第十二話 謎、解明
巫女ちゃんという日本有数の、なんか色々見えちゃう人に診断を依頼した結果。
妖精さんたちの羽根から、妖精ぱわー漏れてるよ事件が発覚した。
羽根から出ているあのキラキラ粒子、白以外は妖精パワーの漏出の結果だという。
白い粒子が正常で、色つき粒子はよろしくない。
色付き粒子は多かれ少なかれ、妖精ぱわーが漏れている証拠……ということが分かった。
村に戻って、集会場にてちゃんと説明する。
それを聞いた妖精さんたちはというと――。
「――どうりで! どうりで!」
「ちからはいんないの、それなんだ! それなんだ!」
「おどろきのじじつ~」
……妖精さんたちは、この事実を知ってきゃいっきゃい。
今まで分からなかった、力が出ない理由が判明したので喜んでいるようだ。
とにかく明るい妖精さんたちだね。
「わたしたち、もれてない? もれてない?」
「もれちゃうとたいへんだね! たいへんだね!」
「とべないりゆう、それなんだ! それなんだ!」
正常な妖精さんたちは、たしかに白い粒子をキラッキラ出している。
……正常なのは、このたった五人だけ。
そしてこの「五人」という人数はなぜなのか、考えてみた。
すると、一つだけ当てはまることがあった。
おそらくこの子たちは――。
「――ねえ、君たちはみんなを助けようと、船で来た子たちだよね?」
「そうだよ! そうだよ!」
「じまんのおふね、つくったよ! つくったよ!」
「わりとじかん、かかりました~」
……なぜか飾ってあるお花の船に乗り込んで、救助隊妖精ちゃんたちはきゃいきゃいする。
こちらも、とにかく明るい妖精ちゃんだ。
白いキラキラ粒子がまぶしい。
とまあ明るい妖精ちゃんたちから、もうちょっと材料を集めてみよう。
この子たちは、灰化した花畑から脱出した子かどうか。
これが――きわめて重要だ。
「君たちは、お花が灰色になったときに……脱出が出来た子かな?」
「できたよ! できたよ!」
「となりのおはなばたけまで、とんだの! とんだの!」
「けっこうとおかったよ! つかれたよ!」
やはり、この子たちは脱出が出来た妖精さんたちなわけだ。
これがわかれば、一つの比較が出来るようになる。
脱出が出来た妖精さんたちは、妖精ぱわーが漏れていない。
しかし、逃げられなかった妖精さんたちは、妖精ぱわーが――漏れている。
これはつまり、こう言い換えることが出来る。
――妖精ぱわーが漏れていることが原因で、脱出する力が残されていなかった。
力が漏れていて弱っていたから――避難できなかった。
こういうことなのだと思う。
そしてこれで、洞窟の「門」が開かなかった理由もわかった。
この子たちは力が弱っていて、隣の花畑までは移動できない。
そんな状態で灰化した場所に戻したところで、どうにもならないからだ。
救助隊妖精ちゃんたちすら戻さなかったのも、ある程度想像はつく。
だってこの子たちがいなかったら……なにが正常かすら、わからなかったからだと思う。
正常な状態とそうではない状態、これが対比できないのだ。
こんな大事なことに、半年も気づかなかったのは……痛恨の極みだ。
メカ好きさんの離脱体質、あれがなかったらいまだに気づいていなかったろう。
エルフたちがいてくれなかったら、きっとずっと気づかずにまずい事態になっていたかも。
もしもあの時、佐渡旅行をしていなかったら……。
……こわい想像は、やめておこう。今は前を向いて進まないと。
前を向いて進むと決めたら、目標を立てないとね。
まず進む道を決めよう。道のりを定義しよう。
この「妖精ぱわー漏れてるよ」現象に、一つの明確な定義をつけよう。
ということで、まず一つ定義だ。
妖精さんたちの羽根から、力が漏れているこの現象は――。
――病、とする。
形質的か遺伝的か生活習慣かは分からないが、これは――病だ。
俺はそう定義する。
そしてこの病を――脆化病、と名付けよう。
負荷がかかると羽根が脆化する、妖精さん特有の病気だ。
目標は、この病の治療法確立。
……どうやるかは、これから考えないといけないけど。
◇
さっそく問題発生。
飛行中にも妖精ぱわーを使っているので、あんまり飛ぶと羽根が脆化する。
なので、飛行禁止令を出さないといけないわけだ。
しかし、それをしてしまうと――。
――五十人以上、空を飛べなくなる。
この真冬に空を飛べない妖精さんが、五十人以上。
……無理でござる。妖精さんたち、生活ができなくなる。
空を飛べないという事は、要介護状態になるわけで。
村の今の人員と経済構造では……不可能だった。
「これは困った……。八方ふさがりだ」
「むむむ~」
「しかし、飛んでしまうと羽根が脆くなってしまうのですよね……」
「とべないと、みんなこまっちゃう! こまっちゃう!」
集会場では、俺とハナちゃんとユキちゃん、そして羽をなんとか補修した妖精ちゃんの四人が頭を抱えていた。
飛ぶと脆化が進行する。しかし、飛べないと日々の生活が成り立たない。
あちらを立てればこちらが立たず、おまけに良い手が見つからない。
どうしたものか……。
――そして二日後。
「羽根に負荷をかけずに飛ぶ方法があれば……」
「むむむ、むむむ」
「ヘリウム風船もドローンも、危ないですよね……」
「これは難しいですね。どうすればよいか、ぜんぜん、おもいうかびません……」
「むずかしいの」
「どうすりゃええべか」
「おもいつかないよ! むずかしいよ!」
村の方々も巻き込んで、何かいい手は無いかと考えたけど――有効な手立てが無かった。
集会場では、頭ぷしゅ~っとなった村人たちが、頭を抱える。
今この村は、頭ぷしゅ~村となっていた。
「これはもう、なるべく飛ばないようにして……羽根をいたわるしか、方法はないかな」
「むむ~」
「大志さんが言う通り、それしかないですかね……」
「じかんをかせぐしか、無いですかね」
「なるべくとばないね! ……できるかな? できるかな?」
結局ろくな案は思い浮かばず。
羽根の脆化を承知の上で、なるべくいたわるという方策しか見いだせなかった。
「あ~、羽根に負荷をかけずに飛ぶことができる方法、何かあれば良いのだけど」
「私たちの技術では、無理ですね……」
「あや~、こっちでもむりですか~」
忸怩たる思いだけど、ちたま技術は万能ではないからね。
重力には逆らえない、物理法則には逆らえない。無い物は無い。有る物は有る。
これがちたま文明の、現段階での限界だ。
「……ねえ、あれつかえるんじゃないの?」
「いやでも、あれはあぶなくねえか?」
「でも、おれもこいつらも、へいきじゃん?」
「キュ?」
おや? ステキさん、マッチョさん、マイスターがなんかひそひそ話をしている。
あとマイスターはなんで、トビリスちゃんをこちょこちょしているんだろう?
「これは……はなしてみようじゃん?」
「まあ、おまえがいいっていうなら」
「やるだけやってみましょうよ」
「キュキュ~」
おや? 三人とトビリスちゃんがこっちにやってきたけど……。
なにかあるのかな?
そして、こっちにやってきたマイスターは、こう言った。
「あの、タイシさん……。もしかしたら、はねをいためずに……とべるかもしれないじゃん?」
え? 羽根を痛めずに飛べる?
◇
「らくちん~! これならとべるよ! とべるよ!」
「からだがおもくないね! これはいいね!」
「らくちんすぎて、だめになる~」
「キュキュ~」
今妖精さんたちは、きゃいっきゃいで空を飛んでいる。
トビリスちゃんも、そんな妖精さんたちに飛び方を教えるように、一緒に飛んでいる。
マイスターが教えてくれた方法が――上手くいったのだ!
「わたしもとべてる! とべてる! きもちいい~!」
そしてなんと! 羽根をなんとか補修した妖精ちゃんも――飛べた!
今は心底楽しそうに、きゃいっきゃいで空をふよふよと飛んでいる。
ぴこぴこではなく、ふよふよだ。
例の方法だと、ちょっと飛び方が異なるっぽい。
「羽根の方は大丈夫? 無理はしてない?」
「だいじょうぶだよ! だいじょうぶ!」
「ちからをこめなくても、とべちゃう~!」
「どこまでも、とんでいけそうだよ! だよ!」
ユキちゃんが念のため確認したけど、羽根に負荷はかかっていないようで。
マイスターが教えてくれた方法、とんでもなく凄い!
「うまくいって、よかったじゃん」
「おまえのだいしっぱいも、やくにたつことあるんだな」
「みんなとべるようになったとか、すてき!」
「キュキュキュ~」
マイスター、マッチョさん、ステキさんは提案した方法が上手くいって、大喜びだ。
そんな三人の周りを、トビリスちゃんたちがご機嫌で飛び回る。
「しかしまさか、火を通さないと空に浮かんでしまうとは……」
「彼、いぜんにそのまま食べて、空をとんでましたね。あと、光ってました」
「ひをとおさないといけないっておきて、いみがわかったです~」
そう、マイスターたちが教えてくれた方法とは。
――火を通していないあのシダ植物を食べる、だった。
これはエルフたちに昔から伝わる掟らしく、外部の人には話さない事柄だったという。
試すと危ないから、ないしょにしていたそうだ。
……まあ、俺もこれを知っていたら、好奇心で試してたね。
今だってめっちゃ試したい。空飛べるとか凄いじゃん!
……かじったらダメかな?
「タイシさん、ダメですよ? 火はとおさないと」
シダ植物をじっと見ていたら、ヤナさんに止められた。
考えていること、モロバレだったでござるよ……。
とまあそれはさておき。
今回エルフたちが真相を教えてくれたおかげで、妖精さんたちの飛行禁止問題はなんとかなった。
同時に、お袋が研究していた「光る人影伝説」の真相もわかってしまった。
まさか、マイスターの毒見芸が、伝説となっていたとは……。
これ、お袋が聞いたら唖然とするだろうな。伝説の当事者が、そこにいるんだもの。
あと、伝説の真相がこんな腰砕けな物だったとか。
「おばけじゃなくて、よかったです~」
(あんしんした~)
「ギニャギニャ」
そしてハナちゃんと神輿は、なぜフクロイヌのフクロに入っているのかな?
というかフクロイヌは平気そうなんだけど、一体どうやって自分より大きいハナちゃんを格納しているのか……。
◇
妖精さん飛行禁止問題は、なんとかなって。
羽根をなんとか補修した妖精ちゃんも、飛べるようになって。
これでめでたしめでたし――とはならない。
現状維持が出来ただけだからね。
――次は、脆化病の治療だ。
今現在、内科的処置にて羽根の負荷を減らしている。
ただ、飛行制限が緩和されただけだ。
妖精ぱわーを使ったこねちゃうぱわーは、現在制限中だ。
増幅石やダイヤモンドの加工等、負荷がかかりそうな作業は全て自粛してもらっている。
これらの制限を取り払うには、やはり脆化病の治療が必要だ。
では、どうやって治療するかだ。
それについては、また調査と分析が必要だ。
幸い白粒子ちゃんと漏れ粒子ちゃんという比較対象がわかっているので、何が正常で何が問題なのかは特定できると思われる。
そんなわけで、今度は資料の作成と分析を始めたわけだが……。
「きれいなはね、みてね! みてね!」
「じまんのはねだよ! じまんだよ!」
「きれいでしょ! きれいでしょ!」
そう、またなんだ。
また妖精さん撮影会になったんだ。
「はいそこでえがお!」
「こうかな? こうかな?」
「いいわね~」
カナさんが、俺でも良くわかってないS○NYのなんかすごい一眼レフを使いこなしていてですね。
教えていない機能は使っていないようだけど、なんかいい写真を撮るわけですよ。
絵を書く能力が高いと、写真撮影するときの構図もビシっと決まるのかな?
とまあ妖精さんブロマイドがまた沢山出来た。
次は、これらの資料を用いて羽根を詳しく調べる作業に入る。
幸い巫女ちゃんのおかげで、漏れている箇所は分かっている。
この問題の個所を分析して、なぜ妖精ぱわーが漏れるのかを突き止めるわけだ。
ちなみに分析時には、正常かそうではないか色々言葉を交わす。
というわけで、妖精さんたちは参加しない。
だって……問題とか良くないとか色々言われたら、ヘコんじゃうだろうからね。
議論は必要だけど、論争を患者に聞かせるのは問題がありすぎる。
妖精患者さんたちの精神衛生上、ここはひっそりと行うことにした。
「……大志さん、問題の個所の拡大写真です。でも、正直なにが問題なのか……」
「あや~、ぜんぜんわからないです~」
「私も、どこがわるいのか分からないですね」
またぞろみんなで妖精さんたちの写真を眺めるけど、ユキちゃんもハナちゃんも全然分からないようだ。
ヤナさんも写真を右から左から覗き込んでいるけど、さっぱりのご様子。
まあ、問題の個所だけを眺めても、難しいとは思う。
だって、正しい姿は何なのかがわかっていないからね。
というわけで、正常なものとそうではないものを比較してみましょう!
「みんな、まずは正常な状態が何かを調べよう。ほらこれ」
「あえ? ようせいさんがふたりのしゃしんです?」
「二人とも、いい笑顔ですね」
「かわいいなあ」
一枚の写真を取り出して、みんなに見せる。
そこには、姉妹の妖精さんがなんかもうすごい良い笑顔で写っている。
妖精スマイル、ビシっと決まっているね。
そしてこの、姉妹――というのがキモだ。
「この少し背が低い方が妹さんで、救助隊のうちの一人なんだ」
「あえ? きゅうじょにきたひとです?」
ハナちゃんが首をこてっと傾げて、妖精さんの姉妹が写った写真を覗き込む。
「そうだよ。この子は、病気にかかってない子なんだ」
「力が漏れていない子ですね」
「なるほど、この子のはねが、けんこうなはねなのですね」
「むむむ?」
妹さんのほうを、みんなが見つめた。
この子の羽根は正常なので、まずはこの光のパターンが正しいというわけだ。
ただ、これだけじゃ片手落ちだ。
なぜなら妖精さんたちは、みんな羽根の形や模様が異なる。
一人ひとり、唯一無二のパターンを持っているわけで。
正常パターンが何なのか、問題のあるパターンは何かを調べるには、けっこう厳しい条件ではある。
しかし、この子たちは姉妹である。
なんとこの姉妹、羽根のパターンが――良く似ているのだ。
かなり近似できるほど似ている。
この姉妹の存在が、正常パターンの特定とそうでないパターンの特定を可能とする。
全てのカギは――この姉妹が握っている、というわけだ。
「姉妹だから、羽根の構造がよく似ているんだ。だから、お姉さんの羽根と妹さんの羽根を比較することにより、様々な事が判明すると思う」
「確かに、良く似ていますね。これなら……」
「わかりやすいです~」
「そう言うことですか」
というわけで、お姉さんの問題の個所と、妹さんの羽根を比較する。
拡大写真を表示だ。
「ここ、ここからお姉さんは妖精ぱわーが漏れている」
「妹さんと比較すると……違いは特にありませんね」
「みたかんじ、わからないです~」
羽根の表面を拡大した写真では、特に何も分からない。
では次に、光っているときの写真だ。
「これでどうかな?」
「正直、なんとも言えないですね……」
「おんなじにみえるです~」
「う~ん、ちがいがわからないですね」
ユキちゃん、ハナちゃん、ヤナさんは頭を抱える。
俺の目にも同じように見える。
だけど確かに、ここが問題の個所だ。ここに何かある。
「何度見ても、同じに見えますね」
「あや~、わかんないです~」
「これは、むずかしいですね……」
その日は結局、頭を抱えて終わったのだった。
◇
自宅に帰って。
あきらめきれない俺は、悪あがきで資料を眺めていた。
きっと何かあるはず。何かが違っているはず。
そうして、妖精さんたちの羽根を写した写真や、キメッキメポーズの妖精ブロマイドを眺める。
みんなかわいいなあ。
――おっと脇道に逸れた。
妖精さんの可愛さで和むのではなく、脆化病の原因を探さないと。
というわけで、妖精さん姉妹の羽根の拡大写真を加工したり、粒子を出す瞬間のスーパースロー映像を眺める。
なんとも美しいパターンで光るその羽根。
幾何学的な光跡にて、妖精ぱわーが通り抜け加速して。
そして数十倍にも増幅される様子が、ディスプレイに映し出される。
ずっと見ていても飽きない、幻想的な映像だ。
根本から出た光は、外周から内周へと軌跡を描いて加速する。
その際……あれ?
光が曲がっているところで粒子が出ているな……。
羽根の構造体に従って光が通っていくけど、直線ではない。
羽根の面積を有効活用するため、光の通り道は複雑な経路を描いている。
……どうやら、その経路のカーブがきつい所で粒子が出ているようだ。
ではなぜ、カーブがきつい場所で粒子が出る?
このカーブ、なんか怪しいぞ?
……もっと詳しく調べてみよう。
――――。
そうして観察すること、三時間。
姉妹妖精さんの妖精粒子映像をスロー再生にて繰り返し観察、比較することで……一つの法則が見えてきた。
綺麗に粒子が放出される部分の曲がり角は、サイクロイド曲線。
漏出粒子が放出される箇所は、角度がきつい。急カーブであった。
サイクロイド形状のカーブに差し掛かった光は、綺麗な軌跡を描いて粒子となり放出されている。
この正常粒子は放出しても力が漏れないらしいので、妖精パワー増幅時の副産物なのかもしれない。
人が呼吸したら、酸素を取り込み二酸化炭素を排出する。
そんな感じの物なのかも。
まあ要するに、この羽根は人間でいう呼吸時のガス交換みたいなことも行っているのかも。
この副産物の排出は、サイクロイドに乗せて遠心力で放り出している、とか。
まあなんにせよ、正常なパターンはこの綺麗なサイクロイドに乗せているわけだ。
では、漏出している個所はどうかというと。
まるで――壁にぶつかって跳ね返ったように、放出されていた。
きついカーブに到達したとき、ぶつかって跳ね返っているように見えるのだ。
さらにエネルギーがぶつかるたびに……強い光を出している。
これ……遠心力が利用できず、うまくエネルギー排出が出来ていないのかもしれない。
……もしかして、このカーブの形状が問題で――構造体が脆化するのでは?
妖精さんの羽根は、不要な粒子をサイクロイドに乗せて、選別した上で放出する必要がある。
しかし、問題の個所ではそれが出来ずに……高負荷がかかる。
高エネルギーが流路に衝突し、痛めて行く。
この負荷により羽根が脆化していき、やがて――焼き切れる。
そんな仮説が出来上がってくる。
もしこの仮説が……正しいならば。この現象を治療するためには。
問題の個所を――バイパス手術、しないと無理なのでは?
キツいカーブの流路を、滑らかなサイクロイド曲線を描くように。
外科的に処置しないと、どうにもならないのでは?
……。
ちいさなちいさな妖精さん。
あの子たちが抱えている、この問題。
原因らしきものは、分かってきた。
しかし、これを対処するとなると――見当がつかない。
うちの長い歴史でも、おそらくこれは……過去最難関の、難問。
解決は……極めて困難。
しかし、この難問を解決できたなら。
妖精世界で同じ病に苦しむ子も――救えるかも!
あの村だけの話じゃあない。
避難してきた妖精さんたちだけじゃあない。
もっともっと大勢の妖精さんたちを、助けられるかもしれない。
もしそれが実現できたら――素晴らしいのでは!
たくさんの笑顔が、見られるのでは。
あの、ちいさなちいさな、それでもとても明るい、あの笑顔が。
――よーし! 前向きに行こう!
ちいさなちいさな存在が、空を飛べなくなった存在が。
笑顔で大空を羽ばたけるように! 力を取り戻せるように!
まあ……方法はあれだ、全然分からないんだけど。