表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十四章 みんな、おかえり!
195/448

第五話 正月イベントと言えば


「あけましておめでとうございます!」

「おめでとうです~!」

「「「わー!」」」


 ――とうとう新年を迎えた。

 記念すべき瞬間だ!

 みんなわーわーぱちぱちと、新年を祝う。


「いや~、一年越せたよ。ほっと一安心だ」

「やったです~!」

「やりましたね!」

(おめでと~)


 ハナちゃんとユキちゃん、そして何故か神輿がくっついてきた。

 いやまあ、みなさんありがとうだね。

 しかしほんと、去年は色々あったなあ。というか今年も色々あるだろう。

 無理せず無理させず、今年もコツコツ頑張ろう。


「今日はこのあと、特に催しはありません。眠くなったら、適時解散で」

「「「はーい!」」」


 無事年越しも終えて、新年を迎えて。

 お正月イベントはまた別に開催するので、楽しく出来たら良いなと思う。


「ちなみに、飲みたい人は朝まで良いですよ。ただ、飲み過ぎないように」

「あ、わたしあさまでのみます」

「おれもなかまにいれてくれ」

「おれも、さんかするじゃん」


 これから先は、だらだらと飲み会だ。

 飲みたい人は、一緒にまったり行きましょうだね。


「私はもう少しお付き合いしたあと、二人の所に泊まりますね」

「おふとん、しいといたわ~」

「ねるまえに、ちょっとおはなししましょう」


 ユキちゃんは腕グキさんちにお泊まりだね。

 三人とも仲が良いので、楽しくお過ごし下さいだ。


「タイシ~、ハナもそろそろおうちかえるです」

「ヤナのこと、おねがいしますね」

「ふがふが」


 ハナちゃんちも、ヤナさん以外は帰宅だ。

 夜十二時過ぎまで起きていることが殆ど無いだけに、ハナちゃんお目々しぱしぱ。

 早くお家に帰って、ぐっすりおねむしてね。


「俺はもうちょっと飲んでくぜ」

「俺も、大志に付き合うか」

「大志、ウィスキー出そうぜ」


 爺ちゃんと親父、そして高橋さんも飲み会組だね。

 飲み会は男ばかりだけど、それはそれで楽しく盛り上がりそうだ。


「あにゃ~……」

「私はこの子を寝かせて、一緒に寝るわね」

「ああ、寝かせてやってくれ」


 シャムちゃんはもう既におねむだ。

 婆ちゃんにおんぶしてもらって、一緒に宿泊施設でおねむだね。

 どうやら可愛がってもらっているようだ。


「私は森でテントを張るわ。年中暖かいなんて凄いわね!」

「ばうばう」


 お袋はフクロオオカミたちと、森でキャンプするようだ。

 せっかくちたまに帰ってきたのに、なぜに野宿をするのだろうか……。

 まあ、お袋だからしょうが無い。


 そうしてだいたいの人が家に帰った後、男だらけの飲み会が始まる。


(むにゃ~)


 しかし、神輿が俺の膝の上から動かない。

 というかそこで寝られると、俺が動けない。

 あれだ、ネコが膝の上で寝ちゃって、数時間動けないアレだ。


「……大志、それ神様なんだよな?」

「なんでそんな、懐かれてんだ?」

「わからない」


 爺ちゃんと親父に指摘されたけど、俺も分からない。

 あと、足しびれてきた……。どうしよう?


 とまあ色々あったけど、飲み会で楽しく時間が過ぎていき――。


「あ~、ふつかよいですねこれ」

「あたまいたい」

「のみすぎたじゃん」

「今日は一日、ゆっくりして下さい」


 ――明け方、飲み過ぎエルフたちを家や宿泊施設に送っていく。

 元旦は特に何もせず、寝て過ごしてもらおう。

 俺は朝方、おせちを配る仕事があるけど。

 それが終われば、あとはだらだら過ごす予定だ。


「神様、おうちでお休み下さい。あとでお供え物を持ってきますね」

(たのしみ~)


 もにょもにょと動く神輿を神棚に戻すと、光の玉がほよほよと神社に戻っていった。

 ゆっくりお休み下さいだね。


 さて、俺も一眠りするか。

 別室に布団をしいて、朝九時くらいに起きればいいや。

 それでは、お休みなさい。


 ……なんだろ、布団がなんか狭苦しいな。

 なんかふわふわしたのが布団の中に沢山――ZZZ。



 ◇



「ギニャ……ギニャ……」

「ピヨ~……」

「キャ~ン」

「ミュ……」

「……ぎゃう」

(むにゃ~)


 朝起きると、動物好きお姉さんが連れこんだ動物たちがみんな布団の中にいた。

 というか俺、半分はみ出してる。どうしてみんなここで寝ているのかと。

 あと神輿がどうして、俺の枕元で寝ているのか。


 ……まあ、賑やかで良いか。


 ということで毛だらけで目覚めたけど、まあすっきりだね。

 ぐっすり眠れたので、疲れは無いな。

 親父と高橋さんはまだ寝ているけど、そのまま寝かせておこう。


 それじゃあ俺は朝の支度をして、みんなの家におせちを配りましょうかね!


 食料庫からおせちセットを取り出して、挨拶がてら各家庭や宿泊所を回る。


「明けましておめでとうございます。お正月に食べるお料理を持ってきましたよ」

「あら~、おいしそうね~」

「ありがとうございます!」

「あ、大志さん明けましておめでとうございます」


 腕グキさんちに行くと、母子とユキちゃんがお出迎えだ。

 三人とも身支度を終えていて、パリっとしている。

 昨日は早く寝たのかな?


 そしてユキちゃんが仲間に加わり、次の家へ。


「これがうわさの、おせち!」

「いろいろはいってる!」

「ごうかだな~」


 各家庭や観光客におせちを配ると、キャッキャと大はしゃぎになる。

 元旦は家族でのんびり、おせちを摘まんで下さいだ。


「これはうまそうじゃん! あいつんちでくおうぜ!」

「そうすっか!」


 マイスターとマッチョさんにおせちを渡したら、腕グキさんちの方に歩いて行った。

 どうせ食べるなら、賑やかな方が良いよね。


「はい妖精さんたち、お正月に食べるお料理だよ」

「おいしそう! おいしそう!」

「とくにこれ! これがおいしそうだよ!」

「どんなあじ~?」


 妖精さんたちにおせちを渡したら、栗かのこに興味が集中した。

 さすが甘い物大好き妖精さんだ。

 これは栗きんとんと見た目は似ているけど、甘さが段違いの隣町名物なんだよね。

 絶対気に入ると思って、大将にお願いして入れて貰ったお菓子だ。

 妖精さん用おせちだけ、このお菓子が大量に入っている。


「これは木の実をめっちゃ甘くしたお菓子で、沢山あるからいっぱい食べてね」

「きゃい~きゃい~」

「ありがとう! ありがとう!」


 きゃいっきゃいになった妖精さんたち、さっそくおせちに群がる。

 それでは、みんなで楽しく食べてね。

 これでだいたいの人たちには配り終えたから、あとはハナちゃんちでまったり過ごそう。


「さて、だいたい配り終わったね」

「あとはハナちゃんのお家だけですね」

「神様も誘って、みんなでおせちを摘まもう」

(よんだ?)


 ――神輿が! 神輿がいつの間にか後ろに!



 ◇



(ごうかなおそなえもの~!)

「いろいろあって、おいしいです~!」

「あさからおさけをのんでいいとは、めでたいですね」

「こういうひも、たまにはいいですね」


 アナタノウシロニ――キラキラミコシ事件はあった物の、無事ハナちゃんちに到着。

 みんなでおせちをつまむことに。

 なお、神輿は俺から離れない。どして?


「こういう和食、久々ね! 栗かのこ貰うわよ!」

「これめっちゃ甘いよね」


 お袋も参加しているけど、いきなり甘い物からだ。

 好きな物から食べちゃう派である。


「タイシタイシ~、きょうはのんびりです?」


 ハナちゃんが今日の予定を聞いてきたけど、ほんとに何もしない。

 お酒を飲んじゃったから車も動かせないし、細かい仕事も上手くはいかないだろう。


「そうだね。お酒も飲んじゃったから、今日は何もしないよ」

「ハナとおうちでまったりするです~!」

「そうしよう」

「うふ~」


 家でまったり過ごすと伝えると、ハナちゃんにっこりだ。

 今日はみんなで、なんもしないで過ごしましょう。

 とはいえ、雑談がてらヤナさんとは多少の打ち合わせはするかな。

 さしあたっては、明日開催予定のイベントについて。


「ヤナさん、明日はモチつきという、こちらでは正月に行う催しをしますけど」

「おかしにつかわれている、あののびるやつですよね」

「そうです。モチ米という粘りけのあるコメをこねこねして、加工するんですよ」

「たのしみです~」


 そうして、まったりとモチつきイベントの話をして、お酒を飲んで。

 ハナちゃんやユキちゃんとボードゲームをしたりして、まったり一日を過ごしたのだった。



 ◇



 翌日、今日はモチつきイベントの開催だ。

 自由参加なんだけど、結局全員集まって期待の眼差しである。


「タイシタイシ~、これなんです?」


 ハナちゃんがキャッキャしながら、(きね)(うす)を指さしているね。

 各種機材と手順を説明しよう。


「まずこの臼の中に蒸したモチ米を入れて、この杵で叩くんだ」

「たたいちゃうです?」

「そう、叩いちゃう。そうしてつぶつぶを無くして、塊にするんだ」

「あや~、てまかけるです~」


 杵をもってぺったんぺったんと動作を見せると、ハナちゃんはえ~って感じになった。

 まあ、これは実演してみせれば良いだろう。

 では次の手順だね。


「こうして塊にしたものをモチと呼んでいて、そこで粉を振りながら丸くこねるんだ」

「おだんご! おだんごこねるよ!」

「おだんごならまかせて! まかせて!」

「こねこね~」


 こねると言ったら、妖精さんたちがきゃいきゃいし始めた。

 そりゃもう、お団子こねこねといったらこの子たちは欠かせないね。

 欠かせないというか、もうお団子をこねたくて仕方が無い様子。

 モチがつけたら、頑張って貰いましょう!


「ほんで、そのおモチってやつができたら、どうすんの?」

「それきになる」

「たべものなのよね?」


 他のみなさん、こねた後どうするかが気になるようだ。

 それも勿論考えておりますよ。

 では、出来たモチをどうするか教えましょう!


「出来たモチは、お汁粉って言う、暖かくて甘~いおやつにするよ」

「おやつです~!」

「しかも、みんなでかまくらの中で食べちゃう。楽しそうでしょ?」

「あい~! それはたのしそうです~!」


 そう、出来たモチはお汁粉にして、かまくらで食事会だ。

 氷で出来た不思議な建物の中で、淡い光に照らされて暖か~いお汁粉を食べる。

 お正月イベントとしては、楽しめるのでは無いだろうか。


「は~い! もちごめってのをむしたわよ~」

「これでいいのよね?」

「たくさん、むしました」

「がんばったの」


 そうして説明しているうちに、いつものお料理大好き奥様方が、モチ米を蒸し上げてくれた。

 これで準備は完了したね。

 それじゃあ、もちつき大会の始まりだ!


「みなさん、準備が完了しました。これよりモチつき大会を始めます!」

「「「わー!」」」


 モチ米は十キロ蒸してある。小モチをだいたい、二百五十個作ることが出来る量だ。

 これだけあれば、村人や観光客全員分間に合うという計算だね。

 では、まず俺と親父で実演して見せましょう!


「親父、俺が杵を担当するから、捏ね取りのほう頼んだ」

「あいよ。任せとけ」


 まず、臼にモチ米を入れる。こっからスピード勝負だ。


「ここからは手早く進めます。まずこのモチ米をこねて、八割……あ~、だいたい殆どこねちゃいます」


 ガシガシと杵でモチ米をこねて、八割ほどモチになった状態にする。


「あや~! つぶつぶがきえてくです~」

「こうすると、またご飯とは違った美味しさになるんだ」

「へえ~」

「たのしみ~」


 えっちらおっちらとこねていくと、みなさん興味深そうにのぞき込んでくる。

 ご飯も美味しいけど、モチはモチで美味しい。

 俺は特に、味噌ベースの雑煮が好きだね。

 さて、八割方モチになったので、そろそろ杵つきしよう。


「親父、行くぞ!」

「よっしゃ来い!」


 気合いを入れて、タイミングを計る。

 それっ!


「えいや!」

「ほい!」

「それっ!」

「ほい!」


 合いの手を掛け合いつつ、腰を入れてモチをつく。

 力を入れすぎると味が変わる。

 あくまでモチが美味しくなるよう、力は入れすぎず、かといって弱すぎず。


「あやややや! あぶないかんじです!」

「うわー! みてるとこわい!」

「すげえええええ!」


 杵で手をつかないか、ハラハラドキドキして見守るみなさんだ。

 でもねこれ、杵をつく側が気をつければ良いんですよ。

 相手側も、一度手を引っ込めたら杵でつくまで待てば良い。

 実はそんなに難しくは無い。

 とかやっているうちに、はい出来上がり!

 ほかほかおモチが出来ました!


「はい出来ました! 妖精さんたち、お団子お願い!」

「おだんご! おだんごつくるよ!」

「きあいはいるね! はいるね!」

「おだんごこねこね~」


 つきあがったモチは、素早く取り出してお団子製造所へ。

 まだ熱いけど、妖精さんたち平気な感じでお団子を量産し始める。


「これをまるめてね! まるめてね!」

「できました~」

「つぎのおだんご! おだんご~」


 モチを手で切り分ける子、素早く丸める子でリズミカルにお団子が出来ていく。

 さすがお団子職人妖精さんだ。小もちが次々に出来上がっていく。

 小モチ作りは、妖精さんたちにお任せで問題ないね。

 それでは、他の方々もやってもらいましょう!


「はい、今のが一連の手順です。ささ、どしどしモチをついて下さい」

「俺はこっちの臼でやるぜ。久々だから、気合い入るな!」

「私も、お餅つきは久々ね」

「あにゃ~」


 爺ちゃん婆ちゃんとお供の人たち、さっそくぺったんぺったん始める。

 この辺手慣れているだけに、見ていて安心感があるね。

 シャムちゃんはネコの本能がうずくのか、杵の方を目で追いながらうずうずしているけど……。

 あ、しっぽがふりふりしていて可愛い。


「あ、じゃあわたしはこっちで」

「ヤナ、おモチをてでこねるほうおねがいね」

「う、うん……」

「おかあさん、がんばるです~!」


 ハナちゃんたちもモチつきをするようで、しゃきっと杵を……カナさんが構えた。

 ヤナさんはモチがくっつかないよう、手で混ぜる担当だ。

 普通逆じゃないと思うけど、ヤナさんあまり力が無いからね。

 適材適所だよね。


「大志、俺もモチつきするぜ」


 高橋さんも杵を構えているので、今度は俺が捏ね取り役するか。


 そうして交代したりして楽しくモチつきは進み、事故も無く無事モチつきは終了!

 二百六十数個の小モチが出来上がった。


「おう、上出来じゃねえか!」

「これはこれは、お汁粉が楽しみねえ」

「あにゃ」


 並んだ大量の小もちを見て、爺ちゃん婆ちゃんほくほく顔だ。

 ちたまにっぽんに帰ってきて、日本的イベント目白押し。

 里帰りしたって実感沸くよね。


「大志さん、お汁粉の準備が整いました」

「あとはおモチを焼いて、入れるだけよ」


 ユキちゃんとお袋が、お汁粉の汁を持ってきてくれた。

 平行して作って貰っていたけど、大量に作ってくれたようだ。

 それじゃあ、次はモチを焼きましょう!


「ハナちゃん、火起こしお願い」

「あい」


 ずらりと並んだ七輪。

 その前に、ハナちゃんがなんかの棒をもってたたずむ。


 ひゅるると風が吹き、周囲はしんと静まりかえる。

 みんな言葉を抑えて、ハナちゃんをじっと見つめる。


 ほんの数秒の出来事なのに、ずっとずっと長い時間が流れているように錯覚する。

 永遠にも感じるその時の流れ。


 だれかが、ゴクリと喉を鳴らすのが聞こえた。

 みんなみんな、ハナちゃんが起こす次の行動を待っているのだ。


 そしてついに――。


「では、いくですよ~!」


 ぴぴこぴこっとハナちゃんが棒を振るった。

 その瞬間――。


「うわ! 全部の七輪に火が! 火が付いたぞ!」

「これは凄いわねえ」

「何これ! ねえ大志何これ凄いわ!」

「あにゃ! あにゃにゃにゃ!」


 ――用意されている全ての七輪に、火が付いた。

 ハナちゃん、遠距離にある複数目標に、同時に点火するという離れ業をやってのけたのだ!


 その様子を見た爺ちゃん婆ちゃん、そしてお袋はビックリ仰天だ。

 シャムちゃんも驚きすぎて、こてっとしりもちだ。

 うわあシャムちゃん可愛い!


「ハナちゃんすげえ……」

「すげえんだけど、なんでこんなんできるのかわからん」

「まあハナちゃんだし」

「ハナちゃんだものね」


 村人エルフたちは、ハナちゃんの火起こしをよく知っているので、驚きつつも取り乱したりはしない。

 ただただ、「まあハナちゃんだし」で思考停止だ。

 でもまあ、ハナちゃんだからね。しょうがない。


「ふい~」


 驚異的な火起こしイベントを達成したハナちゃん、汗をふきふき満足げだ。

 もはや、火起こしでハナちゃんに勝てる人は居ない。

 というか、だれもこんな火起こしは出来ない。


「ハナちゃんありがとう。今日も凄かったよ」

「うふふ~。ひおこしなら、ハナにおまかせです!」

「ハナちゃん凄いね~。なでなでしちゃおう!」

「ぐふ~」


 おっと、もうぐにゃった。まあご機嫌だから、それで良いよね?


 しかし……あれだ、「魔力ぽいやつ」でやってるんだろうな。

 ということは、いまお腹が減っちゃったんじゃないかな?

 早いところ、お汁粉を食べさせてあげよう。


「ハナちゃん別腹空いたでしょ? 急いでお汁粉作ろうね?」

「あえ? べつばらはとくにへってないです?」


 ……ん? 今なんと?


「……ハナちゃん、火起こしするとき、別腹のなんかを使ってるんでしょ?」

「あえ? つかってないです?」


 え?


「ひおこしは、べつばらつかわないです? かってにつくです?」

「何……だと……!?」


 ――どういうことなの!?



 ◇



 ハナちゃんの火起こしの謎、未だ解明ならず。

 別腹使ってないとか、意味が分からない。

 ……でもまあハナちゃんだからね。しょうがないよね。


 ……。


 ――さて! 気を取り直してお汁粉食事会の始まりだ!

 小モチを焼いて、お汁粉に入れれば完成。

 超簡単お料理だ!


「あや~! おモチがぷく~ってなったです~!」

「おもしろいですね!」

「やくとふくらむとか、ふるえる」

「いいにおいしてきたわ~」


 かまくらの中に入って、七輪でモチを焼く。

 じりじりと地味にモチを焼く、モチ焼きエルフたち。

 ぷくっと膨らんだモチを見て、驚いたり震えたり喜んだりと、様々だ。

 良い感じに焼けたら、お汁粉の中に入れちゃいましょうねと。


「ハナちゃん、そろそろ焼けたよ。この汁の中に入れて食べてね」

「あい~!」

「あ、おれのもそろそろだな」

「わたしのも、やけたかな?」


 続々とモチが焼けて行く。それでは、お汁粉を食べましょう!


「あや~、あまくておいしいです~」

「これは、さむいときにたべるといいですね」

「おもしろい、おやつですね」

「ふがふが」


 ハナちゃん一家、にこにことお汁粉を食べていく。

 お年寄りは喉に詰まらせる事故が怖いので、モチは焼かずにちいさくちいさく切ったものを煮込んで提供してある。


 焼いてから汁に入れると型崩れはしないが、噛みづらい。

 そう言う場合は、焼かないで煮込んでしまうのも手だったりするね。

 どろどろに煮崩れたモチなら、小さく切ってあれば喉には詰まらない。

 ただ、崩れたり鍋にひっついたりするので、洗うのが大変だけど。

 いちおう吸引器も用意してあるから、あとで消防団に使い方を教えておこう。


 さて、ハナちゃん一家は問題なしだ。

 他の方々はどうかな?


「これはあったまるわ~」

「うめえな」

「じぶんたちでつくったおモチとか、すてき」

「あまくておいしいな~」


 他の方々も、かまくらの中でキャッキャとお汁粉を堪能中だ。

 バクバク食べてお代わりしているから、気に入ってくれたようだ。


「おだんごおだんご~」

「おだんごをにこむたべかた、これはいいね! いいね!」

「あたらしいおやつ~」


 妖精さんたちは一番はしゃいでいるね。

 お団子を甘い汁で煮込むという食べ方、妖精さんたちにとっては新鮮だったようだ。

 今まではお団子それ自体が完成品であって、そこからさらに加工するという調理法はしていなかったようだ。

 このお汁粉という料理、妖精さんたちのお団子作りに新たな発想を与えてくれるかもだね。


「いや~、おもしろいもよおしですな」

「もちつきって、おもしろいかな~」

「このかまくらのなかでたべるのが、またいいですね」


 平原のお三方も、まったりとお汁粉を楽しんでいる。

 ちたまにっぽんの、冬ならではのイベントはご満足頂けたようだ。

 要望があれば、またモチつき大会を開催するのも良いかもね。

 上手く行って、良かった良かった。


 ――さて、それじゃ最後に神様のご様子を伺ってと。

 去年末に作った、神様用のかまくら祠だ。

 人が一人入ることが出来るくらいの大きさだけど、作りはがっしり。

 お袋に教えて貰ったとおり、水神様を奉る祭事と同じ手順で作っている。

 ご満足頂けているだろうか。


(ふしぎなおうち~、いいかんじ~)


 祠に訪れると、光の玉がまったりとくつろいでいた。神輿から出てるのね。

 そして神輿は、ちゃんと自分で駐車枠引いてそこに停めている……。

 神様自分で駐車場作るとか、ふるえる。

 そこまで気が回らなかったです……。


(おいしいおそなえもの~)


 そしてご機嫌で、お供え物のお汁粉をちょっとずつ食べている。

 ぴかぴかとお汁粉が光って、ちょっとずつ消えていく。

 お汁粉が消えるたびに、光の玉がほよほよ大きくなったり小さくなったり。

 もうすっかり、かまくら祠をご堪能だね。


「タイシ~、かみさまくつろいでるです?」


 祠とその中にいる神様を眺めていると、ハナちゃんがぽてぽてと歩いてきた。

 そして祠の中をのぞき込んで、エルフ耳をぴこぴこさせる。


「神様すごいくつろいでいるぽいよ。祠、喜んで貰えたみたい」

(すてきなおうち~)

「かみさま、よろこんでるです~」


 謎の声ものんびりだね。良かった良かった。


(みなぎってきた~)


 あ、光が強くなった。ほんわかするなあ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ