第八話 魅せようとしたら、視えちゃった
一番大きな会議場らしき建物に移動して、偉い人ドワーフちゃんに状況説明をした。
ちなみにドワーフちゃんにとっては広い会議場でも、生粋のちたま人(当社調べ)である俺のガタイだとわりとキツイでござる。
とまあ、それはそれとして。
「わきゃ~……おおごとになってるさ~」
「ですね。さしあたっては、居住区をどうしたら良いか、などの助言を頂けたらと思います」
「すめるところはたくさんあるから、いくつかのばしょを、みつくろっておくさ~」
「助かります」
会議自体は、泳ぎ組と船組を受け入れた実績があるだけに、結構とんとん拍子で進んでいる。
この湖は、まだまだ人が住める許容量があるようだ。
「まだまだくるなら、うちはおきたままでいるさ~」
「大丈夫ですか? 冬眠しなくても」
「こういうときにしごとをするのが、うちのやくめさ~」
「ご協力、まことに感謝いたします」
どうやら偉い人ドワーフちゃんは、冬眠をとりやめていろいろ采配をしてくれるようだ。
本当にありがたい。しっかりした人がトップにいてくれると、大勢の人が助かるね。
こういった人が大損しないように、こちらもしっかり支援しよう。
「いいひとだね! おだんごどうぞ! おだんご!」
「ありがとうさ~」
「たくさんあるよ! どうぞ! どうぞ!」
「あ、ありがとうさ~」
妖精さんたちも同じことを思ったのか、どしどしとお団子を贈呈しはじめる。
わりと沢山お団子が積み上げられたので、偉い人ドワーフちゃんは地味に驚いているね。
あとで、おやつとして食べて下さいだ。
ともあれ、大まかな話はまとまった。受け入れ体制は整えてもらえるし、受け入れ終了まで協力もしてくれる。
それじゃあ、次はこちらの支援の話をしよう。
「では、私どもは物資の支援や、協力して頂いたお礼の品などを提供致します」
「それは、うちらもたすかるさ~」
偉い人ドワーフちゃん、スピリタスをちらりと見た。あと、じゅるりとしている。
お礼の品は、こういうのが良いんだろうな。
どしどし持って来てあげよう。
「……でも、どうしてうちらに、そこまでしてくれるさ~?」
「それは、うちもおもったさ~」
「タイシさんは、そんばかりしてるさ~?」
……おや? 偉い人ドワーフちゃんや、お母さんドワーフ、それに緑しっぽちゃんが俺を見て聞いてきた。
いや、どうしてと言われても……。
「……ほっとけないから、ですかね」
「ほっとけない、さ~?」
「力を貸すことが可能な状況なのに、何もしなかったら……後で絶対後悔しますから。それに、みなさんと交流を持てることは、自分にとって損にはなりません」
「そういうものさ~?」
「そう言うものですね。こんな体験は、普通じゃ出来ません。それは素晴らしい事です」
「……」
エルフや妖精さん、それにドワーフちゃんたち。あとは面白神様や……わさわさちゃん。
それに謎の植物や面白動物たちもだね。
助けなければ、今の賑やかな村は無かった。交流は無かった。
お金や物はがんばれば手に入るけど、これらの交流は奇跡の賜物だ。
力を貸さない選択肢なんて、選ぶ理由が無い。
儲からなくたって、彼らがいてくれれば……それで良い。
幸せに暮らしてくれれば、もっと良いけど。
「……わかったさ~。うちもきょうりょくするから、がんばろうさ~!」
「ええ! みんなのお引越しを成功させて、この湖を賑やかにしましょうよ!」
「それは、いいかもさ~!」
「うちも、ちからになるさ~」
どうやら理解してもらえたようで、偉い人ドワーフちゃんはにっこり笑顔だ。
お母さんドワーフも緑しっぽちゃんも、わっきゃわきゃだね。
そうそう、前向きなのが良いよ。後ろを振り返るのは、ごくたまに、くらいがちょうどいい。
――ではでは、会議も意見もまとまったところで。
下で待っているみんなにも、結果を報告しないとね。
ついでに、持ってきたお土産を、偉い人ドワーフちゃんに確認もしてもらおう。
「では意見もまとまったところで、私たちが持ってきたお土産の確認をお願いできますか?」
「わきゃ? おみやげさ~?」
「この強いお酒の他にも、食べ物や道具を持ってきました。色々活用できると思います」
「それは、たのしみさ~!」
偉い人ドワーフちゃん、しっぽをぱたぱた振っているね。
お酒の匂いで飛び起きた程だから、スピリタスとかは気に入ってくれるだろう。
では早速無線で連絡して、これから降りることを伝えておくか。
「こちら大志、会議終了かつ当初目的達成。これより責任者と共に下に降り、贈答品の確認を行う。どうぞ」
『こちら高橋、了解した。物資を運んでおく。どうぞ』
それじゃあ下に降りて、偉い人ドワーフちゃんにお土産を見てもらおう。
喜んでくれると良いな。
◇
がんばって偉い人の仕事をしてくれるドワーフちゃんに、お土産の数々を見せてみる。
ぶっちゃけ賄賂とも言う。山吹色のお菓子的なアレだ。
「わきゃ~! ごちそうがたくさんさ~!」
「これは香りのよいお酒、これはめっちゃ強いお酒、これは――見たまんま光るお酒です」
「……さいごのやつ、だいじょうぶさ~? ひかるのは、あぶないかんじがするさ~」
おっと、エルフの謎発光リキュールにつっこみが入ったぞ。こっちでも、マーブル色に光るお酒は無いらしい。
心配そうな顔をする偉い人ドワーフちゃんを、安心させてあげよう。
「これを飲んだ約一名のみ、一晩ほど体がほのかに発光してました」
「……ふあんしか、ないさ~?」
より不安そうな顔になってしまった。何故だ……。
ちなみに光るようになったのは、マイスターだけである。
なぜ彼だけ、ほのかにシャイニングするようになったのかは……よくわからない。
食べ合わせがいけなかったのかな? マイスターは、結構その辺に生えていた謎草とか食べているからね。
「わきゃ! これはもしかして、きちょうなたべものさ~?」
「あ、その食品は、私たちは味噌と呼んでいます」
「たくさんあるさ~!」
魅惑の光っちゃうエルフ酒はさておき、そのほかの食品に偉い人ドワーフちゃんはわっきゃわきゃだ。
喜んでもらえたようで、ひと安心だね。
「これはみんなも、よろこぶさ~」
そうして大量の賄賂を眺めて、偉い人ドワーフちゃんはしっぽをぱたぱた振る。
みんなで分けちゃうつもりだね。ひとりじめしない、良い人だ。
こういう性格だから、責任者になっているのかと思う。
まあこの物資は、ご自由にお使いくださいだね。
「ちなみにこれも、たべものさ~? なんか、ぐにぐにしているさ~?」
あ、ゴムボートの説明もしないといけない。
「これは船の形をした風船で、水に浮かべて船代わりに使えます。そちらに、膨らませたのがありますよ」
「わきゃ! そんなことできるさ~!?」
「出来ちゃうんですよ、これが」
まあ、強度のあるゴムを量産して縫製しないといけないから、簡単には出来ないけど。
なんだかんだで、これはちたま化学工業技術の結晶でもある。けっこう凄いやつなのだ。
だからおいそれと真似は出来ないだろうけど、素材や加工技術を知らなくたって、使う分には別に問題はないよね。
どういった用途に使うのが良いかは提案しておこう。
「これは公共財という形で運用して、船がなくて困っている家庭に貸し出すのが良いと思います」
「ちいさなおうちは、おおだすかりさ~」
「穴が空いて空気が漏れる事もありますので、補修方法も教えます」
「しっかりきいておくさ~」
そうしてお土産を偉い人ドワーフちゃんへ譲り、本日予定していたお仕事は全て終了した。
お次は、お引越し組の方々だね。
色々困っているらしいから、ひとまず食糧は提供しておこう。
「それと、こちらの食糧は冬眠できていない方に提供します」
「わきゃ~! たすかるさ~!」
「でもこれ、どうやってたべるさ~?」
「なぞの、たべものさ~?」
アルファ化米、サバの水煮と味噌煮缶詰、それにチキン的なラーメンだ。
みそラーメンはうかつに調理すると、周囲の冬眠を強制解除してしまうので自粛した。
申し訳ないけど、そこはちょっと我慢してくださいだね。
とりあえず、まずはお湯で戻す系を説明しようか。
「これらの食糧は、基本的にお湯を注いで少々待つだけで食べられます」
「まつのは、どれくらいさ~?」
「この砂時計で計測できます。こちらは一回落ちるまで、こちらは二回くらいですね」
「わきゃ! これはべんりさ~」
お湯で戻す系の保存食は、これで説明できたかな?
あとは……缶詰か。
「こっちのは缶詰と言いまして、お魚を煮込んだお料理が、金属の容器に密閉されています」
「わきゃ! このカンヅメってやつ……てつ! てつでつくられているさ~!」
「きちょうひんさ~!」
あ、驚くところはそこなのね。鉄を使っているという点に、みなさんびっくりまなこだ。
まあこの世界は全体的に川が流れているから、鉄鉱床は出来辛いよね。
あれは酸素たっぷりの海が無いと、成立するのが難しい。
こっちだと川の流れで酸化鉄が大規模に堆積できず、流されてしまう。
となると鉄を得るには、砂鉄集めが必要なわけで。
これは非効率で、量も集めにくい。鉄が貴重な理由は、こんなところだろうな。
「自分たちのところは鉄が一番豊富なので、よく利用されていますね」
「うらやましいさ~」
「てつは、かこうがらくさ~」
ちたまの鉄製品をみると、しっぽドワーフちゃんたちは大体うらやましがる。
……鉄を輸出品として交易したら、どっちも儲かるような気がしなくもない。
ただ鉄は重いので、今は商売できるような物量を輸送する余裕はないか。
いずれすべてが解決したら、鉄を商品として貿易するのも良いかもしれない。
でもそれは、まだまだ先の話だね。
さて、先々の事はまた考えるとして、これからどうしようか。
大体の仕事は終わったから、あとは帰るだけなんだけど。
みんなに意見を聞いてみよう。
「大体お仕事は終わったけど、これからどうする?」
「タイシ~、せっかくだから、このたべもののたべかた、じつえんするのがいいです?」
「この食べ物と言うと、ラーメンとか缶詰の?」
「あい~。それでいっしょにたべながら、おはなしするです~」
あ~、まあそうだな。実際に目の前で作ってみて、食べてみる。それは大事かも。
あとは試食会をしながら雑談でもして、友好を深めるのは良い案だ。
そこで好みや苦手な物が分かれば、より効率的な援助物資の選択ができる。
さらにもっと仲良くもなれるので、一石二鳥だよね。
「じゃあハナちゃんの案を採用しちゃうよ。保存食の試食会を開こう」
「わーい! ししょくかいです~!」
(おそなえもの~!)
案が採用されたハナちゃん、キャッキャと大喜びだ。
そして神輿もキャッキャしている。
楽しい試食会になりそうだね。
◇
ハナちゃんの案で始まった試食会は、和気藹々な雰囲気で進んでいく。
あと今回みそラーメンは封印してあるので、ガンガン調理しても冬眠ドワーフちゃん大量起床事件にはなっていない。
よかったよかった。
……味噌汁も危険だから、うかつに野外で食べないように言っておかないと。
「あの、この味噌系統は香りでみんな冬眠から覚めてしまうので、扱いには気をつけてください」
「わかったさ~」
「かざしもで、たべるさ~」
「この缶詰は、暖めなければにおいは拡散しないので、まあ大丈夫です」
「なるほどさ~」
そうして一通り理解して貰ったところで、ちまちまとインスタント食品をつまんでいくと……。
「おねえさん、これとかおいしいです~、おすすめです~」
あっちでハナちゃんが、インスタントかに玉ぞうすいを偉い人ドワーフちゃんにお勧めしていた。
そうそう、それおすすめなんだよ。小腹が空いたときに、マグカップで啜れるのが良いんだよね。
「……わきゃ? おねえさんって、うちのことさ~?」
しかし、偉い人ドワーフちゃんは別のことに気をとられた。
ハナちゃんに「お姉さん」と言われ、しゅばっと顔を向けたね。
「あい~、おねえさんです~」
ハナちゃん、特に何の含みもなくキャッキャと返事をする。
まあ、ハナちゃんから見たらお姉さんに見えるよね。
俺から見たら、高校生くらいの子に見えるけど。
とまあ、そんなほのぼの交流をみてほくほくしていたら――。
「わきゃ~! うちのことを『おねえさん』だなんて、いいこさ~!」
「あややややや」
――偉い人ドワーフちゃんは、ハナちゃんを抱えてほおずりしはじめた。
お姉さんと呼ばれたのが、とっても嬉しかったようだ。
あの喜び方は……うちのお袋が「お姉さん」と呼ばれた時のソレにそっくりだ。
たぶん、「お姉さん」て年齢じゃあないんだろうな……。
「うちも、まだまだいけるさ~!」
「あやややややや……」
にっこにこでハナちゃんにほおずりする、偉い人ドワーフちゃん。
……そっとしておこう。
さてさて、他の子たちはどうかな?
「わきゃ~! このおさかな、おいしいさ~! ごちそうさ~!」
「この、ごはんってのとたべると、いっそうおいしいさ~!」
「ラーメンてのは、つくるのがらくでいいさ~」
ほかのしっぽドワーフちゃんたちも、わきゃわきゃと試食を楽しんでいる。
中でも、サバの味噌煮缶詰が人気だね。かなりのご馳走な扱いだ。
……かなりバクバク食べているけど、それ試食だからね。
「こういうところでたべるのも、いいな~」
「たびのしょくじって、かんじがするわ!」
「ふぜいがあるな~」
「うめえ」
「ラーメンは、いいものだわ!」
平原の五人衆も、その横でラーメンをすすっているね。おもきし旅を満喫している。完全に観光客だ。
まあ、これからいろいろお仕事頼むだろうから、この世界を知ってもらうのは良い事かなと思う。
この調子で、ドワーフィンでの観光を楽しんでもらいたい。
「タイシタイシ~」
そうしてみんなを眺めていると、ハナちゃんがぽてぽてとこっちにやって来た。
ほおずりから解放されたようだね。
「タイシ~、おにぎりもたべるです~」
「ハナちゃんありがと。……やけに巨大だね」
「がんばってつくったです~」
やがて俺の前にやって来たハナちゃん、巨大なおにぎり? を差し出す。
サッカーボールくらいの、大きさがあるでござるね……。
……。
いただきまーす!
――思ってたよりずっと美味しい!
適度な間隔で、色んな具が入っているじゃないか!
……あ、笹寿司と似ている。具の構成がそっくりだ。
ひとつのおにぎり? で様々な味が楽しめる。
俺は特に、笹寿司の具では魚の身をそぼろにしたやつが大好きなんだよ。
これもきっちり入っていて、いくらでも食べられちゃうね!
「これ、すごく美味しくできてるよ。具の配置が繊細だね」
「うふ~。いろいろ、くふうしたですよ~」
「こういう単純なお料理を美味しく作れるのは、なかなかの腕前だよ。ハナちゃんすごいね!」
「うきゃ~」
ここまで来たのだから、もう一段褒めてぐにゃらせておこう。
「お料理上手なお嫁さんって良いって聞くから、ハナちゃんばっちりだよ」
「ぐふ~、ぐふふ~」
無事軟体となったハナちゃん、ご機嫌だね。
これからもお料理、頑張って頂きたい。
「やっぱりこうなりましたね」
「おんなのこだもの」
ハナちゃんがぐにゃったのを見て、ヤナさんとカナさんもほんわかだ。
かわいいわが子が喜ぶ姿は、親から見るとたまらないのだろうな。
そうしてハナちゃんを軟体化させて、ほのぼのしていると――。
「大志さん、こちらもどうぞ。特製のおにぎりです」
――ユキちゃんもおにぎりを持ってきた。
……特製?
「これ、特製の野沢菜おにぎりです。強化品ですね」
「ユキちゃんもありがと……強化品?」
「ええ、強くしてあります」
(ひかってる~)
強化ってなにを? 謎の声は、光ってるとか言ってるよ?
嫌な予感がするよ。
「ささ、どうぞ。どうぞどうぞ!」
「え、ええ……?」
やや黒いオーラのユキちゃんに、強化品を手渡されてしまう。
見た目はごくごく普通だな……。
「……」
そしてユキちゃんは……きたいのまなざしで、俺を見つめるわけだ。
これは……食べないといけない流れでござるね。
……。
――いざ! 参らん!
あ、普通に美味しい。
まずはやや酸っぱめに漬かった野沢菜の味が主張をするのだけど、それがかえってお米の甘さを引き立てている。
そして野沢菜がもつ特有のさわやかな風味が、全体を引き締める。
ただ酸っぱいだけではない、ただご飯が甘くなるだけではない。
それらの味が一体となって、ひとつの料理を完成させている。
ほかには浅漬け程度の野沢菜も混ぜてあって、シャキシャキした触感もきちんと演出してるね。
これは見た目より、ずっと手が込んでいるぞ。
「それで大志さん、お味はいかがでしょう?」
「野沢菜の風味がしっかりしていて、美味しいね。ほのかな塩味が特に良いよ。なんだか手が込んでいる」
「……ですかね」
ん? 妙に毛並みの良いユキちゃん、なにやら物足りない様子。
素直な味の評価なんだけど、妙に毛並が良いユキちゃんにはお気に召さなかったかな?
とくにハズした感想は言っていないと思うんだけどなあ……。
「う~ん、やっぱり効きが弱くなっているのかしら……?」
何やら考え込んでしまった妙に毛並みの良いユキちゃんだけど、どうしたんだろうね?
……しかし不思議だなあ。なんだか、ふっさふさの耳としっぽがはっきり見えるようになったよ。
なんというかこう……つやつやの毛並みがとっても魅力的だね!
「……目で追っているということは、効いている?」
「ん? どうしたの?」
「あ、こちらの話です」
「さようで」
素晴らしい毛並みは、確かに目で追っちゃうね。
ふさふさしっぽに、ブラッシングとかしたくなるよ。
俺はブラッシングには、ちょっと自信があるんだ。
「う~ん、何かが腑に落ちない……」
「ユキ、どうしたです~?」
しかし、妙に毛並みの良いユキちゃんは、なにやら腑に落ちない様子。
片耳を立てて、しっぽがゆらゆらと揺れている。
まあ、あんまり気にしないほうが良いと思うけどね。
どのみち正体バレバレだから。
「しかし、見事な毛並みだ……」
「はえ?」
おっと、ついこぼしてしまった。ユキちゃん、しっかり俺のつぶやきを拾っている。
俺がユキちゃんの正体知っているって、気づかれてしまう。
これはごまかさないといけない。
「いやいや、ユキちゃん見事な黒髪だなあって。つやつやしているよね」
「そ、そうですか。フフフ……やっぱり効いてるじゃない」
簡単にごまかされてくれて、助かった。
まあ、その白いケモミミとふさふさしっぽも見事だけどね。
「あや~……わるいおとなが、ふたりいるです~」
「はえ?」
「ん?」
――おっと、顔に出ていた。
ハナちゃんがジト目で、俺と……妙に毛並みの良いユキちゃんを見ている。
いや、ちがうんだよ。俺たちはあれだよ。
あれなんだ。
魔女さん、強化の方向性が間違ってますよ




