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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十九章 エルフ旅行
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第二話 フクロの謎


「わたしたちは、これくらいでしまえるよ! しまえるよ!」

「うちらは、こんなかんじさ~」


 仕舞う能力については、角度が重要だ。

 妖精さんたちやしっぽドワーフちゃんたちの角度も、調査してみた。


「……種族によって、角度が違うぽいね」

「私にはその違いが、全然わかりませんが……」

「けっこうちがうです?」


 角度マスターの俺の目には、それぞれ異なった角度を用いていた。

 体が小さくなるにつれ、鋭角になっている感じがする。

 これは多分、腕の長さの違いかな?

 録画しておいて、あとで画像分析してみよう。


「ねえねえみんな、仕舞う様子をちょっと記録するよ」

「わかったよ! しまっちゃうね! しまっちゃう!」


 カメラを構えると、妖精さんたちがきゃいきゃいと踊り始めた。

 サクラちゃんもイトカワちゃんも、ご機嫌でダンシング。

 ああいや、仕舞う様子を撮影したいのだけど……。


「きろくする? えでも、かくさ~?」


 そしてカメラのことを知らないドワーフちゃんたち、絵に描いて残すと思っているらしい。


「――えをかくなら、おまかせを」

「あやー! おかあさんいつのまにです!?」


 ――カナさん! いつの間に後ろに!

 俺もハナちゃんもビックリだよ!

 全く気配を感じなかった。


「それで、どんなえをかけばよろしいですか?」


 ウキウキした様子で聞いてくるカナさん。

 これはあれだ、何かお仕事を頼まないといけない流れだ……。

 ひとまず、絵にも描いて貰おう。


「あ~……それでは、仕舞うときの角度と手元を、記録して頂ければと……」

「わかりました!」


 さっそくスケッチを開始するカナさんだ。

 まあ仕舞う職人が書いた絵も、参考になるとは思う。

 動画とスケッチ、資料が増える分には良いのかもね。


「きゃい~、きゃい~」

「おどり、じょうずになったよ! じょうずに!」


 その横では、妖精さんたちがまだ踊っていらっさる。

 というか、言うだけあってダンスが上手になっておりますな。

 白い粒子ときらびやかに光る羽根も相まって、なかなか見応えがある。


「わたしもおどるね! おどるね!」


 ――アゲハちゃんが!

 アゲハちゃんが踊りに加わってる!

 いつの間にこっち来たの!?



 ◇



「ちりょうがひつようなこ、つれてきたの! つれてきたの!」

「おせわになります~」

「うちのこ、げんきにとべます? とべます?」


 突然のアゲハちゃん来訪に驚いたけど、そういう理由らしい。

 首から巾着みたいな袋を下げた、ちいさな子供妖精ちゃんがペコリと頭を下げる。

 となりではお母さんらしき妖精さんもいて、きたいのまなざしで俺を見るわけだ。


「タイシ、どうです?」

「この子の羽根、治せますか?」


 ハナちゃんとユキちゃんは、子供妖精ちゃんを見て心配そうだ。

 でも大丈夫。巫女ちゃんに手伝って貰って、診断技法は進歩しているからね。

 さっそく診断して、脆化している箇所を特定しよう。


「ひとまず診断してみるね。ちょっとそこの可愛い妖精さん、この黒い板の前に立ってくれるかな?」

「かわいいって! かわいいって!」

「きゃい~!」

「ここでいいの? ここ?」


 ……アゲハちゃんと妖精親子ちゃん、全員並んだ。

 言葉の選択を誤ったようだ。


「みんな可愛いけど、とりあえず小さな子供妖精ちゃんだけでお願いね」

「かわいいって! かわいいって!」

「きゃい~!」

「わかりました! わかりました!」


 なんとか誘導して、子供妖精ちゃんの診断準備が整う。

 もう色つき粒子が出まくりなので、すぐに脆化部分が特定できたね。

 次はその部分にマークを付けよう。


「はい、可愛い羽根だね~。ちょっと触るから、じっとしててね」

「ほめられちゃった! ほめられちゃった!」


 羽根を褒められて嬉しかったのか、色つき粒子がバンバン出てくる。

 こことここと……あとここ。それにこっち。

 細い筆に紅花の染料を付けて、脆化箇所にちょんちょんとマークしていく。


 ……けっこう多いな。これじゃ、飛べないのも納得だ。

 羽根に穴が空いていないのは、子供だから出力がまだ弱いってことかな?

 これがもうちょっと大人になると、出力過多でどんどん脆化が進む。

 子供のうちに治療するのが、一番かもね。


 そうしているうちに、脆化箇所全てにマークが付いた。

 これで治療に移れる。あとは妖精さんたちにお任せだ。


「治療が必要な箇所は見つけたから、後はお花畑に行って伝えれば、明日には治ってるよ」

「ほんと!? ほんと!?」

「とべるようになります? なります?」


 ずっと苦労してきた病だけに、こんなにあっさり事が進むとは思っていなかったようだ。

 子供妖精ちゃんとお母さん妖精さん、お目々まんまるだね。

 ここは一つ、安心させてあげよう。


「もちろん。自由に空を飛べるようになるよ。楽しみにしていてね」

「たのしみ! たのしみ!」

「わたしもたのしみです! たのしみ!」


 太鼓判を押すと、親子揃ってきゃいっきゃいに喜ぶ。

 明日治療が終われば、もっと笑顔になるだろう。

 その時が楽しみだ。


 それじゃ、診断を締めくくるか。


「はるばる来てくれて、ありがとうね。診断を頑張ったご褒美をあげるよ」

「ごほうび? ごほうび?」


 首を傾げる子供妖精ちゃんに、ちたまのお菓子をあげよう。

 ふつうのチョコレートだ。


「はいこれ、甘くて美味しいよ」

「きゃい~! ありがと! ありがと!」

「お母さんもどうぞ」

「きゃい~!」


 さっそくちまちまと、チョコレートをほおばる二人だ。

 チョコレートは今のところ、ちたまにしか無いお菓子だからね。

 フェアリンでカカオっぽい実があれば、妖精さんたちでも自作できるかもだけど。

 今のところ見つかってはいない。


 まあそこは、ちたま独自のお菓子ってことにしてだ。

 連れてきてくれたアゲハちゃんにも、ご褒美だ。


「もちろん君にもあげるよ。はいどうぞ」

「きゃい~! これたべたかったの! たべたかったの!」


 フェアリンでは食べられないチョコレートを受け取り、アゲハちゃんも食べ始める。

 ちいさな妖精さんたちがチョコをほおばる姿は、可愛いなあ。


「大志さん、明日が楽しみですね」

「きっと、げんきにとべるように、なるです~」


 診断の様子を見守っていたユキちゃんとハナちゃんも、また一人元気になる妖精さんが増えるとあってにこにこ笑顔だ。

 俺も、この小さな子供妖精ちゃんが大空を飛び回る姿、楽しみだよ。

 その姿をインスタントカメラで撮影して、写真を渡してあげよう。

 きっと素敵な、思い出になるはずだ。


 ――翌日。


「きゃい~! とべたよ! とべたよ!」

「なおった! なおった~!」


 無事、子供妖精ちゃんは治療が完了した。

 今は元気に空を飛び回り、お母さん妖精も大喜びで随伴飛行して。

 二人とも白い粒子をきらめかせ、喜びの軌跡を描いている。


「よかったね! よかったね!」

「めでたい~」

「ほっとした~」


 その様子を見たサクラちゃんとイトカワちゃんも、大喜び。

 治療を担当しただけに、結果は気になるよね。上手くいって一安心だ。

 紹介したアゲハちゃんも同じ気持ちだったのか、ほっとしている。

 めでたしめでたしだ。


 そうして子供妖精ちゃんが飛び回る姿をほっこりとしながら眺め、写真に納めていると――。


「これ、おれいだよ! おれいだよ!」

「おうさまおうさま! ありがとう!」


 子供妖精ちゃんが俺の前に飛んできて、巾着みたいな袋から……何かを取り出した。

 これは鉱物かな? およそ直径三センチくらい。

 そして虹のようなグラデーションをした、七色の帯がある。見たことも無い石だな。

 三角形をしていて、断面は綺麗な平面の不思議な品だ。


「これは……君たちの宝物かな?」

「そうだよ! ほとんどみつからないやつだよ!」

「こねられないやつ~」


 こねられない?

 ダイヤすらこねてしまう妖精さんでも、無理なの?


「これって、そんなに固いの?」

「どうにもならないね! だからめずらしいの!」

「たからもの~」


 確認すると、どうにもならないという回答が来た。

 そういう石は珍しいから、見た目の美しさも相まって宝物になっているってことかな?


「すごいね! すごいね! きちょうひんだよ!」

「はじめてみたね! はじめて!」

「おたから~」


 サクラちゃんやイトカワちゃん、それにアゲハちゃんも驚いている。

 フェアリンでわずかしか見つかっていない、貴重な鉱石のようだ。

 そんな凄いやつ、貰っちゃって良いのかな?


「これ、貰っちゃっても良いの?」

「うけとって! うけとって!」

「おれいなの! こころからの、おれいなの!」


 どうぞどうぞと、子供妖精ちゃんが鉱石を手渡してくる。

 ……ここで断ると、悲しむだろうな。これはこの二人の、精一杯の感謝の印だ。

 王様らしく、贈り物はきちんと受け取ろう。

 それが妖精王冠を受け取った俺に出来る、俺にしか出来ないことだ。


「ありがたく受け取るよ。大事にするよ」

「どうぞ! どうぞ!」

「きゃい~!」


 受け取って貰えたのが嬉しかったのか、二人はさらに白い粒子をきらめかせる。

 この不思議な鉱石、二人の気持ち。大事にするね。


 手の中にある、不思議な七色の石。

 太陽光に透かしてみると、美しく輝いた。

 大事に大事に、「仕舞って」おこう。


「素敵な宝物を、ありがとう。何時でも眺められるよう、常に手元に置いておくね」

「きゃい~!」

「きゃい~! きゃい~!」


 お礼を言うと、親子そろってきゃいきゃいと喜ぶ。

 こちらこそ、素敵な贈り物をありがとう。


 さてさて、どの空間に「仕舞う」のが、良いかな?

 大事な大事な宝物、大切に「仕舞って」おこう。



 ◇



「おえかき、できました!」

「あや! たくさんあるです~!」


 妖精さん治療で中断していた、角度調査。

 いつの間にかカナさんが、大量の絵を描いていた。


「たった一日で、これほど……」

「三十枚はありますね、これ」

「きあいをいれて、かきました!」


 鼻息荒いカナさんに手渡されたその絵は……ユキちゃんの言うとおり三十枚ほど。

 どれも力作で、それぞれの種族が持つ特有の「角度」が良くわかる。

 見た感じ、腕の長さが大いに関係しているっぽいね。


「いやはや、これは凄いですね。とっても助かります」

「うふふ」

「おかあさん、ごきげんです~」


 その出来具合を褒めると、カナさんの耳がでろんと垂れた。

 ハナちゃんもお母さんが褒められて嬉しいのか、同じ感じでたれ耳ハナちゃんに。

 ほのぼのした光景だね。


 でもこれで、角度調査が捗るな。

 この絵も分析にかけて、角度の共通点を探ろう。

 そして力作を書いてくれたカナさんには、お礼をしないとだね。

 どんな報酬が良いか、聞いてみよう。


「このお礼に何かを贈りたいと思いますが、ご希望はありますか?」

「――えすて! えすてにいきたいです!」


 即座に回答が帰ってきたけど、エステか……。

 まあそれくらいなら――。


「――いま、えすてって聞こえたわ」

「わたしも」

「くわしく」


 か、囲まれた! 女子エルフがいつの間にか集結している!?

 現在絶賛だいえっと中の、ぞんびさんたち包囲網だ!


「これはちょっと、助けられないですね……」

「あや~、タイシかこまれたです~」


 頼みの綱のユキちゃん、すすすっと下がっていった。

 ハナちゃんも巻き込まれないよう、じりじりと離れていく。

 ふ、二人とも……。


「えっとね、タイシさんしまうやつをしらべているの」


 うつろな目のえすてぞんび、いわゆる女子エルフに囲まれおろおろしていると、カナさんが余計なことを言った。


「それに協力すると、えすてに行けるの?」

「しまっちゃうわよ~!」

「わたしもなの」


 それを聞いたぞんびさんたち、その辺の石とか草とかを仕舞っちゃ出し、仕舞っちゃ出し。

 しかしやっぱり、目はうつろ。

 誰か助けて――。


(えすて?)


 ――神輿! 神輿も輪に加わったぞ!

 鍋とかどんぶりとか、ごろんごろん落ちてくる! と思ったら消えた!

 神様もエステ行きたいの!?



 ◇



 ――結局、仕舞う事についてのお話を聞くことで、エステ招待券を配る事になった。


「とれたてくだものは、しまえないの」

「いきものは、はじかれちゃうわ~」

「あんまり大きな物も、弾かれるのよ」

(おそなえもの~、たくさんおいてある~)

「おそなえものを、おいてあるらしいです~」


 集会場では、えすてぞんびさんたちが「仕舞う」ことについて熱弁している。

 目がうつろなのが怖いけど、話はけっこう参考になる。

 ちなみにハナちゃん通訳による謎の声のお話は、あんまり参考にならなかった。


 まあ、わかった話だけまとめるとこうだ。


 一、新鮮な果物は仕舞えない。火を通したり干したりするとイケる。

 二、生きものはほぼ仕舞えず弾かれる。

 三、大きすぎる物は弾かれる。

 四、食べ物を仕舞うと普通に悪くなるので、腐らない物を仕舞うのが良い。

 五、練習しないと仕舞えないので、子供のうちに特訓する。

 六、たまに生きものや新鮮なもの以外でも、仕舞えないやつがある。何故かは不明。

 七、歳をとるごとに、仕舞える空間は増えていく

 番外、お供え物を沢山置いてある


 などなど、えるふ空間の特性が見えてきた。やっぱり番外は参考にならなかったけど。

 そもそもエルフ空間じゃなくて神輿すぺさるだから、ちたま人の俺には無いからね。

 

 でもまあ、エルフ空間の話からすると、わりと制限があるようだ。

 この辺を避けて、上手いこと運用しているっぽい。


「……以前に平原のあの三人を助けたとき、食糧不足だったのはこれが原因か」

「そんなに、食べ物とかを仕舞えるようなものじゃないんですね」

「あい~、わるくなっちゃうです~」


 食料品の腐敗は普通に進むのが理由で、中継地点の森で現地調達が必要と。

 塩やら工芸品やら干した薬草やらの、仕舞える交易品で空間が一杯ってことも理由の一つだろうけど。


「ちなみに、水とかは仕舞えないの?」


 俺が考えている間にユキちゃんも質問している。

 なるほど、水か。


「おみずは、しまえるです~」

「わたしたち、どうくつにいくまえに、みずをたくさんもってきました」

「おかげで、みっかもちました」


 水は問題なく仕舞えるようで、そのおかげで三日間の移動にも耐えられたと。

 なるほどね。

 生きものは大体仕舞えないとは言え、微生物程度なら……弾かれないって事か。

 生物の大小が関係しているのかな?


「どれくらいの大きさの生きものはダメって、分かる?」

「アリさんくらいなら、なんとかなるです?」

「それいじょうは、むりですね」

「はじかれちゃうです~」


 アリ程度の大きさが限界、ということか。

 生命体に関しては、わりと制限あるな。

 これは、何故なんだろうか……。


「それなりの大きさがある生きものが仕舞えない原因って、わかる?」

「わかんないです~」

「そういうものだとしか」

「きにしたこと、なかったわ~」


 なぜある程度の大きさがある生きものはダメなのか、エルフたちも分かっていないらしい。

 ……生命体の、生命力が異空間に納まらないのかな?

 新鮮な果物も、もぎたては生命力あふれる。その辺が関係しているのかも。


 でも、例外はあるような。

 例えば――フクロのある生きものだ。

 集会場の隅っこでお昼寝している、あの黒いふさふさした子だね。


「ギニャ?」


 その生き物に視線を送ると、構って貰えると思ったのかこちらにやってきた。

 ご期待通り、くすぐって差し上げよう!


「ほ~ら、くすぐちゃうよ~」

「ギニャニャ~ン!」

「フクロイヌ、おおよろこびです~」


 そうしてしばし戯れた後、おなかのフクロを観察してみる。

 このフクロに、彼らは生き物を仕舞うことが出来る。

 ハナちゃんだって神輿だって、フクロイヌのフクロに良く飛び込むからね。

 フクロオオカミもまた、同じだ。生き物を仕舞うことができる。

 この違いは――何だろう?


「なんでフクロイヌやフクロオオカミは、生きものを仕舞えるんだろう?」

「フクロがあるからです?」

「――ん?」


 ぽつりとつぶやいた俺の言葉に、ハナちゃんがさくっと回答した。

 ……フクロがあるから?


「フクロがあると、生きものを仕舞えるの?」

「あい~。あのフクロ、みためよりずっとずっと、おおきいです~!」


 ……あのフクロは、見た目よりずっと大きい?

 どう言うことだ?


「それってどう言うこと?」

「えっとですね~。ハナたちは、なんにもないところに、しまってるです?」

「そうだね」


 実際そうだな。何も無い空間に、なんかの狭間があってそこに仕舞い込んでいる。

 これは俺も、実際に体験して感覚で分かっている。

 じゃあ、フクロイヌたちはと言うと……。


「フクロイヌたちは、フクロをしまってるです~!」

「フクロを『仕舞う』……。あ! そう言うことか!」

「そうです~!」


 わかった! つまりはそう言うことか!

 フクロのある生きものたちは――巨大なフクロを仕舞っている。

 俺たちが目にしているフクロは、本来の大きさの一部分でしか無いんだ!


 あのフクロの中には――巨大な実空間が、広がっているんだ!

 俺たちのように、狭間にある空間を使っているのではない。

 異空間を使っていないのだから、生命体のなにがしかパワーで弾かれることも無いわけか。


「なるほど。そういう仕組みなんだね」

「あい~。まえにフクロにとびこんだとき、わかったです~」

「ハナちゃんお手柄だね! 偉いね~」

「うふ~」


 ハナちゃんがフクロイヌのフクロにとびこんだときに、気づいたらしい。

 偶然だけど、面白い知見を得ていたんだね。


 でもこれは、面白い発見だ。

 ただ、マネするのは無理かもだな。

 大きな物の一部分だけを見せて、実用する。

 その空間の使い方が、全く分からない。

 空間有袋類が進化の過程で得た、特殊能力な感じがする。


 そしてフクロのない空間人類は、フクロという実空間を持っていない。

 進化の過程で、実空間を使うか異空間の隙間を使うかで大きく別れたのかもだね。

 空間を操る生命体は、その運用方法でそれぞれ違う道を進んだ。

 そんな仮説が思い浮かぶ。


「いや~、『仕舞う』に種類があるとは、大きな発見だね」

「すみません、仕舞えない私にはさっぱり……」

「あや~。ユキ、わからないです?」

「ちょっと難しいかな」


 しかしユキちゃんは、この「仕舞う」こととその違いとかが、さっぱり分からないらしい。

 まあこれは、実際に空間をいじくる感覚が分からなければ、理解はし辛いね。

 こればっかりは、仕舞える人でないとどうにもならない。


 でも、俺にとっては大きな収穫があったな。

 女子エルフのみなさん、協力ありがとうございますだ。


「――して、これでえすては行けますか?」

「だめなら、もっとがんばるの」

「もっとたくさん、しまうわ~」


 ……えすてぞんびさんたち、ずずいと迫ってくる。

 も、もちろん大変役立ちましたので、エステツアーにご招待しますよ。

 なので、もうちょっと離れて頂けると……。


「あや~、タイシまたかこまれたです~」

「ハナちゃん、危ないから下がっていようね」

「あい~」


 ふ、二人とも助け――。


 こうして、えすてぞんびちゃんに囲まれ連行されるユキちゃんの、大変さが少しだけ分かった一日だった。

 いままで生け贄にして、ごめんなさい……。

 そしてこれからも、なにとぞ生け贄をよろしくお願い致します!



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