第十六話 バグった
妖精さんたちとの別れに続けて、避難民しっぽドワーフちゃんたちとの別れも訪れた。
とうとう、残っていた最後の子たちを……送り出す日がやってきたのだ。
「わきゃ~、おせわになったさ~」
「たすかったさ~」
現在避難民として救助し、隣の湖に送り届ける子は……二百人ほど。
海竜とリザードマンたちは、粛々と仕事をこなしてくれていた。
とうとうここまで、やってきたのだ。
「あとちょっとで、終わるね」
「ああ、そうだな」
高橋さんと二人で、隣の湖へと旅立つ子たちを見つめる。
これで妖精さん救助隊が発見した人たちは、全員送り届けた。
あとは隣の湖へまた顔を出して、物資を届けたり偉い人ドワーフちゃんに挨拶して……この計画は終了する。
――ただその前に、ひとつやることがある。
「高橋さん、『あれ』はどうなってる?」
「明日くらいに、全部揃うぜ」
「手間かけちゃって悪いね」
「良いって事よ」
どうやら、そっちもきちんとやってくれているようだ。
救助の本来業務ではない、ちょっとしたお仕事。
ドワーフィンの日の出というタイムリミットがある中、良く頑張ってくれた。
本当に、助かった。
「それじゃあ、全部揃ったらビックリさせてあげよう」
「それが良いな。きっと喜んでくれるさ」
「たぶんね」
俺と高橋さんは、湖畔のそばにある――仮設住宅を見る。
「かあちゃ、おさかなとってきたさ~」
「それじゃ、さっそくおりょうりするさ~」
「わきゃ~」
そこには、一番最初に来た子たちが……わきゃわきゃしていた。
みんな、もうちょっと待っててね。
あとちょっとで――全部揃うから。
◇
そして、運命の日。
高橋さんにお願いしたものが――全て揃った。
これからしっぽドワーフちゃんたちを集めて、わっきゃわきゃしてもらおうじゃないか。
「ねえみんな、ちょっと見せたいものがあるから、集まってくれないかな」
「わきゃ? みせたいものさ~?」
「どんなものさ~?」
リーダーとなっているお母さんドワーフと、その子供ちゃん。
首を傾げて聞いてきた。
これは、見てもらえば分かるだろう。
「まあ、見て貰わないと、自分が分からないからね」
「ハナたちだと、わからないです~」
「でも、みんななら分かるから」
用意したものは、俺たちじゃ分からない。
これは本人たちにしか、分からない物だ。
とにかく集めた物を見てもらって、判断してもらおう。
「それは見てのお楽しみってことで」
「きっと、みんなよろこぶです~」
「みなさん、ビックリしますよ」
お手伝いのハナちゃんとユキちゃんが、洞窟を指さす。
あの洞窟をくぐって、ドワーフィンに行けばすぐわかるからね。
二人とも、早く見せてあげたくてしょうがないみたいだ。
俺も、みんなに早く見てほしい。
「それじゃ、洞窟をくぐって見に行こう。ささ、みんなおいでませ」
「わかったさ~」
「なにがあるか、たのしみさ~」
「わきゃ~」
すっかり仲良くなったみんなと、のんびり洞窟をくぐる。
わきゃわきゃと賑やかに声が反響する中、「門」をくぐり抜け。
ちょっと歩いて、水辺へと向かうと……。
高橋さんが待ち構えていて、準備していた。
「おう、みんな待ってたぜ。ちっとこいつを見てくれ」
衛星ドワーフィンは、まだまだ夜の時期。
そんな世界を、エルフィンとフェアリンの明かりが照らす。
一つの惑星、一つの衛星。
それらの光に映し出されたそれは――ずらっと並んでいた。
「わきゃ~! これは! ――おうちさ~!」
「うちらのおうちが、あるさ~!」
「しんじられないさ~!」
ずらっと並んだそれは――ちいさなちいさな、不思議な家。
本来なら、樹上に設置されているはずの住居。
そう、しっぽドワーフちゃんたちが残してきた――我が家だ。
あの子たちの話で、とっても悲しがっていた部分。
それは、住み慣れた我が家を……捨てざるを得なかった出来事だった。
俺はどうしても、そこをなんとかしてあげたくて……。
結果、無理を言って高橋さんにお願いしていたのだ。
あの子たちが残してきた家を探して――運んできてほしいと。
妖精さんの捜索活動中この家々の探索もお願いして、どこにあるかだけは調べておいた。
そして海竜やリザードマンたち、頼れる輸送部隊は……仕事を完遂した。
残された家々は、全て運ばれたのだ。
あとは、見つけて貰わないといけない。
どれが「自分の家」なのかを。
見て貰わないと「俺が」分からないとは、そういうことだ。
どの家が誰の住居だったか、俺は知らないからね。
「というわけで、みんな自分のお家を見つけてね」
「わきゃ~! ありがとうさ~!」
「これ! これがうちのおうちさ~!」
「うちのも、あったさ~!」
てててこっと自分の家に駆け寄る、しっぽドワーフちゃんたち。
みんなしっぽをぱったぱた振って、凄く嬉しそうだ。
失ったはずの我が家が、目の前にあるのだから……当然かもね。
これは水運が可能な、ドワーフィンだからこそ出来たこと。
陸よりずっと効率的に大量の物資を輸送できる、大河があればこそだ。
陸運は逆立ちしても、輸送効率では水運に勝てない。
そしてドワーフィンは、大河でそれを実現できる。
だからこそ輸送に余裕があり、この贈り物が可能となったのだ。
「タイシ~! だいせいこうです~! みんな、よろこんでるです~!」
「こっそり準備していたかい、ありましたね!」
「この日のために、みんな頑張ってくれたからね。本当に、ありがとう」
この贈り物は、探す力と運ぶ能力が無ければ……不可能だった。
この辺は妖精さんたちと、高橋さんに感謝だね。
「捜索部隊と輸送部隊のおかげで、上手く行ったよ」
「でもよ、大志の作った水路図と水流の向き、あと輸送計画がなきゃ無理だったぜ」
「それはコンピュータがやったんだ。演算中は、ぐっすり寝てたよ俺」
「おおい! 台無しだよ!」
高橋さんからキレの良い突っ込みを貰ったけど、まあ俺はプログラムを組んだだけ。
実作業は自作AIちゃんに深層学習させて、パターンを作って貰った。
人工知能ちゃんありがとうって感じだね。俺はほとんど、仕事してないのだよ。
……まあそのAIちゃん、実行すると妙に電気を食うんだけど。
なんか、組み方間違ったかな?
「タイシさん、みんなじぶんのおうち、みつけたさ~!」
「ほんとに、ありがとうさ~!」
「きょうはおうちで、みんなでねるさ~!」
……おっと、思考がAIちゃんのほうに逸れていた。本題に戻ろう。
どうやらしっぽドワーフちゃんたち、自分の家を見つけたようだね。
いちおうこの子たちの家は、漏らさず輸送できたようだ。
ひとまず、これで下地は整ったね。
「わきゃ~! わきゃ~!」
「ゆめじゃないさ~!」
「わがやが、あるさ~!」
やがて、しっぽドワーフちゃんたちは……。
涙を流しながら、我が家の前でしっぽを振っていた。
この子たちにとって、家は……とても大事な財産なんだろうな。
物としての価値だけでは無く、思い出が詰まった拠り所でもある。
それを取り戻すことが出来て、本当に良かった。
「こんなん、おれらもなくにきまってんじゃん」
「おうちがかえってきたとか、すてき」
「めからあせが……あせがとまらないのだ……」
「よかったね! よかったね!」
(おうち~! よかったね~!)
「~」
なぜかエルフたちや妖精さんたちがいるけど、いつの間に。
内緒だったのに、どうして集まっているの……。
神輿やわさわさちゃんまで、うるうるしているよ……。
「なぜここに……」
「タイシさん、なんかへんだったからな~」
「そりゃ、わかりますがな」
「きになってたよ! きになってたよ!」
(わかりやすい~)
「~」
……ドッキリ企画だったのに、どうもバレバレだったようで。
みなさんドヤ顔でご指摘だ。
いやはや、つきあい長いからだねこれ。
俺が悪だくみしているのを、察知されちゃってた。
顔に出てたかも?
ただ、次のドッキリは分からないだろうね。
実はもう一つ、隠していたことがある。
これはちょっと、微妙な話なんだけどね。
とりあえず、教えちゃおう。
「あとね、君たちは今なら、隣の湖に――お引越しできるよ」
「……あえ?」
「え? 大志さん……それは、どう言うことですか?」
唐突に言った俺の内容に、ハナちゃんとユキちゃんがぽかんとした。
これは教えていなかったから、ビックリするよね。
でも、実際今なら出来るんだ。
「今の状況、良く見て。ほら……洞窟の『門』は、開いたままだよね」
「あや! そういえばそうです~!」
「門が閉じていないですね、言われてみれば……」
――そう、洞窟の「門」は開いているのだ。
これはなぜかというと……。
「平原の人たちが全員戻ってきていないから、『門』はまだ閉じていないんだ」
実は今、平原の人たちがドワーフィンでキャンプしていて、まだ全員戻ってきていない。
だから、いまだに開いたままなのだ。
……なんでも、「もうちょっとここで、旅を満喫したい」らしい。
たくましすぎて、若干引いた。
まさか、まだこの世界で旅するとか思わなかったよ……。
どんだけ旅が好きなのって感じだ。
……ともあれ、これはひとつの――チャンスだ。
異世界という未知の環境で暮らすことを、今なら回避できる。
ほんのちょっとだけ出来た、猶予なんだな。
「君たちが当初目的にしていた、お隣の湖へのお引っ越し。今なら実現できるんだ」
「わ、わきゃ~……」
「そういえば、うちらはおひっこしがもくてきだったさ~」
「かんぜんに、わすれてたさ~」
……忘れてたのね。
なんだかんだで、ゆる~い人たちだな……。
「まあ考える時間はしばらくあるから、じっくり相談してみて」
「わきゃ~……」
平原の人たち、バーベキューセット持って行ったからね。
今頃どっかの陸地で、釣り大会でもしてるんじゃ無いかな?
俺の想像以上に、神経の太い方々だったのだ……。
とまあ、そんなわけなのだよ。
「あの村に残るのも、お引っ越しするのも……どっちでも好きな方が選べるよ」
「あや~……こんなこと、いままでなかったです~」
「タイミングのズレが生んだ、奇跡の瞬間ですね」
どちらかというと……。
平原の人たちが予想外の行動をしたので、洞窟のシステムがバグった感。
きっと、「門」を閉じるに閉じられなくて……困っているのでは?
みんな予定通り帰ってきて、「門」が閉じられめでたしめでたし……とか考えていたら、これよ。
そんな感じだと思う。うかつだったね。
エルフたちの行動は、たまに予想の範囲を超えるのだよ。
……どちらかというと、あさっての方向に。
「わきゃ~……」
「……」
そしていきなり選択肢が出来てしまった、しっぽドワーフちゃんたち。
すっごいお困りの表情だ。
そりゃ悩むよね。俺だって悩むよ。
「タイシ~、みんなは、どうしたらいいとおもうです?」
「大志さんは、どんなお考えですか?」
悩むしっぽドワーフちゃんたちを見て、ハナちゃんとユキちゃんが意見を求めてきた。
そうだな、俺の考えだと……。
「俺としては、みんなに残って貰いたいかな。だって、帰っちゃったらさみしいよ」
「わきゃ!」
どストレートに、胸の内を話しちゃう。
今は洞窟システムがバグっているから、バグ技が可能なだけで。
本来ならこの子たちは……あの村で、独立するための力をつけるはずだからね。
それがすぐに「さよなら~」じゃ、そりゃさみしいに決まっている。
正直に意見を述べると――。
「――タイシ~! やっぱりタイシは、タイシです~!」
「それでこそですね!」
……俺の意見を聞いてハナちゃんとユキちゃんが、なんでか知らないけど喜んでいる。
なんで?
「……うちら、ここにのこっても、いいさ~?」
しっぽドワーフちゃんたちは、俺の意見を聞いて……上目使いで見上げながら聞いてきた。
ちょっと不安そうな表情だね。
思ったことをそのまんま、話そう。
「自分としては、好きなだけあの村で過ごしてほしいと思っているよ」
「うちら、あしでまといさ~?」
「そんな事は絶対ないよ。みんなは、すごい力を持っている」
「あったとしても、いまは……なにもできないさ~?」
「何が出来る出来ないじゃなくて、一緒に過ごしてくれるのが、一番大事だよ」
「わきゃ~!」
別に、役に立つから居て欲しいとか、役に立たないから出て行って欲しいとか。
そんな事は考えていない。
役に立つ立たないで物事を選択するなんて、もったいないことだ。
隣で寄り添ってくれる、それだけで十分。
そういう存在は、手に入れようとして得られる事じゃ無い。
見つかっただけで、奇跡なんだから。
「みんなと出会えたのは、奇跡の賜なんだ。出来れば、一緒に暮らしていきたい」
「わきゃ~!」
正直に話していくうちに、しっぽドワーフちゃんたちが……わきゃわきゃとし始めた。
赤いしっぽをピンと立てて、しっぽの先はピクピクしている。
……なんだかみんな、てれってれな感じだね。
「そう言うわけで、自分としては是非とも残って欲しいかな」
「――うちら、あのむらですごすさ~!」
「それがいいさ~!」
「あのばしょで、くらすさ~!」
よし! 残ってくれるようだ。
せっかく出会えた奇跡、失わずに済んだかな。俺としても、嬉しい選択だ。
……めっちゃ引き留めた感があるけど、良いよね。
もともとこれが、本来の流れなわけだし。
「じゃあみんな、これからもよろしくね!」
「よろしくです~!」
「一緒に、のんびりやっていきましょうね!」
「わきゃ~! もちろんさ~!」
こうして、平原の人たちがもたらしたバグ技は……無かったことになった。
でもそのおかげで、みんなの絆が深まったような。
そんな気がした。
◇
しっぽドワーフちゃんたちが、ちたま残留を決めた。
村に仲間が増えて、いっそう賑やかになって。
めでたしめでたしと思いきや、仕事はまだまだ残っております。
「がうがう~」
「あいさつ、いくです~!」
「この挨拶が終わったら、しばらくは会えないのですよね」
「そうだね、おそらく俺たちが帰ったら……『門』は閉じると思う」
(たぶんね~)
今向かっているのは、お隣の湖。
全ての工程を終えたと、偉い人ドワーフちゃんへ報告に行くのだ。
そしてこれを終えたら、洞窟の「門」は閉じるだろう。
平原の人たちも全員戻ってきたので、ようやく「洞窟のシステム」も、お困り状態を解消出来る。
これでようやく、洞窟にまつわる一つの出来事が終わるのだ。
……いや、もしかしたら「始まる」のかもな。
隠し村に避難してきて、「門」が閉じる。
それが――始まり、であるのかも。
要するに、今までは……始まってすら、いなかったのかも知れない。
これからようやく、しっぽドワーフちゃんたちの問題解決が――始まるのかもだ。
バグ技でこの辺がぐっちゃぐちゃになるのを、防げたかもだ。
……危ない危ない。引き留めて良かった。
しかし、考えてみれば……とんでもない事が連続したな。
「……正直、こんなに大事になるとは、思ってなかったよ」
「さいしょ、やばかったです~」
「まさかこんなに、大規模な事をするとは思いませんでした」
(おおごと~)
しみじみと、今までの出来事を振り返る。
数万人を動員した大救助計画が必要になるなんて、最初は思ってもみなかった。
灰化現象を起点とした、惑星エルフィンと衛星フェアリン、そしてドワーフィンとの関係。
色々謎が多いけど……事態はどんどん、連鎖している気がする。
この不思議な惑星系は……いったい何なのだろうか?
とっかかりすら、掴めない。
でも、なんとかしないとね。
ひとまず今は、出来ることを一つ一つ片付けていこう。
「よく分からないけど、みんなの力をこれからも借りるね」
「あい~! まかせるです~!」
「私も、とことんまでお付き合いしますから。……フフフ、とことんまで」
ハナちゃんもユキちゃんも、元気に答えてくれた。心強い仲間だね。
……ただ、ユキちゃんのオーラが黒いのは、何でだろ?
『こちら高橋、前方水上に未確認物体多数を探知した。おそらく船団だ。どうぞ』
おっと、そうこうしているうちに、目的地付近まで来たようだ。
たぶんお出迎えだろうね。
さっそくだけど、お母さんドワーフにコンタクトをお願いしよう。
「あっちに船団がいるっぽいから、お話をお願いできるかな」
「まかせるさ~。――! ――! ――!」
すぐさま、元気にエコーを飛ばすお母さんドワーフだ。
こういう能力、うらやましいな。
「……! ……! ……!」
「わきゃ! みんな、まっててくれているさ~」
「通信ありがとう。それじゃ、向かいますか」
「いくです~」
「お土産沢山ですから、喜んでくれますよね」
さてさて、みんな元気にしているかな?
偉い人ドワーフちゃんは、大変なお仕事でつかれていないかな?
なんにせよ、会って話をしよう。
「こちら大志、出迎えの船団であることを確認。これより接触する。どうぞ」
『こちら高橋、了解した。どうぞ』
高橋さんと連携し合いながら、船団と接触する。
数分ほど移動して、出迎えてくれる人たちにのところへ到着。
そこには――引っ越しで送り届けた人たちや、最初に避難した人たちが集まっていた。
「ゴムボート、べんりにつかっているさ~」
「テントってやつも、ありがたいさ~」
「そろそろ、とうみんにはいれそうさ~」
船と泳ぎで引っ越した子たちも、冬眠の準備は順調そうだ。
助力が無駄にならずに、ほっと一安心だ。
そしてこの子たちに、渡す物がある。
「ねえみんな、今日は良い物持ってきたよ。ほら、後ろを見て」
後ろには、大規模な輸送部隊がいる。
救助作戦が終了したので、全ての輸送能力を投入できるのだ。
今回その余裕のある状態にて、運んできたのは――。
「わ、わきゃ~! あれはもしかして、おうちさ~!?」
「うちらのおうち、あるさ~!」
「はこんできて、くれたさ~!?」
そう、やっぱりドワーフちゃんハウスである。
村に残る子たちの家は特定出来たので、残ったものは……お引っ越し成功組の家なわけだ。
そりゃ当然、運んでくるよね。持ってこない選択肢が無いよ。
「自分の家を見つけたら、どこに設置したいか行ってくれ。俺たちが運ぶから」
「おうちのことなら、おまかせ」
「いままでたくさん、せっちしてきたからね」
さらにはリザードマンたちの、家設置サービス付き。
これでお引っ越し成功組の、住居問題も――完全解決だ。
「かんしゃするさ~!」
「ゆめみたいさ~!」
「おうち! おうちさ~!」
大喜びのドワーフちゃんたち、わっきゃわきゃと川に飛び込む。
ああいや、そっち持って行くから慌てなくても……。
「わきゃ~! なつかしの、わがやさ~」
「あきらめてたのに、おうちがかえってきたさ~!」
「なみだがでてきたさ~……」
家が積載されたイカダの周りで、しっぽドワーフちゃんたちは泳ぎ回る。
くるくると、周りを囲んで……喜んでいるね。
みんなの心の拠り所を、取り戻してあげることが出来た。
運んで終わりじゃない。物資を与えて終わりじゃない。
取り戻してあげて――終えられる。
これでようやく、ほとんど全てのお引っ越し事業は終了だ。
あとは、お仕事終了の挨拶をするだけ。
そして……しばしの別れになる事を、伝えなければならない。
そのために、村に残ることを決めた子たちを……全員連れてきたのだから。