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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十六章 当たり前すぎて、気づかなかったこと
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第十六話 それは、まだ終わっていなかったということ


 ここはとある世界の、とある空間。

 今年も、入守(いりす)家の祭事は無事終了しました。


 みんなで騒いで元気な様子を見せてくれて。

 しっぽドワーフちゃんたちも、これから前に進もうと思えるくらい……素敵な思いでとなったようで。

 楽しいお祭り、しっかりと眺めさせて貰いました。

 とっても良いお祭りで、こちらも力を貰えました。


 ……しかし、今年のお供え物はいつも通り豪華ですね。

 特にこの、大志が選んだお酒はなかなか……。

 食べきれない量のごちそう、毎年ありがとうございます。

 まあ、全部食べるのですけど。


 こんな身になってしまうと、お供え物がとってもありがたいです。

 ……別に、祭事の時だけじゃ無くて毎日でも良いんですけど。

 その辺伝えるの忘れたのは、失敗だったかなあ……。


 とまあ、それはそれとして。

 祭事は無事終わりましたが、大志はまだ気づいていませんね。


 神輿が翻訳したあの祝詞に――大事な、大事な一文があったのですけど……。


 その辺、早く気づいた方が良いですよ。

 一つ、当たり前のことが起きていないのです。

 ずっと続けてきた祭事は、ただそれだけを伝えるための、物なのですから。


 さあ大志、いつ気づくかな?

 もうあんまり、時間は残されていませんよ?


 …………。


 ――あとなんだか、大志が妙に可愛いのですけど……。

 なんだか妙に可愛く見えるのです。不思議ですね。

 大志、妙に可愛いよ~。



 ◇



 ……妙な寒気がする。

 今日は春真っ盛りのぽかぽか陽気なんだけど、ほんと妙な寒気が……。

 もしかして、オバケに憑りつかれている……?


 …………。


 ま、まあ気にしないことにしよう。

 多分気のせいだ。そう、オバケなんていないのだ。そうに違いない。


 ――さて、気を取り直して。


 祭りも無事終わって、日常がやって来た。

 これから米作りに野菜作りに電源設備設置に、しっぽドワーフちゃんの自立支援に。

 お仕事目白押しで、むっちゃくちゃ忙しくなる。その辺は同時並行でやっていく予定だ。

 俺一人だと無理だけど、幸いなことに今はとっても人手がある。

 爺ちゃん婆ちゃん、親父やお袋に手伝ってもらう手はずは整えてあるので、まあなんとかなるだろう。


「それじゃ大志、俺は電源設備を作るけど、資材の調達は頼んだぞ」

「わかった」


 親父には、当初予定していた電源設備を作ってもらう。

 これが出来れば、村を多少は電化できる。

 ……まあ、電気が全部エルフのまろやか電気おやつになる可能性もあるけど……。


「俺の方は、農業指導で良いんだよな?」

「うん。爺ちゃん婆ちゃん、よろしく頼んだ」

「任せてねえ」


 爺ちゃん婆ちゃんには、農業指導というか米作りの監督役をお願いだ。

 今年はエルフ米の栽培とかもするので、苗から育てて行く。

 作付け面積も倍にするので、備蓄分も考慮すると……村の人口が三倍まで増えても、対応可能となる計画だ。

 ……三倍で足りるよね? 足りるはず。足りたら良いなあ……。


「私は、佐渡でしばらくあの人たちのサポートをするわね」

「よろしくおねがいします」

「おせわになります~」


 お袋は、親父に替わって佐渡で平原の人たちのサポート役となる。

 しばらく様子を見て、問題ないようなら今度はサポート無しにする予定だ。

 平原の人たちだけで、佐渡での研修が出来ると最終判断する役目だね。

 ついでに佐渡の民俗史を調べるそうで、佐渡に流れ着いた粛慎(みしはせ)人の謎に迫りたいとかなんとか……。

 そっちはついでだからね。ついで。

 あくまで平原の焼き物研修生たちのサポートだからね。

 ……若干心配ではあるけど、信じてお任せしよう。


 というわけで、身内に手伝ってもらって、村を運営していくことになる。

 そして俺はというと……。


「タイシ~、ドワーフさんたちのところ、いくです~」

「お土産のお菓子も、用意しましたよ」


 ハナちゃんユキちゃんと一緒に、しっぽドワーフちゃんたちの生活支援だ。

 あの子達の生活が軌道に乗るまで、この三人がメインでサポートしていく。

 ここでしくじると、しっぽドワーフちゃんたちの自立も遅れる。

 責任が大きく、かつ臨機応変を常に求められる難しい仕事だ。


 いちおう俺たちがメインに活動するけど、村のみんなにも色々助けを借りる想定をしている。

 みんなの得意な分野を活かし、不得意な分野を補い合って……よりよい未来に、繋げて行きたいな。


 とまあひとまず、なんとか体制は整えた。大部分の仕事は、ほぼ丸投げとも言う。

 持つべきものは、仕事を丸投げできる身内と仲間たちだね!

 ……ブラック企業とか言われないよう、気を付けていこう。



 ◇



 早速お仕事開始ということで、ハナちゃんとユキちゃんと一緒に、しっぽドワーフちゃんの仮設住宅に訪れる。

 湖畔リゾートのそばにある、仮設住宅群だ。

 三人でのんびりと、しっぽドワーフちゃんたちの様子を見に来てみた。


「かあちゃ、ここから……どうやるさ~?」

「まずは、こまか~く、いしをくだくさ~」


 ……すると、みんな集まってなにやらやっている。

 でっかい銀色のハンマーみたいなのを持って、丸っこい石のかたまりを取り囲んでいるね。

 一体何をしているんだろう?


「みんなこんにちは」

「こんにちわです~」

「わきゃ? こんにちわさ~」

「このあいだは、どうもさ~」

「おまつり、さいこうだったさ~」


 ひとまず挨拶すると、みんなこっちを向いて挨拶を返してくれた。

 しっぽをぱたぱた振って、にこにことしているね。

 さてさて、それじゃあ何をしているのか訊いてみよう。


「ねえ、それって何をしているの?」

「これさ~? おんかいをつくるおしごと、おしえているさ~」

「音階を作るお仕事?」

「あえ? なんですそれ?」


 なんだろう、それ。

 音階を作るお仕事とは、どうにも想像が出来ない。

 ハナちゃんも同様のようで、こてっと首を傾げた。

 詳しく訊いてみよう。


「音階を作るって、具体的に何かって教えてもらえる?」

「もちろんさ~。これ、これをつくるさ~」


 そう言いながら、お母さんドワーフが何かを取り出した。

 これは……お祭りの時に使った、あの楽器みたいだね。


「あや! おまつりでつかってたやつです?」

「そうさ~。がっきのやつさ~」


 つまり、音階を作るというのは……楽器を作るって事なんだね。


「なるほど、抜けている音階を、これから作ろうとしているんだ」

「そうさ~。コツコツと、おとをそろえるつもりさ~」


 今度は子供ドワーフちゃんが、わきゃわきゃと答える。

 さっきの丸っこい石のかたまりを抱えて、ご機嫌だね。

 ……身長三十センチしかないのに、でかい石を平気で持っている。

 見た目に反して、かなり力があるようだね。

 この辺も、ドワーフっぽいといえばそれっぽい。


 とまあ、それはそれとして。

 お母さんドワーフが見せてくれた金属棒と、子供ドワーフちゃんが抱えている石について。

 話を聞くところによると、関連があるのだろう。

 もしかして……この石を、いろいろ加工していくのかな?


「この石を加工して、音階を作るってことなのかな?」

「そうさ~。これから、せいれんするさ~」

「え? 製錬からやるの?」

「いちばん、だいじなところさ~」


 ……この石は、原石なのか。

 ここから精錬していくっぽいけど、何をどうするのか見当もつかないな。


 というか、ドワーフちゃんたちの扱っている金属、これは一体なんだろう?

 まずそこから分からない。

 これも訊いておかないといけないな。


「……ねえ、みんなが扱っている金属って、鉄じゃないよね?」

「わきゃ? てつはきちょうひんさ~。ほとんど、とれないさ~」

「そうなんだ」

「だから、てつじゃないやつを、ふつうはつかうさ~」


 鉄は貴重品。どうやら、しっぽドワーフちゃん世界では、そうらしい。

 そういった理由から、鉄じゃないやつを扱うようだ。


「こっちだと、鉄はわりと採れるね。それなりに昔だけど、鉄を大量に持ってきて、大量に精錬することが可能になったんだ」

「わきゃ~! うらやましいさ~!」

「だから、あんなにてつのどうぐが、あったさ~?」

「すごいさ~!」


 ちたまじゃ鉄はわりと採れると教えてあげると、しっぽドワーフちゃんたちは大はしゃぎだ。

 まあ、俺たちもフェアリンでダイヤを見ると、大はしゃぎだからね。

 気持ちは分かる。


 ちょっと話はそれたけど、鉄のお話はまた今度にして。

 今は、しっぽドワーフちゃんたちの扱う、謎金属についてだ。

 この金属は一体何だろう?


「みんなが使っている金属って、一体何か教えて欲しいな」

「これは、むかしっから『アダマンタイト』っていってるさ~」

「かたすぎて、かこうがめんどいさ~」

「たくさんあるから、おもにアダマンをつかうさ~」


 ――アダマンタイト。それがこの金属の呼び名らしい。

 呼び名と言い見た目と言い、かなりそれっぽい感はある。

 ここは一つ、ユキちゃん大先生に見てもらおう。


「ねえユキちゃん、これってどんな金属か分かるかな?」

「ちょっと見てみますね。これを借りても、良いかしら?」

「どうぞさ~」


 ユキちゃんがお母さんドワーフから、アダマンタイト製らしき金属棒を受け取る。

 それから、ルーペで見たり叩いたり光にかざしたりと、なにやら調べ始めた。


「う~ん、ミスリルに似ていますが、それより硬度があるような……」


 ミスリルの実物って、あるんだ……。そっちの方が興味あるよ。


「……これは、うちで調べないと詳しい所はわかりませんね」

「そんなに謎なの?」

「見たことも無い金属です」


 おっと、ユキちゃんギブアップだ。どうやらこの金属、けっこう謎金属っぽいぞ。

 アダマンタイトとは言うものの、ちたまで言われている物質とは違うようだ。

 おまけにミスリルのようで、ミスリルじゃあない。

 今わかるのは、それくらい。


「……これ、お借りしていいかな? うちで調べたいの」

「わきゃ~……、これをさんこうにつくるから、ちょっともちだしはこまるさ~」

「そうですか……」


 ユキちゃんは家で調べたいみたいだけど、しっぽドワーフちゃんは困り顔だ。

 この金属棒を参考品にするから、持っていかれると困るっぽいね。


「同じ金属なら、他の物でも良いですけど」

「わきゃ~……ほかのも、ちょっとよゆうがないさ~」


 食器とかでも使っていたけど、それを貸したら困っちゃうよね。

 村から食器を提供してもいいんだけど、使い慣れたものがあるならそれを使った方が良いし。

 これは、借りて調べるのはしばらくお預けかな?


「まあ、しょうがないよね」

「ですね」


 しっぽドワーフちゃんたちは、避難民であって。なんだかんだ言っても、余裕はあまりない。

 持ち物も少ないので、無理を言うのはやめておこう。

 こっちのは好奇心だからね。後回しでも問題は無い。


「それじゃあ、いずれ余裕が出来たら貸してね」

「すまないさ~」


 そうして、謎金属の分析は後回しにしようとおもったのだけど……。


「かあちゃ、かあちゃ。これからせいれんするなら、それをわたせばいいさ~?」

「わきゃ? それでいいさ~?」

「もちろんさ~」


 子供ドワーフちゃんが、原石を頭の上に掲げて一つ提案してくれた。

 そういや、これから精錬するって話しだったな。

 確かにその精錬したやつを貸してもらえれば、なんとかなりそうだ。


「それ、お願いしても良いかな?」

「わかったさ~。ついかで、せいれんするさ~」


 子供ドワーフちゃん、わきゃきゃっと応じてくれた。

 とってもありがたい。あとでお礼に、お菓子を多めにあげよう。


「かあちゃ、そういうわけだから、またいしをとりにいくさ~」

「じゃあ、みんなでいくさ~」


 ……ん? 石を採りに行くとな。

 しっぽドワーフちゃんたち、何か準備を始めたけど……。


「あえ? とりにいくって、どこにです?」

「そうそう、この石、みなさんが持ってきたのでは?」


 ハナちゃんとユキちゃんも、「あれ?」って顔になった。

 だよね。採りに行くのは、出来ないのでは?


「みんな、今は洞窟が閉じちゃってるから、みんなのいた所には戻れないよ?」

「わきゃ? もどれないさ~?」

「そんなこと、あるさ~?」


 戻れないことを伝えると、今度はしっぽドワーフちゃんたちが首を傾げた。

 そういえば、洞窟の法則を伝えていなかったな。

 説明しておこう。


「あの洞窟は、みんなの避難が終わったら……いったん閉じて、元の場所への移動が出来なくなるんだ」

「わきゃ? もどれなくなっちゃうさ~?」

「普通はそうだね」


 しっぽドワーフちゃんたち、さらに首を傾げた。

 ……納得いかないだろうけど、そういう仕組みでして。


「……じゃあじゃあ、きのうはいけたのに、きょうはもういけないさ~?」

「ん?」

「あえ?」

「え?」


 今、何と?

 聞き間違いかな……「昨日は行けた」とか聞こえたんだけど。

 ハナちゃんもユキちゃんも首を傾げているけど、再度確認しよう。


「ね、ねえ……今のもう一回良いかな? 昨日は行けたとか、聞こえたけど……」

「わきゃ? きのうはいけたさ~? このいし、きのうとってきたものさ~?」

「あえ?」

「え?」


 ……今はっきり「昨日採ってきた」と言ったぞ……。

 その発言を聞いて、ハナちゃんとユキちゃん、首がより傾いた。

 俺の首も、かなり傾いている事だろう。


 これは、確認しないといけない。

 ――それも、今すぐにだ。



 ◇



「ここに、いしがゴロゴロしてるさ~」

「いいやつをえらぶのも、ぎじゅつのうちさ~」


 ここは、しっぽドワーフちゃんがいた世界。

 天空に二つの月が輝く、夜の世界。


「あや~、ほんとにこれたです~」

「ばっちり、『門』は開いていましたね……」


 ハナちゃんとユキちゃんは、空を見上げてあっけにとられている。

 二人とも、空に見える天体に……見覚えがあるようだ。

 俺も同様に、見覚えがある。


 一つ目の月は、真っ白でとても明るくて。

 二つ目の月は、わずかに見える三日月だけど、かなりの大きさ。


 おそらく――衛星フェアリンと惑星エルフィンだ。

 あとでエルフィンに行って検証すればわかるだろうけど、位置関係は一致するはず。

 それが一致すれば……この星は惑星エルフィンの衛星、だと断定できるだろう。

 だが、今重要なのはそれではない。


 ――なぜ、洞窟の「門」が閉じていないか、だ。


「なぜ、繋がったままなんだろう……」


 思わず、つぶやきが出てしまう。


「ハナちゃんたちが来てから、例外尽くしでしたよね? これもそうなのでは?」

「あえ? ハナたちとくべつです?」


 俺のつぶやきを聞いたのか、ユキちゃんが「例外」が起きているという意見を述べた。

 まあ、たしかにハナちゃんたちが来てから、例外は起きている。


 ――でも、何かが引っかかる。


「変だな……」


 なにかが、おかしい。

 この違和感は、一体なんだろう……。


「わきゃ? こっちにくるの、まずかったさ~?」

「ああいや、まずくはないんだけどね。不思議だなあって」


 子供しっぽちゃんが不安そうな顔をしたので、違うとは言っておく。

 この子たちは、何も悪い事はしていない。そこは問題ないんだ。


「あ、そういえば……」


 ん? ユキちゃんが何か思いついたかな?

 はっとした顔をしているけど。


「祝詞にも、いったんは閉じる的なことが書いてありましたね……」

「あ、確かにそうだ」


 そうだ。ユキちゃんの言う通り、祝詞にもそんな事が書いてあった。

 いったん閉じるのは、必要な事っぽい事が。

 洞窟の「門」が閉じている間に、英気を養うとかなんとか……。


 確かにそうで、強制的にこの村で過ごしてもらい、力を付ける。

 そうしないと、戻っても路頭に迷うだけ。

 洞窟の「門」をいったん閉じるのは、とても大事な事である。

 変な里心がついて……無謀な帰還をしないためにも、閉じなければならない。


 あの祝詞のお蔭で、今までなんとなく感じていた洞窟の法則に……裏付けが出来た。

 なんたって、初代さん本人が言っていた言葉らしいからね。

 ということで、本来なら「門」は閉じていなければおかしいわけだ。

 

 ……じゃあなんで、しっぽドワーフちゃん世界は、繋がったままなのか。

 この子たちの問題は、まだ解決していない。今戻しても、よくない事が起きるだけだろう。

 まだ、しっぽドワーフちゃんたちは、力を得ていない。自立できるまでに、強くはなっていない。


 ――でも、洞窟の「門」は開きっぱなし。


 ……一体これは、なんだろう?


「ほんとこれ、何だろう……」

「ちょっと、思いつきませんね……」

「むむむ」


 何が起きているのか分からな過ぎて、頭を抱えてしまう。

 ハナちゃんもむむむと考え始めたけど、三人そろってむむむ状態だ。


「むむむ、むむむ~」


 そうして、しばらく三人で頭を抱える。

 十分くらい唸っていただろうか。

 ふと、ハナちゃんのエルフ耳が――ぴこん、と動いた。


「あえ? そういえば……のこりのひとたち、たすけにいってたです?」

「わきゃ? たしかに、うちがいったさ~」


 ハナちゃん、リーダー格のお母さんドワーフに話しかけた。

 そういや、このお母さんドワーフ、残りの人たちを救助しに行ったんだよな。

 すごいお母さんだ。なかなか真似できる事ではない。


「タイシタイシ~、やっぱおかしいです?」

「やっぱりおかしい?」

「なんかこう、すっごくへんです~」


 ハナちゃんも、すごい違和感を感じているようだ。

 閉じない洞窟、祝詞に記載されていた、力を蓄える時期が訪れていない。

 戻っても路頭に迷うだけなのに、戻りたい放題。


 ……このしっぽドワーフちゃんたちに、何かが起きている?

 そして洞窟にも、何かが起きている?


「むむむ~、いっかいたすけにいって、もどってきて……とじなくて……むむむ~」


 そしてハナちゃん、またむむむむ状態へ。

 でも確かにそうだな。このお母さんドワーフ、いったん自分の世界に戻って救助活動をしたんだ。

 この村にようやく到達できたのに、また厳しい環境へと身を投じた。

 下手をすると、もう戻ってこれないかもしれないのに……。

 これは、尊敬すべき勇気と行動力だ。


 ……ん? まてよ?

 この救助を可能にしたのは、洞窟の「門」が閉じていなかったからだ。

 そして「門」が閉じなかったのは、要救助者がまだ取り残されていたから……。


 …………。


 まだ「取り残されていた」から……?


 ――――!!!!


 まさか……まさか!


「……まだ、終っていない?」

「あえ? おわってないって、なにがです?」

「どうされました? 何かお気づきになられましたか?」


 思考が、ぐるぐるとめぐり始める。

 気づいてしまえば、簡単。


 そして――重大。


 そうだ、まだ終わっていないんだ! まだ、途中なんだ!


「――終わってない! まだ、要救助者が……取り残されている可能性があるんだ!」


 洞窟の「門」が閉じないのは、そういう事。

 ずっと開きっぱなしなのは、そういう事。


 全員が避難しきっていないのだから、洞窟の「門」を閉じることが……出来るはずもない。

 ほんとうに……当たり前の事。

 洞窟の動きは、全然おかしくない。変でもない。

 異常なことは……何もない。


 これは――当たり前の、出来事。


 何も終わってはいない。

 この、今俺たちがいる世界のどこかに――助けを必要としている人たちが、まだ存在している。


 しっぽドワーフちゃんたちの避難は――まだ終わっていないんだ!


これにて今章は終了となります。

みなさま、お付き合い頂きありがとうございます。

引き続き、次章もお付き合い頂ければと思います。

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