第八話 計画的に進めましょう
「わきゃ~! おうちがもうできたさ~!」
「かんたんにつくれちゃうさ~!」
「すごいさ~」
今湖畔リゾートでは、わきゃわきゃと仮設住宅の建設中だ。
集会場で雑魚寝をいつまでも続けるわけにも行かないので、手っ取り早く家を作ってしまうことにした。
村に仮設住宅を作っても良かったのだけど、出来れば湖畔のそばが良いとのこと。
恐らくだけど、しっぽちゃんたちの生活習慣的には必要な事なんだろうと思う。
家からすぐの所に、川か湖がある。これが大事なようだ。
「大志、資材足りっか?」
「多分大丈夫。しっぽちゃんたち、小さいからね」
現場監督は、高橋さんだ。
一昨日爺ちゃんたちと帰ってきたので、さっそく動いてもらった。
「こっちのきそ、できたのだ」
「これでもういっけん、たてられるぜ」
おっちゃんエルフとマッチョさんは、さくさくと基礎作りをして貰っている。
この辺はコツがいるので、慣れた人が担当だね。
とはいえ、コンクリート平板を九個設置して、水平を出すだけだ。
一軒目の仮設住宅を建設している間に、二軒目の基礎が出来てしまうくらい簡単。
二日あれば、今いるしっぽちゃんたちの全世帯を作れてしまう速度である。
「おうちづくり、たのしいさ~」
「かあちゃ、これがうちらのおうちになるさ~?」
「そうらしいさ~!」
しっぽちゃんたちも作業を手伝っているけど、すごく楽しそうだ。
仮設とは言え自分の住む場所を、自分で作る。しかも簡単にできる。
確かに、これは楽しいかもしれない。
しっぽをぱたぱたさせながらボルトを固定する姿は、ご機嫌そのものだ。
あと、インパクトドライバーを平気で使いこなすあたり、肝が据わっている。
「しかしまあ、また可愛らしいのが来たなあ」
「子供エルフに、しっぽが生えている感じだね」
そうしてわきゃわきゃと仮設住宅建築にはしゃぐしっぽちゃんたちをみて、高橋さんはほくほくとした顔をしている。
小さな子が頑張っているように見えて、確かにほんわかするね。
この調子で、どんどん家を建てちゃおう!
「おうちって、こうやってつくることもできるんだ~」
「かんたんにおうちつくれるとか、すてき」
「おれのじまんのもっこうざいく、まったくつかわないのだ……」
そして村人エルフや観光客たちも、キャッキャと小屋作りを手伝ってくれている。
もはや、小屋作りイベントと化している……。
まあ、楽しんでお仕事が出来るのは良いことで。
おっちゃんエルフは、自慢の木工を披露できなくて残念そうだけど……。
その辺は、妖精さんハウス作成で思う存分披露してくださいだね。
「大志さん、小屋ってこんなに簡単に作れちゃうのですね」
「あっというまに、おうちがひとつできたです~」
ユキちゃんとハナちゃんも、この小屋作りの簡単さにびっくりしているようだ。
四畳半程度の小屋がみるみるうちに出来ていくのは、予想外だったのかな?
今作っている仮設住宅は、ぶっちゃけただの小屋建設だ。
基本的に出来合のパネルを組み合わせて、ボルトで固定するだけ。
要するに、日曜大工でDIYする、ツーバイフォー工法の小屋作りそのものである。
三十あるパーツをボルトで固定すれば、もう小屋が出来てしまう簡単さ。
ジョイパネはホント便利だね。
「そんで大志、一軒目に断熱材張り終わったぜ」
「綺麗にお掃除しておいたわよ」
「あにゃ~」
おっと、もう一軒目が出来てしまった。人手が多いと、作業が早くて良いね。
爺ちゃん婆ちゃんとシャムちゃん、そしてお供さんたちが内装を担当してくれた。
その間に、もう二軒目が半分くらい出来ている。恐ろしい建築速度だ。
それじゃあ、さっそくしっぽちゃんたちに確認してもらおう。
「みんな、お家を確認してみてほしいな」
「さっそく、なかをみてみるさ~」
「あたらしい、おうちさ~」
「わきゃ~」
そして小屋にどっと押しかけるしっぽちゃんたち。
中を確認して、わきゃわきゃと大はしゃぎである。
「どうかな? ここで寝泊まり出来るかな?」
「わきゃ~、これはいいさ~」
「がっしりしてるさ~」
「じゅうぶんさ~」
しっぽちゃんたちの背丈に合わせて、高さは低めに作ってあって。
窓も低い位置に付いているけど、ちょうど良い大きさになったね。
しっぽをぱたぱたさせながら窓から顔をだして、わきゃわきゃと喜んでいる。
「まどからみずうみがみえて、いいかんじさ~」
「いいおうちさ~」
「うれしいさ~」
ちいさな小屋だけど、しっぽちゃんたちにはこれで十分のようで。
みんなでぎゅうぎゅう詰めになって、小屋を楽しんでいる。
よし、これで住むところはひとまず何とかなりそうだね。
建築は他のみんなに任せて、次は食のほうだ。
「それじゃあ、次は食べ物だね。基本的には、湖のお魚とジャガイモで良いって聞いたけど」
「それでもんだいないさ~」
「おさかな、じぶんでとるさ~」
「なんとかするさ~」
基本はそれで良いらしいので、そうしてもらおう。
ただ、これだと野菜が圧倒的に不足する。
しっぽちゃんたちは、木の実や中州に生える植物も食べていたと聞いている。
栄養バランスを整えるためにも、野菜栽培はして欲しいと思う。
この辺提案してみよう。
「みんな、あとは野菜を作って欲しいなって思う。ここに畑を作って、美味しい植物を作るんだ」
「わきゃ~? うちらにできるさ~?」
「でも、きょうみあるさ~」
しっぽちゃんたち、野菜栽培は自信がないみたいだね。
自信がない子はしっぽがへにょり、興味がある子はしっぽがピンとしていて分かり易い。
でもまあ、必要なことなのでみんなに覚えて貰おう。
「みんなが大好きなジャガイモも、お野菜の一種だからね。一緒に栽培すると、食べ物沢山で良いと思うよ」
「わきゃ? あれもつくれちゃうさ?」
「でも、むずかしそうさ~?」
ジャガイモも作れるというと、結構興味を持つ子が増えた。
たくさんのしっぽがピンと立って、可愛らしい。
ただ、やっぱりちょっと自信がない子もいるね。
「みんな、だいじょぶです~。ハナたちも、おやさいつくれたです~」
「私たちも最初は自信がなかったのですけど、けっこう上手く出来ました」
「そうなのさ~?」
「だいじょぶだったです~」
そんな自信の無い子は、ハナちゃんとヤナさんが励ましているね。
エルフたちだって、最初は手探りでやっていたけど、なんとかなった。
しっぽちゃんだって、出来るよね。
「おやさいのそだてかた、ハナがおしえるです~」
「あ、私たちも協力します」
「おれもてつだうじゃん?」
「わたしも」
にょきにょきに自信のあるハナちゃん、お野菜栽培を教えてあげたいみたいだ。
キャッキャしながら、スコップとじょうろを取り出している。
ヤナさんやマイスターとステキさん、他のエルフたちも手を上げているね。
そしてそれは、とっても良い提案だ。
「ハナちゃん、良い提案だね。お願いできるかな?」
「あい~! ハナ、おやさいのつくりかた、おしえるです~」
「えらい子だね~、思いっきり褒めちゃうよ!」
「ぐふ~」
ハナちゃんの頭をなでなでしてあげると、もうでれんとしてエルフ耳がたれ耳に。
ぐふぐふとご機嫌ハナちゃんだね。
「他のみなさんも、お野菜作りのご指導、お願い出来ますか?」
「まかせて下さい」
「おやさい、たくさんつくっちゃうわ~」
「がんばるのだ」
みなさん鍬を構えてやる気十分だね。
でも、それどこにしまってたの?
……とまあ、それはそれとして。
俺たちがエルフたちに農業を教えて、次はエルフたちがしっぽちゃんたちに農業を教える。
こうして技法が伝わっていき、自活出来る人がどんどん増える。
なかなか良いサイクルが生まれそうで、ハナちゃんの提案はとても良い。
それじゃあ、仮設住宅建設に畑作りに。
しっぽちゃんたちの暮らしが安定するよう、じっくり取り組みましょう!
しかし今から数日の間、ちょっとしたお仕事がある。
そのための仕込みもしないといけないので、なかなか忙しいな。
しっぽちゃんの受け入れに、ちょっとしたお仕事の仕込みに。
これらもしっかりとしないと――。
「――あの、大志さん」
ん?
気合いを入れているところで、ユキちゃんがちょいちょいと俺の肘をつついた。
なんでございましょう?
「それで大志さん、祭事の準備はどうしますか? 五日後ですよ?」
…………。
――――大変だー!!!!
◇
――翌日、自宅にて。
「大志さ、祭事の準備は俺らがやっとくから」
「こういうときは、家族を頼る物よ」
「助かった~……」
困ったときは親に泣きつく。これも一つの危機管理である。
長野に帰ってきた親父とお袋に、祭事の準備は引き継いでもらった。
計画表に従って調達するまではやってあるから、あとは全行程の三分の一くらいの作業量だ。
残り四日でも、十分間に合う工程表となっている。
「ほんじゃ俺らも飾り付けとかやっとくから、大志はお客さんの受け入れ頼むな」
「お料理の発注は、もう頼んであるからね」
「あにゃ」
爺ちゃんたちも早速動いてくれたようで、みるみる準備が整っていく。
さすが身内パワーだ。
というか、俺の段取りが悪いとも言う。
「大志、おめえ働き過ぎなんだって」
「とはいえ、私たちの時と違って村づくりだからねえ」
わりとヘコんでいると、爺ちゃん婆ちゃんが慰めてくれた。
けど、まあほんとすいませんだ。
ただ婆ちゃんが言うように、村づくりの規模でお客さんが来るというのは……確かになかった。
仕事量の桁が違うので、どうしてもってのはある。
この辺はもう出たとこ勝負になるしかないので、どんと来いだ。
確かに仕事量は多いけど、あの静かな村だったころよりはずっと良い。
「まあ忙しいのは、村に活気がある証拠だからね。これはこれで、良いと思う」
「まあ、そうだよなあ」
「こんなに賑やかになるなんて、去年の今頃は思ってなかったものねえ」
爺ちゃん婆ちゃんも同意してくれたけど、ほんとに去年の今頃はこんな賑やかな村になるとは思っていなかった。
こんなに人が大勢来るなんて、思ってもみなかった。
ハナちゃんと出会った、あの日。
お腹を空かせたエルフたちがやってきた、あの日。
今でも鮮明に思い出す。
「あっという間の一年だったね」
「そうだなあ。もうすぐ、エルフたちがやってきてから一年になるんだなあ」
親父としみじみ、当時のことを思い出す。
エルフたちとの出会いから、そろそろ一年。
確かに忙しかったけど、楽しい忙しさだった。
「これからも忙しくなると思うけど、きっと楽しくなるよ」
「それは間違いないな」
「毎日、何かしら面白い出来事あるものね」
親父もお袋も、結構楽しんでいて。
これから何が起きるのか、楽しみな表情だ。
それじゃあ、新たな仲間も加わった村の運営、がんばりましょうかね!
……祭事の準備は、丸投げだけど。
「祭事については、申し訳ないけど頼むよ」
「まかせとけって」
「桜も満開だから、逆に良い時期になってるわ。楽しい祭事にしましょう」
爺ちゃんが腕まくりして答えてくれて、婆ちゃんからは逆に良い時期との返答が。
たしかに、今年は桜が遅咲きだった。
計画通りに祭事を実施していたら、五分咲きくらいだったろう。
……来年からは、桜の咲き具合を見て開催するのも良いかもな。
もとから、明確な開催時期はなかった祭事だし。
とまあ、来年のことは来年考えるとして。
家族力を合わせて、村の運営に祭事に、一生懸命取り組もう!
「それじゃみんな、お願いね」
「「「おー!」」」
色んなお仕事が押し寄せて、家族の絆が深まった。
そんな一日だった。
◇
「おやさいおやさい~、にょきにょきするですよ~」
「わきゃ~! いっきにせいちょうしたさ~!」
「ハナちゃん、すごいさ~!」
「ぐふふ~」
さらに翌日、湖畔リゾートでは農業指導が始まった。
まずはハナちゃんに、にょきにょきしてもらってどんな植物かを知ってもらう。
自慢のにょきにょきを披露できて、さらに褒められて。
ハナちゃんご機嫌でぐにゃっているね。
「ぐふふふ~」
「ハナちゃん、ぐんにゃりですね。可愛い~!」
そしてハナちゃんがぐにゃったので、しばらくクールダウンだ。
ぐんにゃりハナちゃんは、ユキちゃんがほおずりして保護? している。
それじゃあ、クールダウン中に食べ方を実演しよう。
「それではハナちゃんが育ててくれたお野菜を、美味しく食べる方法を実演します」
「たのしみさ~」
「えいよう、ありそうさ~」
「ぐふふ~」
しっぽちゃんたちが二十日大根やベビーリーフをみて、しっぽをぱたぱたさせる。
ひとまず、サラダや味噌汁にして試食会だ。
「おりょうり、おまかせください」
「おいしくつくるわ~」
「がんばるの」
「ぐふ~」
そしていつもの奥様方も参加して、いそいそとお料理が始まる。
ハナちゃんもクールダウンが進んで来ているので、若干ぐんにゃりしながらもサラダを作り始めた。
密かにハナちゃん、お料理自慢の奥様方に混じって料理できるまでに成長している。
子供の成長を目の当たりにするのは、なかなか感慨深い物があるね。
「ハナちゃん、もうすっかりお料理自慢だね」
「ぐふ~、ぐふふふふ~」
……やばい、またぐんにゃりしてしまった。
まあ、サラダはもう出来たから大丈夫だよね。
何も問題は起きていない。そうに違いない。
とまあハナちゃんぐんにゃり状態が続いているけど、お料理はつつがなく進み。
二十日大根たっぷりのお味噌汁が、そろそろ出来上がろうとしていた、その時のこと。
「……わきゃ? これ、しるものにいれるさ~?」
「かあちゃ、これみたことあるさ~?」
赤いしっぽのお母さんと小さな子が、味噌をのぞき込んでしっぽをぱたぱた振っている。
……見たことがあるとか言っているけど、まさか?
「これは汁物に入れる、栄養満点の発酵食品だけど……。もしかして、みんな知ってる?」
「しってるさ~。うちらも、つくってたさ~」
「あんまりつくれないけど、ごちそうさ~」
「こんなにあるなんて、ゆめみたいさ~」
お! やっぱりだ。
しっぽちゃんたち、味噌を知っているぞ!
どうやら、しっぽちゃんたちは味噌造りをしていたようだ。
あんまり作れなくて、ごちそうあつかいだったみたいだけど。
「こっちでは、保存食として古くから食べられていますね」
「うちらもそうさ~。よるのじきは、ほぞんしょくでしのぐさ~」
「これがあれば、からだがげんきになるさ~」
なるほど、しっぽちゃんたちが夜の時期を過ごすときは、保存食が必要で。
そのために、発酵食品とかを作っているんだと思う。
話を聞いた限りでは温暖湿潤な気候だったみたいだから、発酵食品が進化するのは当然かもしれない。
……ちょっと興味が出てきたな。
しっぽちゃんたちの発酵食品、どんなのがあるんだろう?
「みんなの発酵食品て、他にはどんなものがあるのかな?」
「いま、みせるさ~」
「これとかこれ、あとこんなのがあるさ~」
「ちょっとしかないけど、まだのこってるさ~」
しっぽをぱたぱたさせながら見せてくれたのは、ちいさな木の桶に入った――味噌や納豆ぽいやつ。
そして……鰹節みたいなもの。
どれもごくわずかしかないけど、俺の目にはそう見える。
あと、納豆は非常に小粒で、品種改良された豆じゃあないね。
野生の物をかき集めて作った感じがする。
「大志さん、これってモロに……大豆発酵食品とかありますね」
「これなんて鰹節っぽいよ。カッチカチだよ」
「ぐふ~?」
ぐんにゃりハナちゃんを抱えたユキちゃんも、興味深そうな目でのぞき込んできた。
やっぱりこれ、そう見えるよね。
「……この辺の地域でも、似たような発酵食品はよく食べているよ」
「わきゃ~、それはいいことさ~」
「けんこうによい、たべものさ~」
「どうりで、あじつけがにてたさ~」
しっぽちゃんたち、わきゃわきゃと喜んでいる。
バター醤油のじゃがバターをあんなに喜んだのは、こういうことだったのか。
しっぽちゃんたちとちたまにっぽん人、発酵食品の文化が似ているんだ。
だから、あんなに醤油を喜んだんだ。
……ただ、味噌はあるけど醤油は作ってないぽいね。
味噌自体が希少なご馳走なのに、たまり醤油を作る余裕はないのかも。
しかし、これは良いね。エルフたちもそうだったけど、味付けに抵抗がないのはありがたい。
「この調味料とかこのねばねばしたやつは、こっちだとたくさん作っていて毎日食べられるんだよ」
「ごちそう、まいにちたべられるさ~?」
「食べられるよ。楽しみにしていてね」
「わきゃ~! それはすごいさ~!」
毎日食べられるというと、しっぽをぱたぱたさせて喜んでいるね。
それじゃあ、しっぽちゃんたちには味噌や納豆を提供しよう。
毎日食べて、健康に過ごしてもらいたい。
「わきゃ~、わきゃ~」
「ごちそうさ~!」
そうしてしっぽちゃんたちがわきゃわきゃと喜ぶ様子は、可愛らしいね。
今まで大変だったのだから、これからはゆっくり暮らして欲しい。
灰化現象は、俺がなんとか解明してみせるから。
みんなは、まずは生活を安定させることを目標にしてくれたらと思う。
「……あや~、これはたべられるです?」
「どうみても、アレしちゃってるかんじがするわ~」
「いと、ひいてるの」
「きびしくないですか?」
そしてハナちゃんや腕グキさん、ステキさんとカナさんは納豆にどん引き。
まあそうだよね。見た感じだと、アレしてる感じはするよね。
そして実際アレしてるんだけど、これは食べられるやつなんです。
「このねばねばしているのは、わざとアレさせて、栄養満点にしたものですよ」
「あや~……。タイシ、それほんとです~?」
「上手く状態を作ると、アレしても毒が出ないように制御することが出来るんだ」
「ほんとです~?」
どん引きハナちゃん、疑いのまなざし。
でも、俺も納豆好きなんだよね。そしてまごうことなき、健康食品である。
自信を持って答えよう。
「ホントだよ。ダメな人もいるけど、実は朝ご飯の定番だったりするね」
「きょうみ、でてきたです~」
「そういわれると、たべてみたくはなりますね」
「あさ、これをたべるのはきつくないかしら~?」
「ふるえる」
ハナちゃんとカナさんは興味を持って、腕グキさんとステキさんは引いている。
まあ、こんど納豆試食会でも開催してみるかな。
なんか面白いことになりそうだ。大騒ぎになること間違い無しだ。
祭事が終わったら開催してみよう。ふふふふふ。
「まあ、アレしているたべものはさておき、おみそしるができましたよ」
「なまやさいもあるです~。みんなで、たべるです~」
「おいしいわよ~」
とまあちょっとした悪巧みをしている間に、お料理が出来上がったね。
それじゃあ、いっちょお野菜試食会と行きましょう!
「では、みんなで食べましょう。頂きます」
「「「いただきまーす」」」
こうして、試食会は楽しく開催された。
しっぽちゃんたちも、味噌汁を大喜びで堪能して。
村に新たに加わったお客さんたちの食生活に、彩りが増えた日となったのだった。
今のところ、良い感じで受け入れは進んでいる。
しっぽちゃんたちは、恐らくこのままやっていけば問題はない。
あとは、一つの懸案事項を――対処するだけだね。
◇
ここはとあるちたまの、とある村。
今日も良いお天気のなか、村は新しい仲間を迎えて賑わいます。
「温泉掃除、うちらに任せてほしいさ~」
「水場を綺麗にするの、うちらが得意さ~」
しっぽちゃんたちは、水にこだわりのある方々。
大好きな温泉や炊事場の水回りのお掃除、買って出ていますね。
「温泉掃除のお手伝い、とっても助かるの」
「高いところは私たちがお掃除しますから、浴槽はお任せしますね」
「わかったさ~」
大きくなった温泉施設のお掃除は、結構大変で。
そんな中加わった新たな戦力に、毎日温泉はぴっかぴか。
炊事場の水回りも綺麗にお掃除されていて、村の生活はより一層快適になりました。
「一緒に遊んで欲しいさ~」
「もちろん良いよ! 何して遊ぶ?」
「追いかけっこ、しようさ~」
エルフの子供たちは、しっぽちゃんの子供たちと遊ぶようにもなりました。
みんな、遊び相手が増えて嬉しそうですね。
子供がたくさん遊び回るというのは、賑やかで良い風景。
こうしたちょっとしたことが、村の活気に繋がります。
そんな賑やかな中、広場ではハナちゃん一家が大志をお見送りしていました。
「それじゃハナちゃん、いってくるね」
「行ってらっしゃいです~」
「村のことは、お任せ下さい。何かあったら、連絡します」
「ヤナさん、あのけいかく、よろしくおねがいします」
「分かりました」
どうやら大志は、お仕事でしばらく村を空けるみたいですね。
祭事の事もあるので、とっても忙しい大志なのでした。
そうして村を後にする大志を見送って、大志がいない村の運営が始まります。
『こちらアルファ、これよりさくせんをかいしする。どうぞ』
「こちらチャーリー、了解しました。どうぞ」
……おや? ヤナさんが無線で何かごにょごにょと通信していますね。
消防団でしょうか?
まあそれはそれとして、今日も平和な一日です。
みんなでのんびり、過ごしましょうね。
◇
わさわさ、わ~さわさ。
大志がお仕事で留守中の村のはずれでは、なにかがわさわさとうごめいておりました。
わさ~。
あっちにわさわさ、こっちにわさわさ。
よさげな土地を探して、わ~さわさ。
そう、しっぽちゃん世界からひっついてきた――あの、わさわさちゃんです。
一体どこに行っていたのかと思いきや、ちゃっかり村へと潜入していたのでした。
わささ~。
これからしばらく、村には大志がおりません。
じっくりとよさげな土地を探す、大チャンスです!
そうして土地を見つけて、大志がいない間に根を張ってしまえば……こっちのもの。
しめしめと、定着するのによさげな土地を、探しています。
そして土地が見つかったらにょきにょきして、贈り物をしなくては。
そう、大志にプレゼントするのです。
――サプライズバイオハザードという、プレゼントを!
わっさ~。
ご機嫌で土地を探すわさわさちゃん、いまやこの謎植物を止める人は、誰もいません。
悠々自適に、バイオハザード候補地を探しておりますね。
ああ、大志……。このままでは……。
わさ?
――そんなときのこと。
わさわさちゃんが足? を止めました。
わささ~。
そしてある場所へと、ご機嫌で向かっていきました。
わさわさちゃんが向かった場所、そこには……。
わさ~。
何故か、植物用の活力剤アンプルがありますね。
鉢植えの根元に挿す用の、アレです。それが数本、何故か落ちていました。
わさっ! わささっ!
いちおう植物っぽい感じのわさわさちゃん、これに釣られたようです。
ご機嫌でアンプルに近づき、一本を触手に絡めると――ポキッと先端をおりました。
そしてそのまま、アンプルを傾けて、ごくごく、ごくごく。
活力剤を飲んでおりますね。
わっさわさ~。
美味しい植物活力剤を飲んで、わさわさちゃんは超ご機嫌。
あまりに美味しかったのか、二本目に触手を伸ばします。
――その瞬間。
『こちらアルファ、ほかくしてください。どうぞ』
「こちらチャーリー、罠、発動します。――今!」
巧妙にカモフラージュされた紐が引っ張られ、棒が倒れて――透明なカバーが、ぱたり。
わさわさちゃんのいたところに、カバーが被されました。
そう、わさわさちゃんは――罠にかかったのです。
最初から仕組まれていた、作戦なのでした……。
こんな原始的な罠にかかってしまったわさわさちゃん、大ピンチ!
わっさー!
透明なカバーが被されて、閉じ込められてしまったわさわさちゃん。
それはもう大慌て!
カバーの中で、わさわさと動き回ります!
穴を掘って逃げようとしますが、ちょっと土をほじくったら――鉄板が!
わさわさちゃん、もうどこにも……逃げられません。
とにかく用意周到な、わさわさちゃん捕獲計画なのでした。
大志は、しっぽちゃんの話を聞いた時から……ずっとずっと、わさわさちゃんの捕獲を狙っていたのです
「ふふふ……。こうなることは、だいたいわかっていたのだよ」
「読み通りでしたね」
「わさわさちゃんのすがたが、みあたらない。これぜったい、あやしかったですからね」
わさわさちゃんが大慌てしている間に、周囲にアンブッシュしていた大志たちが姿を現しました。
ヤナさん、マイスター、マッチョさん、メカ好きさん、おっちゃんエルフ。
エルフ消防団の中でも、特にネタに走る人――おっと、精鋭を動員した、大作戦です。
みんなギリースーツを着ていて、そこまでする作戦なのかと、ツッコミどころはありますが……。
「ふふふ、わさわさちゃん。こんどこそつかまえたよ」
「見た感じ、ハナにひっついていたあの種と、似ていますね」
「妖精さんの船にも、くっついてたって聞いたじゃん?」
わ、わさ……。
追い詰められたわさわさちゃん、植物活力剤のアンプルをかかえてぷるぷる状態です。
その状態でアンプルを離さないのはどうかと思いますが、まあとにかく大ピンチ!
ああ……。
哀れ、捕まってしまったわさわさちゃん。
この謎のわさわさちゃんは……一体どうなってしまうのでしょう?
わさ……。
「あ、二本目を飲んでいますね」
「これ、いちばん、ねだんがたかいやつですから」
「美味しいのかな?」
……この状況でも、植物活力剤を飲むんですね。
わさわさちゃん、食いしん坊なのかな?
捕まっちゃった