表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十五章 天空から見下ろす、大地の景色は
218/448

第十七話 増えたでござる

一話が超長くなったので、二話に分割しました。

本日は二話の投稿となりますので、十七話に引き続き、十八話もお楽しみ下さい。


「きゃい~」

「きゃい~きゃい~」

「きゃい~きゃい~きゃい~」


 増殖したでござる、の巻。


 妖精さんたちを送り出して、数日。

 寂しいな、早く帰ってきてくれないかな、とか思っていたら――増殖したでござるよ。

 今、村には百人くらいの妖精さんたちが訪れて、大騒ぎとなっている。


「おっきなおうち、たくさんだね! たくさんだね!」

「おっきなひとたち、こんにちは! こんにちは!」

「ふしぎなところだね! ふしぎ!」

「おだんごたべる? おだんご!」


 妖精さんたち、見るもの全てが珍しいのか、もう大はしゃぎだね。

 あっちにぴこぴこ、こっちにぴこぴこ。道行く人に自慢のお団子を振る舞ったり、一緒に遊んだり。

 みんなご機嫌で、「色付き粒子」をキラキラ放出している。


「タイシ~、ようせいさん、いっぱいです~!」

「もうなんか、すっごい賑やかですね! というか、増えちゃいましたね!」


 ハナちゃんとユキちゃんは、妖精さんが倍くらいになって、嬉しそうである。

 まあ、実の所俺も、無人だったお花畑が賑やかになって嬉しいのだけど。

 ……しかし、またなんで治療が必要な子たちが、こんなに来ちゃったんだろうか?

 ひとまず、お団子を食べてもらいながら、詳しい話を聞いてみよう。


「みんな遠路はるばる、ようこそいらっしゃいました。歓迎で甘いお団子あげるから、こっちにおいでませ」

「あまいおだんご! おだんご!」

「どんなの? どんなの?」

「きゃい~!」


 きゃいきゃいと集まって来た子たちの中に、サクラちゃんがいるね。

 ちょうどいいから、サクラちゃんに話を聞いてみよう。


「この子達は、どうしたの? あっちじゃ治せなかった?」

「よくわかんなかったの! よくわかんなかった!」

「あえ? わかんなかったです?」


 サクラちゃんは、良くわからなかったと言う。

 ……何が?


「え? 何が分からなかったの?」

「もれてるかどうか、わからなかったよ! わからなかったよ!」

「え? 漏れてるかどうか分からなかった?」


 何で? こんなに色がついていて分かりやすいのに。


「あえ? ……むむ? むむむ?」


 ……ん? ハナちゃんが俺を見てむむむむってなったけど。

 撫でとく?


「むふ~」


 ハナちゃんをむふむふにしてみたけど、ハナちゃんは何かひっかかったのだろうか?

 しばらく、むふむふと考え中だ。

 そして、一分くらいむふむふした後――。


「――あややや! わかったです~。……ユキ、タイシきづいてないです~」


 おや? ハナちゃんがユキちゃんに耳打ちして、こしょこしょやっている。


「あ! そういえば!」


 それを聞いて分かったのか、ユキちゃんが「あっちゃ~」て顔をして俺を見た。

 ……なになに? 俺がどうしたの?


「え? 二人ともどうしたの? 自分、もしかしてやらかした?」

「あや~……タイシ、いいにくいですけど……」

「そのですね……、色付き粒子が見える人って、今は三人しかいないわけでして……」


 ――あ。


「羽根が脆化しかけている部分は、その三人しかきちんと診断できないのでは、と……」

「もれてるか、ハナたちにはわからないです?」


 あああああ!

 そういやそうだった! それなりに「見えちゃう人」じゃないと、脆化病だって「診断」が出来ないじゃないか!


 ……やらかしたでござる。

 なんとか「治療技方法」は確立したけど――「診断方法」確立を、してないでござる……。


「……心の底から、すまんかった」

「あや~、タイシしょんぼりです~」

「ま、まあそう言う事もありますよ! というか、全員気づいて無かったですから」

「あっちにいって、きづいたね! きづいたね!」


 ハナちゃんとユキちゃんが、慰めで肩をぽむぽむとしてくれる。

 サクラちゃんは、きゃいきゃいと周りを飛びながら、てへぺろしている。

 ほんとみんな、すまんかったのだ……。


「それでね! それでね! それっぽいこを、てわけして、つれてこようってはなしになったの! なったの!」


 ――今、なんと。

 サクラちゃん、きゃいっきゃいで恐ろしい事を言ったけど……。

 みんなで「手分けして」って言ったよね?


「……もしかして、他にもまだまだ、それっぽい子がきちゃう?」

「くるよ! くるよ! どしどしくるよ! あっちはもう、あかるくなったからね! あかるくなったの!」

「あや! どしどしきちゃうです!?」

「大志さん、これって……」


 ……。


 ――あっはっは! また村がにぎやかになるぞ!


「それは良いね! 村がもっと賑やかになる。これは楽しそうだ!」

「タイシ、うれしそうです~」

「まあ、賑やかなのは良い事ですね」


 そうそう、これはこれで、良いよね。

 妖精さんを送り出した後の村は、やっぱりちょっと寂しくなっていた。

 でも、これからどしどし来ちゃうわけで。

 今よりもっと、村が華やかになるのは間違いなし!


「みんな大歓迎だから、どしどし来て良いよ。お団子沢山つくっちゃおう!」

「おだんご! おだんご!」

「たくさんつくるね! た~くさん!」

「きゃい~」


 お団子というワードに、他の妖精さんたちもフィッシュ!

 もうこの時点でめっちゃくちゃ賑やかだけど、まだまだいらっさる。

 ははは! 楽しくなるぞ!


 あと、診断方法はどうするか、また考えないとな。

 でも大丈夫、きっとなんとかなるさ。なると良いな。……なるよね?



 ◇



『このへんと、このへんから、もれてるぽいよ』

「ここだね! めじるしつけとくよ! めじるし!」

「きゃい~」


 メカ好きさんと手分けして、ある程度の診断はして。

 応急処置をしたうえで、また巫女ちゃんに診断してもらおう。

 いずれ診断技術は確立しないといけないけど、そこはまあ、ぼちぼち開発していかないとね。


「タイシおつかれです~。あまいおやつ、もってきたです~」

「お疲れ様です。お茶をどうぞ」

「二人ともありがとう。ごちそうになるね」


 おやつを食べて、お茶を飲んで、ほっと一息。


「おつかれなの」

「ホットケーキだー!」


 メカ好きさんも、奥さんのナノさんから差し入れを貰って、キャッキャしているね。

 診断のお手伝い、ありがとうございますだ。


 そうしてお仕事に目途を付けて、まったりしていた時の事。

 ふと、気になることを思い出した。

 サクラちゃんが先ほど、気になることを言っていたのを、思い出したのだ。

 たしか「明るくなった」とか。


 これってもしかして、あの夜ばかりだった妖精さん世界に……朝、がやって来たってことかな?

 確認してみよう。


「そういえば、明るくなったってさっき言ってたけど、朝になったの?」

「そんなかんじだね! あさっぽいやつだよ! あさっぽいやつ!」

「あさになったです?」

「たぶんね! たぶん!」


 ふわっとした感じだけど、どうもそれっぽい。

 いざ治療を始めたはいいが、診断が出来ず。羽根に穴が空く前の、予防治療が出来なかった。

 だからそれっぽい子を、みんな連れてくることになったわけだ。

 ちょうど良いことに、妖精世界に朝がやってきた。だから一気に移動を始めた、という事なんだろうな。


 俺がやらかした結果こうなったわけだけど、この状況はうちの村には、幸となる。

 この結果に、上手いこと乗っかろう。妖精さん世界との絆を、もっともっと深めよう。

 だってこれからも、大勢来るらしいからね。どしどし迎え入れて行こう!


 そんな方針を考えたところで、話は最初に戻って。

 妖精さん世界が朝っぽいやつになったというのに、興味が沸いた。

 あの長い夜が明けた世界はどうなっているのか、見てみたいと思ったわけだ。

 正直、佐渡の時もこの間の送別会の時も、暗くて良くわからなかったからね。

 ちょっと、サクラちゃんに案内をお願いしてみようかな?


「ねえ、明るくなった君たちの世界を見てみたいのだけど、案内をお願いできるかな?」

「いいよ! いいよ! あんないするよ!」


 サクラちゃんはきゃいっきゃいで承諾だね。

 それじゃあ、ハナちゃんんとユキちゃんも誘って、朝を迎えた妖精さん世界を、見に行ってみよう。



 ◇



 サクラちゃんに案内されてやって来た、妖精さん世界。

 そこは確かに、朝っぽい感じに明るくなっていた。


「ホントに明るくなってるね」

「ぽかぽかようきだよ! ぽっかぽか!」


 きゃいっきゃいのサクラちゃんが先導して、妖精さん世界を探検中だ。

 朝のような明るさの中、空には三日月のような天体が見える。

 あれはたしか、前はぼんやりしていて見えなかった、妖精さん世界のお月様かな?


「あや~、あたりいちめん、はいいろです~」

「凄い規模の、お花畑だったんですね……」


 そして地面を見てみれば、どこまでも続く、灰色のお花畑。

 辺り一面、灰化花で埋め尽くされていた。

 なんというか……想像を絶する規模だ。


「こんな大きな花畑が、灰化しちゃったんだね……」

「たいへんだったの! たいへん!」

「ハナたちのもりと、おんなじです~」

「これも、調べないといけませんね」


 しばし呆然と、灰化した妖精花畑を見つめる。

 ユキちゃんの言う通り、これもしっかり調査しないといけないな。


「――あ」


 おや? ユキちゃんがたたたっと走って行って、何かを拾っている。

 さっそく何か、興味深いサンプルでも見つけたのかな?


「大志さん大志さん! ほらこの謎の物体! これはぜひ採取して、調査すべきですよ!」


 何かを拾ったユキちゃん、なぜか曇りなき澄んだまなこになっていた。

 謎の物体? どれどれ……。


 ……ほほう、これはこれは。


「ユキちゃん、おぬしもワルよのう。……ふふふふふふ」

「いえいえ、お代官様ほどでは。……フフフ」


 ユキちゃんが持ってきたダイヤの原――おっと謎の物体は、なんだかキラキラとした鉱物が確認できて。

 不思議な物体だなあ。これはこれは、採取してじっくりと調べないといけないなあ。


「あや~、ふたりとも、わるいおとなのかおです~」

「めがうつろだね! うつろ!」


 ――おっと! 顔に出ていた。ハナちゃんがジト目で俺たちを見ている。

 いや、違うんだよ。これはあれなんだ。

 あれ系なんだ。



 ◇



「タイシさん、これとか凄くないですか? 青いやつですよ!」

「うわ! ブルーダイヤ――おっと青い謎鉱石だね!」


 今俺とユキちゃんは、とても尊い学術調査中だ。

 妖精さん世界には、興味深い謎の物体が、ゴロゴロしている。

 ああ、学問って素晴らしいなあ。


「あや~、どんどんわるいかおになっていくです~」

「どんよりだね! どんより!」


 またもやジト目ハナちゃんから、容赦ない突っ込みが。サクラちゃんも、見たまんまを実況している。

 いや、これはあくまで、純粋で清らかなる学術調査っぽいやつなんだ。

 それっぽい、あれ関係でして。


 ……ま、まあ今日はこれ位にしておこう。

 だって、まだまだ沢山、その辺に謎の物体D原石が転がっているからね。

 慌てなくても、良いのだ。

 というわけで、今日の調査はそろそろ切り上げよう。


「ユキちゃん、今日はこの辺にしとこうか。もう三時間も時間経ってるからね」

「え? もうそんな時間ですか。なんだか実感がわかないですね」

「そうだね。もう夕方になるよ」

「あや! ゆうがたになってるです?」

 

 時計を確認したら、良い時間になっていた。

 妖精さん世界は変化がゆっくり過ぎて、時間経過が感覚として鈍ってしまう。

 常に時計をみて、時間を確認しないといけないね。


「あや~、おつきさまもうごかないから、わかんなかったです~」


 ハナちゃん自慢の腹時計も、妖精さん世界では感覚がずれちゃうみたいだね。

 確かに、空の三日月はずっと同じ位置から動いていない。

 まるで、時間が止まっているような感覚を覚える。


 ほんと、妖精さん世界は不思議だ。長い夜、長い朝、動かない月。

 すべてがゆっくりしている。


 ……ん?

 いや、まてよ? なんか変だぞ?


 ゆっくりとは言え、日照は変化しているよね。夜が明けて、朝になっている。

 そして、空に輝くお月様も、前はぼんやりとしか見えなかったのに、今は三日月だ。

 変化は、確実にしている。


 しかし――お月様の位置だけ、変化が無い。


 変だ、これは変だ。夜が明けるなら、この星は回っているという事になる。

 なのに、お月様の位置は――ずっと同じ。

 これに当てはまる条件というと……。


「あえ? タイシどうしたです?」

「何か、お考えですか?」

「きゃい?」


 ずっと同じ位置にある不思議な月について考えていると、三人が心配そうに見つめてきた。

 今考えている仮説を、説明しようか。

 ただ、他にも可能性はある。まだ、仮説の仮説にしか過ぎないんだよな。

 ……確認して、確証が得られたら説明することにしよう。


「まあ、あの『お月様』について、ちょっと気づいたことがあってね」

「あえ? おつきさまです?」

「そう言えば、あのお月様って……かなり巨大ですね」

「まんまるになったときは、とってもきれいだよ! とっても!」


 三人は空を見上げて、三日月ちゃんを見つめ始めた。

 ユキちゃんの言う通り、かなりの巨大な「お月様」だ。

 ちたまのお月様より大きくて、体感では四倍から五倍くらいに見えるね。


「俺が思うに、多分――『逆』だね。あれは」

「逆というと、一体……」

「あえ? ぎゃくです?」

「さかさま? さかさま?」


 三人は意味が分からないようだけど、多分「逆」じゃないかと思う。

 それは、あの「お月様」を数時間観測すれば、判明する。


 天体望遠鏡を持ってきて、あの「お月様」とやらを観測してみようじゃないか!


「色々証拠を集めるから、その時説明するね」

「たのしみです~」

「証拠集めですか」

「まあ、後日だね。今日はひとまず、これくらいにしておこう」


 ということで、結論は観測結果待ちということにして、妖精さん世界を後にする。

 洞窟を抜けると、村はもう夕方だった。


「それじゃみんな、おうち帰ろうか」

「あい~! おうちかえるです~」

「今日もお疲れ様でした」

「たのしかったね! たのしかったね!」


 みんなで歩いて、村へと向かう。

 とその時、スマホがぷるぷるした。メールの自動受信かな?

 どれどれ……。


”件名:母からの忠告”


 ……お袋からのメールだな。忠告って、一体何だろう?

 ちょっと怖いけど、本文を見ないと……もっと、怖い事になる予感がする。

 俺は危機管理には、自信があるんだ。というわけで、怖いけど本文を見てみよう。

 どんな忠告かな……と。


”大志、明日はホワイトデーよ。まさか忘れていないでしょうね?”


 ……。


 明日、ホワイトデー、だと……!

 わ、忘れてた! 何にも準備してないぞ!


 ――大変だー!!!!!



 ◇



「うふ~、うふふ~」

「子猫亭のスイーツより取り見取りなんて、素敵なホワイトデーですね!」

(とろけるおそなえもの~)


 お袋の忠告のおかげで、事なきを得た。

 慌てて子猫亭へ電話をかけて、子猫亭自慢のスイーツフルコースをご馳走だ。

 そんなコースは実は無いのだけど、特別に用意してもらった。

 子猫亭のみなさん、本当に助かりました。あと、お袋も忠告ありがとうだ。


 もし、お袋が忠告してくれなかったら……。


「? 大志さんどうされました?」

「いや、何でもないよ。ユキちゃんいつも可愛いなって思っただけ」

「ふ、ふふふふふ……こうかはばつぐんだ」


 ユキちゃんはご機嫌過ぎて、耳としっぽが見えちゃっている。

 お袋の忠告が無かったら、ご機嫌耳しっぽじゃなくて、どんより黒オーラが発生していた可能性が高いね。

 いやはや、世の中どこに危機が転がっているか、わからないもの。

 俺は未然に、危機を防いだのだ。見よ! この危機管理能力!


「タイシタイシ~、このチョコレートパフェ、おかわりいいです?」

(これおいしい~)


 ご機嫌ユキちゃんは一安心として、ハナちゃんはチョコレートパフェに首ったけだね。

 エルフ耳がでろんと垂れて、顔はとろんとしている。

 神輿もチョコレートパフェが気に入ったようで、ハナちゃんと一緒にお代わりだ。

 どしどし食べて頂きたい。


「あ、そうそう。こっちのケーキは、お土産に好きなの選んで良いからね」

「わーい! おうちのみんなへ、おみやげにするです~」

(おみやげおそなえもの~)


 ハナちゃんと神輿は、お土産と聞いて大はしゃぎだね。

 存分に選んでくださいだ。


「フ、フフフ……。お返しが来たって事は、そういう事よね……フフフ」


 そしてユキちゃん、例の進捗ノートに、またなにやら書き込んでいる。

 だんだんと円環のような、複雑な図が完成しつつあるけど、危険な感じがするよ。

 しかし、それについて触れたらもっと危険な感じがするよ。


 とまあこんな感じで、楽しく? ホワイトデーのお返しは出来たのだった。

 三人とも思う存分甘いものが食べられて、大満足してくれた。


「大志、別口で注文受けてたやつな」

「あ、大将ありがとうございます」


 お会計の際は、大将から「二人分」のギフトラッピングされた、ケーキも受け取る。

 別口で注文しておいた、俺なりの気遣いだ。


「あえ? タイシそれなんです?」

「ラッピングされてますけど」

(おそなえもの?)


 それを見た三人は首を傾げる。

 おそらくこれは、必要な物なんだよね。


「ほら、村にはあと二人、ホワイトデーのお返しをしないといけない人がいたでしょ?」

「あ、そう言えば」


 ユキちゃんは分かったようだね。そう、マイスターとマッチョさんの二人だ。

 確か腕グキさんとステキさんから、バレンタインでチョコを貰っていたよね。

 おそらく彼らはホワイトデーの事を知らないから、こっちでフォローしてあげないと。


 ……でないと、恐ろしいことになりかねない。

 危機は未然に防いでおくのだ……。おくのだ……。


 ――――。


 そして翌日、マイスターとマッチョさんに、経過報告を受ける。


「なんか、やさいいために、おにくがふえたかんじ」

「りょうりをちゅうもんすると、おおもりにしてくれるようになったじゃん?」


 どうやら、きちんと効果は出たようだ。

 良かった良かった。二人の危機は、未然に防がれたのだ……。


 お袋にも、お礼の電話をしておこう。

 お袋の忠告のお蔭で、三人とも危機を回避できたのだから。


『もしもし、大志どうしたの?』

「お袋、忠告ありがとう。無事、危機は脱したよ」

『あんた、やっぱり忘れてたのね……』

「面目ない」


 お袋的には、やっぱりな展開だったようだ。ほんと、面目ないでござる……。

 最近、やらかしまくりでござるよ……。

 そうして、お袋からちょっとしたお説教をしてもらったところで。


『大志、働き過ぎなのよ。たまには立ち止まって、ぼーっと空を見るのも良いわよ』

「そうするよ。本当、助かった。ありがとう」


 そんなアドバイスを貰った。確かに最近、動きっぱなしだったな。

 ちょっと余裕が無かったかもだ。


『まあ、あまり無理しないでね』

「うん、気を付ける。それじゃあ、また何かあったら電話するね」

『ええ。それじゃあ、またね』


 お袋との電話を終えて、白い日の騒動は終了した。

 ふ~、無事に終わって、ほっと一息だね。


 さ~て、今日はもうお仕事しないで、温泉に浸かってゆっくりするかな。


「またタイシさん、しゃしんをうつすどうぐに、はなしかけてる。かなりおつかれ」

「これは、ほぐしてあげないとな」

「あしつぼ」


 ん? 後ろに何か、人の気配が――。


やはり危機管理能力ゼロ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ