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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十八章 エルフ技能
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第七話 しっぽドワーフちゃんの必需品


「これは、いいもんですな~」

「あったまるかな~」

「まさかここで、おふろにはいれるとは~」


 現在エルフィンの湖畔リゾート。

 平原のお三方が、水着姿でお風呂にはいってほんわかしている。


「わきゃ、ゆかげん、どうさ~?」

「ぬるくないさ~?」


 お湯を沸かしているのは、しっぽドワーフちゃんたち。

 黄色しっぽをお湯につけて、わきゃわきゃと放熱している。


「あ~、ごくらく~」

「こんなぜいたく、いいのかな~」

「あったまる~」


 となりの浴槽では、観光客リザードマンたちもお風呂でぐんにゃりだ。

 お年寄りリザードマンが大勢、遊びに来ている。


「大志さん、リザードマンさんたちの数、増えてません?」

「おおぜいです~」


 そんなお風呂リザードマンたちを見て、ユキちゃんとハナちゃんはその数の多さにいつもと違うものを感じたようだ。

 この辺、ちょっと教えておこう。


「えっとね、まえの救助作戦で大勢協力してもらったよね」

「あい」

「そうですね」


 しっぽドワーフちゃんたちの救助とお引っ越し大作戦のとき、妖精さんのみならず、大勢のリザードマンたちも動員したわけだ。


「その時この湖で待機とかもしてもらった結果、リザードマンたちにここが観光地だって認知が広まったんだ」

「宣伝になったわけですね」

「あや~、そんなこと、おきてたですか~」


 高橋さんが様々な島に声をかけて、若い衆を動員してくれた。

 その際に「ここ良いじゃん」と噂が広まったわけだ。


「危ない恐竜もいないし、ちたまと違って冬も来ない、おまけにでけえ淡水湖がある。俺たちにとっちゃ、そりゃもう夢のようなリゾート地さ」

「と、言うわけだ」


 高橋さんが補足説明してくれたけど、つまりはそう言うことで。

 今までは旅人エルフ相手の、ほそぼそとした観光地だった。

 それがリザードマンに知れ渡って、そっちからもお客が来るようになったわけだね。


「なるほどです~」

「リザードマンさんたちからすると、ここは安心して過ごせる地、なんですね」


 ハナちゃんとユキちゃんも、説明を聞いてふむふむ顔だね。

 あとはまあ、他に一つ決定的な要素が、最近追加された。


「最後に、とどめとしてこの風呂だな」

「あえ? おふろです?」

「村にも温泉はありますよね?」


 高橋さんがウッキウキで、しっぽドワーフちゃんが沸かしている風呂を指さす。

 ハナちゃんとユキちゃんは、いまいち理解出来ていないみたいだけど。

 確かに、お風呂に入りたいなら村に温泉がある。

 それにリザードマン世界にも、温泉はあったりする。


「俺たちにとって重要なのは、『淡水を沸かした風呂』って所だな」

「リザードマンたちにとって、これは凄い贅沢なんだよ」

「なんでです?」

「贅沢なんですか?」


 この辺は、世界観のギャップだね。

 詳しく言うと――。


「高橋さんの世界では、淡水が貴重なんだよ」

「なんせ、陸地が少ねえからな」

「その貴重な淡水を沸かしてお風呂なんて、有力者でもやらないよ」

「さらに言うと、俺らんところの温泉、海水が混じっててベタベタするんだ」


 高橋さん世界の温泉は、だいたいがかなりの塩分濃度をもつ塩化温泉。

 これはこれで良いのだけど、そればっかりだからね。

 そんな温泉事情も相まって、「淡水をわざわざ沸かした」お風呂は超贅沢なわけだ。


「たしかに、こんなにおゆをつくるのは、たいへんそうです~」

「私たちの所だって、けっこうガスを使ってますものね」


 ハナちゃんは何故か火起こし棒を構えて、大変アピール。

 ユキちゃんも、お風呂を沸かすのはちたまだって大変なのは分かっているね。


「そんなわけで、湖畔の環境とお風呂目当てに、観光客が来たわけだよ」

「このドワーフたちのおかげだな。こんなに簡単に風呂を沸かせるなんて、俺らじゃ無理だから」

「わきゃ~、おやくにたてて、なによりさ~」


 高橋さんの言葉を聞いて、お湯の保温役ドワーフちゃん、ニッコニコだね。

 確かにちたまの技術でも、しっぽドワーフちゃんの湯沸かし能力には勝てない。

 しっぽを水につけて、わきゃきゃっとするとお湯が出来ちゃうのだから。

 冷却能力もすごいけど、加熱するのだって大得意。

 そんなしっぽドワーフちゃんのおかげなのだ。


「あの、こっちのおふろって、はいれる?」

「わきゃ~、いまから、わかすさ~」

「ちょっと、まっててさ~」


 さらにリザードマン観光客がやってきたので、急いで湯沸かしに入った。

 でもしっぽが黄色いから、そろそろ交代しないといけないね。


「わきゃ~、うちもてつだうさ~」

「うちもさ~」

「まかせるさ~」


 同じ事を考えたのか、子供ドワーフちゃんたちがぽちゃぽちゃとしっぽをお湯につける。

 三人とも赤しっぽだから、熱の蓄えは十分だね。

 これで、追加の湯沸かしは大丈夫だろう。


「そっちはしっぽが黄色いから、そろそろ交代だな。はいこれ、アルバイト代。また頼む」

「ありがとうさ~」

「わきゃ、おかねさ~」


 さらにお仕事が終わった子たちは、高橋さんからアルバイト代を貰っている。

 浴槽を作ったりお湯を沸かしたりで、手間はかかるからね。

 一応このお風呂、そんなに高くないけど有料なのだ。


「あ、ちゃんとお給料が出るのですね」

「立派なお仕事だからね」


 小銭を貰ったドワーフちゃんを見て、ユキちゃんがニコニコしている。

 お金を受け取った子たちは、しっぽをぱたぱた振って可愛らしいからね。

 思わずにっこりしちゃうのも、よくわかる。


「あとは貯めたお金を使って、村で買い物してくれればって感じかな。お金の使い方は、説明してあるから」

「経済的に、自立して欲しいのですね」

「そうだね」


 今はまだ、しっぽドワーフちゃんたちは援助が必要だ。

 でもそのうち、今のエルフたちみたいに経済圏を作って欲しい。

 それはいずれ、自立に繋がるのだから。


 そうしてお給料を貰ったドワーフちゃんたちを眺めていたら、てこてこと歩いてこっちにやってきた。

 どうしたのかな?


「二人とも、どうしたのかな?」

「わきゃ~……そうだんしたいことが、あるさ~」

「このおかねの、つかいみちさ~」


 二人は上目遣いで、なんだかもじもじしている。

 お金の使い道を相談したいみたいだけど、聞いてみないことには分からないな。


「相談なら乗るよ。お金の使い道だよね?」

「そうさ~」


 まあ、お金の使い方は説明してある。

 最初は戸惑うだろうけど、慣れればあっという間に使いこなすだろう。

 計画的に運用できるかどうかは、別として。


「それで、相談って何かな?」

「うちらがしこんだおさけ、まだできてないさ~」

「だからこのおかねで、おさけをかっても、いいさ~?」


 なるほど、お給料でお酒を買っても良いかって話ね。

 二人とも黄色しっぽをゆらゆらさせて、上目遣いでおねだりな感じだ。


 ……わざわざ確認してきた所を見ると、みんな負い目はあるようだね。

 まだ援助して貰わないと生活出来ないのに、趣向品であるお酒を買うのはちょっと……道義的にどうか、という思いがあるんだろう。


 ……普通なら「そのお金をまずは、自立のために使いなさい」とか言うところではある。

 でも、たぶんこの子たちにそれを言うのは、間違いだな。

 この子たちは、ちゃんと分かっている。道義もわきまえている。

 そんなことは分かった上で――それでも必要だから、聞いているのだ。


 あれほど遠慮していたこの子たちが、それでも欲しいと言っている。

 要するに、無いと困る類いのものなわけだ。


「君たちにとっては、お酒が無いと困るんでしょ? 遠慮しなくても良いよ」

「ほんとさ~!?」

「おさけ、かってもいいさ~!?」


 黄色しっぽのドワーフちゃんたち、顔を上げてわきゃきゃっとなった。

 これは、お酒購入の許可を得られた嬉しさというより……理解してもらえたのが、嬉しいって感じがする。


「こっちでは、うちらとおさけのあつかいがちがって、ヒヤヒヤしてたさ~」

「おしごとちゅうにおさけをのむのは、こっちではわるいことさ~」


 ……この子たちと俺たちとで、お酒に対する扱いが違うようだ。

 その違いを敏感に感じ取って、遠慮というか様子見をしていたんだろうね。

 だれだって、怒られたくは無い。

 文化の違いや種族の違いでのギャップは当然あるから、その辺きちんと見ていたんだろうな。

 陽気でのんびりした方々だけど、慎重な面も持っているようだ。


 さてさて、それじゃあこの子たちを安心させてあげよう。


「必要な物をちゃんと考えて買うなら、それは正しいことだよ」

「ありがとうさ~!」

「あんしんしたさ~!」


 ほっと一安心したのか、ぱたぱたとしっぽを振って喜んでいる。

 これで一件落着だね。


 ……あ、でもなんでお酒が必要なのかは、聞いておいた方が良いな。


「それで、みんなはなんでお酒が必要なの?」

「おさけは、ねつのかわりになるさ~」

「ねつがふそくしても、おさけがあったら、すぐにおぎなえるのさ~」


 お酒は、熱の代わりになる。

 熱が不足しても、お酒があれば補える。

 これはつまり――アルコールを燃料としているのか!


「……確かに、こっちでも高濃度のお酒は燃料にも使うね」

「よるのじきをすごすときも、すっごいやくだつさ~」

「だからうちらは、おさけをつよくしているさ~」


 なるほど、そう言うことね。

 お酒を趣向品としてだけでは無く、体内で熱に変える……お手軽な燃料としても扱っているということか。

 とにかく熱を蓄える、もしくは確保する事が第一。

 そんな生態を持っているんだ。


「君たちにとって熱を確保するのがどれほど重要か、ちょっとわかったよ」

「りかいしてくれて、うれしいさ~」

「そういうわけで、おさけがあると、あんしんなのさ~」


 日常のちょっとしたことから、こうしてちがう種族の文化や生態がわかってくる。

 これはこれは、共に暮らす事の大事さを噛みしめるね。


「良くわかった。遠慮無く、お酒を買ってね」

「ありがたいさ~」

「いろんなおさけがあるから、たのしみさ~」


 すっかり心配事が無くなって、わっきゃわきゃと元気になった。

 これで遠慮無くお酒を買うことが出来るね。

 しっぽドワーフちゃんが遠慮していた事、一つ解決だ。


 ――ただ一つだけ、問題がある。

 これを伝えるのはちょっと心苦しいけど、言っておかないといけない。


「ただ……そのお金だけでは、村で売っているお酒は買えないんだ。ちょっと高くて」

「――! おわったさ~……」

「さよならさ~……」


 ――ああ! ドワーフちゃんたちが崩れ落ちた!

 ガックリと地べたに伏せって、しっぽがピクピクしている。

 可愛らしい落ち込み方だけど、本人たちにはおおごとだ。

 でもこればっかりは、しょうが無い。

 売っているお酒は、高いのだ。酒税があるからね。


 ……まあ今回は、援助って事で差し入れしよう。

 お酒が出来上がれば、あとは自力でなんとか出来るはずだ。


「必要な物なら援助するから、後で安いやつだけどお酒を持っていくよ」


 ひとまず、焼酎ならそれほどコストはかからない。

 しばらくはそれを飲んで過ごして貰おう。


「ほんとさ~!?」

「あ、ありがとうさ~!?」


 がばっと起き上がったドワーフちゃんたち、こんどはしっぽをぶんぶん振っている。

 遠慮する余裕がないほど、必要だったぽいな。


 これはこれは、ちょっと考えておく必要がある。

 恐らくこれから、大量にお酒が必要になるはずだ。



 ◇



 大量のお酒が必要ならば、造っちゃえば良い。

 ここは隠し村だから、そのへん自由なわけだ。


「ということで、みんなで沢山お酒を造っちゃおうと思います」

「「「わー!」」」


 広場にお酒造りに自信がある人たちを集めて、自給自足をもくろむ。

 だってお酒は高いからね。自分で造れるなら、それに越したことは無い。

 ちたまで売るわけじゃないから、造りたい放題。

 これからドワーフちゃんと暮らすに当たって、お酒が沢山必要になる。

 村人全員を巻き込んで、量産しちゃうよ。


「おれのじまんのおさけ、のんじゃう?」

「ほほう、これはこれは……」

「しょくにんわざ、ですな」

「おいしいさ~」

「まろやかだね! まろやか!」

(おそなえもの~)


 と思ったら、試飲という名の酒盛りが始まっている……。

 神様も酒盛りに参加しているけど、こういうチャンスを逃さないのはさすがとしか言い様がない。


「おれのはどうじゃん?」

「すっぱい」

「あきらかに、しっぱいしてるのだ」

「これはお酒と言うより、調味料では?」

「なん……だと……」


 マイスター酒はどうやら、お酢になっているようだ。

 みんなから酸っぱいと言われて、がくりと崩れるマイスター。

 ヤナさんの言うとおり、調味料として使おうね。


 しかしまあ、この様子を見ると……。

 お酒造りが得意な人ではなく、飲んべえが集まっただけではないだろうか。

 ま、まあ細かいことは気にしないことにして、先に進めよう。


「はいみなさん、今までこの村では、あんまりお酒を造っていませんでした」

「そうですね。頂いた焼酎に果物を漬け込む、くらいでしたね」

「あとは、個人がちょこっと仕込むくらいですか」

「だいたい、そんなかんじなのだ」


 ヤナさんの言うとおり、大々的には造っていない。

 個人が趣味で、ちょいちょい仕込むくらいだね。

 これは、ちたまの大企業が造る安定した品質のお酒が、簡単に手に入るからである。

 自分たちで不安定な品質の物を造らなくても、買えば済むからだ。


「ただまあ、お酒を必要とする方々が仲間になりました。これは良い機会なので、自作して自給率を高めようと思います」

「こっちのお酒は、結構高いですから」


 ユキちゃんの言うとおり、ちたまのお酒は酒税がかかっていて高い。

 それで村の経済も回るとは言え、支出を抑えられるならそれに超したことも無い。

 あと、今エルフたちは、ステップアップのための勉強をしている。

 きっとこれから、何かを始めるためのお金が必要になってくるはず。

 そのためにも、もうちと貯蓄出来るようにした方が良いよね。


「そんなわけで、自分でお酒を造って節約出来たらなと思います」

「節約、大事ですよね」

「おれも、そうおもう」

「うちもさ~」


 節約するという点について、特に反対意見は出ないね。

 ヤナさんも他のみんなも、コツコツ貯金しているわけで。

 すごく余裕があるってわけでも無いから、支出が抑えられたら助かるわけだ。


「おかねはだいじだね! おかね!」

「きちょうな、しなもの~」


 妖精さんたちも同じ意見なのか、同意している。

 でもなんで、サクラちゃんとイトカワちゃんはお金を持っているのかな?

 五百円玉を掲げて、大事だよってしきりにアピールしている。

 ……おかしいな、妖精さんたちに現金を渡したこと、ないはずなんだけど。


「ね、ねえ君たち、そのお金はどうしたの?」

「おかしをかってもらったよ! かってもらったよ!」

「おいしいおかし、つくったの! つくったの!」


 お菓子を買って貰った?

 いつの間に、そんな商売始めたんだろう?


「ようせいさんたち、みずうみで、おかしうってたです?」

「あ~、そう言えば、湖畔リゾートで良く見かけましたね」


 ハナちゃんとユキちゃんから、新情報がもたらされた。

 確かにエルフィンの湖畔リゾートで、観光客相手にお菓子を配っていた。

 あれ、商売してたんだ……。


「雑貨屋で売っている小麦粉とかお砂糖とか、妖精さんがお買い上げしてますよ」

「……えっ?」

「いろんなおかしのざいりょう、ほしいからね! ほしいから!」

「てっとりばやく~」


 おおう、妖精さんたち、教えていないのに貨幣経済を活用してらっしゃる。

 お菓子の材料とか、俺の知らないうちに独自に調達し始めているぞ……。

 なんちゅうたくましさだ。


「ちなみに、かふんのおだんごはむりょうだよ! むりょう!」

「おきもち~」


 そしてサクラちゃんとイトカワちゃん、花粉のお団子は無料とも言う。

 あれか、材料調達費がかかるお菓子はちゃんと料金取って、そうでも無いお菓子は無料配布しているのか。

 コストとリターンを、ちゃんと考えているっぽいな。

 俺の知らぬ間に、妖精さんたちも勉強してたんだなあ……。


「みんな偉いね。正直ビックリしたよ。お金を活用出来ているなんて、凄いよ」

「ほめられちゃった! ほめられちゃった!」

「きゃい~!」


 褒めたら大喜びの、妖精さんたちだ。

 羽根から白い粒子を出して、きゃいっきゃいだね。


「あとねあとね、かみさまもいっしょに、おかしつくってるよ! おかし!」

「うれゆき、こうちょうだよ! うれてるよ!」

(ぼちぼち~)


 ――神輿が! 小銭を持っている!

 神様も商売してるの!?



 ◇



 神輿がお菓子売ってる事件はさておき。

 いや、それはどうなのかと思わなくも無いけど、本人がやる気なのだから見守ろう。

 ……あとで一つ、買っておこうかな?

 ここでしか買えない、神輿スイーツだ。プレミアつくかもね。


 しかし話が逸れまくってるな。今日はお酒造りなんだけど。

 ひとまず、話を戻しておこう。


「色々ビックリしましたが、まあそれはさておき――」

「お酒造りですね! 準備は万端ですよ!」

「うちらもさ~!」

「こっちもだいじょうぶだよ! だいじょうぶ!」


 全部言う前に、みなさん気合いが入った様子で色んな容器を取り出す。

 土器だったり金属製容器だったり、木の実をくりぬいたものだったり。

 それぞれ、得意とする道具を用意しているね。


「お酒にする果物とかは、これです」

「うちらは、これさ~」

「わたしたちは、これだよ! これ!」


 さらには、素材がずらっと並べられた。

 これまたそれぞれの環境で採取できる、ちたまには無い果物やら木の実たちだ。

 エルフの森、妖精さんのお花畑、ドワーフの湖にある密林。

 それぞれの産物を集めて、お得意のお酒を造るわけだ。

 この人数で沢山仕込めば、結構な量になるだろう。


「ちなみに私も、ちたまのお酒を作りますよ。ワインとラムです」


 俺も仲間に入りたいので、酒造はしたこと無いけど参加する。

 とはいえ、ワインとラムは超簡単に作れる。

 初心者向けのやつを選んでみたわけだ。

 さてさて、さっそく作業を始めよ――。


「ハナもおさけ、つくるです~」

「え? ハナちゃんもお酒造るの?」

「あい~」


 と思ったら、ハナちゃんがなんか、お酒を造ると言い出した。

 ……まだ子供だから、造っても飲めないよね?


「ハナちゃん、お酒を造っても飲めないよ?」

「おりょうりに、つかうやつです~」

「なるほど、料理酒か」


 ハナちゃんも酒造をすると聞いたときはビックリしたけど、料理酒なら納得だ。

 高い村のお酒を使って、料理の際にアルコールを飛ばすのは勿体ないからね。

 それなら、自分で醸造した方が安くて良い。


「お肉料理や煮込み料理で、お酒を使うレシピを教えたんですよ」

「とっても、おいしくなったです~」


 ユキちゃんが教えてくれたけど、そう言うことね。

 凝ったお料理をするのに、料理酒は必須だ。

 なるほど、ハナちゃんきっちり、お料理の勉強してるんだね。


「お料理研究、しっかりやってるんだね。偉いよハナちゃん」

「うふ~」

「ますますお料理上手になるね」

「うきゃ~」

「今度ハナちゃんの手料理、食べさせてね」

「ぐふふ~」


 今回は狙ってぐにゃらせたけど、そういやこれから作業だった。

 ……まあ可愛いから、良いよね。そのはず。


「それにしても、ユキちゃんかなりお料理得意なんだね」


 毎回そうだけど、人に教えられるくらいの経験と実績があるわけだ。

 なにげにこの娘さん、腕っこきである。


「子供の頃からお婆ちゃんに言われて……は、花嫁修行してましたから……」


 そう言って赤くなるユキちゃんだけど、別に花嫁修業は恥ずかしがる事は無いよね。

 これも立派な将来設計で、努力が必要な修行だからね。


「花嫁修業良いねえ、努力の結晶だねえ」

「そ、そうですね。フ、フフフ……これはもう決まりよね……」

「ぐふふ~」


 修行を褒められたのが嬉しいのか、ユキちゃん耳しっぽ出現だ。

 ハナちゃんと二人で、ふふふふぐふぐふと微笑ましい。

 二人とも、修行頑張ってね。


 そんな微笑ましい光景を眺めつつも、お酒造りを開始しようか。

 でないと日が暮れる。


「さてさて、早速仕込みを始めましょう」

「「「おー!」」」

(じさくのおそなえもの~)


 お酒好きのみなさんに声をかけると、気合いが入ったかけ声が。

 それじゃあ、お酒造りを始めよう!


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