第一話 お隣です~
エルフ世界と妖精さん世界は、同じ宇宙、同じ恒星系に存在していた。
惑星と衛星という、お隣さんの関係だった。
まあ、お隣さんと言っても別の星ではある。
ちたま基準では、アメリカやロシア並みの宇宙開発技術と予算がなければ、行き来することは不可能だ。
それも着の身着のまま、徒歩五分でというのは不可能である。
そういう意味では、異世界ではなくとも、到達不可能なはずの別世界とは言える。
このエルフ惑星と妖精衛星とが行き来出来るようになったのは、偶然か、奇跡か、必然か。
そのどれかは分からないが、まあとにかく繋がった。
おかげで、世界がぐっと――広がった!
惑星を衛星から観測することができるし、衛星を惑星から観測することもできる。
……妖精衛星は、裏っかわは撮影できないけど。
それでも、分かることは多いだろう。全部ではないにせよ。
とくに、灰化現象について、一つの光が見えてきた。
全くの異世界同士で起きていた現象では、なかったからだ。
全くの別世界だったら、本当に悩ましかった。意味が分からなかった。
だけど、同じ世界で起きていた。
……星をまたいで起きた、というのはやっぱり意味不明ではあるけど。
しかし、同じ世界で起きた同じ現象、ではある。
であるならば。
――何らかの、共通項があるはずだ。
幸運にも両方の世界に、自由に行き気が出来るようになっている。
エルフの森と妖精花畑を比較して、その共通項を探っていきたい。
ただ、妖精さん世界を調査すると、なぜかちたまの人は、曇りなき澄んだまなこになってしまう。
不思議だなあ。なんでだろうなあ。さっぱり理由が、分からないなあ。
とまあ、ちたまの人が抱える謎については、謎のままにして。
とりあえず、この星々に名前をつけよう。
エルフたちの住む星は――エルフィン。
妖精さんたちの住む星は――フェアリン。
そのまんま。特にひねりも無く。分かり易いのが一番だよね!
というか、ちたまだってひねりゼロだからね。アースとか地球とかちたまとか、まんまなわけで。
だから、これでいいのだ。
と言うわけで、ひとまずこの星々を観測していこう。
きっとなにか、楽しいことが見つかるはず。
もしかしたら、新たな出会いがあったりして。
◇
小難しい観測やらあれこれは、とりあえず地道に行うとして。
まずはエルフと妖精さんたちに、お互いが隣人だと言うことを知って貰いたい。
そんなわけで、天体観測イベントの開催だ!
まずは、フェアリンからエルフィンを観測する。
「おわ~、あれがおれたちのいたところなんだ~」
「せかいがまるいとか、ふるえる」
「おっこちちゃわないの?」
「あっちに、みんながすんでたの? すんでたの?」
「きゃい~」
空を見上げたり、望遠鏡で撮影している映像を見たり。
みなさんキャッキャしたりぷるぷるしたりと、大はしゃぎだね。
妖精さんたちも、きゃいきゃいとはしゃいでいる。
「ちなみに、ここから観測し続ければ、いずれみなさんの世界の、『見た目』は明らかになります」
「え? 見た目だけですか? 全貌ではなく」
「そうだよ、見た目だけ」
俺が「見た目は」明らかになると言ったら、ユキちゃん不思議そうな顔で聞いてきた。
まあ、今回エルフ世界は「衛星」から自身を観測できるようにはなった。
だけど、結局それは「見える」だけであって。
衛星から観測しただけじゃ、全貌は分からないんだよね。
これは実際の写真を交えて、説明しておこう。
「ほらユキちゃん、これが湖畔リゾートの衛星写真だけど……ぶっちゃけ、良くわからないよね?」
「……確かに。洞窟がどこにあるかも、休憩場がどこかも分かりませんね」
「そこはやっぱり、手書きの地図が必要になるんだよ」
「ですね。大きな事はわかるけど、逆に言うと、それしか分からないんですね」
「そういう事」
エルフ惑星と妖精さん衛星は、なんだかんだで結構距離がある。
ちたまのすぐ近くを周回する人工衛星でさえも、鮮明な画像撮影は苦労しているわけで。
ましてやこの妖精さん衛星は、大気がある。
詳細な地図に出来る程の画像は、取得は出来ないんだよね。
あとは、実際の所現地に行って確かめないと、そこに何があるのかの詳細は分からない。
結局のところ、地道に人の目と足でもって調べないと、本当の所はわからないわけだ。
「そんなわけで、カナさんと平原の人たちのお仕事は、まだまだ必要ですね。多分これからもずっと」
「がんばって、ちずをかきますね!」
「まあ、この衛星画像を参考にして、もっと位置関係の精度は高められると思います」
「さっそく、ちずをなおします!」
カナさんは大興奮で、タブレットの画像を見つめているね。
これからも、分かりやすい地図作成、お願いしますだ。
「まあ、これ以上の細かい所は、妖精さん世界の『夜』を待つとしましょう」
「たのしみです~」
「そうですね。気長に調べて行きましょう」
ハナちゃんとユキちゃんは、調査に付き合ってくれるようだ。
二人とも、ワクワクした表情だ。
今までは、妖精さん世界の昼が待ち遠しかった。
妖精さんたちが、遊びに来ることを期待していた。
でも、今度からは夜も待ち遠しい。
エルフ世界が、もっと見えるようになるから。
妖精さんたちの自立により、この世界に来られるようになって。
エルフと妖精さんたちが、隣人だと分かって。
衛星から惑星を観測できるようになって。
色々な事が分かってくるだろう。
これからが楽しみだ。この広がった可能性、活かして行こう。
じゃあ次は、エルフィンからフェアリンを観測だね。
これは暗くなってからだね。
「では、夜になったら妖精さん世界を見てみましょう」
「あい~。のんびりおほしさま、みるです~」
「バーベキューでもしながら、楽しみましょう!」
「おだんごもつくるね! おだんご!」
――そして夜になってから、エルフィンのキャンプ場にて観測会を始める。
「あれがわたしたちのおほしさま? おほしさま?」
「キラッキラだね! キラッキラ!」
「わりといいかんじ~」
「きれいにみえてるです~」
エルフィンは夜なので、フェアリンがよく見える。
拡大してみてみると、かなり輝いているね。
これは多分、ダイヤモンドが光を反射しているからだと思われる。
フェアリンは、なぜだかダイヤモンドが豊富だ。炭素主体の衛星なんだろう。
ちたまのお月様より数倍明るくて、満月になったらかなり眩しいと思われる。
「あれが、みんながすんでるところなんだな~」
「おとなりさんとか、すてき」
「おとなりさんだね! おとなり!」
エルフと妖精さんたち、フェアリンを観測してやっぱりキャッキャとはしゃいでいる。
お互いの星を天体観測して、ぐぐっと親近感が沸いたのかもね。
みんなでタブレットをのぞき込んで、それはもう楽しそうだ。
そうして、楽しく天体観測をしていたときのこと。
「あや! タイシタイシ! こっちのほう、ひかってるです~」
ハナちゃんがタブレットを持って、こっちにやってきた。
……何が光っているんだろうか。
「光っているって、何が?」
「こっちの、くらいとこ、なんかひかってるです?」
そうしてハナちゃんがタブレットを操作して、お月様の暗い部分を拡大する。
……なんで、ハナちゃんまで操作覚えてるの?
俺、操作方法教えてないよ?
……まあ、気にしないようにしよう。
物覚えが良い、賢い子なんだ。
「あ、確かに光ってますね。……ちたまの衛星写真の、夜の部分に似てますね」
ユキちゃんものぞき込んできたけど、確かにそうだ。
ちたま衛星写真の、夜の部分とよく似ているね。
点々と、光っている地域が見て取れる。
これは――お花畑か?
うちの村にある妖精花畑も、夜になるとそらもう光る。
そして超大規模な花畑がフェアリンにはあるっぽいから、多分それなのでは。
「これって、多分だけど……妖精さんたちのお花畑だと思う」
「あや! おはなばたけです!?」
「あ~、それっぽいですね」
発光体がある程度の密度で存在しているなら、割と良く観測できる。
日本海のイカ釣り漁船の光すら、人工衛星から見えるからね。
ちょっと、妖精さんたちにも見て貰おう。
「みんな、この暗いところの光って……多分お花畑の光だよね?」
「それっぽいね! それっぽい!」
「このかたち、みおぼえあるよ! そっちらへんの、おはなばたけだよ!」
「しゅっしんち~」
妖精さんたち、きゃいっきゃいになってタブレットに群がる。
どうやら心当たりのある子もいるようで、大はしゃぎだ。
中には、自分の出身地といって、特定の部分を指さす子も。
……あれか、妖精さんたちは空を飛べる。
だから、空から見た地理、マクロな地形や地域の形を知ることが出来るからかも。
ちょっと聞いてみよう。
「みんな、自分所の地理とか地形とか、だいたい分かる?」
「わかるよ! わかるよ!」
「よく、あそびにいくの! あそびにいくの!」
問いかけると、妖精さんたちきゃいっきゃいで答えてくれた。
やっぱり、空から眺めて自分たちの世界のことは、ある程度知っているようだ。
この辺、地上を歩くしか無い俺たちとは、感覚が違うんだろうな。
「いっしゅうしたこも、いるんだよ! いるんだよ!」
そしてサクラちゃん、なんか衝撃的な事を言っておられる。
……一周した子も、いるとな?
それってまさか。
「……ね、ねえ。一周って、お星様を一周したってこと?」
「そうだよ! そうだよ! おともだちで、いっしゅうしたこがいるよ! いるよ!」
そのまさか。……妖精さんたち、凄いな……。
持ち前の妖精ぱわーで、星を一周しちゃえるんだ。
というか、その子は冒険家妖精さんだね。
「大志さん、一周した子がいるのなら、裏っかわの話が聞けるかもですよ?」
「あ、確かにそうだ。ユキちゃんナイス」
「ふふふ」
ユキちゃんも話を聞いていたらしく、ナイスアドバイスをしてくれた。
確かに、天体観測じゃフェアリンは裏っかわが見られない。
潮汐ロックによって、ずっと同じ面を向けているからね。
でも、冒険家妖精さんから話を聞けたなら、裏っかわの事も分かるかもしれない。
サクラちゃんに、ちょっとお願いしておこう。
「その、一周した子からお話を聞いてみたいんだけど、伝言とか出来る?」
「むずかしい? むずかしい?」
ちょっと期待したけど、どうも難しいらしい。
「……難しいんだ」
「おだんごたべに、すぐあそびにいっちゃうの! おだんごたべに!」
「さようで」
……冒険家というより、食い道楽のようだ。
でも、それならいずれ村にやってくるね。間違いない。
なんたって、村には不思議なお団子があるからね!
きっと、噂を聞きつけて、そのうちやってくるんじゃ無いかと思う。
そのときを、楽しみに待とう。
まあ、食い道楽ちゃんとの邂逅は楽しみにとっておくとして。
これからも、地道に天体観測を続けていこう。
公転周期やら自転周期やら、決定するにはちょっと時間がかかる。
そこら辺の細かい観測、色々やっていきましょう!
◇
また増殖したでござる。
「きゃい~」
「きゃい~きゃい~」
「きゃいきゃい~」
「おおぜいきました~」
今度はイトカワちゃんが、百人くらい連れてきたでござる。
どんどん妖精さんが、増殖していくでござるね~。
「ほかのこも、もうすぐくるよ! くるよ!」
「ですよね」
「みんなおだんご、たのしみにしてるの! してるの!」
「ですよね」
妖精さんが、ずんどこ増えていく。村のお花畑は、もう賑やか大爆発。
村一番の大勢力となっているでござるね。
しかも、まだまだ増えるでござるよ。
「すげえことになってんな~」
「ようせいさんたくさんとか、すてき」
「おれのじまんの、ようせいさんおうち、せいさんがまにあわないのだ……」
村のみんなも、お花畑のキラッキラ具合をみて、キャッキャしているね。
妖精さんがいなくなって静まり返ったのを知っているから、賑やかになって嬉しいようだ。
実の所、俺も賑やかになって嬉しい。
……おっちゃんエルフは、いきなり仕事が増えてちょっとお疲れだけど。でもまあ、顔は嬉しそうだ。
おっちゃんが無理しないよう、気にかけておかないとね。
「ほんとに、おおぜいきてますな」
「みどころあるかな~」
「たのしいわね」
「はじめまして! はじめまして!」
平原のお三方や、他の観光客の方々も、ウッキウキでお花畑を見学だ。
妖精さん居住区は今や、楽しい楽しい観光名所となった。
ちょろっと歩き回ると、これがもうほんと楽しい。
お花の蜜を集める妖精さんや、虫さんと戯れる妖精さん。
大きなお花の中で、すぴぴとお昼寝する妖精さん。
訪れた人に、謎のお団子を振る舞う妖精さん。
森の動物たちと、のんびり遊ぶ妖精さん。
「からだがかるいね! すごいね!」
「すいすいとべちゃうね! すいすい!」
「たのしい~」
脆化病の予防治療をされた子たちは、楽しそうに空を飛んでる。
今の所色付き粒子は見えないけど、念のため巫女ちゃんにまた見てもらわないといけないね。
ある程度の人数が揃ったら、また巫女ちゃんにお願いしよう。
「これがあれば、とおくてもへっちゃら! へっちゃら!」
「からだがかるくなるね! かるくなるね!」
「あじはあんまり、おいしくないけどね! はっぱのあじがするね!」
「おかあさんに、もっていってあげましょ~」
あと、脆化病の予防措置をまだしていない子でも、火を通していないやつがあれば、長距離を飛べてしまう。
脆化病じゃないけれど、このシダ植物を目当てに村に来ている子もいるっぽい。
……これはあれだね、エルフ観光客だけではなく、妖精観光客も来てくれるかも。
さらには妖精さん世界とも、交易が出来るかも。
夢、かなり膨らむ。
「タイシタイシ、なんかおもしろいこと、かんがえたです?」
「楽しそうな顔になってますよ」
楽しい夢を妄想していたら、顔に出ていたようだ。
ハナちゃんとユキちゃんが、ワクワクの表情で聞いてきた。
今考えていたこと、ちょっと話してみよう。
「えっとね、妖精さんたちも観光客になってくれたら……楽しいかもって思ってさ」
「あや! ようせいさんたち、たくさんくるかもです!」
「それは楽しそうですね!」
二人とも、ノリノリだ。脆化病治療で訪れた今でさえ、こんなに賑やかだ。
じゃあ、純粋に楽しみに来てくれたなら……もっと楽しいのでは。
それに、妖精さんたちの脆化病は、完全にゼロには出来なくとも、いずれは限りなくゼロにまで克服できるだろう。
元気な子が増えれば、他の子を元気にするメンバーに加われる。
いずれ、この村は治療目的としての地としては、役目を終えるか、主任務ではなくなる。
そうなったとき、訪れる子がいなくなるのは寂しすぎる。
そうならないためにも、観光地化や交易拠点化は必要だね。
であるならば、この妖精さんたちがリピーターになるよう、楽しく過ごしてもらわないとね。
まず初めは、お団子で歓迎するのが一番かな?
「ほ~ら、みんな、ちたまのすごいお団子だよ。沢山あるよ。マシュマロっていう甘い奴だよ」
「おだんご! おだんご!」
「すごいおだんご? すごいおだんご!」
「きゃい~」
この村で楽しい思い出を作って、クチコミ広げてね。
あとは、ゆっくりとお金に関することを教えて行こう。
そうすれば、妖精さんたちも村でお買い物ができるからね。
とまあこんな感じで、賑やかにおもてなしをしていたところ。
(にぎやか~)
楽しそうな雰囲気に釣られて、神輿がほよほよとやって来た。
今日もご機嫌、ぴかぴか光っているね。
「神様、お供え物がありますよ。こちらのマシュマロ、お召し上がりください」
(わーい!)
さっそくお供え物をすると、神輿超ご機嫌だ。
ぴかぴか光りながら、マシュマロを堪能している。
「かみさま? かみさま?」
「おとなえものする? する?」
「おだんご、おそなえしましょ~」
あ、妖精さんたちがお団子を取り出した。
それ、どこにしまってたの?
……まあ、妖精さんたちもお供えしたいみたいだ。
なんか、いろんなお団子がどんどん積み上げられていく。
(おだんご、たくさん~)
うず高く積上げられていくお団子を見て、神輿大はしゃぎ。
くるくるぴかぴか、今か今かとお供えの瞬間を待っているね。
「わたしもおそなえしよ! しよ!」
「これもどうぞ! どうぞ!」
「あるだけ~」
(およ?)
あれ? ほかの妖精さんも集まってきて、お団子を積み上げはじめた。
だんだんヤバい物量になっていくぞ……。
「これもどうぞ! どうぞ!」
(およよ?)
「まだまだあるよ! あるよ!」
(およよよ?)
――ああ! 神輿がお団子に埋もれた!
◇
そんな楽しい日々を送りつつ、地味に天体観測は続ける。
「ハナちゃん、今日も一緒にお星様を見ようね」
「あい~! タイシといっしょに、おほしさまみるです~」
「今日は良く晴れていて、天体観測日和ですね」
エルフィンからフェアリンを観測しようと、ハナちゃんとユキちゃんとで準備をする。
ハナちゃん大はしゃぎで、おやつをもぐもぐしながら空を見上げているね。
エルフ耳がぴっこぴこしていて、楽しいのが伝わってくるよ。
それじゃ今日も楽しく、フェアリンを眺めま――。
「あや~、タイシ、ふたつめもみえるです~」
――しょう?
ん?
……ハナちゃん、今なんと?
「ハナちゃん、今……なんて?」
「あえ? ふたつめです~、ふたつめ」
ハナちゃん、おやつをもぐもぐしながら空を指さす。
フェアリンとは反対方向、結構低い位置だ。
どれどれ……あ、なんか天体が見える。
なんだ? あれ。
「た、大志さん……そう言えば……」
そして、ユキちゃんがその天体を指さして、ぷるぷるする。
どうしたの?
「大志さん……。前にハナちゃん、言ってましたよね?」
ユキちゃんは、じっと、天体を見つめる。
青い色をした、それを。
そして――こう続けた。
「ハナちゃんたちの所……お月様が――みっつ、あるって」
……はい?
ま、まさかね。そんなまさか。でも、俺もそんなことを聞いたことがある。
たしか、神様の排水事業調査のときだ。
動画にも、ばっちり撮影してあったような……。
ひとまず、ハナちゃんに聞いてみよう。
「……ハナちゃん、アレってもしかして、お月様?」
「あい~! ふたつめのやつです~!」
ハナちゃん、こともなげに言う。
むしろ、訪ねられて嬉しそうにキャッキャしている。可愛いなあ。
それじゃあ、もひとつ確認だね。
「ちなみに、お月様って三つあるんだっけ?」
「あい~! みっつあるです~」
「あ、あわわわわわ……」
ハナちゃんまた、こともなげに答える。やっぱりキャッキャしている。
それと対照的に、ユキちゃんはぷるぷるしている。
そうだねユキちゃん。
俺もなんか、ぷるぷるしてきたよ。
フェアリンを除いた、残りの二つのお月様。
このお月様に、もし、生命が存在できる環境があったなら。
……なんか、嫌な予感しない?
エルフィンで起きたことが、衛星であるフェアリンにも起きたんだよね?
もし、残りの二つの衛星にも、生きものが住んでいたら。
……なんか、起きてそうじゃない?
…………。
――どうしよう?