第十七話 ひとつの終わり、ひとつの始まり
大勢の避難民ドワーフちゃんたちと、偉い人ドワーフちゃんに出迎えて貰い。
ひとまずリザードマン部隊には、家の設置や荷下ろしなどを担当してもらった。
その間に、前回と同じメンバーでまた会議を開く。
全員避難出来たこと、家も全部運んだこと。
お礼をたくさん貰ったこと、色々あった出来事を説明した。
「それとこんな事情がありまして、あの人たちはうちの村で……しばらく暮らして頂く事になりました」
そして……村に残る事を決めた人たちの事を説明する。
村に残ると、しばらくの間お別れになることは、前回一応説明はしてある。
今回は改めて、ちたま移住メンバーが確定した事を報告する形だ。
「あのこたちは、そちらでくらすさ~?」
「そうなります。引き留めたのは私ですので、責任は持ちます」
「ひきとめたさ~?」
「ええ、一緒に暮らそうってお願いしました」
残留して欲しいと望んだのは俺なので、その点もきちんと説明だ。
無理矢理じゃないけど、こういう言葉で引き留めたよというお話も伝えた。
すると……。
「わきゃ~。それおもっきし、くどいてるさ~……」
「そうですかね?」
「ウブなこたちだから、てかげんしてやってほしいさ~」
偉い人ドワーフちゃん、顔を赤くしてわっきゃわきゃ状態だ。
黄色いしっぽもピクピクしている。
……照れると、しっぽがピクピクする種族なのかな?
「でもわかったさ~。あのこたちを、よろしくたのむさ~」
「もちろんです。お任せ下さい」
人が増えると責任も増えるけど、いまさらの話だからね。
それに、俺一人で全てを背負っているわけでもない。
協力してくれる人たちがいるから、お任せ下さいと言える。
「でも、ほんとに、あえなくなっちゃうさ~?」
「会えなくなりますね。どれほどの期間かは、正直分かりませんが……」
「さみしいさ~……」
話は変わって、今度は「門」が閉じる点についてに移った。
偉い人ドワーフちゃんはこっちの話を信じてくれているようで、寂しそうな顔をする。
俺もこの良い人にしばらく会えなくなると思うと、さみしい。
「……そうですね。私も同じ気持ちです」
「せかいがつながったら、あそびにいっても、いいさ~?」
偉い人ドワーフちゃん、避難民の受け入れという仕事があったので、ちたまには来れなかった。
今もまだ落ち着いてはいないから、やっぱり来れない。
本当は、ちたまへ遊びに行きたかったんだろうな。
こちらも是非とも、この真面目で良い人なドワーフちゃんを、もてなしたい。
「大歓迎ですよ。『門』が開いたら、いの一番にお知らせ致します」
「たのしみに、まつさ~!」
わっきゃわきゃと、未来の約束を楽しみにしてくれる、偉い人ドワーフちゃんだ。
……いずれ「門」が開いたら。
きっと、この世界の問題解決が出来る――「何か」も見つかっている。
その「何か」も携えて、挨拶に来よう。必ず。
「このはなしは、これでいいとして。つぎのはなしをするさ~」
「分かりました。では次に――」
それから事務的な話、これからの話、しんみりした話、色々と会議は進む。
その間、妖精さんたちや付きそいドワーフちゃんたちは、静かに話を聞いていた。
やがて、伝えるこ事と決める事は全て終えて――。
「――これで、会議は終了となります」
「おおむね、もんだいはないさ~」
ぱむっと手を叩いて、会議を終える。
偉い人ドワーフちゃんとも合意がとれて、こちらも一安心だ。
この結果を、下で待つ人たちに伝えておこう。
「こちら大志、会議終了。合意事項問題なし、そちらはどうか。どうぞ」
『こちら高橋、家の設置は完了、残作業無し。どうぞ』
「こちら大志、了解した。では次に、送別会に移る。どうぞ」
『こちら高橋、了解した。準備に取りかかる。どうぞ』
そうして報告をし合い、次の準備に取りかかる。
やっとこ、大きな仕事が一つ、終わった。
「むずかしいおはなしだったね! むずかし!」
「さっぱりわからなかったね! なぞだね!」
「えらいひとのおななし、こんなにこまかいのさ~?」
「うちらには、むりさ~?」
とたんに、付き添いの方々がぐにゃる。
……君たちが静かだったのは、お話が難しかったからなの……?
確かに、四時間にも及ぶ会議をぶっ続け。
しかも、内容は責任者同士の細かい折衝だ。
慣れていないと、キツかったかもね。
でもまあ、難しい話はこれでおしまいだ。
あとは気楽に過ごして貰おう。
「みんな付き添いありがとね。次は送別会だから、思いっきり食べて飲んでね」
「おまつり! おまつり!」
「おかし、つくるよ! ちたまのおかし!」
「おさけ、おさけをのむさ~!」
「ごちそう、たのしみさ~!」
……一瞬でしゃきっとするみなさん、お目々がキラッキラ。
食いしん坊だからね。しょうがないよね。
「……だいたい、そっちのノリはわかってきたさ~」
「ゆるくて良いですよね」
いまいちこっちのノリについて来れない、真面目な偉い人ちゃん。
でもまあ、そのうち慣れますよ。
だってそっちに引っ越しした子たちも、だいぶあの村のノリを受け継いだので。
そのうち、この湖にもあのノリが感染しますよ。
数千人もキャリアを送り込んだのですから……フフフ。
「わきゃ~……わるいかおになったさ~……」
あれ? 偉い人ドワーフちゃん、ぷるぷる震えているぞ?
「いつもだよ! いつも!」
「わるだくみしてるね! わるだくみ!」
「まちがいないさ~」
――おっと、顔に出ていた。
いや、違うんですよ。これはあれです。
それ系ですよ。
◇
「ここは、さいせきじょうさ~」
「採石場というと、アダマンの原石とかを採取する場所ですか?」
「そうさ~。ここなら、だれにもめいわくかけないさ~」
湖からそれなりに離れた場所にある、居住区ではない陸地に移動する。
どうやら採石場らしい。
流されてきた石を拾うだけだから、鉱床とは言わないのかな?
この場所であれば、大騒ぎしてもみそラーメンを作っても、周辺の冬眠ドワーフちゃんに迷惑をかけないそうだ。
――というわけで。
「それでは、ここで送別会をしたいと思います」
「おりょうり、つくるです~!」
「みなさん、楽しみにして下さいね」
ハナちゃんとユキちゃん、ぴかぴかのアダマンフライパンを掲げて、お料理の準備だ。
「わきゃ! そのおなべ、つかってくれているさ~?」
「もちろんです~」
「くっつかなくて、便利ですよこれ」
「わたしたちも、つかってるよ! つかってるよ!」
「おかし、つくってる~」
「うれしいさ~」
お引っ越し民の中にはフライパン制作に関わった子もいるようで、さっそく使って貰えていることに喜んでいるね。
このアダマンフライパンは、しっぽドワーフちゃんたちとの絆の証だから、大事にしていこう。
「お酒もたくさんありますので、どしどしお飲み下さい」
「おさかなのみそづけも、たくさんありますよ」
「わきゃ~!」
あとはヤナさんとカナさんも準備を手伝ってくれて、お酒やら下ごしらえ済みの具材を並べ始める。
まわりのしっぽドワーフちゃんたちは、もうお目々キラッキラだ。
そうして準備は進んでいき、いつでも始められる状態になり……。
「ではタイシさん、挨拶をお願いします」
「おねがいするさ~」
送別会を始めるにあたって、責任者の挨拶を求められた。
しんみりしないよう、明るく行こう。
「みなさんもうご存じだと思いますが、ここにいる方々は、私たちの村で暮らすことになりました」
「おせわになるさ~」
「だいじなこと、みつけるさ~」
「がんばるさ~」
ずらっと並んだ、ちたま移住ドワーフちゃんたち。
俺に続けて、おのおの挨拶をした。
その顔は不安ではなく、笑顔なので……こちらとしてはほっとする瞬間だ。
避難生活で、だいたいこの辺の不安は払拭出来ているのかと思う。
「しばらくは会えなくなりますが、いずれ……再会出来ます。必ず」
「そのときを、たのしみにするさ~」
「まってるさ~」
「うちらも、むねをはれるよう、がんばるさ~」
今度はお引っ越し組が返答してくれる。
再会を疑ってはいないようで、みなさんも笑顔だ。
しんみりしなくて、良かった。
では、締めの言葉に入ろう。
「あの空を見上げれば、そこに私たちが活動するお星様が見えます。私たちも、空を見上げて……みなさんが暮らす星を、見ています」
「おとなりさんです~!」
「そうだね! おとなりだね!」
ハナちゃんと妖精さんがキャッキャしているけど、実際そうなんだよね。
エルフィンやフェアリンに行けば、ドワーフィンは観測できる。
異世界では無く、目で見て確認できる関係だ。
「もしさみしくなったら……湖畔や花畑で空を見上げて、みなさんの故郷を眺めます」
「うちらも、おなじように、そらをみあげるさ~」
ちたまからじゃあ見えないけど、その時はエルフィンやフェアリンに行けば良い。
完全に、ドワーフィンと遮断されるわけじゃあない。
空を見上げれば、そこに存在する。これだけでも、ずいぶん違う。
偉い人ドワーフちゃんも、空を見上げてくれるようだ。
しばらくはそうして、互いの星を見上げ……息災を祈り合おう。
「でもまあ、そのうち会えますので、『門』が繋がったらまた宴会しましょう」
「おまつりです~!」
「こんどは、うちらがあそびにいくさ~」
「おみやげ、もっていくさ~」
明るい話、未来に希望のある話で挨拶を締めくくって、そろそろ送別会を始めよう。
「色々積もる話もあるかと思います。これより送別会を始めますので、みんなで飲んだり食べたり、語り合ったりして頂ければと思います」
そう話しながら、ヤナさんと偉い人ドワーフちゃんに視線を送る。
乾杯の音頭をお願いだね。
俺から目線を贈られた二人は、こくりと頷いて杯を掲げた。
「それでは、お互いの息災を願って。乾杯しましょう!」
「はいみんな、かんぱいさ~!」
「「「カンパーイ!」」」
みなさん杯をぐいっと飲み干して、送別会の始まりだ!
あとは楽しく、別れのその時まで過ごそうじゃないか。
「では大志さん、強化品をどうぞ。どうぞどうぞ!」
(ひかってるやつ~)
――いきなり来た!
ユキちゃん、開始から一秒しか経ってないよ!
◇
「フフフ……」
「あや~、ユキがなんだかごきげんです~」
開始直後に野沢菜茶漬けを食べて、胃の準備は完了。
かえってお腹が空いてきたので、じゃんじゃん食べよう。
「で、大志さん。どうです?」
「素晴らしいね。輝いて見えるよ」
「ふ、ふふふふふ……」
毛並みがね。でもやっぱり、ユキちゃんしっぽの毛がちょっとハネてる。
なんだかんだで、隙の多い娘さんだ。
……今しっぽは三本だけど、まだ隠しているのかな? これで全部なのかな?
とりあえずブラシをかけて……。
「タイシ~、ハナのおりょうりも、たべてほしいです~」
おっと、ハナちゃんからもお料理の味見を求められた。
どんなお料理かな?
「お! アスパラのベーコン巻だね」
「あい~! ユキにおしえてもらったです~!」
「おつまみにピッタリなので、こう言うのも良いかなと思いまして」
どうやらハナちゃん、色々な献立を教わっているようだね。
日に日にレパートリーが増えていって、良いことだ。
「じゃあ頂くね」
「あい~!」
ハナちゃんからお皿を受け取って、アスパラベーコン巻を一口。
ほどよいベーコンの脂と塩味、そして柔らかいアスパラの、甘味とちょっした苦味。
これらの味はピリリとした胡椒によって調和され、野菜と肉の旨味を引き立てる。
ベーコンは外はカリカリ、でも内側はじゅわっとなるよう火が通されていて、とてもジューシー。
アスパラはホクホクなので、あらかじめボイルしてあるんだろうな。
そこにベーコンの旨味たっぷり油で軽く焼きをつけて、香ばしい風味が出るよう工夫されている。
下ごしらえもバッチリ、肉に熱を通すのも的確。
細かいところに手を抜かない、しっかりしたお料理だ。
「とっても美味しいよ。ちょっとした事にもこだわった、素敵なお料理だね」
「うふ~、うふふ~」
「ハナちゃんのお料理で晩酌したら、毎日楽しく過ごせそうだ」
「ぐふ~」
なにがクリティカルだったかは分からないけど、速攻ぐにゃった。
ギリギリを攻めるのは、なかなか難しい物だ。
「途中を飛ばしたね」
「おんなのこだもの」
ぐにゃるハナちゃんを見つめて、ヤナさんカナさんニッコニコだ。
二人もハナちゃんのアスパラベーコン巻を食べて、ちびちびとお酒を飲んでいる。
夫婦そろって、仲良しだね。
さてさて、それじゃあ催しも始まったところで。
主催者のつとめとして、みんなの様子を見てこよう。
「じゃあ自分は、ちょっと見回りしてくるね」
「ハナもいくです~」
「私もお供します」
ハナちゃんとユキちゃんもメンバーに加わって、楽しく見回りを開始だ。
まずは、しっぽドワーフちゃんの所へ。
わきゃわきゃと歓声が聞こえてくるから、のっけから盛り上がっているようだけど。
「みんな、盛り上がっているかな?」
「タイシさん、もりあがってるさ~」
「おさかな、やいてるさ~」
「おさけも、のんでるさ~」
(おそなえもの~)
覗いてみると、みなさん川魚の味噌漬けをアダマンフライパンで焼いていた。
味噌の焦げる香ばしさが漂い、それだけでうっとりしているね。
そして神輿はこっちで、お供え物三昧でぴっかぴかしていた。
お料理ができるそばからお供えされて、ご機嫌神輿が元気に飛び回っている。
わりとこの神様、お供え物が貰える瞬間を逃さないな……。
「わきゃ~! おいしいさ~!」
「これもたべてほしいさ~」
「おいしく、やけたさ~」
神輿のとなりでは、偉い人ドワーフちゃんも、みんなが持ってくるお料理に囲まれてわっきゃわきゃだ。
エルフの神様と一緒に、グビグビとお酒を煽りながら、味噌や納豆料理を摘まんでいる。
避難民を受け入れるため奔走してくれた人だから、みんなお礼がしたかったんだろうね。
……まさか神様、この偉い人ドワーフちゃんの人気にあやかって、便乗してお供え物を……?
……ま、まあそういう手法も、ありと言えばありかな?
こっちだと、あんまり神様の認知度無いからね。
いずれ世界が繋がったら、じっくりじわじわと布教をしていきたい。
とまあ、それはそれとして。
俺たちもみんなに、声をかけておこう。
「お酒とお料理、お口に合いましたでしょうか?」
「もちろんさ~! ごちそうばかりで、うれしいさ~!」
偉い人ドワーフちゃん、にっこにこ笑顔で答えてくれる。
でも一番嬉しいのは、みんなに囲まれて慕われている事かもしれないね。
お料理を手渡される時、お料理ではなく手渡してくれる人の顔を見て、こぼれんばかりの笑顔を見せているので。
美味しいお料理を、自分のために作って貰える。
これが嬉しいのでは無いかなと。
「おねえさん、これもたべてほしいです~」
そしてハナちゃん、アスパラベーコン巻を偉い人ドワーフちゃんにも食べて貰おうとして……。
「わきゃ~! おねえさんなんて、やっぱりいいこさ~!」
「あややややや……」
案の定、偉い人ドワーフちゃんから、にっこにこほおずりアタックを受けた。
お姉さんと呼びかけると、一番喜ぶ面白い人である。
「あやややや……」
「わきゃ~!」
しばらくの間微笑ましいほおずりアタックを眺めて、ほんわかする。
この偉い人ドワーフちゃん、親しみやすい良き指導者だね。
そんな人だから、なし崩しに今の立場になったのかもだ。
みんなで支えてあげたくなる人、みたいな。
さてさて、偉い人ドワーフちゃんへの挨拶は済んだので、他の人たちの様子も見てみよう。
ちたま移住組とお引っ越し組のグループがあるので、そちらにも顔を出さないとね。
というわけで、ほおずりが終わった後に顔を出してみる。
「おひっこし、なんとかなったさ~?」
「ぼちぼち、やっていけるさ~」
「うちらも、ちたまってところで、ぼちぼちやるさ~」
みんなは魚の味噌漬け焼きをつまみながら、わきゃわきゃとお酒を飲んでいた。
これからどう暮らすのか、やっていけるのか。
そんな話を、ぼちぼちとしている。
お互い新しい未来に向かって、進んでいくんだな。
こうして、楽しくもあり、寂しくもあり。
送別会は進んでいく。
飲み物食べ物が尽きるまで、じっくり語り合おうじゃないか。
暗くならずに、明るく行こう!
「お、これうまそうじゃん?」
「やめとこうよ、むらさきいろしてるよ、それ」
「わきゃ~……それ、たべるとしびれるやつさ~……」
「おわああああ!」
……暗くなる要素が無いな。
あれだけチクチク言われたのに、懲りてない人が……。
まあ、雰囲気を明るく? してくれてありがとうだ。
でもそれ、村に持ってきちゃだめだよ。
◇
楽しい送別会を催して、五時間くらい飲んだくれ。
とうとう、お別れの時となる。
みんなで船に乗り込み、これからちたまへ帰還だ。
「おみやげ、ありがとうさ~!」
「だいじに、つかうさ~!」
「こなのおさけとかは、だいじにのむさ~!」
この世界のドワーフちゃんたちには、たくさんの物資を贈呈した。
保存食やゴムボート、ライフジャケットや……粉末酒など。
十数トンの物資をあげちゃったので、有効に使ってもらいたい。
「またあえるひを、たのしみにしているさ~!」
「たすけてくれて、ありがとうさ~!」
「かならずおれい、するさ~!」
偉い人ドワーフちゃんや、お引っ越しドワーフちゃんたち。
みんなに見送られながら、船を出す。
「世界が再び繋がったときは、必ず連絡します! それまでお元気で!」
「また、あそびにくるです~!」
「お互い、元気に過ごしましょう!」
「うちらも、がんばるさ~!」
(またね~!)
船が進むにつれ、どんどんと小さくなる……この世界で知り合った人たち。
みんなみんな、お互いの姿が見えなくなるまで手を振っていた。
さようなら、善き人たち。
さようなら、この世界で暮らす、近くて遠い……仲間たち。
またいずれ――会う日まで!
◇
一つの別れを終え、ドワーフィン世界の洞窟へと到着。
みんなそろって、洞窟をくぐり抜けた。
すると――。
「――『門』が……閉じたね」
「これで、あっちにいけなくなっちゃったです~……」
「いつも通りの流れに、戻ったって事ですね」
「わきゃ~! ほんとさ~!」
洞窟の「門」は閉じて、ただの行き止まりが見えるようになった。
ドワーフィン世界から漂ってきた、大河の匂いも……もう感じない。
どれほど念じても、もう洞窟の「門」は開かなかった。
「わきゃ~……」
「ふしぎなこと、たくさんさ~」
じーっと、洞窟の行き止まりを見つめるしっぽドワーフちゃんたち。
元々こうなることは伝えてあるので、それほどショックは受けていないね。
ただただ、不思議そうな顔をして、しっぽをゆらゆらと揺らしているだけだ。
それじゃあこの子たちに――始まりを告げよう!
「これから君たちは、あの村で『何か』を見つけるお仕事が――始まるよ」
「それが何かは分かりませんが、きっと見つかると思います」
「ハナたちも、おんなじです~」
(みんな、だいじょうぶだよ~!)
きっと見つかる。見つけられる。
いずれ来たる、その日を信じて――ぼちぼちやっていきましょう!
「みんな、これからもよろしくね」
「よろしくです~!」
「私たちも協力しますので、無理せずやっていきましょう」
「もちろんさ~!」
ちたまの洞窟の前で、えいえいおーとかけ声が響き渡る。
こうして一つの出来事が終り、新たな「何か」が始まった。
未来のことは、分からない。
でも、よりよい未来を目指して――ぼちぼちやっていこう!