第九話 悪いようにはしないから
わさわさとした、なんか種っぽい生きもの。通称わさわさちゃん。
この謎のお客さん、なぜだか知らないけど……毎回俺の隙を狙ってくる。
さすがに俺も三回はだまされないわけで、今回は罠を張らせてもらった。
そして見事にわさわさちゃんの捕獲に成功し、大勝利を得ちゃったよ。
「……」
「あや~、ぷるぷるしてるです~」
「これって、種なんですかね? それとも動物なんですかね?」
ハナちゃんとユキちゃん、不思議そうな顔でわさわさちゃんを見つめる。
「やっぱり、ハナが持ってきた種とよく似てます」
「わりと、かわいいうごきをしますね」
「ふしぎないきものだね! ふしぎだね!」
みんな集まってきて、このわさわさちゃんを覗き込む。
活動しているわさわさちゃんを見るのは、多分ハナちゃん以外ではこれが初めてだ。
この不思議な生きもの、みんな珍しそうな顔で見ているね。
「……」
そしてすっかりおびえてしまった、わさわさちゃん。ちょっと申し訳ない。
俺は別に、このわさわさちゃんをいじめたいわけでも、叱りたいわけでもない。
この子も立派なお客さんなわけで、ちゃんと受け入れをしてあげたかった。
だからこそ、ネタ要員――おっと消防団を動員して捕まえたのだ。
この辺りを、ちょっと話しておこう。
……言葉が通じるかは、分からないけど。
「あのね、わさわさちゃん。ちょっと君に、耳寄りなお話があるんだ」
「? ~?」
カバーを取ってあげて、耳寄りなお話があると言うと……わさわさちゃん、すすすっとこっちに寄ってきた。
……なんという警戒心の無さ。お父さん心配だよ。
「~」
「あえ? なんだかさいそくしてるです?」
「耳寄りなお話だからね。早く聞きたいのかも」
……でもまあ、ハナちゃんの言うとおり、なんだかわくわくしたご様子。
さっそく耳寄りなお話をしてみよう!
「実はね、君が根っこを張れる良い場所を……ちゃんと考えて、みんなで一緒に探そうって思っているんだよ」
「!?」
「いいばしょ、さがすです~」
「!!?」
ホント!? みたいな感じで、わささっとした。
そうなんです。本当なんですよこれが。
「隠れなくたって、良いんだ。自分も協力するから、一緒に素敵な場所を見つけよう」
「~! ~!」
あ、わさわさちゃん、触手をふりふりして喜んでいるっぽい。
そうそう、こそこそとしなくたって良いんだよ。
土地はたくさんあるんだから、遠慮しなくたって良いんだ。
遠慮しなくても……。
……あれ? そう言えば。
今までも、遠慮無しに繁殖してた気がするけど……。
あと今回も、遠慮は無しにこっそり繁殖しようとしてたな……。
…………。
ま、まあその辺は考えないようにしよう。
考えてはいけない。
と言うか、このわさわさちゃんは、しっぽちゃん世界から来たわけだ。
であるならば、もし根付いたとすると……しっぽちゃん世界の一部が再現されると思われる。
水が豊富な環境だったというのだから、恐らく湖とかが出来るのでは?
そうなると、うかつに放置して変なところに根付かれたら……ちょっと、困るわけだ。
そういう意味でも、わさわさちゃんと相談しあって、お互い納得出来る場所に根付いてもらう必要がある。
俺たちとわさわさちゃんが、どちらも幸せになるために。
長い目で見た、わさわさちゃん植林計画が必要になるのだ。
逆に言うと、その植林計画が上手く行った場合には……豊かな水源と生態系が、村にもたらされる。
エルフの森に大量の水を供給できたり、下の水田に水を供給できたり。
水産資源だって、期待できる。
ありあまる水資源が使えるなら、また別の産業だって興せちゃうわけだ。
そのためにも、この謎のわさわさちゃんとの出会い、無駄にはしたくない。
ただそこにあるだけでは無く、共に生きていく。
そんな関係を、一緒に作っていきたいんだ。
「君も立派なお客さんなのだから、ちゃんと歓迎するよ。そして、一緒に生きていこう」
「かんげいするです~」
「~!」
わさわさちゃん、二本の触手を伸ばしてバンザイっぽい仕草をした。
わりと可愛い仕草をするけど、ほんとなんだろうね、この生きものは。
とまあ、それはそれとして。
わさわさちゃんの来訪を、きちんと言葉にして歓迎しよう。
「では、わさわさちゃん。――ちたまにようこそ! これからよろしく!」
「~~~!」
わさわさちゃん、ぴょんぴょんと飛び跳ねて、喜んでいるね。
「私たちも、歓迎しますよ」
「ようこそ、いらっしゃい~」
「いいばしょ、さがすじゃん?」
「ようこそ! ようこそ!」
「あのときは、ありがとうさ~」
エルフのみなさんも、妖精さんたちも、そしてしっぽちゃんたちも。
みんなで、わさわさちゃんを歓迎する。
「~」
そしてわさわさちゃん、すすすっと寄ってきたかと思ったら……俺の服にひっついた。
もう大丈夫だね。こちらの思いは、伝わったと思う。
「ちょっと時間はかかっちゃうかもしれないけど、良い場所見つけようね」
「~」
俺の服にひっついた、わさわさちゃん。
ご機嫌な様子で、わさわさしたのだった。
……おお、意外とと手触り良いぞこれ。
◇
無事わさわさちゃんを受け入れたので、ひとまずおもてなしをしてみることにした。
タライに水耕栽培用の培養液を満たして、わさわさちゃんに見せる。
「~!」
すると、わささっとタライへダイブ。
培養液にぷかぷか浮いて、なんかキャッキャしている……。
どうやら、これで良いみたいだ。
「あや~、ごきげんなかんじです~」
「やはり植物なんですかね、この生き物は」
ハナちゃんとユキちゃんも、好奇心いっぱいの目でわさわさちゃんを覗き込んでいるね。
活性化しているわさわさちゃんをこの目で見るのは、俺も初めてだ。
ハナちゃんのときは、土に埋めたら活性化したと聞いた。
妖精さんたちのときは、存在に気づかなかった。
しかし、ただひとり――ステキさんだけが、目撃していた。
当時の様子を、ステキさんにもう一度聞いてみよう。
「船にひっついていたわさわさちゃんって、こんな感じでした?」
「もっとちいさかったけど、よくにてる」
「いつのまにか、船からとれていたんですよね?」
「そうそう、きづいたら、なくなってた」
ということで、よく似ているっぽいね。
そしていつのまにか……船からとれていたと。
おそらく、そのときにステルスにょきにょきされたんだと思う。
「~」
まあ、一年を経てようやく、俺も活性化したわさわさちゃんと触れ合うことができた。
よい候補地が見つかるまでは、こうしてのんびりすごしてもらおう。
このわさわさちゃん、いったん根付いてしまうと単体で大規模で特異な環境を作り上げてしまう。
その成長速度は、一晩でヘクタール単位を塗りつぶすほどだ。
そうして出来上がった環境は、気温すらある程度恒常化する徹底振り。
まさに環境コロニー、バイオスフィアの種、という感じだね。
……おそらくだけど、惑星エルフィンに点在する森は、このわさわさちゃんが元になっているように思う。
衛星フェアリンのお花畑も、しっぽちゃん世界の湖もそうだ。
それぞれの星に、たくさんのわさわさちゃんが根付いて、スフィアを形成している。
そんな感じなのではないだろうか?
謎のわさわさちゃん。
この種は――環境を育み、生命を育む、特別な存在。
なぜだか俺の隙を突きたがるけど、面白いお客さんだ。
可愛がってあげよう。受け入れてあげよう。
「~~」
「あや~、くるくるまわってるです~」
「可愛いですね」
そしてこのご機嫌わさわさちゃんも……避難民だ。
このわさわさちゃんが創り出した環境が、何らかの原因で――崩壊、灰化する。
環境の維持が不可能になり、種を残して「環境という体」から脱出する。
その結果が、この――わさわさちゃん状態、なのではないだろうか?
本人に聞けば、何か分かるかもしれない。
「一体君に、何が起きたんだい? どうして、灰色になっちゃったの?」
「?」
わさわさちゃんに語りかけてみるけど、わさっと体を傾かせて「わかんない」風のしぐさをした。
……これ、本人もわかっていない?
「もしかして、どうして灰色になっちゃったか……自分でもわからない?」
「~! ~!」
こんどはぴこぴこと頷くようなしぐさだ。
わさわさちゃんも、自分の身に何が起きたかはわからないのか……。
「~? ~!」
そのまま、なんだかわさわさと動いているけど、正直何を伝えたいのかはわからない。
胴体に触手を伸ばして、ぷるぷる震えたりとかしているけど……。
「これ、何を表現しているんだろう?」
「ちょっと、私にもわからないですね」
ユキちゃんもお手上げみたいだ。この動きは、何だろうね?
ハナちゃんにも聞いてみるか。
「ハナちゃん、これってわかる?」
「あや~、むつかしいです~」
ハナちゃんも、首をこてんとかしげる。
さすがにこれは、ハナちゃんでもわからないか。
でも、ハナちゃんは興味深そうに、わさわさちゃんの謎ジェスチャーを観察しているね。
そのまま一分くらい、じ~っとわさわさちゃんを観察してみる。
すると、ハナちゃんが「ぽむ」と手をたたいた。
「タイシ~、これ……おなかがすいてるかもしれないです?」
「え? おなかが空いている? でも、今は栄養満点培養液にひたひた状態だけど」
いやいやまさか。
「~! ~!」
……しかし、わさわさちゃんが、なんだかキャッキャし始めた。
え? そのまさか?
「ためしに、おかしあげてみるです~」
「!」
そしてハナちゃんがどこからかお菓子を取り出して、わさわさちゃんに差し出した。
するとわさわさちゃん、二本の触手でお菓子を受け取って――。
「~」
「あや~、たべはじめたです~。やっぱりです~」
スナック菓子を、サクサクと食べ始めた!
この植物――固形物も食べられるの!?
なんちゅう食いしん坊さん!
◇
(おうち、みつかるといいな~)
「~」
「ハナもおうちさがし、てつだうです~」
神輿とわさわさちゃん、そしてハナちゃんががキャッキャする中、集会場にて祭事についての説明会を行うことにする。
二日後に控えたこのイベント、去年はうちと加茂井さんちのおばあちゃんだけの、少人数での祭事であった。
それが今や――数百人規模の祭事となる。
気合が入るというものだけど、俺担当分のお仕事は丸投げしちゃいました。
反省しております。
とまあ、それはそれとして。
みんなには、どんな目的で何をするかをざっくりと説明しておかないとね。
「それでは、二日後に予定されている祭事について、みなさんにご説明したいと思います」
「おまつりです~!」
「おさけ、のめる~」
「まつりじゃあああ!」
妙にテンション高めのエルフたちだけど、今からそんなにテンション高くて大丈夫かな?
「おまつり? おまつり!」
「おだんごたくさんつくろううね! おだんご!」
「あまいものなら、おまかせ~」
妖精さんたちも同様に、なぜか気合十分だ。
……しかしおかしいな。
気のせいか、数日前より妖精さんの数が多いような気がするんだよね。
三百人くらいの妖精さんが来ていると認識しているんだけど、それよりずっと多いような……?
……気のせいかな? 気のせいだよね?
まあ、細かい事は気にしないようにしておこう。
「おまつりだってさ~?」
「うちらも、さんかしていいさ~?」
「とびいりで、もうしわけないきがするさ~……」
妙に数の多い妖精さんたちの横では、しっぽちゃんたちが申し訳なさそうな顔をしていた。
前々から、俺以外はみんな計画的に準備していた祭事だ。
飛び入り参加は負担になるのではと、考えているんだろうね。
みなさん遠慮がちな雰囲気である。
この辺の遠慮艦隊は、エルフたちもそうだったから対処法はできあがっている。
というわけで、しっぽちゃん遠慮艦隊を――悪魔の囁きで沈めてあげようではないか!
「祭事には、みんなの大好きな味噌も――沢山用意するよ」
「わ、わきゃ~……ごちそうさ~」
「おまけに、色んな種類の味噌があるよ」
「わきゃ?」
「いろんなしゅるいが、あるさ~?」
「きになるさ~」
ふふふ、艦隊が一か所に集まって来たぞ。
「えっとね、白くてあっさりな味噌や、赤くてこってりな味噌、黒くておかずにかけられる味噌とか、いろいろあるよ」
「わきゃ~、すごそうさ~!」
「そんなにしゅるい、あるさ~?」
「ご当地味噌があるくらい、各地で色んな種類が作られているよ」
「うらやましいさ~」
みなさん、もうしっぽをぱたぱたさせて、いろんな種類の味噌を思い浮かべているようだね。
もうほぼ撃沈しかかっているけど、まだまだ行きます。
「他にも色々、発酵食品があるよ。もちろん、あのねばねばしたやつも」
「わきゃ~! たのしみさ~!」
さらにダメ押し。
「あとね、みんなの大好きなお魚に味噌を塗って焼いた――味噌焼きってのもあるよ」
「おまつり! おまつりさいこうさ~!」
「わきゃ~、わきゃ~」
「まちきれないさ~!」
――はい撃沈。遠慮艦隊は壊滅した。
しっぽちゃんたち、すっかり遠慮する側から祭りを楽しみにする側へとジョブチェンジだ。
ははは! 圧倒的では無いか。我が戦力は。
「もちろん他のごちそうもあるから、遠慮しないで祭りを楽しんでね」
「わかったさ~」
「かあちゃ、おまつりたのしみさ~」
「わきゃ~」
「おさかなさ~」
さて、これでしっぽちゃんたちも、変に遠慮せず祭事を楽しんでくれるだろう。
せっかくの祭事、遠慮して思う存分楽しめなかったら……もったいないからね。
……正直、しっぽちゃんたちの苦労話を聞いてから。
祭事を中止しようかと、考えたときもある。
みんなあれほどせつない思いをしてきたのに、その人たちのいるところでお祭りをするのかと。
しっぽちゃんたちに気を遣って、お祭りは取りやめようかと……ちょっと考えた。
でも、それは間違いだとすぐに思い直した。
ここで祭事を中止したら、しっぽちゃんたちがとてつもない申し訳なさに沈んでしまうことに、気づいたからだ。
自分たちのせいで、みんな楽しみにしていたお祭りが中止になってしまった。
きっと、そう考えて、これから先何もかもを遠慮して過ごすようになるのではと。
少なくとも、普通の感覚を持っていたならば、そうなる可能性がある。
俺たちは「またこんど祭りをすればいいか」的な考えでも、しっぽちゃんたちは違う。
これから先、ずっと……俺たちに申し訳なさを抱えて過ごすことになるかもしれない。
そんなことになったら、良かれと思ってしたことが、逆にしっぽちゃんたちに追い打ちをすることになる。
行き過ぎた配慮は、かえって毒になるわけだ。
――そんなわけで。
多少おしつけがましくても、力技でお祭りに参加してもらう方針で行く。
強引で押しつけがましい、君は無神経だ、と言われてもかまわない。
今彼らに必要なのは、この強引さだ。手を引っ張って、一緒に歩いてあげることだ。
無理やりでもいいから、とにかく楽しんでもらう。
そして楽しい思い出を、一つでも作ってもらえたなら……それでいいと思う。
たった一つの楽しい思い出が、前に進む力になることもある。
そんな思い出を、作ってあげられるような祭事にしたい。
辛い思い出は消せないけど、楽しい思い出で埋めてしまうことは出来る。
これからコツコツと、積み重ねて行こう。
「おまつり、たのしみさ~」
「かあちゃ、いっしょにたのしむさ~」
「もちろんさ~」
俺のささやきによって、しっぽちゃんたちはわきゃわきゃとはしゃいでいる。
こうしてちょっとずつ、歩み寄って行こう。
「……この状況で、大志さんが祭事を中止しなかった理由……なんとなくわかりました」
「ハナもわかったです~。ハナたちのときと、おんなじです~」
はしゃぐしっぽちゃんたちを眺めていると、ユキちゃんとハナちゃんが話しかけてきた。
まあ、二人とも付き合いが長いから、わかっちゃうかな。
多分二人も、祭事の中止についてはちらっと考えたりしただろう。
俺が止めようとしないから、何も言わずに見守ってくれていたっぽいね。
とてもありがたい。理解者を得るというのは、嬉しいものだ。
「タイシさんがときたま強引なのは、だいたいこういう時ですよね」
「おわったあとで、そういうことなのかな、っておもうときはありますね」
ヤナさんとカナさんもにも、まあバレバレだ。
この二人は、俺の力技に真っ先に巻き込まれる役割だからね。
みなさん、これからもよろしくお願いしますだ。
まあ、祭事の準備は――家族に丸投げしたんだけどね!
◇
良い話を台無しにしたところで、するといって放置していた祭事の説明を行う。
とはいえ、そんなに何時間も行事をするわけではない。
まず初めに、遺跡をお掃除する。
とは言え、祭事の準備にて遺跡はあらかじめ掃除してある。
当日にすることは、儀礼的な作業だけの状態にしてある。
次に、入守家の現当主に対して、加茂井家の有資格者が祝詞っぽい呪文ぽいやつを読み上げる。
ちなみに、なんて言っているかお互い分かっていない。
そんなので良いのかと思うけど、わからないものはしょうが無い。
良くわからないなりに、それっぽく雰囲気を出して行う。
最後に、入守家の当主が遺跡にお供え物をして――儀式は終了。
たったこれだけの、簡単な祭事だ。
祭事そのものは、たったこれだけで良い。
ただ、これだけじゃ寂しいというので――いつしか、お花見もするようになった。
それを始めた人たちは、うちらは元気にやってるよって、ご先祖さまに見てもらいたい気持ちもあったんだと思う。
なので、お花見はもう――おもいっきり騒ぐのだ!
そんな手順をみんなに説明すると……。
「とにかく、元気な様子を見せれば、良いのですよね?」
「まあ、そうですね」
ヤナさんがしゅぴっと手を挙げて質問してきたけど、ぶっちゃけるとそうだ。
ほかには特にない。
とにかく、元気アピールしとけばそれで良い。
「おまつり、たのしむです~」
「おさけ、たくさんのんじゃう」
「くんせい、たくさんもっていこうぜ」
「それいいじゃん?」
「おだんごもつくるね! おだんご!」
「おさかな、たくさんとってくるさ~!」
みなさんもう趣旨を理解したようで、とても頼もしい。
独自に盛り上げようと、いろいろやってくれるだろう。
村人たちは、ノリノリで参加してくれるだろうね。
……あ、そうそう、神様も参加してもらわないとね。
うちの村自慢の、可愛らしい神様だ。
この存在を欠かしてはならない。
「もちろん神様にも参加して頂いて、沢山ごちそうお供えしちゃいますよ」
「かみさまに、おそなえいっぱいするです~」
(やたー!)
わさわさちゃんと遊んでいた神輿が、キャッキャしながらこっちに飛んで来た。
……あ、わさわさちゃんが神輿にひっついている……。
もちろん、このわさわさちゃんも参加メンバーだ。
「もちろん君もお祭りに参加してね」
「~!」
(いっしょ~)
お祭りに誘ったら、わさわさちゃんは嬉しそうにわさわさしているね。
謎の声も一緒に喜んでいるけど、なんだか仲良いなあ。
「タイシ~、どうぶつさんもさそったらダメです?」
そしてハナちゃんから、動物たちの参加も提案された。
……確かにそうだな、彼らだってうちのお客さんだ。
是非とも参加して欲しいね。とっても賑やかになるよ。
それじゃあ、ハナちゃんの提案を採用しよう!
「ハナちゃんの提案は良いね! 動物たちも連れて行こう」
「わーい! タイシありがとです~!」
案が採用となって、キャッキャと大はしゃぎのハナちゃんだ。
さてさて、今の所はこんなところだろうか。
あとは何か無いかな?
「あ、大志さん、ちょっとよろしいですか?」
と思っていたら、ユキちゃんがこちらにやって来た。
なんだかニコニコしているね。
「そうそう大志さん、私の祭事用衣装、楽しみにしていてくださいね。気合いれますから」
「それは楽しみだ。あの衣装かっこいいもんね」
「この日のために、半年前から発注かけてましたからね」
「おお~すごい」
どうやらユキちゃん、祭事の衣装には気合を入れるようだ。
加茂井さんのおばあちゃんが着ていた衣装もかっこよかったから、期待できるね。
当日が楽しみだ。
ユキちゃんたまに妙に可愛くなるから、良い目の保養になるかもだね。
そうして、当日の衣装はなんだろうと楽しみにしていると――。
「ちなみに大志さんは、衣装の準備大丈夫ですか?」
――ユキちゃんが、こんなことを聞いてきた。
俺の衣装? それはもちろん……。
……なんもしてない。
あれ? 去年の祭事後に、クリーニングしたあと……しまったまんまだね。
試着とかしてないな。
俺、この歳になっても身長伸びてたりするんだよね。
これでもし、衣装のサイズが合わなくなってたら?
…………。
――――大変だー!!!