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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十八章 エルフ技能
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第三話 おふと――なんとかしましょう


 しっぽドワーフちゃんが暮らす湖にて、口の堅い男性陣と会議を行う。

 エルフカヌーで湖の真ん中まで繰り出して、こそこそと話し合いだ。

 ここでひそひそ話をすれば、耳の良いエルフに会話が聞かれることも無い。


 そして極秘会議の議題は、もちろん女子エルフおふと――案件に関してだ。


「現在女子のみなさまは、何かが増大の一途をたどっております」


 何とは明言しない。極めて高度な政治的案件だからだ。

 この案件については、原因に心当たりがある。


「田植えも畑仕事も一段落して、運動量が減ったのが原因かと」


 たくさん体を動かせば、お腹も減る。

 農作業が繁忙期の時に、そうしてモリモリ食べる習慣が出来た。

 しかし仕事が終わった後も、そのままの量を食べてしまえば……結果は明らか。


「そういえば、最近カナが丸っこくなってきましたね」

「あるある」

「あ~それ、あるかもじゃん」


 ヤナさんや他の方々も、ある程度は気づいていたみたいだね。

 マッチョさんとマイスターの心当たりは、多分腕グキさんとステキさんか。


「うちのよめさん、けっこうぷにってきました」

「おれのじまんのよめさんも、おおきくなったな」


 メカ好きさんとおっちゃんエルフも、気づいてはいる。

 だけど、特に指摘はしないでいるみたいだね。

 とっても賢明な選択だ。引き続き、徹底して貰おう。


「うかつに事実を言ってしまうと、食事量が減ったり女子一同が恐慌状態に陥ったりするので、気をつけましょう」

「分かりました。というか、前回は付き合わされましたので……」

「ぼくんちも、ゆうしょくのりょうがへりましたね」

「よめさんよりおれのほうが、いいかんじにやせたのだ」


 冬に一騒動起きたときは、スキーで何とかした。

 ただその時も、奥さんのダイエットに付き合わされた……あわれな旦那さんがたがいるようだ。

 そう、夫婦の減量は、一蓮托生なのである。

 まず食卓が、野菜中心になるんだよね。

 悪あがきよのう……。


 俺と親父も同じ目に遭って、こっそり肉を焼いて食べていた。

 そして見つかって怒られた。理不尽である。


「ぷにってても、個人的には別に良いんですけどね」

「ぼくも、そうおもいます」

「おれもおれも」

「なんであんなに、やせたがるんだろ」

「わかんないじゃん?」


 減量に付き合わされそうな男性陣は、別に「多少」おふと――でも問題ないとは思っているようだね。

 俺もそう思うのだけど、女子の側からするとそうはいかないらしい。

 この辺の詳しい話は、お袋が力説していた。

 みんなに、ちょっと教えてあげよう。


「えっとですね、女子のみなさまは……美しい自分の理想像があるのですよ」

「理想ですか?」

「ええ、理想です。我々男性陣の好みとかはどうでもよくて、「かくありたい」という自分を持っているのです」

「そのこだわりが、ぷにるのを許さない、と」

「そう言うことです」


 この辺は、俺たちも女子たちにとやかく言うことは出来ない。

 止めてと言われても、筋肉ゴリゴリにしちゃうのが男なのだ。

 男も女も、なりたい自分がいるわけですな。


「私たちが筋肉をつけるのと一緒で、そう簡単に止まりません」

「――理解しました」

「なるほどなるほど」

「さもありなん」

「しっくりきたじゃん」

「かんぜんに、りかいできたのだ」


 筋肉に例えたら、全員があっという間に理解してくれた。

 筋トレをして、腕がどんどん太くなっていく時のあの愉悦。

 女子たちは、減量でほっそりした自分を見て同じ感覚を持つのだという。

 だから、女子エルフたちが美にこだわる点について、とやかく言えるわけがない。

 みんな同じ穴のムジナちゃんなのだ。


「というわけで、なんとか女性陣に気づかれぬよう、密かに減量出来る施策を考えなければなりません」

「――バレずにやせてもらうなんて、むりだとおもうさ~?」

「うわああああああ!」

「ぎゃあああああ!」

「おわあああああ!」


 ――いつの間にか! しっぽドワーフちゃんが俺のカヌーに!

 全然気づかなかった!


「いきなり、情報漏洩しましたが……」

「まずくね?」

「どうするじゃん?」


 会議のメンバー、俺のカヌーに掴まっているしっぽドワーフちゃんを見て、困った表情になる。


「……わきゃ?」


 今回情報漏洩したのは、リーダー格お母さんのお子さんである、ちっちゃいドワーフちゃんだ。

 身長三十センチくらいしか無くて、ちっちゃくて気づかなかった。

 いやはや、どうしたものか……。


 ――あれだ、仲間に引き込もう。

 そして秘密を共有してもらうんだ。


「……とりあえず、我が秘密結社に加入して貰いましょう」

「わ、わきゃ~……、ヤバイおはなしに、くびをつっこんじゃったさ~?」


 ずずいと全員で包囲し、ちっちゃドワーフちゃんを捕獲する。

 この秘密、漏洩してはならぬのだ。


「はい、船に乗ってね」

「わきゃ~……、わるいおとなに、つかまっちゃったさ~」


 ひとまず、俺のカヌーに乗って貰った所で。

 あとは事情を説明して、理解して頂きましょう!


「実は今、こんなことが起きていて――」


 女子エルフのみなさんがおふと――だけど、気づかれると大騒ぎになる。

 旦那さんたちも夕食の量が減ったり野菜中心になったりもするので、なんとかごまかしたい。

 いい手が無いか、会議中だという事をお話する。


「――という事なんだ」

「わきゃ~、うちのかあちゃも、たまにそんなんなるさ~」

「どこのお家も、一緒だね」

「いっしょさ~」


 どうやらちっちゃドワーフちゃんも、身に覚えがあるようだ。

 人類あるあるなのかな? これは。

 でも理解して貰えたのなら、情報漏洩は避けられそうだ。

 めでたしめでたしだね。


 ……ただ、理解者は増えたけど有効策はどうしようか。

 何か良い手、ないかなあ……。


「これから、上手にごまかす手段を考えようと思ってね」

「そういうとき、うちのかあちゃは……およぎまくってたさ~?」


 おや? ちっちゃドワーフちゃんから、アイディアが出てきたぞ?

 くわしく聞いてみよう。


「泳ぎまくっていたの?」

「そうさ~! およぐと、けっこうやせるさ~!」


 ……確かに、水泳はかなりカロリーを消費する運動だ。

 幸いエルフィンにもここにも、良い感じの湖がある。

 さりげなく湖畔デートとかに誘って、ガチで泳いで貰ってじわじわと減らすのは、良い手かも知れない。


「水泳、良いかもしれないね」

「およぐなら、うちらもおてつだい、するさ~?」

「そうなったら、お願い出来るかな?」

「もちろんさ~!」


 女子エルフおふと――は、何とかなるかも知れない。

 それじゃあ「水泳でこっそり減らそう」作戦、やってみよう!


 というわけで、こっそりと始まったこのミッションなんだけど――。


「「「キャー!」」」


 ――俺は、大切なことを失念していた。


 結論から言おう。火に油を注いだのだ。


「みずぎ、はいらないわ~!」

「まったくはいらないとか、ふるえる」

「おにくが! おにくが~!」

「たいへんなのー!」


 水泳に必要なものは、水着。

 去年の夏調達したやつだ。


「正直、こうなることは目に見えていた……!」

「あや~、おおさわぎです~」

「みなさん、水着が着られなくなってますね……」


 おふと――になった女子のみなさん、当然去年の水着は着られなくなっていた。

 ちょっと考えれば、分かること。

 やってしまいました……。


「完全に、バレましたね……」

「すいません、やらかしました」


 ヤナさんも、このことに気づかなかったようで。

 キャーキャーとうろたえるカナさんを見て、「あっちゃ~」という顔だ。


「まさか、みずぎがきられないとはな~」

「おれらのみずぎは、そういうことないもんな」

「きょうのしょくじ、りょうがへることかくていなのだ……」


 秘密結社のメンバーたちも、同様に失念していた。

 やはり俺たち男の浅知恵では、無理だったのだ……。


「わきゃ~……こっちのふくは、そんなにぎりぎりのおおきささ~?」

「女性向けの水着は、だいたいそんな作りなんだよ」

「うちらのは、のびちぢみするから、わからなかったさ~……」


 原案を出してくれたちっちゃドワーフちゃん、申し訳ない感じだ。

 でもまあ、しょうが無いよね。気づかなかった俺が、ダメなだけで。


「まあ、気にしないで良いよ。こうなることは、必然だったんだ」

「これをみると、そんなきがするさ~」


 キャーキャーと大騒ぎする女子エルフたちを見て、ちっちゃドワーフちゃんも納得だ。

 去年の水着が入らないんじゃ、近いうち手持ちの服も着れなくなっていただろう。

 発覚がちょっと早まっただけ、な感じだね。


 しかし、これどうしようね。

 水泳して減量するには、水着を着なくてはならない。

 しかし、その水着はサイズが合わない。

 卵が先か、鶏が先か。


「やせないと! やせるのよ~!」

「ふるえる~!」

「わたしのうつくしさが~! うつくしさが~!」

「キャー!」


 結局大騒ぎになってしまったけど、ここは前向きに考えよう。

 村の賑やかさが増して、良いことなのだと。

 そう、それが良い。


「賑やかで良いね」

「タイシ、げんじつとうひです?」

「……私も、気をつけなきゃ」


 ハナちゃんにつっこまれ、ユキちゃんは身を引き締めて。

 さてさて、この女子エルフおふと――問題、どうしようかな……。


(きゃ~!)


 ん? 謎の声っぽい悲鳴が聞こえたぞ?

 それに神棚の所では、なんだかほよっほよとした光が見えるな。

 ……どうしたんだろう。


 光の方に目を向けると、そこには――。


(のりもの、のれない~!)


 ――光の玉が、神輿の入り口でつっかかっている!

 そうだ! 神様もかなりおふと――!

 でっかくなって、神輿に乗れなくなっちゃったんだ!


「あや~、かみさま、おっきくなったです?」

(そ、それほどでも~!)


 謎の声は否定しているけど、それほどおっきくなってますよ。

 ……具体的には、二回りくらい。

 こうなってしまった原因は分からないけど、とにかくおっきくはなっている。


「ど、どうしましょ~!」

「やせるべし!」

「きょうのゆうしょく、へらすのよ~!」

(のりもの~!)


 女子エルフはキャーキャーとうろたえ、神様も神輿に乗れずうろたえ……。

 村はもう、大騒ぎになってしまった。


「……大志さん、これどうしますかね」

「水泳で減量して貰おうと思ったけど、水着が着れないとは……」


 この無残な事態を見て、ユキちゃんもお困り顔だ。

 ほんと、どうしよう……。


 ……ひとまず、ジョギングでもして貰うしか無いかな?

 そう思っていると――。


「――エステで揉んで貰えば、一時的には入るようにも出来ますけど」


 ユキちゃんが、ぽつりとそんなことを言った。

 え? そんなこと、可能なの?


「いくら揉んだって、質量は変わらなくない?」

「それはそうなのですけど、むくみを取ったりして、一時的には狙った部分を細く出来るんですよ。エステというのは」

「そのはなし、くわしく」

「いま、えすてってきこえたわ」

「あこがれの、えすて」


 ――いつの間にか、女子エルフたちに取り囲まれていた。

 みなさん、目が虚ろである。怖い。

 全員すっかり、だいえっとぞんびと化していた。


「え、ええとですね。エステには、痩身が実現できる施術もありまして……」

「「「キャー!」」」

(きゃ~!)


 そしてうかつにも、ぽろっと痩身エステについてこぼしてしまうユキちゃん。

 案の定、女子エルフたちに連れて行かれた。

 これから集会場を占領して、緊急だいえっと会議の開催だね。

 すまぬ……すまぬ……。


 ――さて、ユキちゃんが生け贄になってしまったところで。

 俺たち男性陣は、日常業務をこなしましょうかね。


「それじゃ私たちは、いつも通りお仕事しましょうか」

「そうしましょう。あっちはユキさんにお任せですね」

「そうすべそうすべ」

「さ~て、はたけでもみてくるかな」


 集会場からキャーキャーと声が聞こえる中、俺たち男共は普通に過ごした。

 ユキちゃん、ほんとすまぬ……すまぬ……。

 また今度エステ最上級コースにお誘いするので、許して欲しい。



 ◇



 結局の所、おおごとにしたのは俺の責任もあるわけで。

 あんまり丸投げしてもしょうが無いので、一つの提案をしてみることに。


「例のエステサロンに問い合わせたら、団体料金でお安くしてくれる事になりました」

「と、いうことは……?」

「まさか?」

「もしかして?」


 そう、そのまさかとか、もしかしてです。

 ――みなさんを、エステにご招待しちゃいましょう!


「なんと! 一人五千円で――痩身エステが受けられます!」

「「「キャー!」」」


 ぐいぐいとお脂肪を移動させるそうで、しばらくは持つという触れ込みだ。

 これで、去年のお水着は着られるかもね。


「えすて! ゆめにまでみたえすて~!」

「うつくしくなれるのね~!」

「たのしみなのー!」


 キャッキャと大はしゃぎの女子たちだけど、もちろんご家族には根回ししてある。

 お金がかかっちゃうけど、そこは許可が出ているからね。


「まあ、たまには良いかと思いまして」

「よめさんがきれいになるのは、わるくないもんな」

「こうかはあるって、はなしだからな~」


 ただ、旦那さんたちはけっこう結果を楽しみにしているみたいだ。

 これはこれで、刺激になって良いのかもね。


 それに実際のエステを体験してみれば、これからの言語学習もはかどるかも知れない。

 こんなことができるんだとわかれば、エステ通信教育を目指して頑張れるよね。

 ただエステに行っておしまい、にはならないだろう。

 そういう意味では、これは研修の一環でもある。

 みんなの未来に繋がるなら、俺も助力は惜しまないわけで。


「そんなわけですので、マイクロバスを出します。みんなで――エステに行きましょう!」

「「「キャー!」」」


 女子のみなさま、ようやく夢のエステにいけると言うことで、めっちゃ盛り上がっている。

 念願のえすて、ご堪能あれだね。


(えすて~)


 ……あ、この光の玉ちゃんは、どうしよう。

 神輿に乗れないから、そのまんまの姿でほよっほよ漂っているんだけど……。


「ねえユキちゃん、神様はこのままエステに連れて行けるかな?」

(およ?)

「あ~、どうでしょう。実体が無いので……厳しいかもしれません」

(なぬ?)

「だよね。手で揉むっぽいから、何がしかの体がないと……施術を受けられないかなって思うんだ」

(そ、そこをなんとか~)


 ぴっかぴか光る球体が、俺たちの周りをくるくる飛び回る。

 この神秘的なエネルギー体? を何とか出来るとは、思えないんだよな。

 どうしよう……。


 ……ダメ元でやってもらおう。


「ダメ元で良いので、神様も痩身コースでお願いしてみよう」

「ま、まあ……それで良ければ」

(やたー!)


 なんだか面白い事になってきたけど、やるだけやってみてだね。

 何事も、試してみるのが一番だ。


「ハナ! えすてたのしみね!」

「あい~!」

(えすて~)


 なんだかんだで、女子はお子さんも含めて全員参加になった。

 こどもエルフたちは、お子様美白コースというのに参加だ。

 ……あのエステ、包容力が半端ではない気がする。


 さてさて、エルフのエステ体験は、どうなるだろうか。

 あと、光の玉状態の神様も……なんとかしてくれたら、凄いんだけどな。



 ◇



「では、行きましょう!」

「えすて~!」

「ゆめにまでみた、えすてよ~!」

「キャー!」


 エステサロンに予約を入れて、マイクロバスも高橋さんから借りてきて。

 今日はとうとう、このえすてぞんびたちの念願を叶える日となった。

 加工増幅石を手首に着けたみなさん、大張り切りだ。


(えすて~)


 いちおう光の玉状態の神様にも、無理やり石をくっつけてある。

 これで、なんとか誤魔化せたらいいなあ。


「久しぶりのエステ、楽しみですね!」

「ええ! あのサロンは凄いわよね!」


 ユキちゃんも美肌コースで参加だけど、お袋も便乗している。

 なにはともあれ、バスの中はキャッキャと賑やかだ。

 細かいことは気にしないことにして、このへんてこイベントを楽しもう。


「では、出発します!」

「「「キャー!」」」


 終始賑やかなバスを走らせ、例のなんとかするエステサロンへと向かう。


「むらのそとは、いつもにぎやかね!」

「じどうしゃ、たくさんはしってるです~」


 道中はみなさん遠足感覚で、町の様子に大盛り上がりだ。

 今日は灼熱の真夏日なので、バスから降りたらぐんにゃりだけどね。

 さすがに隠し村のある高原とは違って、盆地の市街地は気温も高い。

 熱中症にならないよう、気をつけていこう。


(ほっそりする~!)


 光の玉状態の神様も、気合いがかなり入っている。

 いちおう神輿も持ってきたので、ほっそりできたら乗って帰りましょうねだ。


 ほっそりできたらね……。


 そうして道中大騒ぎしながらも、バスを走らせ数十分ほど。

 路地に入ると、目的のエステサロンが見えた。


「あ、エステサロンが見えましたよ」

「ついにきたのねー!」

「ゆめが! すぐそこに!」

「たのしみだわ~!」

「すてき~!」


 ユキちゃんが指さした建物を見て、女子のみなさん大はしゃぎだ。

 それじゃあバスを横付けして、めくるめくエステの世界を堪能してもらいましょう!


「では、行ってきます」

「行ってらっしゃい」


 バスから降りたみなさんは、先導するユキちゃんの後に続いて、ゾロゾロと建物へと入っていく。


(えすて~)


 光の玉ちゃん、いわゆる神様もほよほよと入っていったけど、大丈夫かな……。

 まあ、俺に出来ることはもう無い。

 結果を楽しみに、書店で時間を潰そう。


 ――そして二時間後。


「あしが! あしがほっそりしたわ!」

「おなかまわりが! すらっとしちゃったの!」

「おし……ぷにってたところが、ぴしっとしたわ~!」

「うつくしくなったの!」


 キャーキャーとエステサロンの前で、大騒ぎしている一団がいた。

 確かに、以前よりほっそりしている。

 ……何をどうしたら、そこまで変化するの……。


「えすて~! えすてすごいわ~!」

「とんでもないぎじゅつよ~!」

「おにくが! おにくがめだたないの!」


 超ハイテンション女子エルフ、興奮冷めやらぬ様子でお互いのぷにっていた部分をつんつんし合っている。

 そりゃあ、ここまで変化したら嬉しいよね。


「ふふふ、お肌つやっつやになりましたね!」

「いつ来ても、ここは半端じゃないわ!」

「えすて、すごいです~!」


 ユキちゃんやお袋、それとハナちゃんもお肌つやっつや。

 他のお子さんたちも、つやが出ている。

 やっぱりここのエステサロン、凄い名店だね。


「脚とかお腹周りとかおし……とか、ほっそり、するの……?」

「そうらしいわ……」

「入って、みましょうか……」


 キャッキャとはしゃぐエルフたちを見て、その辺を歩いていたおばさんたち、虚ろな目でふらふら~っとエステに入っていった。

 そうだよね、ここに結果があるんだものね。そりゃ、入っちゃうよね。


 とまあ、通りすがりのおばさんたちに飛び火したりもしたけれど。

 予想外に、良い結果が出たようだ。


(ほっそり~!)


 そして光の玉ちゃんこと、神様もほよっほよとご機嫌である。

 たしかに、見た目一回りほどほっそりとしている。


 ……おかしくない? 実体無いんだよ?

 何をどうしたら、エネルギー体みたいな存在に、施術できるの?

 このエステサロン、凄いとかそういうレベルじゃなくない?


(のりもの~!)


 そして早速、神輿に乗り込む神様だ。

 ちょっと入り口で「むぎゅっ」とはなったけど、無事乗れた。


(やっぱり、これがいちばん~)


 そして――神輿復活!

 神様、ようやく憑依体として顕現だ。


「……ユキちゃん、ここのエステサロン、なんかおかしくない?」

「凄腕ですからね! これくらいは当然です!」

「さようで」


 すっかりこのサロンに洗脳されているユキちゃん、特に疑問も持たずに凄腕で片付けた。

 まあ洗脳されるのも、仕方が無い位の腕ではある。確かに凄い。


 ……なんにせよ、これで女子エルフたちは、エステの凄さというものを知った。

 無事水着も着れるようになりそうだし、減量と平行してエステ通信教育のため、日本語学習も励んで貰おう!


「みなさん、エステというのはこんなことを可能としてくれます」

「えすて! えすて!」

「すごいわ~!」

「そんなわけで、エステ通信教育とかも頑張りましょう!」

「「「おー!」」」 


 気合いがみなぎった、女子エルフのみなさんだ。

 ……ちょっと目が血走っているけど、それくらいやる気が出たということで。

 めでたしめでたし、なのかな?


 ――その後、村へと帰還して。

 奥様方やお子さんたちが明確に綺麗になったのを見て、旦那さんたちも喜んだ。

 というか、ここまで効果が出るとは思っていなかったようで、めっちゃ驚いていた。


 女子エルフおふと――事件から、水着入らない事変が起きて。

 一時はどうなることかと思ったけど、丸く収まって良かった。

 ほんと、よかった……。


「それはそれとして、きょうのゆうしょくは、やさいいためよ」

「ぎゃああああああ!」

「やせないと、いけないの」

「うわああああああ!」


 あれ? 旦那さんたちが、がくっと崩れ落ちている……?


「ヤナ、いっしょにつきあってくれるよね?」

「う、うん……ソウダネ」


 ――何も、終わってはいなかった。

 そう、何も。


「あや~、けっきょく、こうなるですか~」

「体重が減ったわけでは、無いですからね」

「そりゃそうよ」


 ハナちゃんやユキちゃん、それにお袋は……この結果が分かっていたようだ。

 ですよね。女子エルフたちに、ごまかしは通用しなかったのだ……。

 男性陣エルフのみなさん、すまぬ……すまぬ……。


 ――その日は贖罪として、俺も男性陣のみんなに付き合って野菜だけ食べた。

 意外とイケたのは、ここだけの話だ。


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