第十七話 増えたでござる
一話が超長くなったので、二話に分割しました。
本日は二話の投稿となりますので、十七話に引き続き、十八話もお楽しみ下さい。
「きゃい~」
「きゃい~きゃい~」
「きゃい~きゃい~きゃい~」
増殖したでござる、の巻。
妖精さんたちを送り出して、数日。
寂しいな、早く帰ってきてくれないかな、とか思っていたら――増殖したでござるよ。
今、村には百人くらいの妖精さんたちが訪れて、大騒ぎとなっている。
「おっきなおうち、たくさんだね! たくさんだね!」
「おっきなひとたち、こんにちは! こんにちは!」
「ふしぎなところだね! ふしぎ!」
「おだんごたべる? おだんご!」
妖精さんたち、見るもの全てが珍しいのか、もう大はしゃぎだね。
あっちにぴこぴこ、こっちにぴこぴこ。道行く人に自慢のお団子を振る舞ったり、一緒に遊んだり。
みんなご機嫌で、「色付き粒子」をキラキラ放出している。
「タイシ~、ようせいさん、いっぱいです~!」
「もうなんか、すっごい賑やかですね! というか、増えちゃいましたね!」
ハナちゃんとユキちゃんは、妖精さんが倍くらいになって、嬉しそうである。
まあ、実の所俺も、無人だったお花畑が賑やかになって嬉しいのだけど。
……しかし、またなんで治療が必要な子たちが、こんなに来ちゃったんだろうか?
ひとまず、お団子を食べてもらいながら、詳しい話を聞いてみよう。
「みんな遠路はるばる、ようこそいらっしゃいました。歓迎で甘いお団子あげるから、こっちにおいでませ」
「あまいおだんご! おだんご!」
「どんなの? どんなの?」
「きゃい~!」
きゃいきゃいと集まって来た子たちの中に、サクラちゃんがいるね。
ちょうどいいから、サクラちゃんに話を聞いてみよう。
「この子達は、どうしたの? あっちじゃ治せなかった?」
「よくわかんなかったの! よくわかんなかった!」
「あえ? わかんなかったです?」
サクラちゃんは、良くわからなかったと言う。
……何が?
「え? 何が分からなかったの?」
「もれてるかどうか、わからなかったよ! わからなかったよ!」
「え? 漏れてるかどうか分からなかった?」
何で? こんなに色がついていて分かりやすいのに。
「あえ? ……むむ? むむむ?」
……ん? ハナちゃんが俺を見てむむむむってなったけど。
撫でとく?
「むふ~」
ハナちゃんをむふむふにしてみたけど、ハナちゃんは何かひっかかったのだろうか?
しばらく、むふむふと考え中だ。
そして、一分くらいむふむふした後――。
「――あややや! わかったです~。……ユキ、タイシきづいてないです~」
おや? ハナちゃんがユキちゃんに耳打ちして、こしょこしょやっている。
「あ! そういえば!」
それを聞いて分かったのか、ユキちゃんが「あっちゃ~」て顔をして俺を見た。
……なになに? 俺がどうしたの?
「え? 二人ともどうしたの? 自分、もしかしてやらかした?」
「あや~……タイシ、いいにくいですけど……」
「そのですね……、色付き粒子が見える人って、今は三人しかいないわけでして……」
――あ。
「羽根が脆化しかけている部分は、その三人しかきちんと診断できないのでは、と……」
「もれてるか、ハナたちにはわからないです?」
あああああ!
そういやそうだった! それなりに「見えちゃう人」じゃないと、脆化病だって「診断」が出来ないじゃないか!
……やらかしたでござる。
なんとか「治療技方法」は確立したけど――「診断方法」確立を、してないでござる……。
「……心の底から、すまんかった」
「あや~、タイシしょんぼりです~」
「ま、まあそう言う事もありますよ! というか、全員気づいて無かったですから」
「あっちにいって、きづいたね! きづいたね!」
ハナちゃんとユキちゃんが、慰めで肩をぽむぽむとしてくれる。
サクラちゃんは、きゃいきゃいと周りを飛びながら、てへぺろしている。
ほんとみんな、すまんかったのだ……。
「それでね! それでね! それっぽいこを、てわけして、つれてこようってはなしになったの! なったの!」
――今、なんと。
サクラちゃん、きゃいっきゃいで恐ろしい事を言ったけど……。
みんなで「手分けして」って言ったよね?
「……もしかして、他にもまだまだ、それっぽい子がきちゃう?」
「くるよ! くるよ! どしどしくるよ! あっちはもう、あかるくなったからね! あかるくなったの!」
「あや! どしどしきちゃうです!?」
「大志さん、これって……」
……。
――あっはっは! また村がにぎやかになるぞ!
「それは良いね! 村がもっと賑やかになる。これは楽しそうだ!」
「タイシ、うれしそうです~」
「まあ、賑やかなのは良い事ですね」
そうそう、これはこれで、良いよね。
妖精さんを送り出した後の村は、やっぱりちょっと寂しくなっていた。
でも、これからどしどし来ちゃうわけで。
今よりもっと、村が華やかになるのは間違いなし!
「みんな大歓迎だから、どしどし来て良いよ。お団子沢山つくっちゃおう!」
「おだんご! おだんご!」
「たくさんつくるね! た~くさん!」
「きゃい~」
お団子というワードに、他の妖精さんたちもフィッシュ!
もうこの時点でめっちゃくちゃ賑やかだけど、まだまだいらっさる。
ははは! 楽しくなるぞ!
あと、診断方法はどうするか、また考えないとな。
でも大丈夫、きっとなんとかなるさ。なると良いな。……なるよね?
◇
『このへんと、このへんから、もれてるぽいよ』
「ここだね! めじるしつけとくよ! めじるし!」
「きゃい~」
メカ好きさんと手分けして、ある程度の診断はして。
応急処置をしたうえで、また巫女ちゃんに診断してもらおう。
いずれ診断技術は確立しないといけないけど、そこはまあ、ぼちぼち開発していかないとね。
「タイシおつかれです~。あまいおやつ、もってきたです~」
「お疲れ様です。お茶をどうぞ」
「二人ともありがとう。ごちそうになるね」
おやつを食べて、お茶を飲んで、ほっと一息。
「おつかれなの」
「ホットケーキだー!」
メカ好きさんも、奥さんのナノさんから差し入れを貰って、キャッキャしているね。
診断のお手伝い、ありがとうございますだ。
そうしてお仕事に目途を付けて、まったりしていた時の事。
ふと、気になることを思い出した。
サクラちゃんが先ほど、気になることを言っていたのを、思い出したのだ。
たしか「明るくなった」とか。
これってもしかして、あの夜ばかりだった妖精さん世界に……朝、がやって来たってことかな?
確認してみよう。
「そういえば、明るくなったってさっき言ってたけど、朝になったの?」
「そんなかんじだね! あさっぽいやつだよ! あさっぽいやつ!」
「あさになったです?」
「たぶんね! たぶん!」
ふわっとした感じだけど、どうもそれっぽい。
いざ治療を始めたはいいが、診断が出来ず。羽根に穴が空く前の、予防治療が出来なかった。
だからそれっぽい子を、みんな連れてくることになったわけだ。
ちょうど良いことに、妖精世界に朝がやってきた。だから一気に移動を始めた、という事なんだろうな。
俺がやらかした結果こうなったわけだけど、この状況はうちの村には、幸となる。
この結果に、上手いこと乗っかろう。妖精さん世界との絆を、もっともっと深めよう。
だってこれからも、大勢来るらしいからね。どしどし迎え入れて行こう!
そんな方針を考えたところで、話は最初に戻って。
妖精さん世界が朝っぽいやつになったというのに、興味が沸いた。
あの長い夜が明けた世界はどうなっているのか、見てみたいと思ったわけだ。
正直、佐渡の時もこの間の送別会の時も、暗くて良くわからなかったからね。
ちょっと、サクラちゃんに案内をお願いしてみようかな?
「ねえ、明るくなった君たちの世界を見てみたいのだけど、案内をお願いできるかな?」
「いいよ! いいよ! あんないするよ!」
サクラちゃんはきゃいっきゃいで承諾だね。
それじゃあ、ハナちゃんんとユキちゃんも誘って、朝を迎えた妖精さん世界を、見に行ってみよう。
◇
サクラちゃんに案内されてやって来た、妖精さん世界。
そこは確かに、朝っぽい感じに明るくなっていた。
「ホントに明るくなってるね」
「ぽかぽかようきだよ! ぽっかぽか!」
きゃいっきゃいのサクラちゃんが先導して、妖精さん世界を探検中だ。
朝のような明るさの中、空には三日月のような天体が見える。
あれはたしか、前はぼんやりしていて見えなかった、妖精さん世界のお月様かな?
「あや~、あたりいちめん、はいいろです~」
「凄い規模の、お花畑だったんですね……」
そして地面を見てみれば、どこまでも続く、灰色のお花畑。
辺り一面、灰化花で埋め尽くされていた。
なんというか……想像を絶する規模だ。
「こんな大きな花畑が、灰化しちゃったんだね……」
「たいへんだったの! たいへん!」
「ハナたちのもりと、おんなじです~」
「これも、調べないといけませんね」
しばし呆然と、灰化した妖精花畑を見つめる。
ユキちゃんの言う通り、これもしっかり調査しないといけないな。
「――あ」
おや? ユキちゃんがたたたっと走って行って、何かを拾っている。
さっそく何か、興味深いサンプルでも見つけたのかな?
「大志さん大志さん! ほらこの謎の物体! これはぜひ採取して、調査すべきですよ!」
何かを拾ったユキちゃん、なぜか曇りなき澄んだまなこになっていた。
謎の物体? どれどれ……。
……ほほう、これはこれは。
「ユキちゃん、おぬしもワルよのう。……ふふふふふふ」
「いえいえ、お代官様ほどでは。……フフフ」
ユキちゃんが持ってきたダイヤの原――おっと謎の物体は、なんだかキラキラとした鉱物が確認できて。
不思議な物体だなあ。これはこれは、採取してじっくりと調べないといけないなあ。
「あや~、ふたりとも、わるいおとなのかおです~」
「めがうつろだね! うつろ!」
――おっと! 顔に出ていた。ハナちゃんがジト目で俺たちを見ている。
いや、違うんだよ。これはあれなんだ。
あれ系なんだ。
◇
「タイシさん、これとか凄くないですか? 青いやつですよ!」
「うわ! ブルーダイヤ――おっと青い謎鉱石だね!」
今俺とユキちゃんは、とても尊い学術調査中だ。
妖精さん世界には、興味深い謎の物体が、ゴロゴロしている。
ああ、学問って素晴らしいなあ。
「あや~、どんどんわるいかおになっていくです~」
「どんよりだね! どんより!」
またもやジト目ハナちゃんから、容赦ない突っ込みが。サクラちゃんも、見たまんまを実況している。
いや、これはあくまで、純粋で清らかなる学術調査っぽいやつなんだ。
それっぽい、あれ関係でして。
……ま、まあ今日はこれ位にしておこう。
だって、まだまだ沢山、その辺に謎の物体D原石が転がっているからね。
慌てなくても、良いのだ。
というわけで、今日の調査はそろそろ切り上げよう。
「ユキちゃん、今日はこの辺にしとこうか。もう三時間も時間経ってるからね」
「え? もうそんな時間ですか。なんだか実感がわかないですね」
「そうだね。もう夕方になるよ」
「あや! ゆうがたになってるです?」
時計を確認したら、良い時間になっていた。
妖精さん世界は変化がゆっくり過ぎて、時間経過が感覚として鈍ってしまう。
常に時計をみて、時間を確認しないといけないね。
「あや~、おつきさまもうごかないから、わかんなかったです~」
ハナちゃん自慢の腹時計も、妖精さん世界では感覚がずれちゃうみたいだね。
確かに、空の三日月はずっと同じ位置から動いていない。
まるで、時間が止まっているような感覚を覚える。
ほんと、妖精さん世界は不思議だ。長い夜、長い朝、動かない月。
すべてがゆっくりしている。
……ん?
いや、まてよ? なんか変だぞ?
ゆっくりとは言え、日照は変化しているよね。夜が明けて、朝になっている。
そして、空に輝くお月様も、前はぼんやりとしか見えなかったのに、今は三日月だ。
変化は、確実にしている。
しかし――お月様の位置だけ、変化が無い。
変だ、これは変だ。夜が明けるなら、この星は回っているという事になる。
なのに、お月様の位置は――ずっと同じ。
これに当てはまる条件というと……。
「あえ? タイシどうしたです?」
「何か、お考えですか?」
「きゃい?」
ずっと同じ位置にある不思議な月について考えていると、三人が心配そうに見つめてきた。
今考えている仮説を、説明しようか。
ただ、他にも可能性はある。まだ、仮説の仮説にしか過ぎないんだよな。
……確認して、確証が得られたら説明することにしよう。
「まあ、あの『お月様』について、ちょっと気づいたことがあってね」
「あえ? おつきさまです?」
「そう言えば、あのお月様って……かなり巨大ですね」
「まんまるになったときは、とってもきれいだよ! とっても!」
三人は空を見上げて、三日月ちゃんを見つめ始めた。
ユキちゃんの言う通り、かなりの巨大な「お月様」だ。
ちたまのお月様より大きくて、体感では四倍から五倍くらいに見えるね。
「俺が思うに、多分――『逆』だね。あれは」
「逆というと、一体……」
「あえ? ぎゃくです?」
「さかさま? さかさま?」
三人は意味が分からないようだけど、多分「逆」じゃないかと思う。
それは、あの「お月様」を数時間観測すれば、判明する。
天体望遠鏡を持ってきて、あの「お月様」とやらを観測してみようじゃないか!
「色々証拠を集めるから、その時説明するね」
「たのしみです~」
「証拠集めですか」
「まあ、後日だね。今日はひとまず、これくらいにしておこう」
ということで、結論は観測結果待ちということにして、妖精さん世界を後にする。
洞窟を抜けると、村はもう夕方だった。
「それじゃみんな、おうち帰ろうか」
「あい~! おうちかえるです~」
「今日もお疲れ様でした」
「たのしかったね! たのしかったね!」
みんなで歩いて、村へと向かう。
とその時、スマホがぷるぷるした。メールの自動受信かな?
どれどれ……。
”件名:母からの忠告”
……お袋からのメールだな。忠告って、一体何だろう?
ちょっと怖いけど、本文を見ないと……もっと、怖い事になる予感がする。
俺は危機管理には、自信があるんだ。というわけで、怖いけど本文を見てみよう。
どんな忠告かな……と。
”大志、明日はホワイトデーよ。まさか忘れていないでしょうね?”
……。
明日、ホワイトデー、だと……!
わ、忘れてた! 何にも準備してないぞ!
――大変だー!!!!!
◇
「うふ~、うふふ~」
「子猫亭のスイーツより取り見取りなんて、素敵なホワイトデーですね!」
(とろけるおそなえもの~)
お袋の忠告のおかげで、事なきを得た。
慌てて子猫亭へ電話をかけて、子猫亭自慢のスイーツフルコースをご馳走だ。
そんなコースは実は無いのだけど、特別に用意してもらった。
子猫亭のみなさん、本当に助かりました。あと、お袋も忠告ありがとうだ。
もし、お袋が忠告してくれなかったら……。
「? 大志さんどうされました?」
「いや、何でもないよ。ユキちゃんいつも可愛いなって思っただけ」
「ふ、ふふふふふ……こうかはばつぐんだ」
ユキちゃんはご機嫌過ぎて、耳としっぽが見えちゃっている。
お袋の忠告が無かったら、ご機嫌耳しっぽじゃなくて、どんより黒オーラが発生していた可能性が高いね。
いやはや、世の中どこに危機が転がっているか、わからないもの。
俺は未然に、危機を防いだのだ。見よ! この危機管理能力!
「タイシタイシ~、このチョコレートパフェ、おかわりいいです?」
(これおいしい~)
ご機嫌ユキちゃんは一安心として、ハナちゃんはチョコレートパフェに首ったけだね。
エルフ耳がでろんと垂れて、顔はとろんとしている。
神輿もチョコレートパフェが気に入ったようで、ハナちゃんと一緒にお代わりだ。
どしどし食べて頂きたい。
「あ、そうそう。こっちのケーキは、お土産に好きなの選んで良いからね」
「わーい! おうちのみんなへ、おみやげにするです~」
(おみやげおそなえもの~)
ハナちゃんと神輿は、お土産と聞いて大はしゃぎだね。
存分に選んでくださいだ。
「フ、フフフ……。お返しが来たって事は、そういう事よね……フフフ」
そしてユキちゃん、例の進捗ノートに、またなにやら書き込んでいる。
だんだんと円環のような、複雑な図が完成しつつあるけど、危険な感じがするよ。
しかし、それについて触れたらもっと危険な感じがするよ。
とまあこんな感じで、楽しく? ホワイトデーのお返しは出来たのだった。
三人とも思う存分甘いものが食べられて、大満足してくれた。
「大志、別口で注文受けてたやつな」
「あ、大将ありがとうございます」
お会計の際は、大将から「二人分」のギフトラッピングされた、ケーキも受け取る。
別口で注文しておいた、俺なりの気遣いだ。
「あえ? タイシそれなんです?」
「ラッピングされてますけど」
(おそなえもの?)
それを見た三人は首を傾げる。
おそらくこれは、必要な物なんだよね。
「ほら、村にはあと二人、ホワイトデーのお返しをしないといけない人がいたでしょ?」
「あ、そう言えば」
ユキちゃんは分かったようだね。そう、マイスターとマッチョさんの二人だ。
確か腕グキさんとステキさんから、バレンタインでチョコを貰っていたよね。
おそらく彼らはホワイトデーの事を知らないから、こっちでフォローしてあげないと。
……でないと、恐ろしいことになりかねない。
危機は未然に防いでおくのだ……。おくのだ……。
――――。
そして翌日、マイスターとマッチョさんに、経過報告を受ける。
「なんか、やさいいために、おにくがふえたかんじ」
「りょうりをちゅうもんすると、おおもりにしてくれるようになったじゃん?」
どうやら、きちんと効果は出たようだ。
良かった良かった。二人の危機は、未然に防がれたのだ……。
お袋にも、お礼の電話をしておこう。
お袋の忠告のお蔭で、三人とも危機を回避できたのだから。
『もしもし、大志どうしたの?』
「お袋、忠告ありがとう。無事、危機は脱したよ」
『あんた、やっぱり忘れてたのね……』
「面目ない」
お袋的には、やっぱりな展開だったようだ。ほんと、面目ないでござる……。
最近、やらかしまくりでござるよ……。
そうして、お袋からちょっとしたお説教をしてもらったところで。
『大志、働き過ぎなのよ。たまには立ち止まって、ぼーっと空を見るのも良いわよ』
「そうするよ。本当、助かった。ありがとう」
そんなアドバイスを貰った。確かに最近、動きっぱなしだったな。
ちょっと余裕が無かったかもだ。
『まあ、あまり無理しないでね』
「うん、気を付ける。それじゃあ、また何かあったら電話するね」
『ええ。それじゃあ、またね』
お袋との電話を終えて、白い日の騒動は終了した。
ふ~、無事に終わって、ほっと一息だね。
さ~て、今日はもうお仕事しないで、温泉に浸かってゆっくりするかな。
「またタイシさん、しゃしんをうつすどうぐに、はなしかけてる。かなりおつかれ」
「これは、ほぐしてあげないとな」
「あしつぼ」
ん? 後ろに何か、人の気配が――。
やはり危機管理能力ゼロ