しれないです~」

「ほんとさ~!?」

「クワ~?」


 何とかなるかもと聞いて、ちっちゃドワーフちゃんとペンギンちゃんはしゅたっと立ち上がりました。

 ハナちゃんの前へと集まって、きたいのまなざしで見上げます。


「ちょっと、お父さんにお願いして、連れてきて貰うです~」

「わきゃ? 連れてきて貰う? 誰をさ~?」

「クワワ~?」


 ハナちゃん、おもむろに無線を取り出しました。

 どうやら、誰かを連れてきて貰うようです。


「来てみれば、わかるです~!」


 さてさて、ハナちゃんはどんな手を思いついたのか。

 上手く行くと、良いですね。



 ◇



 旅行の準備は着々と進み、いよいよ日程を決めようかという段になって。

 計画を詰めるために村に訪れる。


「タイシタイシ~! おかえりです~!」

「ハナちゃんただいま。元気でなによりだよ」

「あい~! ハナはげんきです~!」


 いつも通り、ハナちゃんが一番にお出迎えしてくれる。

 今日も元気いっぱいで、可愛らしい。


「ギニャ~」

「フクロイヌもこんにちは。なでなでしてあげるね」

「ギニャニャ~」


 フクロイヌも一緒だったので、なでなでしてあげたら大喜びだ。

 いつもの平和な、村の光景だね。


「わきゃ~。タイシさんこんにちわさ~」

「クワ~」


 そうしていつもの光景を楽しんでいると、ちっちゃドワーフちゃんとペンギンちゃんもやってきた。

 仲良く手を繋いでいて、ほんわかするね。


「二人ともこんにちは。今日も仲が良いね」

「おともだちさ~」

「クワワ~」


 挨拶すると、キャッキャとお返事してくれる。

 ほおずりしあって、仲よしさんアピールだ。


「タイシ、ちょっときいてほしいこと、あるです~」


 仲良しな光景に和んでいると、ハナちゃんが話しかけてきた。

 聞いて欲しいこと? なんだろう。


「聞いて欲しい事って、何かな?」

「りょこうに、このこをつれていくおはなしです~」

「クワ~」


 ハナちゃんはペンギンちゃんをなでなでしながら、そう言った。

 あれ? ハナちゃんがなぜ、その話を?


「わきゃ~、いっしょにかんがえてもらったさ~」

「クワ~」


 ちっちゃドワーフちゃんが補足してくれたけど、なるほどそう言うことか。

 ハナちゃん、課題のお手伝いをしてくれたんだ。

 えらい子だね!


「ハナちゃんえらいね~。なでなでしちゃうよ!」

「うふ~」


 頭をなでられたハナちゃん、エルフ耳がてろんと垂れてたれ耳に。

 ご機嫌ハナちゃんだね。


「うふ~、うふふ~」


 とまあひとしきりハナちゃんをなでた後、本題に入る。


「それで、この子を連れて行く方法、考えてくれたかな」

「あい~! いいてが、みつかったです~」

「これでだいじょうぶかどうか、かくにんしてほしいさ~」

「クワ~」


 どうやら良い計画が出来たようで、みんなニコニコだね。

 それじゃあ、方法を聞いてみるかな。


「して、その良い手とは何かな?」

「えっとですね~」


 ハナちゃんおもむろに、フクロイヌを抱きかかえる。

 そして――。


「――フクロイヌのフクロに、はいってもらうです~」

「ギニャ」


 と、ニコニコ笑顔で教えてくれた。

 

「――え? フクロイヌ」

「そうです~。これなら、どうぶつさんも、あんぜんです~」

「クワ~」


 ペンギンちゃんも、こくこくと頷いている。

 要するに、フクロイヌに何とかして貰おうって話か。


「タイシさん、このほうほう、だいじょうぶさ~?」


 そしてちっちゃドワーフちゃんから、判断を求められた。

 俺が良いと言えば、それで決まるからね。


 しかし、フクロイヌか……。

 言われてみれば、動物を運ぶのにこれほど実績がある存在もいない。

 なんたって、ピンチになった生きものたちを助けて、おまけに異世界まで運んでいるからね。

 正直言うと……俺が知っている範囲では、フクロイヌが最強のアニマルキャリアーだ。

 これほどの能力や安全性を持った存在や技法は、他に知らない。


 当のフクロイヌだって、環境の変化に動じない強い生き物だ。

 というか妖精さんたちすら、水没したお花畑から助け出して、ちたまへ運んだ実績があるわけで。

 頼れるなら、これほど頼もしい事も無い。


 俺としては、もしケージが駄目だったら増幅石をつけてもらって、子供と設定して連れていこうかと思っていたのだけど。

 ストレスを与えない方法として考えたら、こっちのほうがずっと良いな。


「……問題なし、どころか最適だね。今出来る手段では、一番じゃないかな」

「それじゃあ! いいさ~?」


 それが一番だと回答すると、ちっちゃドワーフちゃんが俺を見上げる。

 期待に満ちて、お目々がキラッキラだね。

 よし、太鼓判を押しておこう。


「もちろんだよ。フクロイヌにお願いする方法で、いこうじゃないか!」

「わきゃ~! やったさ~! ハナちゃん、ありがとうさ~!」

「どういたしましてです~」

「ギニャニャ~」

「クワ~」


 ペンギンちゃん参加に対する課題クリアが確定し、みんな大喜びだ。

 またまた新たな旅の仲間が加わって、賑やかになるね!

 引き続き、楽しい旅になるようコツコツと課題をクリアしていこう。


「りょこう、たのしみさ~!」

「たくさん、あそぶです~!」

「ギニャギニャ~」

「クワ~、クワ~」


 課題をクリアして、ハナちゃんもドワーフちゃんも手を取り合ってキャッキャして。

 ペンギンちゃんもフクロイヌも、俺の周りをくるくる回る。


「なんとかなって、よかったね」

「ちゃんとかんがえて、えらいわ~」


 そんな様子を、大人エルフのみなさまもにこにこしながら見守る。

 とってもほんわかする、一幕だね。

 こうしてまた、一歩目的に近づいたのだった。


 しかし。


 ――俺はまだ、飛行機の説明をしていない。


 大はしゃぎな所悪いけど、最大かつ最強の……課題があるわけで。

 いつごろ説明しようかな。


 村人たちに立ちはだかる、おヒコーキという最強の試練。

 彼らはまだ、その乗り物の姿を――知らない。

あいかわらず報われない耳しっぽさん

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