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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十四章 みんな、おかえり!
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第一話 年越し準備


 エルフたちは、電力を食べることができ、おまけにまあまあ操れるということが判明した。

 その食べた電気は「『別腹」へと貯蔵しているらしいけど、これが曲者だ。

 俺はこの「別腹」を「高エネルギー貯蔵先」と考えていて、そのエネルギーを便宜上「魔力」と定義した。

 電気を魔力に、魔力は電気に変換していると推定している。

 さらにその魔力は、ハナちゃんがにょきにょきするときにも使用されているらしい。

 ようするに、エルフたちは「電力」も「魔法」も何の気なしに使っているのではという仮説ができあがった。


 ……その際神様も似たような事が出来ると判明したけど、まあ神様だからね。しょうがないよね。

 というかエルフたちの神様なんだから、出来て当然なのかもしれない。


 そんなわけで、エルフたちには電力操作の練習をしてもらうことになった。

 でも、ただ練習するだけではもったいない。

 折角だから、バッテリーに充電してもらって、電気を有効活用しましょう!


「うーし、チョイスラー、チョイチョイ」


 高橋さんに誘導してもらて、コンテナを二つ設置する。

 片方は食料貯蔵庫だけど、もう片方は電力施設用だ。

 このもう片方のコンテナ内にバッテリーをたんまり設置して、電源施設とするわけだ。

 出来上がるのは年を越してからだけどね。


 この施設をベース電源として、エルフたちにはアルバイトで充電してもらう。

 村に来たお客さんも、もちろんアルバイト可能。

 ここでお金を稼いで、お土産をたくさん買ってくれるといいな。


 そして、この電気は公共福祉として利用する想定だ。

 たとえば温泉施設に電気を引いて、洗濯機や乾燥機を動かしたり。

 たとえば集会場に電気を引いて、映像鑑賞会を行ったり。色々使い道がある。

 要するに、この村ではそこそこ恒常的に電気が使えるようになるわけだ。

 そこそこ活用していたエルフたちの魔力、全力で活用できるかもね。

 夢は膨らむな!


「じゃあ大志、この資格とっとけな」


 そして一通り設置作業が終わったところで、高橋さんがなんか分厚い本をよこしてきた。

 どれどれ……第二種電気工事士?


「工事するんだから、資格いるだろ。大志は大学で関連する単位取ってたから、筆記は免除のはずだ」

「何か技能に手落ちあるかもしれないから、確認の意味でもとっとくか」

「そうしとけ。ここじゃ法律は関係ないだろうけど、技能のあるなしは関係あるからな」


 今回電圧の高い設備を作るし、いずれ各施設の工事をすることもあるだろう。

 資格は取っておいて損はないな。

 親父は第一種もってるから、親父に丸投げするつもりだった。

 でも俺が出来るなら、それに越したことはないからね。

 まあ急がず焦らず、じっくり勉強しとこう。

 あと、筆記は免除だけど……知識に穴があると怖いから、テキストは読んどくか。



 ◇



 ようやく本来の意味での電きのこちゃん騒動が終わり、村では新しいおやつが増え。

 今、村は年越しの準備を始めている。

 俺も今年は村で年越しするから、今から楽しみだ。

 今日は村にそばをもっていって、年越しそばの事前練習を兼ねたそば試食会を行う予定だ。

 ちなみに月見そばの予定でございます。エルフたち、卵大好きだからね。


「おう大志、やってるな」

「今日はそばの試食会をするんだけど、これくらいあれば良いかな? 余らないかな?」

「観光客も誘うんだから、それくらいは必要だなあ」


 そばを車にずんどこ積んでいると、親父が様子を見に来た。

 昨日佐渡から年越しのために帰ってきたけど、佐渡の焼き物研修が楽しかったのかイキイキしている。

 親父が元気なのを見るのは、息子としても嬉しい物だ。提案して良かったな。


 ちなみに平原の人たちは、陶芸おじさんと一緒に佐渡で年越しする。

 佐渡では今頃……平原の人たちだけでワーキャーしているだろう。

 だいぶ佐渡でのちたませいかつにも慣れているようだし、大丈夫だと思う。

 大丈夫だといいな。……大丈夫だよね?


「あ、そうそう、マツタケのお礼にカニを大量に送ってくれるってよ」

「おおー! それは良い。年越しはカニ祭ができそうだね」

「ああ。家に届くから、配送トラッキング確認しとけ」

「わかった」


 陶芸おじさんから、カニが大量に届くらしい。

 これは楽しみだ。届いたら、カニ祭でもしよう。

 きっとみんなも喜ぶぞ。


 そうして出発の準備を整え、ちょっと居間で休憩しているとき……ふと、お袋の事が頭をよぎる。

 そういやお袋、年越しどうするんだろう?

 親父に聞いてみるか。


「親父、お袋って年越しはこっちに帰ってくるの?」

「その予定のはずなんだが、連絡が取れんから確認が出来ないんだよなあ……」

「電話もメールも通じないからね。あっちの世界じゃ」


 そういや、今お袋はどこの世界に行っているんだろうか?


「親父、お袋ってどこの世界に行ってるかわかる?」

「爺さん婆さんが過ごしてる所……のはず」

「はずって……そこからして、もう怪しいんだ」

「ああ。美咲のやつ、いつの間にか別の世界と渡りつけて、勝手にそっちに行っちまうからなあ」


 お袋はフットワークが軽すぎて、家族の俺たちですら足跡が把握しきれない。

 ……まああれだ、お袋はつおいから何があっても自力で帰ってくるだろう。

 お袋用の身代わり地蔵も変化なしだから、なんも起きてないのは分かる。

 ここはおとなしく、待つことにしよう。


「お袋の事は成り行きに任せるとして、そろそろ村に行こうか」

「ああ、そうすっか」


 さて、そろそろ村に行こう。今日は月見そば試食会だ。

 ラーメン大好きエルフさん、果たしてそばはどうかな?



 ◇



 途中でユキちゃんちに寄って出迎えた後、親父と俺、そしてユキちゃんとで村に向かう。

 道中楽しく雑談して移動していく中、ユキちゃんが思い出したかのように話題を振ってきた。


「そうそう大志さん、紹介してもらった叔父さんとお父さん、意気投合してオーナーズミーティングに行っちゃいました」

「あ、もうそんな関係に」

「お父さんのレオーネ、ミーティングで大注目だったそうで。もうなんか、ほくほくしてました」

「それは良かった」


 紹介して間もないのに、もう意気投合してるとか。

 大事に乗ってきた旧車もお披露目出来て、そりゃほくほくになるか。


「それとお父さん大喜びで、今度大志さんに家に来てほしいとか言ってましたよ」

「え? ユキちゃんち、自分が行っても大丈夫なの?」

「ええまあ。何とかなると思います。……フフフ」


 ……何とかなる? それは逆に言えば、何とかしないといけないってことなのでは?

 ま、まあ……お招き頂けるなら、お誘いに乗りましょう。

 世話になっている家に顔を出すのは、当然のことだからね。


「それじゃあ、予定を合わせておくよ」

「そうですか! では、予定を確認しますね! ……フフフフフ」


 ユキちゃん大喜びになったから、成り行きに任せよう。

 ……でも、俺の本能が何か、ガンガン警鐘を鳴らしているんだよね。

 大丈夫なんだろうか?


「……大志、頑張れよ」

「ん?」


 親父がボソっと応援してくれたけど、相手は超自然的ななにかだからね。

 気を付けるに越したことはないか。



 ◇



 本能の警鐘がドンガラと鳴るという事以外は問題なく、村に到着。

 広場では、元気に子供たちが遊びまわっていた。

 彼らもだいぶ、寒さに慣れて来たようだね。


「タイシタイシ~! おかえりです~!」

「ハナちゃんただいま。みんなで遊んでたの?」

「あい~!」


 そしてハナちゃんも元気いっぱい、キャッキャとお出迎えしてくれる。

 今日はそんなに寒くないから、もこもこ具合は抑え目だね。


 さて、早速だけどみんなを集会場に集めて、試食会の話をしよう。


「ハナちゃん、今日はちたまの一周の終わりに食べる、『そば』って食べ物の試食会をするよ」

「ししょくかいです!?」

「卵が入った、ラーメンみたいな食べ物だよ。みんなに声をかけてくれるかな?」

「たまごです~! みんなあつめるです~!」


 試食会と聞いたハナちゃん、大はしゃぎでぽててっと子供たちの方に走っていく。

 そうして子供たちに、キャッキャと何かを伝え始めた。


「きゃー!」

「おいしいものー!」

「おとうさんにしらせてくる~!」


 ハナちゃんからの話を聞いた子供たち、あっという間に散開。

 そのまま家に走って行った。

 なるほど、これなら伝達は早いね。


「ほかのうちにも、しらせてくるです~!」


 子供たちが散開した後、ハナちゃんも手を振りながら走って行った。

 多分、マイスターとかマッチョさんとか、腕グキさんちに声をかけに行ったのだろう。

 それじゃ、俺と親父は食材を運び込むお仕事をしましょうかね。


 そして、えっちらおっちらと集会場に食材を運んで準備している時のこと。


「あやー!!!!!」


 ――ハナちゃんの叫び声が聞こえてきた!

 何があったのか!?


「ちょっと見てくる!」

「私も行きます」


 慌てて集会場から出て、ユキちゃんと声のした方に駆け付ける。

 すると、そこには……。


「キャー! エルフの子供! かわいー!」

「あやややややややや……」


 ハナちゃんを抱き抱えて、ほおずりしまくる一人の女性が居た。


「ハナ! どうした!」

「なんかきこえたけど!」

「だいじょうぶ?」

「大志、何かあったのか?」


 ほかの方々も駆けつけてきた。親父も来たね。

 そしてハナちゃんにほおずりしまくる人を見て、ぽかん。

 エルフたちの知らない人が、そこにいる。

 でも、俺と親父は良く知ったちたま人だ。

 その人とは――。


「――お袋、何やってんの?」

美咲(みさき)、やっと帰って来たのか」


 そう、その女性とは……お袋だった。


「え? 大志さんのお母さんですか?」

「いわれてみれば、なんとなくおもかげが」

「やっぱり、せがたかいのね」

「おかあさん? ……おねえさんのまちがいじゃね?」


 謎の人物の正体がお袋と知って、みなさんそれぞれ驚いている。

 お袋は身長百七十二センチあるから、エルフたちからすると、かなりデカく見えるようだね。

 そういや、年末年始はうちの家族が返ってくる、とは教えてなかったな。

 ……いつ帰ってくるとも連絡は無いから、教えようもなかったのだけど。


「あら大志! 帰って来たわよ!」

「あ、うん。お帰り。帰ってこれたんだ」

「あやややややや」

「お爺ちゃんとお婆ちゃんも、何日かしたら来るわ。今年も全員揃うわよ」

「そうなんだ。それは良かった」

「あやややややややややや」


 あっけにとられる俺たちは特に気にせず、お袋はハナちゃんにほおずり中だ。

 そしてハナちゃんはあややっとなっている。

 そろそろ解放してあげよう。


「お袋、その子をそろそろ解放してあげなよ」

「あら! 可愛くてついね」

「あや~」


 お袋は抱き抱えていたハナちゃんをぽてっと降ろす。

 ハナちゃんは何が何だか、分からない様子だね。

 丁度いいから、自己紹介し合ってもらおう。


「お袋、この方々が、今のお客さんたちだよ」

「新しいお客さんね! 私は美咲(みさき)って言うの。よろしく!」

「あい~。わたしはハナハっていいますです~! ハナってよんでね!」

「キャー! かわいー!」

「あややややや!」


 またほおずり状態になったけど、とりあえずはそのまま集会場に行くか。

 あったかい集会場で、お茶でもすすりながら話そう。



 ◇



「キャー! 妖精もいるじゃない! かわいー!」

「よろしくね! よろしくね!」

「かわいいっていわれちゃった! いわれちゃった!」

「おだんごたべる? おだんご!」


 集会場では、妖精さんたちや動物たちも紹介した。

 もうお袋、キャーキャーと大騒ぎだ。


「何か凄いわね! 大勢お客さんが来るなんて!」

「その辺謎なんだけど、まあそういうものって思う事にした」

「ギニャギニャ」


 お客さんの多さに、お袋は大はしゃぎだ。

 今はフクロイヌをこちょこちょして、ほんわか顔だね。

 でもあんまりくすぐりすぎると、フクロからなんか出てくるよその子。


「それと大志、この子は大志のコレ? ……でも、高校生はまずいんじゃないの?」

「え?」


 今度はユキちゃんにターゲットが移った。

 突然に話を振られたユキちゃん、あっけにとられる。

 この辺誤解を解いておかないとな。


「ああいや、この人は加茂井さんのところの娘さんで、仕事を手伝ってもらってるんだ。あと、もう成人してるから」

「そうなの?」

「え、ええまあ」


 お袋のノリと勢いに、ユキちゃんたじたじだ。

 でもまあ、慣れてくださいだね。


「げんきなひとだな~」

「みなぎってるかんじ」

「グイグイくる」


 ほら、エルフのみなさんもお袋の押しの強さにたじたじだよ。

 でもまあ、慣れてくださいだね。

 とにかく慣れてください。


「……大志さん、ほんとうにこの人がお母さんなのですか? お姉さんじゃなく?」

「間違いなくお袋だよ。今年で四十六歳、乙女座でございます」

「ええ……?」


 ユキちゃんがひそひそと聞いてきたけど、間違いなくお袋でござるよ。

 十年前から見た目があんまかわらないけど、お袋なんです。

 そしてこれが重要なのだけど、お袋は普通のちたま人でございます。

 強靭なキバもしっぽも、お団子こねこねも魔法もなんも持たない、普通の人。

 でも、なんかつおい。ドラゴン並みにつおい。あと、押しもつおい。


 しかし……若く見えるという話なら、ユキちゃんも人の事言えないんじゃないの?

 ――というのは心の中だけにしまっておく。

 けして祟りが怖いわけではない。そのはずだ。


「あら! 羽の生えたネコちゃんもいるわね! おいでおいで!」

「ミュ~」


 そしてお袋は好奇心旺盛過ぎて、もうあっちこっちにふらふらだ。

 この性格だから、ちたまだけではなく異世界にもふらふら研究しに行ってしまうわけで。

 ……まあ、お袋は好きにさせておいて。

 せっかくみんな集まったのだから、今日の本題を話そう。


「あ~、うちのお袋はそっとしておいて、今日はそば試食会についてお話ししたいと思います」

「たのしみです~」

「ししょくかいだって」

「どんなのだろ~」


 エルフたちの意識は、一気に食べ物の方へと傾く。

 試食会という言葉に、みなさんキラキラお目々だ。食いしん坊さんだね。

 ひとまず、そばという食べ物について話しておくか。


「そばというのは、まあラーメンみたいな麺類です。味は違いますが、食べ方は一緒ですね」

「ラーメン!」

「もやし! もやしはひつよう?」

「じゅるる」


 ラーメンと言う言葉に劇的に反応するみなさんだ。もうすっかり、ラーメンがエルフソウルフードになってしまっている。

 味は違うけど、醤油味だから美味しく食べられるとは思うけどね。

 では次に、なぜそばを食べるのかを教えておこう。


「この辺では、みなさんの所で言う一周、こちらでは一年と言いますが。それが終わるときにそばを食べる習慣があるんです」

「しゅうかんなんだ」

「なんでだろ?」


 その辺はお袋が詳しいね。民俗学者だから。文化人類学や考古学みたいなこともやってるけど。

 という事でお袋に説明を丸投げする。


「お袋、年越しそばについての解説お願い」

「任せなさい」

「ミュ?」


 という事で、ネコちゃんを抱き抱えたままお袋が説明を開始する。


「年越しに食べるのは、縁起を担ぐためなの。この辺では長寿を願う縁起担ぎね。長い食べ物だから」

「へえ~」

「おもしろい、しゅうかん」

「あやかって、たくさんたべるです~」


 お袋の講義が始まり、みなさんふむふむと聞き始める。


「実はおそばを食べる意味は諸説あって、本当は災厄を断ち切るとか、健康への願いとか、家族の絆とか色々あるわ」

「あえ? いろいろあるです?」

「そうなの。でも、多分それは諸説じゃなくて、全部正解だと私は考えているわ」

「ぜんぶせいかいです?」


 小難しい話に突入してしまったけど、まあエルフたちも興味があるようだし、そのままで。


「色んな地域の人が、色んな願いを込めるの。だから、その地域ごとに正解があるのね。一つの意味に押し込める必要はないの」

「それでいいんだ」

「ぜんぶせいかいとか、すてき」

「みちにまよわないせかい」


 お袋ならではの柔軟な解釈に、みなさんほんわかだね。

 実際、俺もそう思う。根本の意味はあったんだろうけど、色んな地域で独自の由来を持つようになった。

 だから、正解は一つではなく、全部正解。


 諸説ある由来は、どれも正しい。それで良い。お袋がフィールドワークで得た、素敵な結論だね。

 この辺の考え方がちょっと異端らしく、学会からはじかれているけど。

 でも、それでいいと思う。お袋はこんなに楽しそうだからね。


「でねでね、みんなもせっかく年越しそばを食べるのだから、好きな縁起を担いじゃっていいわよ」

「こっちのふうしゅう、むししちゃうです?」

「これはね。だって幸せを願う風習なのだから、その人の幸せがあるはずよ。だから、良いの」

「ゆるゆるです~」

「まさに、じゅうなん」


 学者としてはめちゃくちゃなんだろうけど、俺はこのお袋理論が好きだね。

 親父も、そんなところを好きになったんだと思う。

 というかこれくらい柔軟でないと、外部の人が嫁入りしてうちの一族にはなれないという。

 常識が通用しないからね。頭カチカチじゃ、やってけないのですよ。


 とまあ、年越しそばを食べる意味は分かってもらえたね。

 それじゃあ、お待ちかねのそばの紹介だ。


「あとね、長い食べ物なら何でもいい感じだから、実はラーメンでも良いわよ」

「「「「わー!」」」


 ラーメンと聞いて会場がどっと沸く。だよね。みんなラーメン好きだからね。

 でもさお袋、そばで話を進めていたのに、ぶち壊さないで!



 ◇



「これはこれで、いいかも」

「なまたまご、おいしい」

「なまでたまごをたべるのって、はじめてだわ~」


 ラーメンで盛り上がりかけた会場をなんとかなだめて、そばを茹でた。

 薬味はネギと七味と、ふえちゃうわかめちゃんだ。そこにパカっと卵を落とした簡単お料理だ。

 生卵は評価が若干心配だったけど、「これはこれで」という感想が頂けて何よりだね。


「つくるの、かんたんね」

「うちでもだそうかしら~」

「お、それいいじゃん?」

「ぜひとも」


 そば茹でに協力してくれた腕グキさんたちは、お店で出すことも検討しているね。

 マイスターとマッチョさんも、お店で食べたいようで同意している。

 乾麺なら保存が効くから、とりあえず導入しちゃうのもいいのではと。


「ふしぎなたべものだね! ふしぎだね!」

「ながいね! なが~い!」

「あつあつ~」


 妖精さんたちも、きゃいきゃいちゅるると、そばすすっている。

 綺麗な羽根をぱたぱたさせて、喜んでいるね。お口に合って何よりだ。

 ……この子たちにとっては、そばでもかなりの太麺だ。しかし器用に食べている。

 あと、妖精さんは体がちいさいのに、普通に一人前食べている。

 一体どこに、それだけ入るのだろうか……。


「タイシタイシ~、かみさまのぶん、できたです~」


 そして他の方々の反応を見ているうちに、神様用のすぺさるおそばが茹で上がったね。

 神様のだけ、エビ天つきでございます。試食だけど、ちょっと豪華にしてみました。


(きたー!)


 すぺさるおそばが出来上がると、ほよほよと光って見守っていた神社から神輿がスクランブル発進だ。

 最近、出撃速度が上がっているね。たまに乗り口でむぎゅっとなるけど。

 でもまだまだ乗れるから、神輿を改造しなくても大丈夫だとは思う。

 ……乗れなくなったら、なんか考えよう。


 そして神棚から神輿がひゅいんっと飛んできて、エビ天月見そばの上でくるくるぴかぴか。

 さて、早速お供えを――。


「……ねえ大志、なんか光ってるの、飛んできたけど……なにこれ?」

(ども~)


 ――あ! お袋に神様を紹介するの忘れてた!

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