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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十五章 天空から見下ろす、大地の景色は
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第二話 あにゃ?


 お袋はエルフたちに伝わる伝承を聞き取り調査して、また集会場で小話大会中だ。

 そして俺は俺で、前から計画していた冬ならではのイベントを開催中だ。

 今日はイベントが同時進行なので、なかなか忙しい日である。


 今こっちで開催しているのは、雪像を作る催しだ。

 参加者のみなさん、キャッキャと前衛芸術雪像をこさえている。


「タイシ~、ハナのつくったゆきだるま、どうです?」

「……ひとりでどうやって、この大きさの雪だるまを……」


 なお、ハナちゃんは一.五メートルくらいの雪だるまをこさえた模様。

 これいったい、どうやって作ったの?


「こういうあそびも、いいもんだな~」

「かんたんにかたちがつくれるとか、すてき」

「おれのじまんのゆきだるま、みてほしいのだ」


 ステキさんは、冒涜的な宇宙的存在っぽい雪像を作っているね……なんかにょろにょろしている。

 ちょっと正気度が下がるかもしれない。

 他の方々のは……縄文土器みたいな文様が付いた雪だるまを作ったりと、造形に凝ったものもちらほら。


 特筆すべきは、おっちゃんエルフだね。

 おっちゃんエルフの雪だるまとかは、見事なフクロオオカミの雪像になっているよ。

 普通に凄いよ。あと、それ一時間で作ったのがもっとすごいよ。


「ばうばう?」

「ばう~」

「ばう」


 あまりの凄さに、フクロオオカミが集まってきちゃったし。

 おっちゃんエルフ、大満足そうな顔だ。

 この調子で、いろいろ雪像を作ってもらったら楽しいかもだね。


「あ、エルフさんたちの雪だるま、耳がありますね」

「トレードマークだからかな?」


 おっちゃんエルフ以外の雪だるまには、ちょこんとエルフ耳が。

 かわいらしいワンポイントとなっていて、目を惹くね。


 とまあ可愛らしい? イベントになったけど、今日も村は平和だ。

 この調子で、ゆったり過ごしましょう!


 ちなみに、おっちゃんエルフが調子に乗ってリアル雪像を沢山作ったので、雪まつりみたいになりました。

 なんだかいつの間にか観光名所が出来ちゃったけど、おっちゃんありがとうだ。

 あとで良いお酒を進呈しておこう。



 ◇



「それでは、わたしたちはあっちのもりにいきます」

「また、あそびにくるかな~」

「しばしのおわかれですね」


 一月もそろそろ終わりになり。長く村で滞在していた、平原のお三方が旅立つ事に。

 目的地はあっちの森なので、まあ来月の中ぐらいにはまた来てくれるだろうけど。


「わたしたちも、いったんあっちのもりにかえります」

「でんちがおやつになるって、おしえてきますね」


 一緒に、元族長さんと団長さんも同行だ。

 賑やかな旅路になるね。お気をつけて、行ってらっしゃい!


 ということで、旅人を見送った翌日。

 今度は親父を見送りだ。


「じゃあ、佐渡に行くな。二月中旬ぐらいには帰ってくるから」

「私も一緒に行くわよ。あっちにも色々、歴史がありそうだから。特に日本書紀に出てきた、佐渡にやってきた謎の粛慎(みしはせ)人の伝承が気になるわ」


 親父は焼き物研修に、お袋はフィールドワークのために佐渡へと旅立っていった。

 夫婦水入らず、とはならないけど、仲良く旅行してくださいだね。


「それとあともうちょっとで、『光る人影伝説』が分かりそうだけど……それらは佐渡でまとめるわ」

「そうなんだ。だいぶ分かってきているの?」

「ええ、結構わかって来たわ。あれは多分、そう昔の話じゃないわね。話に派生がないのが、その証拠よ」


 お袋はどうも、例の稲川さん風語りのあの伝説について、何かわかってきたようだ。

 一緒に話を聞いていた俺にはさっぱりなんだけど、何かつかみどころがあったらしい。

 確かに、話に派生は無かった。全ての話が、ブレていない。

 なるほど、言い伝えだから、派生の多寡でも話が生まれた時期が推測できるんだな。


「ねえねえ、わかってきそうとかいってるよ?」

「あれで、わかるものなんだ」

「いやまさか、それでわかるわけないじゃん……いやまさか」


 お袋がキャッキャと話をしている後ろでは、やっぱり例の三人組がひそひそ話をしている。

 光る人影伝説の話が出ると、いつも気まずそうな三人だけど……。

 どうしたんだろう?


「他にも、蛇に関する言い伝えとかも面白いわ」

「蛇?」

「縄文人と一緒で、蛇信仰があるみたい。蛇を大事にしているみたいで、土器にも蛇身装飾文があるのよ」


 蛇身装飾文とかいわれても、どれがそれだか分からない。

 ただまあ、お袋には分かるんだろう。


「そんなところも、一致するんだ」

「そうなの。というか、ミジャグジ様とかも……もともとは大和民族に対する、先住民の信仰という説があるわ。黒姫伝説だって、大蛇信仰をベースに組み立てられているもの」

「……なんだか、つながって来たね」

「ええ。蛇信仰ある所に――先住民族の影あり、よ」


 エルフたちから話を聞けば聞くほど、奇妙な一致が見えてきているようだ。

 あの養命お酒大人気騒ぎ、ちゃんと話を聞いた成果が出ているんだね。


「まあ、話は長くなるからこの辺で。結果を楽しみにしてらっしゃい。じゃあ、行ってくるわね!」

「大志、行ってくるな。村を頼んだ」

「二人とも、行ってらっしゃい。村は任せてほしい」

「いってらっしゃいです~。ハナも、がんばるです~」


 とまあ、お袋が佐渡に行ってしまうので、村でのフィールドワークはいったんお休みだ。

 暇を見ては、俺もちょっと聞き取り調査などをしておこう。


 こうして、旅立つ人たちを見送る日が続く。

 なんだか、一気に人が旅立っていった感じだ。


「あや~、ちょっとさみしいです~」

「みんなすぐに帰ってくるから、ちょっとの辛抱だよ」

「あい~」


 村から人が旅立っていくのは、まあ寂しい物で。

 ハナちゃんと、しんみり見送ったのだった。


「俺らはまだまだのんびりしてくぜ」

「久々だものね。大志ちゃん、よろしくね」

「私たちも、のんびりしますよ」

「タイシー! ヨロシク!」


 爺ちゃん一行は、温泉施設が気に入りすぎて長居するようだ。

 俺も爺ちゃん婆ちゃんに、孝行するチャンスなわけで。

 ちたまで行きたい場所があったら、いろいろ連れて行ってあげよう。


「みんな、集会場でお茶しようか」

「良いねえ。あの妖精さんたちの和菓子、美味いんだよな」

「甘さがクドくなくて、優しいのよね」

「あにゃ~!」


 今日は気温マイナス二十℃、超極寒。

 あまり外で過ごさず、家に引きこもろう。


 というわけで、みんなで集会場へ移動だ。

 雑貨屋のためにストーブをつけているので、いつでもぽっかぽか。

 お仕事をしていて寒さで参った村人の、避難所にもなっている。

 人が常にいる施設というのは、大事な物だね。


「ふがふが」

「ひいおばあちゃん、こんにちわです~」

「ふがふが~」


 お店番のひいおばあちゃんに元気に挨拶して、集会場へ。

 そこにはヤナさんもいて、無線をモニターしていた。


「あ、タイシさんこんにちわ」

「ヤナさんこんにちは。何かありました?」

「火のようじんで、しょうぼうだんがじゅんかい中なんです」

「消防団のお仕事ですか」

「はい。むせんがあるので、仕事がしやすいですね」


 そんなヤナさん、お茶を飲みながら待機だ。

 他の消防団メンバーが帰ってきたら、おにぎりとあったかいお味噌汁でもご馳走しようかな?

 まあ、帰ってきてから聞いてみよう。


「タイシタイシ~、おちゃがはいったですよ~」

「ハナちゃんありがと、それじゃあゆっくりしようか」

「あい~」


 ハナちゃんが入れてくれたお茶をすすって、ほっと一息。

 梅昆布茶か。寒いときに飲むと、これは美味しいね。


「……あにゃ?」


 そんなほんわかとした一時に、シャムちゃんが何かを見つめて首を傾げた。

 どうしたんだろう?


「あにゃ? あにゃにゃ?」


 そうして、何かをこちらに持ってきた。

 ……紙袋?


「あにゃ~……」


 中を覗くと……衣類がいくつか。


 ――この衣類の模様、見覚えがあるぞ?

 これってたしか……。


「あや! へいげんのひとたちの、ふくです~!」


 ハナちゃんもわかったようだ。これ、平原のお三方の着ていた服だ。

 これ、忘れ物だよ。


「あ~困ったな。これ、どうしよう」

「戻ってきたときに、渡すしかないな」

「もう追いつくの無理だよね、昨日出発しちゃったから」


 連絡手段もないから、どうしようもない。

 せめてあっちの森と、何か連絡をとる手段があれば違うかもだけど。

 残念ながら、今のところ打つ手は無いわけで。


「忘れないように、ここに置いておこう」

「そうするです~」


 こうして、村に忘れ物が残されたのだった。

 そうだよね。こういうこともあるよね。

 今後もこういうことが予想されるから、村に忘れ物保管所を作らないとだめかもだ。


「あにゃ、にゃにゃ~」


 そんな忘れ物を、シャムちゃんはじっと見つめていた。

 平原のお三方と仲良しだっただけに、心配なようだ。

 エルフ世界でもシャムちゃんの世界でも、服は貴重品だ。

 貴重な物を忘れてしまった彼らを、心底心配しているんだろうな。


「まあ、今は待つしか無いよ。大事に保管しておこう」

「あにゃ~」


 シャムちゃんの頭を撫でて、慰めておいた。

 誰かをここまで心配できるなんて、良い子だね。


 ――その次の日。


「あにゃ、あにゃにゃ」

「ミュミュ?」

「あにゃ~」

「ミュ~」


 集会場で、シャムちゃんが羽ネコちゃんとにゃあにゃあしていた。

 何を言っているのかわからないけど、仲は良さそうだね。

 ……おなじネコっぽい系だから、気が合うのかな?


 というか、言葉分かるの?



 ◇



 ――さらに翌日。おやつを買いに、ハナちゃんと駄菓子屋へ。

 そこで、違和感を感じた。


「あえ? なんかちがうです?」

「ハナちゃんも気になった? なんか違うよね?」

「あい~。なんか、たりないかんじです?」


 ハナちゃんも違和感を感じたようで、何か足りない感じがするとのこと。

 なんだろう?


 ……。


 ――あ! 無い! 忘れ物が無い!

 大変だ!


「ハナちゃん大変だよ! 平原の人たちの忘れ物、見当たらないよ!」

「――あややや! たいへんです~!」


 俺とハナちゃん、大慌て!

 わーわーあやややと忘れ物を探す。

 ――しかし、どこを探しても……見つからない。


「うわ~、これまずいよ。どこかに行っちゃったよ……」

「あえ~? あえ~?」


 俺とハナちゃん、ほとほと困り果てる。ハナちゃん「あえ~? あえ~?」と右に左に。

 預かった忘れ物をなくすなんて、大失敗だ……。


「おい大志、大騒ぎしてるけどどうした?」

「大志ちゃん、困りごと?」

「あにゃ?」


 ハナちゃんと一緒にしょんぼりしていると、爺ちゃんたちが騒ぎを聞いてやってきた。

 とりあえず、今起きていることを話そう。


「爺ちゃん、ほらあの忘れ物。あれがどっか行っちゃったんだよ」

「忘れ物? あ~、平原の人たちの服か」

「どっかにいっちゃったの?」

「あい~……」


 爺ちゃんたちも、服が入っていた紙袋、それが置いてあった棚を見て何も無いことを確認する。

 ほんとこれ、どうしよう?


「あにゃ? にゃにゃ~にゃ。にゃあ」


 あれ? シャムちゃんが棚を指さして、にゃあにゃあ言っている。

 ……なんて言っているんだろう?


「爺ちゃん、この子はなんて言っているの?」

「ちっと待て。……にゃあ、あにゃ?」

「あにゃにゃ~」

「あにゃ? にゃにゃにゃ」

「あにゃ~」


 爺ちゃんがシャムちゃんに、あにゃ語で何かを聞いている。

 しばらくにゃあにゃあやりとりがあった後で、爺ちゃんふーっと息を吐いた。

 なんて言ってるのかな?


「……大志、あの忘れ物――送った、って言ってるぞ」

「え?」


 忘れ物を――送った?


「え? どう言うこと? 送ったって、どうやって?」

「おくったです?」


 俺とハナちゃん、意味が分からない。

 だって、渡すのが不可能だったから保管していたわけで。

 それを送った? なにを、どうして?


「あにゃ~」

「ほら、あの羽根の生えたネコちゃんがいたろ? あの子に頼んだんだってよ」

「――え!?」


 なんですと!?


「……シャムちゃん、本当なの?」

「あにゃ? ……ホントホント! タノンダ!」


 聞くところによると、本当らしい。

 どうやら、俺が気づいていなかったこと――あったようだ。



 ◇



 ここはとある世界のとある平原。

 平原のお三方とそのた二人が、のんびり旅をしていました。


「いや~、自転車は快適ですな~」

「すいすい進めるかな~」

「もう、欠かせないわね」

「ばう~」


 キコキコと自転車を漕いで、平原のお三方はもうご機嫌。

 快調に旅路を進んでいました。


「あと一日で着きますな」

「森に帰ったら、お土産を配りませんとな」

「ばうばう」


 元族長さんと団長さんも、快調に自転車を走らせます。

 その後ろには、リアカーを引くフクロオオカミ。

 飴をもぐもぐ食べながら、ご機嫌で走っています。


「そろそろ休憩しますかな?」

「あ、良いですね」

「お茶でも飲みましょう」


 そんな元族長さんと団長さんに、平原のお父さんが休憩を提案しました。

 とくに異論は無いので、お茶をすることに。


「お湯、沸かしますね」

「ゆっくりするかな~」


 そうしてキャンプ道具を取り出し、お湯を沸かし始めます。

 その時のことです。


「――あれ!? 無い! 無いかな!?」


 平原の娘ちゃん、なにやら大慌てです!


「お母さ~ん! 服が! 服がないかな~!」

「あら! それ本当!?」

「本当かな~!」


 娘ちゃんとお母さん、慌てて荷物をひっくり返します。

 しかし、どこを探しても――見つかりませんでした。


「どこかに置いて来ちゃったのかしら……」

「やっちゃったかな~……」

「あ~もしかしたら、あの村に忘れてきたのかも? あの村に行ったら、聞いてみましょう」

「そうするかな~」


 無い物はどうしようもないですからね。

 あの村に保管してあること、祈りましょう。


「あ~、しょんぼりかな~」


 しょんぼり娘ちゃん、ずずずっとお茶をすすってヘコみます。

 さあさあ、元気出して。なんとかなるさ~。


「まあ、そろそろ出よう。服はまた、作ってあげるから」

「もうしわけないかな~」


 ヘコんでばかりはいられません。そろそろ出発しましょうとなりました。

 そうしていそいそと出発の準備のため、お片付けです。


「ん? 何か……聞こえたな?」


 お片付けが終わろうとしているとき、平原のお父さんの耳が……何かを捉えました。

 何か、聞こえたようです。


「ミュ~……」

「あれれ? あの、空を飛んでるのって……」

「――ネコちゃん!?」


 遠く遠くに、空を飛んでこっちに向かってくる存在が見えました。

 エルフのスーパーお目々は、その正体をはっきり捉えていました。

 そう――ネコちゃんが、空を飛んでいるのです!


「ミュミュ~!」

「わああ! ネコちゃんどうしたのかな~!?」

「あ、なにか……ぶら下げているぞ?」


 やがて、ネコちゃんがみんなの所にたどり着きました。

 そしてその首には――紙袋が。


「あ! これ! この袋って!?」

「ミュ~」


 見覚えのある紙袋に気づいた娘ちゃん、さっそく紙袋をのぞき込みます。

 その中には――服が、入っていました!


「わーい! 服! 服が戻ってきたかな~!」

「良かったわね!」

「ネコちゃん、凄いな! 良い子良い子~」

「ミュ~」


 大喜びの娘ちゃんとお母さん、そしてネコちゃんをなでなでのお父さんでした。

 ネコちゃんは褒められて撫でられて、もうご機嫌!

 みんな、良かったね!


「これ、多分……忘れ物に気づいて、あっちの村でなんとかしてくれたんだな」

「そう思うかな~」

「あの村、本当に凄いわね!」


 ネコちゃんを可愛がりながら、平原のお三方はキャッキャと大はしゃぎ。

 無くしたと思っていた物が戻ってきたので、嬉しさもひとしおです。


「君、このまま帰ることは出来る?」

「ミュン」

「大丈夫そうですね」


 元族長さんがネコちゃんに問いかけると、自信のあるような返事が返ってきました。

 団長さんも、その様子をみて一安心です。


「それじゃあ、私たちの写真を撮って、持って行って貰おう」

「あ! それいいかな! 受け取った証明になるかな!」

「良いわね良いわね! さっそく写真、撮りましょう!」


 平原のお父さん、良いこと思いつきましたね。

 これなら、荷物を届けたのが証明出来ます。


「じゃあ私が撮りますので、三人で並んで下さい」

「ネコちゃんも一緒にね」

「ミュ」


 元族長さんがカメラを構えて、三人を撮ってあげるようですね。

 団長さんに勧められて、ネコちゃんも三人のもとへ。


「はい! 写真撮れました」

「ありがとうございます。……じゃあネコちゃん、これをタイシさんとこに届けて欲しいな」

「お願いできるかな~?」

「ミュン!」


 任せて! という感じで、ネコちゃん写真をくわえました。

 そして――羽をぱたぱた。ぱたぱた。

 羽ばたいたネコちゃん、ふわっと飛び上がり――もの凄い速さで飛んでいきます。


「あ、飛んだ」

「わわ! 速いかな!」

「あんなに速く、飛べたのね」

「ミュ~」


 最後に聞こえたネコちゃんの鳴き声は……「またね!」と聞こえた気がしました。



 ◇



 ――同日、夕方。


「ミュ~」

「……平原の人たちの、写真だ」

「あや~、にもつうけとってるです~」

「あにゃ」


 村にネコちゃんが戻ってきた。平原のお三方が映っている写真をくわえて。

 これは……ちゃんと荷物を届けているな。


「まさか、ネコちゃんにこんな特技があったとは……」

「きづかなかったです~」

「ミュミュ~」


 ネコちゃん、「エヘン!」といった感じで得意げだ。

 いやホント、これは凄いよ。


「ネコちゃん凄いよ~、もう褒めまくっちゃうよ!」

「ハナもほめちゃうです~!」

「ミュ~ン、ミュ~ン」


 ネコちゃん、褒められて撫でられてもう超ご機嫌だね。

 ゴロゴロと喉を鳴らして、ひっくり返っている。

 可愛いなあ。


 ……でも、どうしてシャムちゃんはこの特殊能力に気づけたんだろう?

 聞いてみよう。


「シャムちゃん、どうしてこれが分かったの?」

「あにゃ、あにゃ~にゃ?」

「向こうから言って来たそうだ」


 向こうから? ネコちゃん側からの申し出?


「あにゃにゃにゃ」

「このネコちゃんが『僕なら、届けられるよ?』って、聞いてきたんだと」

「ミュン」


 うわ~……これはほんと驚きだ。

 シャムちゃん、このネコちゃんと会話出来てるよ……。

 このネコちゃんの特殊能力、シャムちゃんがいなかったらずっと分からないままだったな。


「ネコちゃんもシャムちゃんも、お手柄だよ! これはもう、たくさんお礼しちゃうよ!」

「あ~にゃ!」

「ミュミュ~!」


 シャムちゃんとネコちゃん、お礼をすると言ったらもうにゃんにゃん大喜びだ。

 さてさて、何をお礼したら良いかな?


 ――とその前に。

 俺は今、ちょっと思いついてしまった。

 もしこれが可能なら……。確認してみよう。


「ね、ねえ。もしかしてさ――」



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