第二話 フクロの謎
「わたしたちは、これくらいでしまえるよ! しまえるよ!」
「うちらは、こんなかんじさ~」
仕舞う能力については、角度が重要だ。
妖精さんたちやしっぽドワーフちゃんたちの角度も、調査してみた。
「……種族によって、角度が違うぽいね」
「私にはその違いが、全然わかりませんが……」
「けっこうちがうです?」
角度マスターの俺の目には、それぞれ異なった角度を用いていた。
体が小さくなるにつれ、鋭角になっている感じがする。
これは多分、腕の長さの違いかな?
録画しておいて、あとで画像分析してみよう。
「ねえねえみんな、仕舞う様子をちょっと記録するよ」
「わかったよ! しまっちゃうね! しまっちゃう!」
カメラを構えると、妖精さんたちがきゃいきゃいと踊り始めた。
サクラちゃんもイトカワちゃんも、ご機嫌でダンシング。
ああいや、仕舞う様子を撮影したいのだけど……。
「きろくする? えでも、かくさ~?」
そしてカメラのことを知らないドワーフちゃんたち、絵に描いて残すと思っているらしい。
「――えをかくなら、おまかせを」
「あやー! おかあさんいつのまにです!?」
――カナさん! いつの間に後ろに!
俺もハナちゃんもビックリだよ!
全く気配を感じなかった。
「それで、どんなえをかけばよろしいですか?」
ウキウキした様子で聞いてくるカナさん。
これはあれだ、何かお仕事を頼まないといけない流れだ……。
ひとまず、絵にも描いて貰おう。
「あ~……それでは、仕舞うときの角度と手元を、記録して頂ければと……」
「わかりました!」
さっそくスケッチを開始するカナさんだ。
まあ仕舞う職人が書いた絵も、参考になるとは思う。
動画とスケッチ、資料が増える分には良いのかもね。
「きゃい~、きゃい~」
「おどり、じょうずになったよ! じょうずに!」
その横では、妖精さんたちがまだ踊っていらっさる。
というか、言うだけあってダンスが上手になっておりますな。
白い粒子ときらびやかに光る羽根も相まって、なかなか見応えがある。
「わたしもおどるね! おどるね!」
――アゲハちゃんが!
アゲハちゃんが踊りに加わってる!
いつの間にこっち来たの!?
◇
「ちりょうがひつようなこ、つれてきたの! つれてきたの!」
「おせわになります~」
「うちのこ、げんきにとべます? とべます?」
突然のアゲハちゃん来訪に驚いたけど、そういう理由らしい。
首から巾着みたいな袋を下げた、ちいさな子供妖精ちゃんがペコリと頭を下げる。
となりではお母さんらしき妖精さんもいて、きたいのまなざしで俺を見るわけだ。
「タイシ、どうです?」
「この子の羽根、治せますか?」
ハナちゃんとユキちゃんは、子供妖精ちゃんを見て心配そうだ。
でも大丈夫。巫女ちゃんに手伝って貰って、診断技法は進歩しているからね。
さっそく診断して、脆化している箇所を特定しよう。
「ひとまず診断してみるね。ちょっとそこの可愛い妖精さん、この黒い板の前に立ってくれるかな?」
「かわいいって! かわいいって!」
「きゃい~!」
「ここでいいの? ここ?」
……アゲハちゃんと妖精親子ちゃん、全員並んだ。
言葉の選択を誤ったようだ。
「みんな可愛いけど、とりあえず小さな子供妖精ちゃんだけでお願いね」
「かわいいって! かわいいって!」
「きゃい~!」
「わかりました! わかりました!」
なんとか誘導して、子供妖精ちゃんの診断準備が整う。
もう色つき粒子が出まくりなので、すぐに脆化部分が特定できたね。
次はその部分にマークを付けよう。
「はい、可愛い羽根だね~。ちょっと触るから、じっとしててね」
「ほめられちゃった! ほめられちゃった!」
羽根を褒められて嬉しかったのか、色つき粒子がバンバン出てくる。
こことここと……あとここ。それにこっち。
細い筆に紅花の染料を付けて、脆化箇所にちょんちょんとマークしていく。
……けっこう多いな。これじゃ、飛べないのも納得だ。
羽根に穴が空いていないのは、子供だから出力がまだ弱いってことかな?
これがもうちょっと大人になると、出力過多でどんどん脆化が進む。
子供のうちに治療するのが、一番かもね。
そうしているうちに、脆化箇所全てにマークが付いた。
これで治療に移れる。あとは妖精さんたちにお任せだ。
「治療が必要な箇所は見つけたから、後はお花畑に行って伝えれば、明日には治ってるよ」
「ほんと!? ほんと!?」
「とべるようになります? なります?」
ずっと苦労してきた病だけに、こんなにあっさり事が進むとは思っていなかったようだ。
子供妖精ちゃんとお母さん妖精さん、お目々まんまるだね。
ここは一つ、安心させてあげよう。
「もちろん。自由に空を飛べるようになるよ。楽しみにしていてね」
「たのしみ! たのしみ!」
「わたしもたのしみです! たのしみ!」
太鼓判を押すと、親子揃ってきゃいっきゃいに喜ぶ。
明日治療が終われば、もっと笑顔になるだろう。
その時が楽しみだ。
それじゃ、診断を締めくくるか。
「はるばる来てくれて、ありがとうね。診断を頑張ったご褒美をあげるよ」
「ごほうび? ごほうび?」
首を傾げる子供妖精ちゃんに、ちたまのお菓子をあげよう。
ふつうのチョコレートだ。
「はいこれ、甘くて美味しいよ」
「きゃい~! ありがと! ありがと!」
「お母さんもどうぞ」
「きゃい~!」
さっそくちまちまと、チョコレートをほおばる二人だ。
チョコレートは今のところ、ちたまにしか無いお菓子だからね。
フェアリンでカカオっぽい実があれば、妖精さんたちでも自作できるかもだけど。
今のところ見つかってはいない。
まあそこは、ちたま独自のお菓子ってことにしてだ。
連れてきてくれたアゲハちゃんにも、ご褒美だ。
「もちろん君にもあげるよ。はいどうぞ」
「きゃい~! これたべたかったの! たべたかったの!」
フェアリンでは食べられないチョコレートを受け取り、アゲハちゃんも食べ始める。
ちいさな妖精さんたちがチョコをほおばる姿は、可愛いなあ。
「大志さん、明日が楽しみですね」
「きっと、げんきにとべるように、なるです~」
診断の様子を見守っていたユキちゃんとハナちゃんも、また一人元気になる妖精さんが増えるとあってにこにこ笑顔だ。
俺も、この小さな子供妖精ちゃんが大空を飛び回る姿、楽しみだよ。
その姿をインスタントカメラで撮影して、写真を渡してあげよう。
きっと素敵な、思い出になるはずだ。
――翌日。
「きゃい~! とべたよ! とべたよ!」
「なおった! なおった~!」
無事、子供妖精ちゃんは治療が完了した。
今は元気に空を飛び回り、お母さん妖精も大喜びで随伴飛行して。
二人とも白い粒子をきらめかせ、喜びの軌跡を描いている。
「よかったね! よかったね!」
「めでたい~」
「ほっとした~」
その様子を見たサクラちゃんとイトカワちゃんも、大喜び。
治療を担当しただけに、結果は気になるよね。上手くいって一安心だ。
紹介したアゲハちゃんも同じ気持ちだったのか、ほっとしている。
めでたしめでたしだ。
そうして子供妖精ちゃんが飛び回る姿をほっこりとしながら眺め、写真に納めていると――。
「これ、おれいだよ! おれいだよ!」
「おうさまおうさま! ありがとう!」
子供妖精ちゃんが俺の前に飛んできて、巾着みたいな袋から……何かを取り出した。
これは鉱物かな? およそ直径三センチくらい。
そして虹のようなグラデーションをした、七色の帯がある。見たことも無い石だな。
三角形をしていて、断面は綺麗な平面の不思議な品だ。
「これは……君たちの宝物かな?」
「そうだよ! ほとんどみつからないやつだよ!」
「こねられないやつ~」
こねられない?
ダイヤすらこねてしまう妖精さんでも、無理なの?
「これって、そんなに固いの?」
「どうにもならないね! だからめずらしいの!」
「たからもの~」
確認すると、どうにもならないという回答が来た。
そういう石は珍しいから、見た目の美しさも相まって宝物になっているってことかな?
「すごいね! すごいね! きちょうひんだよ!」
「はじめてみたね! はじめて!」
「おたから~」
サクラちゃんやイトカワちゃん、それにアゲハちゃんも驚いている。
フェアリンでわずかしか見つかっていない、貴重な鉱石のようだ。
そんな凄いやつ、貰っちゃって良いのかな?
「これ、貰っちゃっても良いの?」
「うけとって! うけとって!」
「おれいなの! こころからの、おれいなの!」
どうぞどうぞと、子供妖精ちゃんが鉱石を手渡してくる。
……ここで断ると、悲しむだろうな。これはこの二人の、精一杯の感謝の印だ。
王様らしく、贈り物はきちんと受け取ろう。
それが妖精王冠を受け取った俺に出来る、俺にしか出来ないことだ。
「ありがたく受け取るよ。大事にするよ」
「どうぞ! どうぞ!」
「きゃい~!」
受け取って貰えたのが嬉しかったのか、二人はさらに白い粒子をきらめかせる。
この不思議な鉱石、二人の気持ち。大事にするね。
手の中にある、不思議な七色の石。
太陽光に透かしてみると、美しく輝いた。
大事に大事に、「仕舞って」おこう。
「素敵な宝物を、ありがとう。何時でも眺められるよう、常に手元に置いておくね」
「きゃい~!」
「きゃい~! きゃい~!」
お礼を言うと、親子そろってきゃいきゃいと喜ぶ。
こちらこそ、素敵な贈り物をありがとう。
さてさて、どの空間に「仕舞う」のが、良いかな?
大事な大事な宝物、大切に「仕舞って」おこう。
◇
「おえかき、できました!」
「あや! たくさんあるです~!」
妖精さん治療で中断していた、角度調査。
いつの間にかカナさんが、大量の絵を描いていた。
「たった一日で、これほど……」
「三十枚はありますね、これ」
「きあいをいれて、かきました!」
鼻息荒いカナさんに手渡されたその絵は……ユキちゃんの言うとおり三十枚ほど。
どれも力作で、それぞれの種族が持つ特有の「角度」が良くわかる。
見た感じ、腕の長さが大いに関係しているっぽいね。
「いやはや、これは凄いですね。とっても助かります」
「うふふ」
「おかあさん、ごきげんです~」
その出来具合を褒めると、カナさんの耳がでろんと垂れた。
ハナちゃんもお母さんが褒められて嬉しいのか、同じ感じでたれ耳ハナちゃんに。
ほのぼのした光景だね。
でもこれで、角度調査が捗るな。
この絵も分析にかけて、角度の共通点を探ろう。
そして力作を書いてくれたカナさんには、お礼をしないとだね。
どんな報酬が良いか、聞いてみよう。
「このお礼に何かを贈りたいと思いますが、ご希望はありますか?」
「――えすて! えすてにいきたいです!」
即座に回答が帰ってきたけど、エステか……。
まあそれくらいなら――。
「――いま、えすてって聞こえたわ」
「わたしも」
「くわしく」
か、囲まれた! 女子エルフがいつの間にか集結している!?
現在絶賛だいえっと中の、ぞんびさんたち包囲網だ!
「これはちょっと、助けられないですね……」
「あや~、タイシかこまれたです~」
頼みの綱のユキちゃん、すすすっと下がっていった。
ハナちゃんも巻き込まれないよう、じりじりと離れていく。
ふ、二人とも……。
「えっとね、タイシさんしまうやつをしらべているの」
うつろな目のえすてぞんび、いわゆる女子エルフに囲まれおろおろしていると、カナさんが余計なことを言った。
「それに協力すると、えすてに行けるの?」
「しまっちゃうわよ~!」
「わたしもなの」
それを聞いたぞんびさんたち、その辺の石とか草とかを仕舞っちゃ出し、仕舞っちゃ出し。
しかしやっぱり、目はうつろ。
誰か助けて――。
(えすて?)
――神輿! 神輿も輪に加わったぞ!
鍋とかどんぶりとか、ごろんごろん落ちてくる! と思ったら消えた!
神様もエステ行きたいの!?
◇
――結局、仕舞う事についてのお話を聞くことで、エステ招待券を配る事になった。
「とれたてくだものは、しまえないの」
「いきものは、はじかれちゃうわ~」
「あんまり大きな物も、弾かれるのよ」
(おそなえもの~、たくさんおいてある~)
「おそなえものを、おいてあるらしいです~」
集会場では、えすてぞんびさんたちが「仕舞う」ことについて熱弁している。
目がうつろなのが怖いけど、話はけっこう参考になる。
ちなみにハナちゃん通訳による謎の声のお話は、あんまり参考にならなかった。
まあ、わかった話だけまとめるとこうだ。
一、新鮮な果物は仕舞えない。火を通したり干したりするとイケる。
二、生きものはほぼ仕舞えず弾かれる。
三、大きすぎる物は弾かれる。
四、食べ物を仕舞うと普通に悪くなるので、腐らない物を仕舞うのが良い。
五、練習しないと仕舞えないので、子供のうちに特訓する。
六、たまに生きものや新鮮なもの以外でも、仕舞えないやつがある。何故かは不明。
七、歳をとるごとに、仕舞える空間は増えていく
番外、お供え物を沢山置いてある
などなど、えるふ空間の特性が見えてきた。やっぱり番外は参考にならなかったけど。
そもそもエルフ空間じゃなくて神輿すぺさるだから、ちたま人の俺には無いからね。
でもまあ、エルフ空間の話からすると、わりと制限があるようだ。
この辺を避けて、上手いこと運用しているっぽい。
「……以前に平原のあの三人を助けたとき、食糧不足だったのはこれが原因か」
「そんなに、食べ物とかを仕舞えるようなものじゃないんですね」
「あい~、わるくなっちゃうです~」
食料品の腐敗は普通に進むのが理由で、中継地点の森で現地調達が必要と。
塩やら工芸品やら干した薬草やらの、仕舞える交易品で空間が一杯ってことも理由の一つだろうけど。
「ちなみに、水とかは仕舞えないの?」
俺が考えている間にユキちゃんも質問している。
なるほど、水か。
「おみずは、しまえるです~」
「わたしたち、どうくつにいくまえに、みずをたくさんもってきました」
「おかげで、みっかもちました」
水は問題なく仕舞えるようで、そのおかげで三日間の移動にも耐えられたと。
なるほどね。
生きものは大体仕舞えないとは言え、微生物程度なら……弾かれないって事か。
生物の大小が関係しているのかな?
「どれくらいの大きさの生きものはダメって、分かる?」
「アリさんくらいなら、なんとかなるです?」
「それいじょうは、むりですね」
「はじかれちゃうです~」
アリ程度の大きさが限界、ということか。
生命体に関しては、わりと制限あるな。
これは、何故なんだろうか……。
「それなりの大きさがある生きものが仕舞えない原因って、わかる?」
「わかんないです~」
「そういうものだとしか」
「きにしたこと、なかったわ~」
なぜある程度の大きさがある生きものはダメなのか、エルフたちも分かっていないらしい。
……生命体の、生命力が異空間に納まらないのかな?
新鮮な果物も、もぎたては生命力あふれる。その辺が関係しているのかも。
でも、例外はあるような。
例えば――フクロのある生きものだ。
集会場の隅っこでお昼寝している、あの黒いふさふさした子だね。
「ギニャ?」
その生き物に視線を送ると、構って貰えると思ったのかこちらにやってきた。
ご期待通り、くすぐって差し上げよう!
「ほ~ら、くすぐちゃうよ~」
「ギニャニャ~ン!」
「フクロイヌ、おおよろこびです~」
そうしてしばし戯れた後、おなかのフクロを観察してみる。
このフクロに、彼らは生き物を仕舞うことが出来る。
ハナちゃんだって神輿だって、フクロイヌのフクロに良く飛び込むからね。
フクロオオカミもまた、同じだ。生き物を仕舞うことができる。
この違いは――何だろう?
「なんでフクロイヌやフクロオオカミは、生きものを仕舞えるんだろう?」
「フクロがあるからです?」
「――ん?」
ぽつりとつぶやいた俺の言葉に、ハナちゃんがさくっと回答した。
……フクロがあるから?
「フクロがあると、生きものを仕舞えるの?」
「あい~。あのフクロ、みためよりずっとずっと、おおきいです~!」
……あのフクロは、見た目よりずっと大きい?
どう言うことだ?
「それってどう言うこと?」
「えっとですね~。ハナたちは、なんにもないところに、しまってるです?」
「そうだね」
実際そうだな。何も無い空間に、なんかの狭間があってそこに仕舞い込んでいる。
これは俺も、実際に体験して感覚で分かっている。
じゃあ、フクロイヌたちはと言うと……。
「フクロイヌたちは、フクロをしまってるです~!」
「フクロを『仕舞う』……。あ! そう言うことか!」
「そうです~!」
わかった! つまりはそう言うことか!
フクロのある生きものたちは――巨大なフクロを仕舞っている。
俺たちが目にしているフクロは、本来の大きさの一部分でしか無いんだ!
あのフクロの中には――巨大な実空間が、広がっているんだ!
俺たちのように、狭間にある空間を使っているのではない。
異空間を使っていないのだから、生命体のなにがしかパワーで弾かれることも無いわけか。
「なるほど。そういう仕組みなんだね」
「あい~。まえにフクロにとびこんだとき、わかったです~」
「ハナちゃんお手柄だね! 偉いね~」
「うふ~」
ハナちゃんがフクロイヌのフクロにとびこんだときに、気づいたらしい。
偶然だけど、面白い知見を得ていたんだね。
でもこれは、面白い発見だ。
ただ、マネするのは無理かもだな。
大きな物の一部分だけを見せて、実用する。
その空間の使い方が、全く分からない。
空間有袋類が進化の過程で得た、特殊能力な感じがする。
そしてフクロのない空間人類は、フクロという実空間を持っていない。
進化の過程で、実空間を使うか異空間の隙間を使うかで大きく別れたのかもだね。
空間を操る生命体は、その運用方法でそれぞれ違う道を進んだ。
そんな仮説が思い浮かぶ。
「いや~、『仕舞う』に種類があるとは、大きな発見だね」
「すみません、仕舞えない私にはさっぱり……」
「あや~。ユキ、わからないです?」
「ちょっと難しいかな」
しかしユキちゃんは、この「仕舞う」こととその違いとかが、さっぱり分からないらしい。
まあこれは、実際に空間をいじくる感覚が分からなければ、理解はし辛いね。
こればっかりは、仕舞える人でないとどうにもならない。
でも、俺にとっては大きな収穫があったな。
女子エルフのみなさん、協力ありがとうございますだ。
「――して、これでえすては行けますか?」
「だめなら、もっとがんばるの」
「もっとたくさん、しまうわ~」
……えすてぞんびさんたち、ずずいと迫ってくる。
も、もちろん大変役立ちましたので、エステツアーにご招待しますよ。
なので、もうちょっと離れて頂けると……。
「あや~、タイシまたかこまれたです~」
「ハナちゃん、危ないから下がっていようね」
「あい~」
ふ、二人とも助け――。
こうして、えすてぞんびちゃんに囲まれ連行されるユキちゃんの、大変さが少しだけ分かった一日だった。
いままで生け贄にして、ごめんなさい……。
そしてこれからも、なにとぞ生け贄をよろしくお願い致します!