表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十七章 王の力
243/448

第八話 魅せようとしたら、視えちゃった


 一番大きな会議場らしき建物に移動して、偉い人ドワーフちゃんに状況説明をした。

 ちなみにドワーフちゃんにとっては広い会議場でも、生粋のちたま人(当社調べ)である俺のガタイだとわりとキツイでござる。

 とまあ、それはそれとして。


「わきゃ~……おおごとになってるさ~」

「ですね。さしあたっては、居住区をどうしたら良いか、などの助言を頂けたらと思います」

「すめるところはたくさんあるから、いくつかのばしょを、みつくろっておくさ~」

「助かります」


 会議自体は、泳ぎ組と船組を受け入れた実績があるだけに、結構とんとん拍子で進んでいる。

 この湖は、まだまだ人が住める許容量があるようだ。


「まだまだくるなら、うちはおきたままでいるさ~」

「大丈夫ですか? 冬眠しなくても」

「こういうときにしごとをするのが、うちのやくめさ~」

「ご協力、まことに感謝いたします」


 どうやら偉い人ドワーフちゃんは、冬眠をとりやめていろいろ采配をしてくれるようだ。

 本当にありがたい。しっかりした人がトップにいてくれると、大勢の人が助かるね。

 こういった人が大損しないように、こちらもしっかり支援しよう。


「いいひとだね! おだんごどうぞ! おだんご!」

「ありがとうさ~」

「たくさんあるよ! どうぞ! どうぞ!」

「あ、ありがとうさ~」


 妖精さんたちも同じことを思ったのか、どしどしとお団子を贈呈しはじめる。

 わりと沢山お団子が積み上げられたので、偉い人ドワーフちゃんは地味に驚いているね。

 あとで、おやつとして食べて下さいだ。


 ともあれ、大まかな話はまとまった。受け入れ体制は整えてもらえるし、受け入れ終了まで協力もしてくれる。

 それじゃあ、次はこちらの支援の話をしよう。


「では、私どもは物資の支援や、協力して頂いたお礼の品などを提供致します」

「それは、うちらもたすかるさ~」


 偉い人ドワーフちゃん、スピリタスをちらりと見た。あと、じゅるりとしている。

 お礼の品は、こういうのが良いんだろうな。

 どしどし持って来てあげよう。


「……でも、どうしてうちらに、そこまでしてくれるさ~?」

「それは、うちもおもったさ~」

「タイシさんは、そんばかりしてるさ~?」


 ……おや? 偉い人ドワーフちゃんや、お母さんドワーフ、それに緑しっぽちゃんが俺を見て聞いてきた。

 いや、どうしてと言われても……。


「……ほっとけないから、ですかね」

「ほっとけない、さ~?」

「力を貸すことが可能な状況なのに、何もしなかったら……後で絶対後悔しますから。それに、みなさんと交流を持てることは、自分にとって損にはなりません」

「そういうものさ~?」

「そう言うものですね。こんな体験は、普通じゃ出来ません。それは素晴らしい事です」

「……」


 エルフや妖精さん、それにドワーフちゃんたち。あとは面白神様や……わさわさちゃん。

 それに謎の植物や面白動物たちもだね。

 助けなければ、今の賑やかな村は無かった。交流は無かった。

 お金や物はがんばれば手に入るけど、これらの交流は奇跡の賜物たまものだ。

 力を貸さない選択肢なんて、選ぶ理由が無い。

 儲からなくたって、彼らがいてくれれば……それで良い。

 幸せに暮らしてくれれば、もっと良いけど。


「……わかったさ~。うちもきょうりょくするから、がんばろうさ~!」

「ええ! みんなのお引越しを成功させて、この湖を賑やかにしましょうよ!」

「それは、いいかもさ~!」

「うちも、ちからになるさ~」


 どうやら理解してもらえたようで、偉い人ドワーフちゃんはにっこり笑顔だ。

 お母さんドワーフも緑しっぽちゃんも、わっきゃわきゃだね。

 そうそう、前向きなのが良いよ。後ろを振り返るのは、ごくたまに、くらいがちょうどいい。


 ――ではでは、会議も意見もまとまったところで。

 下で待っているみんなにも、結果を報告しないとね。

 ついでに、持ってきたお土産を、偉い人ドワーフちゃんに確認もしてもらおう。


「では意見もまとまったところで、私たちが持ってきたお土産の確認をお願いできますか?」

「わきゃ? おみやげさ~?」

「この強いお酒の他にも、食べ物や道具を持ってきました。色々活用できると思います」

「それは、たのしみさ~!」


 偉い人ドワーフちゃん、しっぽをぱたぱた振っているね。

 お酒の匂いで飛び起きた程だから、スピリタスとかは気に入ってくれるだろう。

 では早速無線で連絡して、これから降りることを伝えておくか。


「こちら大志、会議終了かつ当初目的達成。これより責任者と共に下に降り、贈答品の確認を行う。どうぞ」

『こちら高橋、了解した。物資を運んでおく。どうぞ』


 それじゃあ下に降りて、偉い人ドワーフちゃんにお土産を見てもらおう。

 喜んでくれると良いな。



 ◇



 がんばって偉い人の仕事をしてくれるドワーフちゃんに、お土産の数々を見せてみる。

 ぶっちゃけ賄賂とも言う。山吹色のお菓子的なアレだ。


「わきゃ~! ごちそうがたくさんさ~!」

「これは香りのよいお酒、これはめっちゃ強いお酒、これは――見たまんま光るお酒です」

「……さいごのやつ、だいじょうぶさ~? ひかるのは、あぶないかんじがするさ~」


 おっと、エルフの謎発光リキュールにつっこみが入ったぞ。こっちでも、マーブル色に光るお酒は無いらしい。

 心配そうな顔をする偉い人ドワーフちゃんを、安心させてあげよう。


「これを飲んだ約一名のみ、一晩ほど体がほのかに発光してました」

「……ふあんしか、ないさ~?」


 より不安そうな顔になってしまった。何故だ……。

 ちなみに光るようになったのは、マイスターだけである。

 なぜ彼だけ、ほのかにシャイニングするようになったのかは……よくわからない。

 食べ合わせがいけなかったのかな? マイスターは、結構その辺に生えていた謎草とか食べているからね。


「わきゃ! これはもしかして、きちょうなたべものさ~?」

「あ、その食品は、私たちは味噌と呼んでいます」

「たくさんあるさ~!」


 魅惑の光っちゃうエルフ酒はさておき、そのほかの食品に偉い人ドワーフちゃんはわっきゃわきゃだ。

 喜んでもらえたようで、ひと安心だね。


「これはみんなも、よろこぶさ~」


 そうして大量の賄賂を眺めて、偉い人ドワーフちゃんはしっぽをぱたぱた振る。

 みんなで分けちゃうつもりだね。ひとりじめしない、良い人だ。

 こういう性格だから、責任者になっているのかと思う。

 まあこの物資は、ご自由にお使いくださいだね。


「ちなみにこれも、たべものさ~? なんか、ぐにぐにしているさ~?」


 あ、ゴムボートの説明もしないといけない。


「これは船の形をした風船で、水に浮かべて船代わりに使えます。そちらに、膨らませたのがありますよ」

「わきゃ! そんなことできるさ~!?」

「出来ちゃうんですよ、これが」


 まあ、強度のあるゴムを量産して縫製しないといけないから、簡単には出来ないけど。

 なんだかんだで、これはちたま化学工業技術の結晶でもある。けっこう凄いやつなのだ。

 だからおいそれと真似は出来ないだろうけど、素材や加工技術を知らなくたって、使う分には別に問題はないよね。

 どういった用途に使うのが良いかは提案しておこう。


「これは公共財という形で運用して、船がなくて困っている家庭に貸し出すのが良いと思います」

「ちいさなおうちは、おおだすかりさ~」

「穴が空いて空気が漏れる事もありますので、補修方法も教えます」

「しっかりきいておくさ~」


 そうしてお土産を偉い人ドワーフちゃんへ譲り、本日予定していたお仕事は全て終了した。

 お次は、お引越し組の方々だね。

 色々困っているらしいから、ひとまず食糧は提供しておこう。


「それと、こちらの食糧は冬眠できていない方に提供します」

「わきゃ~! たすかるさ~!」

「でもこれ、どうやってたべるさ~?」

「なぞの、たべものさ~?」


 アルファ化米、サバの水煮と味噌煮缶詰、それにチキン的なラーメンだ。

 みそラーメンはうかつに調理すると、周囲の冬眠を強制解除してしまうので自粛した。

 申し訳ないけど、そこはちょっと我慢してくださいだね。

 とりあえず、まずはお湯で戻す系を説明しようか。


「これらの食糧は、基本的にお湯を注いで少々待つだけで食べられます」

「まつのは、どれくらいさ~?」

「この砂時計で計測できます。こちらは一回落ちるまで、こちらは二回くらいですね」

「わきゃ! これはべんりさ~」


 お湯で戻す系の保存食は、これで説明できたかな?

 あとは……缶詰か。


「こっちのは缶詰と言いまして、お魚を煮込んだお料理が、金属の容器に密閉されています」

「わきゃ! このカンヅメってやつ……てつ! てつでつくられているさ~!」

「きちょうひんさ~!」


 あ、驚くところはそこなのね。鉄を使っているという点に、みなさんびっくりまなこだ。

 まあこの世界は全体的に川が流れているから、鉄鉱床は出来辛いよね。

 あれは酸素たっぷりの海が無いと、成立するのが難しい。


 こっちだと川の流れで酸化鉄が大規模に堆積できず、流されてしまう。

 となると鉄を得るには、砂鉄集めが必要なわけで。

 これは非効率で、量も集めにくい。鉄が貴重な理由は、こんなところだろうな。


「自分たちのところは鉄が一番豊富なので、よく利用されていますね」

「うらやましいさ~」

「てつは、かこうがらくさ~」


 ちたまの鉄製品をみると、しっぽドワーフちゃんたちは大体うらやましがる。

 ……鉄を輸出品として交易したら、どっちも儲かるような気がしなくもない。

 ただ鉄は重いので、今は商売できるような物量を輸送する余裕はないか。

 いずれすべてが解決したら、鉄を商品として貿易するのも良いかもしれない。

 でもそれは、まだまだ先の話だね。


 さて、先々の事はまた考えるとして、これからどうしようか。

 大体の仕事は終わったから、あとは帰るだけなんだけど。

 みんなに意見を聞いてみよう。


「大体お仕事は終わったけど、これからどうする?」

「タイシ~、せっかくだから、このたべもののたべかた、じつえんするのがいいです?」

「この食べ物と言うと、ラーメンとか缶詰の?」

「あい~。それでいっしょにたべながら、おはなしするです~」


 あ~、まあそうだな。実際に目の前で作ってみて、食べてみる。それは大事かも。

 あとは試食会をしながら雑談でもして、友好を深めるのは良い案だ。

 そこで好みや苦手な物が分かれば、より効率的な援助物資の選択ができる。

 さらにもっと仲良くもなれるので、一石二鳥だよね。


「じゃあハナちゃんの案を採用しちゃうよ。保存食の試食会を開こう」

「わーい! ししょくかいです~!」

(おそなえもの~!)


 案が採用されたハナちゃん、キャッキャと大喜びだ。

 そして神輿もキャッキャしている。

 楽しい試食会になりそうだね。



 ◇



 ハナちゃんの案で始まった試食会は、和気藹々わきあいあいな雰囲気で進んでいく。

 あと今回みそラーメンは封印してあるので、ガンガン調理しても冬眠ドワーフちゃん大量起床事件にはなっていない。

 よかったよかった。

 ……味噌汁も危険だから、うかつに野外で食べないように言っておかないと。


「あの、この味噌系統は香りでみんな冬眠から覚めてしまうので、扱いには気をつけてください」

「わかったさ~」

「かざしもで、たべるさ~」

「この缶詰は、暖めなければにおいは拡散しないので、まあ大丈夫です」

「なるほどさ~」


 そうして一通り理解して貰ったところで、ちまちまとインスタント食品をつまんでいくと……。


「おねえさん、これとかおいしいです~、おすすめです~」


 あっちでハナちゃんが、インスタントかに玉ぞうすいを偉い人ドワーフちゃんにお勧めしていた。

 そうそう、それおすすめなんだよ。小腹が空いたときに、マグカップですすれるのが良いんだよね。


「……わきゃ? おねえさんって、うちのことさ~?」


 しかし、偉い人ドワーフちゃんは別のことに気をとられた。

 ハナちゃんに「お姉さん」と言われ、しゅばっと顔を向けたね。


「あい~、おねえさんです~」


 ハナちゃん、特に何の含みもなくキャッキャと返事をする。

 まあ、ハナちゃんから見たらお姉さんに見えるよね。

 俺から見たら、高校生くらいの子に見えるけど。


 とまあ、そんなほのぼの交流をみてほくほくしていたら――。


「わきゃ~! うちのことを『おねえさん』だなんて、いいこさ~!」

「あややややや」


 ――偉い人ドワーフちゃんは、ハナちゃんを抱えてほおずりしはじめた。

 お姉さんと呼ばれたのが、とっても嬉しかったようだ。

 あの喜び方は……うちのお袋が「お姉さん」と呼ばれた時のソレにそっくりだ。

 たぶん、「お姉さん」て年齢じゃあないんだろうな……。


「うちも、まだまだいけるさ~!」

「あやややややや……」


 にっこにこでハナちゃんにほおずりする、偉い人ドワーフちゃん。

 ……そっとしておこう。


 さてさて、他の子たちはどうかな?


「わきゃ~! このおさかな、おいしいさ~! ごちそうさ~!」

「この、ごはんってのとたべると、いっそうおいしいさ~!」

「ラーメンてのは、つくるのがらくでいいさ~」


 ほかのしっぽドワーフちゃんたちも、わきゃわきゃと試食を楽しんでいる。

 中でも、サバの味噌煮缶詰が人気だね。かなりのご馳走な扱いだ。

 ……かなりバクバク食べているけど、それ試食だからね。


「こういうところでたべるのも、いいな~」

「たびのしょくじって、かんじがするわ!」

「ふぜいがあるな~」

「うめえ」

「ラーメンは、いいものだわ!」


 平原の五人衆も、その横でラーメンをすすっているね。おもきし旅を満喫している。完全に観光客だ。

 まあ、これからいろいろお仕事頼むだろうから、この世界を知ってもらうのは良い事かなと思う。

 この調子で、ドワーフィンでの観光を楽しんでもらいたい。


「タイシタイシ~」


 そうしてみんなを眺めていると、ハナちゃんがぽてぽてとこっちにやって来た。

 ほおずりから解放されたようだね。


「タイシ~、おにぎりもたべるです~」

「ハナちゃんありがと。……やけに巨大だね」

「がんばってつくったです~」


 やがて俺の前にやって来たハナちゃん、巨大なおにぎり? を差し出す。

 サッカーボールくらいの、大きさがあるでござるね……。

 ……。


 いただきまーす!


 ――思ってたよりずっと美味しい!

 適度な間隔で、色んな具が入っているじゃないか!

 ……あ、笹寿司と似ている。具の構成がそっくりだ。

 ひとつのおにぎり? で様々な味が楽しめる。


 俺は特に、笹寿司の具では魚の身をそぼろにしたやつが大好きなんだよ。

 これもきっちり入っていて、いくらでも食べられちゃうね!


「これ、すごく美味しくできてるよ。具の配置が繊細だね」

「うふ~。いろいろ、くふうしたですよ~」

「こういう単純なお料理を美味しく作れるのは、なかなかの腕前だよ。ハナちゃんすごいね!」

「うきゃ~」


 ここまで来たのだから、もう一段褒めてぐにゃらせておこう。


「お料理上手なお嫁さんって良いって聞くから、ハナちゃんばっちりだよ」

「ぐふ~、ぐふふ~」


 無事軟体となったハナちゃん、ご機嫌だね。

 これからもお料理、頑張って頂きたい。


「やっぱりこうなりましたね」

「おんなのこだもの」


 ハナちゃんがぐにゃったのを見て、ヤナさんとカナさんもほんわかだ。

 かわいいわが子が喜ぶ姿は、親から見るとたまらないのだろうな。


 そうしてハナちゃんを軟体化させて、ほのぼのしていると――。


「大志さん、こちらもどうぞ。特製のおにぎりです」


 ――ユキちゃんもおにぎりを持ってきた。

 ……特製?


「これ、特製の野沢菜おにぎりです。強化品ですね」

「ユキちゃんもありがと……強化品?」

「ええ、強くしてあります」

(ひかってる~)


 強化ってなにを? 謎の声は、光ってるとか言ってるよ?

 嫌な予感がするよ。


「ささ、どうぞ。どうぞどうぞ!」

「え、ええ……?」


 やや黒いオーラのユキちゃんに、強化品を手渡されてしまう。

 見た目はごくごく普通だな……。


「……」


 そしてユキちゃんは……きたいのまなざしで、俺を見つめるわけだ。

 これは……食べないといけない流れでござるね。


 ……。


 ――いざ! 参らん!


 あ、普通に美味しい。


 まずはやや酸っぱめに漬かった野沢菜の味が主張をするのだけど、それがかえってお米の甘さを引き立てている。

 そして野沢菜がもつ特有のさわやかな風味が、全体を引き締める。

 ただ酸っぱいだけではない、ただご飯が甘くなるだけではない。

 それらの味が一体となって、ひとつの料理を完成させている。


 ほかには浅漬け程度の野沢菜も混ぜてあって、シャキシャキした触感もきちんと演出してるね。

 これは見た目より、ずっと手が込んでいるぞ。


「それで大志さん、お味はいかがでしょう?」

「野沢菜の風味がしっかりしていて、美味しいね。ほのかな塩味が特に良いよ。なんだか手が込んでいる」

「……ですかね」


 ん? 妙に毛並みの良いユキちゃん、なにやら物足りない様子。

 素直な味の評価なんだけど、妙に毛並が良いユキちゃんにはお気に召さなかったかな?

 とくにハズした感想は言っていないと思うんだけどなあ……。


「う~ん、やっぱり効きが弱くなっているのかしら……?」


 何やら考え込んでしまった妙に毛並みの良いユキちゃんだけど、どうしたんだろうね?


 ……しかし不思議だなあ。なんだか、ふっさふさの耳としっぽがはっきり見えるようになったよ。

 なんというかこう……つやつやの毛並みがとっても魅力的だね!


「……目で追っているということは、効いている?」

「ん? どうしたの?」

「あ、こちらの話です」

「さようで」


 素晴らしい毛並みは、確かに目で追っちゃうね。

 ふさふさしっぽに、ブラッシングとかしたくなるよ。

 俺はブラッシングには、ちょっと自信があるんだ。


「う~ん、何かが腑に落ちない……」

「ユキ、どうしたです~?」


 しかし、妙に毛並みの良いユキちゃんは、なにやら腑に落ちない様子。

 片耳を立てて、しっぽがゆらゆらと揺れている。

 まあ、あんまり気にしないほうが良いと思うけどね。

 どのみち正体バレバレだから。


「しかし、見事な毛並みだ……」

「はえ?」


 おっと、ついこぼしてしまった。ユキちゃん、しっかり俺のつぶやきを拾っている。

 俺がユキちゃんの正体知っているって、気づかれてしまう。

 これはごまかさないといけない。


「いやいや、ユキちゃん見事な黒髪だなあって。つやつやしているよね」

「そ、そうですか。フフフ……やっぱり効いてるじゃない」


 簡単にごまかされてくれて、助かった。

 まあ、その白いケモミミとふさふさしっぽも見事だけどね。


「あや~……わるいおとなが、ふたりいるです~」

「はえ?」

「ん?」


 ――おっと、顔に出ていた。

 ハナちゃんがジト目で、俺と……妙に毛並みの良いユキちゃんを見ている。

 いや、ちがうんだよ。俺たちはあれだよ。

 あれなんだ。


魔女さん、強化の方向性が間違ってますよ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ