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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第二章  活動開始
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第六話 顔トゥルットゥルだわ~

 ぽてぽて歩くハナちゃんは、村の下ら辺へと向かっていきます、大志が使っていた道を下るようでした。二人はそんなハナちゃんの後についていきます。

 初めて歩く道、ヤナさんとカナさんはドッキドキです。恐る恐る道を歩いて行きました。


 ドキドキする二人を尻目に、道をちょっと歩いた所。草の生い茂る一角を指さして、ハナちゃんが言います。


「ここに脇道があるのです~」


 ヤナさんカナさんはその一角を見ますが、ぱっと見脇道があるように見えません。人の背丈より大きい下草が生い茂っていて、何もかも覆い隠していたのでした。

 よく目を凝らして初めて、脇道? と思う程度でした。


「よくこんなのみつけたわね」

「これ、普通気づかないよ。すごいなハナは」

「えへへ」


 おとうさんおかあさんに褒められて、ハナちゃんは嬉しそうです。ご機嫌で草をかき分けて、脇道に入っていきました。ヤナさんカナさんも、こわごわとハナちゃんの後に付いて行きます。

 草をかき分け脇道に入り、またしばらく歩くと、そこには池がありました。


 ゴツゴツした岩で囲まれた、小さな池が四つほど。奇妙な形をした池です。


「これなのです」


 ハナちゃんは一番大きな池を指さして、言いました。ここでハナちゃんは、水浴びをしたのでしょうか。ヤナさんカナさんは、ハナちゃんが指さした池を覗き込みます。

 その池からは、なにやら煙が出ていました。


「これ……湯気が出てるわ」


 カナさんが言います。これは煙ではなく湯気だったのです。ヤナさんがそれを聞いて気づきました。


「もしかして、お湯が沸いているのか?」


 そう、ハナちゃんが見つけたのは、なんと温泉だったのです!  ハナちゃん大手柄ですね。たまには冒険してみるものです。


「ここで水浴びしたです」


 ハナちゃんはここで温泉に入って居たのでした。逆に熱くて汗かいた、の謎が今解明されたのです。ヤナさんカナさんは、謎が解けてすっきり。


「だから汗をかいたのね」

「たしかに、ちょっと熱めだな」


 ヤナさんカナさんは、お湯に手を入れて温度を確かめました。このちょっと熱めの温泉、発見して即座に活用するハナちゃんの度胸は凄いですね。


「お湯が沸く泉なんて、初めて見た」

「ここって、不思議なところね」


 エルフ達が居た森には、温泉は無かったようです。初めて見る温泉に、ヤナさんカナさんは興味津々。手ですくったり、においをかいでみたりと色々確かめました。


 四つある池のうち、もうもうと湯気を吹き出す岩の側にある、一番小さな池。これは熱くて手も入れられません。残りの三つの内、二つはぬるめのお湯でしたが、水浴びするにはちょっと狭い感じです。

 残りの一つ、一番大きな池はちょっと熱めですが、人が数人入るのに十分な大きさでした。

 ハナちゃんもこの池で水浴びしたそうですから、二人は重点的にその池を調べ始めます。

 皆が使っても問題ないか、注意点はどこかを調べていきます。


 途中カナさんは、調べ終わるのを待ちきれなかったようです。抜け駆けして、顔を洗ったりしていました。

 そして、お肌つやつやになりました。


 カナさんはとうとう手に入れたのです。つやつやお肌を。


 「キャー! お肌つやつやよ! つやっつや!」


 お肌つやつやになって、なぜか踊りだしたカナさんを放置し、ヤナさんは調査を続けます。

 ここで何か言うと、女子がキレッキレになるのを知っているからです。

 踊りだすカナさんと、黙々と調査するヤナさん。お肌への必死さの違いが現れました。


 そしてしばらく、ヤナさんが一人で調べた結果。これなら皆で使っても、問題なさそうなことがわかりました。


「大丈夫そうだね。カナはどう思う?」


 お肌つやつやを手に入れてほくほく顔のカナさん、目をキラキラさせながら言います。


「これはすごいわ。この池はお肌つやつやになるの!」


 あまり参考になる意見は、もらえませんでした。まあ大体はヤナさんが調べたので、良いでしょう。

 温度もちょっと熱いくらいで問題なさそうですし、何より体の汚れが良く落ちます。

 これは良いものを見つけた、ハナのお蔭だな。ヤナさんはそう思いました。


「五人から六人くらい一度に入れそうだから、それぞれのおうちで順番に使えば良いわね」

「これならみんな水浴びできるな。ハナよくやった! 助かったよ」


 二人はハナちゃんを撫でます。


 なでなで。なでなで。


「えへへ、えへへ」


 ヤナさんカナさんに、頭をなでられたハナちゃん、さらにご機嫌です。

 こうして、水浴び問題が解決を見ました。三人は皆に知らせる為、村に戻ります。


 三人が村に戻ると、腐敗した組織は奥様方が壊滅させていました。悪は滅びるのです。



 ◇



「あったまったわ~」

「顔トゥルットゥルとか、素敵」

「お肌すべすべ」


 女性陣がほくほく笑顔で言います。

 ハナちゃんが発見した温泉に、皆で順番に入ってきたのでした。お肌がつやつやしています。美肌効果のある温泉だったのでしょうか。

 エルフ達にとって、生まれて初めての温泉。皆よく温まってほんわかです。


「ハナちゃんよく見つけたわね~」

「お手柄よね~」

「凄いわ~」


 なでなで。なでなで。なでなで。


「うふ~」


 顔テッカテカ問題を解決して、お手柄のハナちゃん。皆に撫でられてご機嫌です。


「それに引き替え、男共の役に立たない事といったら、ないわ~」

「ヤナさん以外、誰も水場探ししてなかったとか、ないわ~」


 奥様方は、まだ水場班にちくちく言いっています。しかし彼女たちだって、一歩間違えればおうちを草の汁まみれにしていた、ということを棚に上げていますね。

 結局のところ、ハナちゃんがいなければ、お掃除班も失敗していたのですが……。


「すんません」

「山菜一杯とってきたからゆるして」

「水場はありますん」


 そんなことは知らない水場班。肩身が狭いです。一人だけ若干粘っていますが。

 ちなみに彼らも、ちゃっかり温泉に入ってお肌はつやつやです。

 ちゃっかり組に属するつやつやエルフの一人が言いました。


「でもあの泉、不思議だよな。お湯が湧いてんだもん」


 あからさまな話題そらしです。しかし今現在最大の関心事である温泉の話題。皆が食いつきます。


「あんなに良いものがあるなんて、ここは凄いところね」

「お肌に良い感じがするわ」

「疲れがとれた気がする」


 口々に温泉の感想を言います。同じくつやっとしたヤナさんは、調べていて思ったことを皆に伝えます。


「あそこは人の手が入って居ますね」

「人の手?」


 ヤナさん以外のエルフ達、初めて見る温泉に夢中で、そこまで観察していませんでした。ガッツリ温泉に入ってきたのに、全く気付かないのはどうかと思いますが。

 ヤナさんは、人の手が入って居ると思った理由を伝えます。


「ええ、池の底が平らだったでしょう? 自然にああはなりません」

「言われてみれば」

「池に入り易いよう、傾斜面も付いていました。だから、お年寄りも入り易かったでしょう?」

「親切~」


 皆納得顔です。普通気が付くものですが、何せ珍しいものに夢中で、そこまで頭が回りませんでした。そういうことにしておきましょう。

 そしてやっとこ、エルフ達は気づきます。あの不思議な池、どうやら誰かが作ったもののようだ、と。

 皆の理解が広まったところで、ヤナさんは話を続けました。


「そもそも脇道がある時点で、人の手が入って居ますしね」

「そういえば、脇道があるんだからそうだよな」

「どうして気づかなかっただ」


 割と使えないエルフ達です。そんな彼らを率いるヤナさんは、苦労が多いですね。


「というわけで、あの池、どうやら管理している人がいるようです」

「管理している人? タイシさんかな」


 エルフ達は、大志の顔を思い浮かべます。確かにあの人なら。そんな考えが、エルフ達に広がって行きました。


「そうでしょうね。あの人はこの山を所有している、という事ですので、あの池の事も知っているんじゃないでしょうか」

「んだんだ。あの池のもっと便利な利用方法とか、知ってそう」

「楽しみだわ~」

「明日聞いてみましょう」


 温泉談義に花が咲きます。ほかほかつやつやになりますから、温泉に入った後は皆ご機嫌です。話も弾むというものです。


「夕食を食べた後、また入りたいわ~」

「美味しいものを食べた後、あったまるとか、素敵」

「これ以上美肌になったらどうしましょう。うふふ、うふふ」


 特に女性陣は、すっかり温泉がお気に入りの様子。なんせ、お肌つやつやになりますから。お肌は女子の死活問題なのです。何名かは、食い意地が先に来ているようですが。


「それじゃみなさん、さっぱりしたところで、夕食の準備を始めましょう」

「あい~」

「山菜沢山あるからな」

「これで水場もさがしてればね~」


 夕食の話題が出たのを機に、ヤナさんが声掛けをします。そろそろ夕食の時間ですし、ちょうどいい頃合いです。

 ヤナさんの声掛けに従って、皆ゾロゾロと炊事場に向かいます。大勢でワイワイ作り、ワイワイ食べる食事。これもエルフ達の楽しみになっていました。皆で食べる食事は、不思議とより一層美味しく感じるのです。

 今日の夕食は何にしようかな、ラーメンかな、天ぷらかな。両方やっちゃおうか。そんな事を話し合いながら、和気あいあいと歩いてきました。


 こうして、大志の居ない、エルフ達だけで過ごす初めての日は過ぎて行きました。何の情報もない割には、まあまあ良くやった方です。


 しかし、温泉というエルフ達にとっては珍しいものを見つけて、皆そっちに気をとられてしまったせいでしょうか。あることに誰も気づきませんでした。


 エルフの皆さん、お洗濯を忘れていますよ?


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