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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十七章 王の力
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第六話 夜の大河


 八十数名のしっぽドワーフちゃんたちを発見し、湖畔リゾートへと招待した。


「わきゃ~、おさかなたくさんさ~」

「あかるくなったりくらくなったり、いそがしいところさ~」

「まいにちひなたぼっこできて、いいかもさ~」


 やってきたみなさん、惑星の環境に戸惑いつつも、魚を獲ったり日向ぼっこしたりでのんびり過ごしている。

 ひとまずは、こうして過ごしてもらえば良いね。


 あとは物資補給と道具を用意し、準備が整ったら隣の湖まで送っていく事になる。

 そのため、今度はどうやって送り届けるかの打ち合わせをすることにした。


「今の所、上手くいっているようですね」

「ええ、なんとか。村の様子はどうですか?」

「ぼちぼち、田んぼを耕しています」


 救助の状況を村のみんなに報告して、ヤナさんから村の状態も聞いておく。

 今の所、ぼちぼちと田んぼを作っているようだ。


「おれも、じかんができたらてつだおうかな」

「ようせいさんがとぶようすとか、すてきそう」

「ようせいさんのおうち、たくさんつくってるのだ」


 村のエルフたちも、話を聞いてほっと一安心なご様子。

 時間が空いたら手伝って貰えそうなので、遠慮なくお手伝いしてもらっちゃいますよ。

 ……そしておっちゃんエルフ、なぜか妖精さんハウスを並べ始めた。

 いつの間に、そんなに量産したの……。


 とまあ、近況を報告しあったところで。

 次は引っ越しについての話をしよう。救助した方々を、新天地へと送り届けないといけないからね。


 ――ということで、まずはあの洞窟か隣の湖までの、距離感をつかんでおこう。

 お母さんドワーフに聞けば、大体わかるかな?


「ねえ、あの洞窟から隣の湖まで、船で行くとどれくらいかかるの?」

「だいたい、いっかいはねむるひつようがあるさ~」

「二回は必要ないって感じかな?」

「そのくらいさ~」


 まあ、一日半と見積もっておこう。

 船だと、割と簡単にいける距離かなという印象だ。

 じゃあイカダはどうだろうか。みんな相当苦労したようだけど。


「ちなみに、イカダで移動するとどれくらいかかるの?」

「ごかいほど、ねむるひつようがあるさ~」

「そんなにかかっちゃうんだ」

「イカダじゃ、あるくていどのはやさしか、でないさ~」

「なるほど」


 歩く程度の早さ……時速三キロとしておこう。

 そしてイカダを押し続ける必要があるので、どれほどがんばっても一日五時間も移動できればよいほうかと思う。

 とすれば、移動に五日かかるわけだから、単純計算で七十五キロ程度の距離があると概算できるね。

 隣の湖までは約八十キロあると見積もっておこう。


「今の話から、移動距離はざっくり八十キロって感じかと思う」

「あの洞窟まで来た話と総合すると、湖同士は二百キロ程度離れているようだな」

「それっぽいね」


 高橋さんは湖間の距離を概算してくれたけど、おおむね俺も同じ意見だね。

 これだけの距離を、イカダを押して移動するのは、そりゃあ無理がある。

 それは承知で引越しを試みたのだから、しっぽドワーフちゃんたちがどれほど切羽詰っていたか、だね。


「ドワーフさんたちは、結構良い所までは到達できてたのですね」

「あと二日半も耐えられれば、灰化した領域を脱出できていたかも」

「ただ、その『あと二日半』が、大きな壁という感じはしますね」


 ユキちゃんの言う通り、イカダ組だってかなり頑張っているのがわかる。

 しかし元々無理をしてきたため、「あと二日半」を乗り越えることが出来なかった。

 そんな感じがする。


 まあとりあえず、これで大体の距離感はつかめたか。

 船がありさえすれば、確かに引っ越し自体は無理ではない。

 乗り物の差が、命運を分けたって事だね。


「なあ大志、隣まで八十キロってことは……海竜なら軽く流しても二時間かからねえぞ」

「距離的にはそうだね」


 海竜が広い海で本気を出せば、五十ノット以上、つまり時速百キロメートルよりもっと速く泳ぐことができる。

 ちたまのイルカより速い生き物だ。

 あの巨体でなんでこれほど速度が出せるのかは、良くわからないけど。

 それと体が小さい子供海竜の場合は、さらに速い。

 おそらく、圧倒的スピードで捕食者を振り切る戦略なのかと思う。

 大きくなるとその必要がなくなるので、水の抵抗で速度が落ちても問題なくなるんだろうな。


 ただ……しっぽドワーフちゃん世界の川で泳ぐ場合は、そんなに速度は出せないと思うけど。

 川が曲がりくねっているから、五十ノットの速度じゃ危ない。


「ぼちぼち二十ノットくらいで流して、二時間って感じだよね?」

「そうそう、それでも原付よか早いぜ」


 二十ノットでも相当速いけど、川幅はどうなんだろうか。

 これもお母さんドワーフに聞いてみよう。


「ねえ、隣の湖までの川幅と水深は、極端に狭くなったり浅くなったりする所あったりする?」

「ないさ~。ずっとずっと、おおきくてふかいかわが、つづくさ~」

「なるほど、それは助かる」


 それなら、二十ノットの安全運転で行けば事故の心配はないね。

 お隣の湖へお引越しするのは、思ったより簡単そうだ。

 冬眠しっぽドワーフちゃんを見つけて、あの洞窟の所まで連れてこれさえすれば、あとの心配はほぼ無いと判断できる。

 それなら他にも海竜を沢山連れて来てしまえば、引っ越しはガンガン進められるな。

 上手くすれば、一日に五百人を引っ越しさせることも可能かと思う。


「それじゃあ、一気にみんなを送る計画にしようか」

「だな。そこからまた反省会をして、次はもっと大規模に行こう」


 準備が整うまでは、避難民ドワーフちゃんたちに異世界観光でもしてもらうとして。

 こっちはこっちで、物資の調達や海竜スカウトをやっておこう。

 さてさて、忙しくなる――。


「タイシ、タイシ」


 ――おや? ハナちゃんがクイクイと服の裾を引っ張った。

 どうしたのかな?


「ハナちゃん、どうしたの?」

「あや~、おひっこしさきに、あいさつしたほうがいいです?」

「挨拶?」

「あい。いきなりおおぜいきたら、あっちもびっくりしちゃうです?」


 ――あ。

 たしかにそうだ。送り届ける事ばかり考えていたけど、受け入れる側もあるわけで。

 ただお引越しさせて良かった良かった、では片手落ちだ。

 なるほど、ハナちゃん良い意見を出してくれた。


「たしかにハナちゃんの言う通りだね。お引越し先に、話は通す必要があるよ」

「あい~、おはなし、しておくのがいいです~」

「そうですね、挨拶はしておいた方が良いと思います」


 受け入れる側の事を考えたた、ハナちゃんらしい優しい考えだ。

 ちょっと救助にばかり頭が言っていて、気づかなかったよ。

 ユキちゃんもうんうんと頷いているから、同じ意見だね。


「ハナちゃんありがとうね~、大事なことだったよ。それ」

「うふ~」

「あ、私も撫でちゃいますよ」

「うふふ~、うふふ~」


 ユキちゃんと一緒にハナちゃんの頭をなでなでしてあげると、うふうふとご機嫌になった。

 エルフ耳もへにょっと垂れて、たれ耳ハナちゃんだ。


「大志、挨拶しに行くなら早い方が良いぜ」

「そうだね。二時間から三時間で行けるのだから、明日挨拶しにいこうか」


 高橋さんからも意見が出たけど、早い方が良いよね。

 俺も同意見なので、もう明日行動することにしよう。

 あ、でも今は冬眠中だっけ。そこんところ、どうしよう。

 お母さんドワーフに聞いてみるか。


「ねえ、みんな冬眠中かと思うけど、起こしちゃって大丈夫?」

「たべものをわたせば、もんだいないさ~」


 冬眠から起こす場合は、食べ物を渡す必要があると。

 問題ないと言っている感じから、渡さないと問題があるって事だよね。

 詳しく聞いててみよう。


「食べ物を渡す必要があるのは、なぜ?」

「おきているとおなかがへるから、はなしをするならひつようさ~」

「なるほど、こちらの都合で冬眠から覚ますのだから、その分補填してあげるって事だね」

「そうさ~」


 言われてみればそうだね。こっちの都合で冬眠から覚めてもらうのに、何にもなしじゃかわいそうだ。

 カロリー消費を抑えるための冬眠なのだから、起こすのならばそれだけの補償は必要だ。

 ……あんまり大勢、起こさないようにしよう。

 みそラーメンの香りとか漂わせたら、かなり危ない。

 ピンポイントで起こせるような方法を、考えておこう。


 さてさて、これで大体話はまとまったかな。

 それじゃあ、次は参加メンバーだ。立候補してもらおう。


「では参加者を募集するけど、希望者は手を挙げて」

「俺は行くぜ」

「私も行きますよ」

「うちもいくさ~」


 高橋さんとユキちゃん、あとお母さんドワーフが手をあげた。まあこの辺は必須メンバーだね。


「うちらがひっこすのだから、あいさつにいくさ~」

「かおあわせ、するさ~」


 今回来てもらった、黄色しっぽドワーフちゃんたちも参加だね。

 まあ、自分の引っ越し先なのだから、挨拶はしておきたいだろう。


「はいはい! おれもいきたじゃん!」

「あ、わたしも」


 おや? マイスターとステキさんも手をあげたぞ?


「タイシタイシ~、ハナもいきたいです~」

「私もよろしいでしょうか」

「あ、ならわたしも」

(さんか、きぼう~)


 あれあれ? ハナちゃんとヤナさん、そしてカナさんも手をあげた。

 そして神輿もほよほよ飛んで来る。謎の声からすると、参加希望のようだけど。


「たび! たびがしたいです!」

「しらないところ、いきたいな~」

「みちのせかい!」

「ああああたびがしたいいいい」

「あにめはがまんします!」


 あっれ~? 平原の焼き物五人衆も手をあげちゃった……。


「わたしもいくね! いくね!」

「おだんごもっていくよ! いくよ!」

「おつきあい~」


 サクラちゃん、イトカワちゃん、アゲハちゃんも参加だ。

 なんだか、大所帯になってないかな?

 この人数で行けるか、高橋さんに確認しよう。


「高橋さん、大丈夫?」

「あ~、まあ何とかなるだろ。海竜二頭で、八人乗りゴムボートを引っ張っていけば良い」

「それと、お土産も沢山持って行きたいな」

「じゃあ、海竜を一頭スカウトしてきて、荷物を運んでもらおう」

「その辺は任せたよ」


 どうにかなるっぽいので、一安心だ。

 それじゃあ、なんだか大勢になってしまったけど。


 お隣の湖に――挨拶しに行こう!



 ◇



 翌日、参加者全員でしっぽドワーフちゃん世界に訪れる。

 というかこの世界、エルフィンの衛星であることはもうわかっている。

 便宜的に、衛星ドワーフィンと名付けることにした。


 そんなわけで、これからドワーフィンの川をたどって、隣の湖までご挨拶に行くわけだ。

 行くわけなんだけど……。


「うおおお! みたこともないしょくぶつ、たくさんあるじゃん!」

「はいいろになってるとか、ふるえる」


 マイスター大はしゃぎ、ステキさんぷるぷる。

 しかし、二人ともなんだか楽しそうだ。


「わー! みたこともないせかい!」

「たび! たびをするわよ!」

「ああああああ」

「このつち、なかなかやきものによさそうよ!」

「あにめは、よやくろくがしてもらいました」


 特に平原の焼き物五人衆のテンションが凄い。叫んでいる。

 あと、あにめさんは結局アニメ我慢できなかったので、予約録画しときました。

 帰ってきてから見ましょうね。


「タイシタイシ~、おにぎりたくさん、つくったです~」

「ハナ、良く出来てるよ。美味しいね」

「あら、いいできじゃない」

(おそなえもの~)


 そしてハナちゃんはお弁当を沢山作ってくれたようだ。もう食べているけど。

 早弁ハナちゃんだね。あとヤナさんとカナさんも食べている。

 一家そろって、早弁エルフである。

 神輿もおにぎりをもぐもぐ食べているわで、出発前から食欲全開のグループであった。


「おにぎりっておだんご? おだんご!」

「つぶつぶおだんご? つぶつぶ?」

「このあかいの、すっぱい~」


 妖精さんたちもおにぎりを貰って、絶賛早弁中。

 ただ、おにぎりをお団子にカテゴライズするかどうかでは、迷っているみたい。

 今まで粉物ばかり扱ってきたからかな?

 まあその分類方法は、妖精さんたちにお任せするとしよう。


 あと、アゲハちゃんが具のうめぼしに到達し、すっぱ顔になっている。

 梅干しだけ食べたら、そりゃ酸っぱいよね。

 ご飯と一緒に、お召し上がりくださいだ。


「わきゃ~、あいさつ、きちんとするさ~」

「がんばるさ~」

「きんちょうするさ~」


 しっぽドワーフちゃんたちだけ、当初の目的を覚えているね。

 今回の挨拶は、君たちにかかっている。

 他の方々は、あんまりアテにしないでほしい。観光客だからね。


 でもまあ。緊張しっぱなしで行くよりは、こんな賑やかな雰囲気の方が良いのかも。

 俺たちのノリも隣の湖に住むしっぽドワーフちゃんたちに伝わるだろうから、これはこれでよろしいと思う。

 演出ゼロの、素の俺たちが分かるのではないだろうか。


 とまあ、なんだか賑やかになっちゃったけど、そろそろ出発しよう。

 空を飛べる妖精さんたちを除いて、みんなちゃんとライフジャケットもつけている。

 ちなみに神輿は木製なので、なんにもしなくても普通に水に浮きます。

 というわけで、準備はオーケーだね。


「それじゃみんな、出発しよう!」

「「「おー!」」」

(おでかけ~)


 はてさて、無事に隣の湖へたどり着けるのか。

 片道三時間、日帰り旅行になる。無事目的を果たせると、良いな。



 ◇



「がうが~う」

「が~う」

「が~うがう」


 三頭の海竜たちが、ゴムボートやイカダを引っ張っていく。

 モーターボートで移動するかの如く早いので、乗っていて結構楽しい。

 そして、ボートを上手く引っ張ってくれているおかげで、それほど揺れない。

 なかなか優秀な泳ぎをしてくれるね。


「が~う」

「――!」


 そしてときたまエコーロケーションを使って位置を確かめたりし、順調に川を進んでくれる。

 どうやら、遡上しているようだ。


「このかわをたどれば、おとなりさ~」

「はやいさ~」

「ごむぼーと、いいものさ~」


 道案内をしてくれるしっぽドワーフちゃんたちは、わきゃわきゃと楽しそうだ。

 ゴムボート乗り心地も問題ないようで、興味深そうにぽむぽむと叩いたりしている。


「タイシ~、おにぎりたべるです~」

「ありがとハナちゃん、頂くよ」

「どうぞです~」

(おそなえもの~)

「かみさまも、どうぞです~」

(わーい!)


 こっちのボートは、ハナちゃん一家としっぽドワーフちゃん三人、あとは俺とユキちゃん、そして神輿が乗っている。

 みんなでわいわいと、おにぎりタイムだ。

 でもハナちゃんたちは、さっきおにぎり食べたばかりだよね?


 ……とまあ、こっちのボートは賑やかだ。

 お隣のボートはどうだろうか? 無線で確認してみよう。


「こちら大志、こちらは問題なし。そちらの様子はどうか。どうぞ」

『こちら高橋、こちらも問題なし。全員大はしゃぎだ。どうぞ』


 大声を出せば聞こえる距離だけど、聞き間違いがあると怖いので無線を使う。

 あっちのボートも賑やかなようで、確かにキャッキャしている様子が見て取れる。

 どちらも順調、問題なしだね。


「こっちをまっすぐだね! まっすぐ!」

「あっちのほうから、おはなのにおいがするよ! おはなのにおい!」

「ぼちぼちいきましょ~」


 妖精さんたちは、こっちのボートとあっちのボートをひらひらと行き来する。

 たまに俺やハナちゃんの肩にとまって休憩したりと、自由気ままだ。

 あと神輿と一緒にキラキラ光るので、明るくて良い。

 なんにせよ、全員和気あいあいとした感じだね。


 まあ、今日はお隣の湖にご挨拶に行くお仕事だから、切羽詰ったものもない。

 このままみんなで楽しく、目的地を目指そう。

 今は夜だけど、明るいお月様――フェアリンに照らされているおかげか、ちたまが満月のときより明るい。

 気温はちょっと寒いから、厚着は必要だけど。


 とまあ楽しく大河を進んでいって、一時間程したときのこと――。


「タイシ、タイシ。なんだか、あったかいです?」

「あ! 大志さん! 灰化していない木が見えてきましたよ!」


 ――目に見えて、環境に変化が現れた。

 ハナちゃんは気温の変化に気づき、ユキちゃんは秘密の目で植生の変化を発見する。


「わきゃ~、みずもあったかくなったさ~」


 お母さんドワーフも、川にしっぽを漬けて水温確認だ。

 どうやらこの辺が、灰化現象が終わる境界のようだ。


 これはつまり――お隣の湖が支配する領域に突入した、という事かな?


「ここはもう、お隣って事かもね」

「そうかもです~」

「わきゃ~、すごくはやいさ~」

「おはながさいてるね! おはな!」


 灰色の世界から――生命溢れる密林の世界へ。

 あまりの変貌に、あっけにとられてしまう。

 しっぽドワーフちゃんたちの湖とその周辺は、本来こんなにも賑やかな場所だったということか。


「うわー! なんかすげえな~」

「おはながたくさんとか、すてき」


 この風景を見たマイスターとステキさんのペアは、隣のボートでキャッキャしているね。

 こっちまで声が聞こえてくるあたり、かなりはしゃいでるようだ。

 一緒に乗っている平原の人たちはどうかな?


「しらないせかい!」

「わくわくする~!」

「あああああああ!」

「しゃしんとるぜ!」

「あにめっぽいふうけい!」


 同じく、キャッキャと大はしゃぎしている。声の大きさから、興奮度合いがわかるね。

 こういった南米のアマゾン流域にあるジャングルみたいな風景は、エルフの森にはないからかな。

 ちたまでにょきにょきしたあの森しかしらないけど、あっちはもっと穏やかな感じだ。

 さすがに森の中にこれほどの大河は、存在しないのだろう。


「がう」

「がううがう」

「――!」


 環境が変わって一気に盛り上がる一同を乗せて、海竜たちはどんどん泳いでいく。

 荷物を運搬している子はまめにエコーロケーションを行い、イカダが座礁しないよう気を付けているね。

 賢い子で、こちらは大助かりだ。あとでご褒美をあげておこう。


 なかなか良いペースなので、あと一時間ちょっとで到着するはずだ。

 この調子で、どんどん進もう!



 ◇



 楽しく大河を移動すること、一時間半。

 そろそろお隣の湖が見えてくるかな? と思っていた時のこと。


「――! ……がう?」

「がうがう?」

「が~う」


 海竜たちが……泳ぐ速度を落とし始めた。

 どうしたんだろう――。


『こちら高橋、海竜が水上に何かを発見した。現在接近中。どうぞ』


 ――と思ったところで、高橋さんから無線連絡が入った。


 ……水上に何かを発見した? しかも接近中とな。

 これはもしかして……ファーストコンタクト、になるかもしれない。

 もうちょっと情報を集めて、どう行動するか検討しよう。


 さてさて、これからお仕事が始まるかもだ。

 いっちょ、頑張りましょうかね!



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