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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十三章 エルフだってできるもん!
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第十二話 別腹

 エルフたちは電気を食べられる。

 何故それに気づいたのかと聞いてみたら、ハナちゃんが第一発見者とのこと。

 くわしく発見のいきさつを聞いてみると、小腹が減っておやつを探した結果だという。


「それでハナおもったです。おんなじビリビリなら、たべられるです~!」

「思っちゃったんだ」

「あい~! おもっちゃったです~!」


 ハナちゃんは、キャッキャと教えてくれた。しかし、その発想の飛躍が分からない。

 ……いや、彼らは電きのこをそれなりに食べていて、大好きなわけだ。

 そんな大好きな食べ物と同じだよって言っちゃったら、食べようと思えるのかも。


 俺たちは電気をエネルギーと言う概念でとらえているから、食べられるとは思わない。

 でもエルフたちは、電気を「食べ物」と最初からとらえていたんだ。

 だから、こんな発想が出来たと。


 まあなんにせよ、凄い発見だ。こんなのわかるわけない。先入観があるからね。

 というか、俺たちじゃ電気は食べられない訳で。


 ……そういや半年くらい前に、マイスターがバッテリーを食べようとしていたな。

 あの時止めなければ、発見はもっと速かったかもだ。


 ああいや、あれはダメだ。

 電気じゃなくて「バッテリーそのもの」を食べようとしていたから。

 バッテリーという「物体」ではなく、電気という「エネルギー」を食べる。

 この発想が、必要だったんだ。


「――ハナ~、つまみぐいしたのね~?」

「うきゅっ!」


 色々感心したり驚いたりしていると、カナさんがゆらりとハナちゃんの後ろに立った。

 俺にいきさつを説明する過程で、ハナちゃんうっかり犯行を自供していたわけで。

 ハナちゃん残念、逃げきれなかった。

 お目々まんまる、エルフ耳をぴこっと立てて、うきゅっとビクビクハナちゃんだ。


「つまみぐいするこは、こちょこちょのけいよ~! はい、りょうてをあげて~」

「あや~、おかあさんごめんなさいです~!」

「では、はじめます。は~い、こちょこちょこちょこちょ!」

「きゃははははははは!」


 ばんざいしたハナちゃんのわきの下を、カナさんが問答無用でこちょこちょだ。

 ハナちゃんちでは、つまみ食いはこちょこちょの刑に処されるらしい。

 ……二人ともなんだか楽しそうだから、静かに見守ろう。


「ほーらもっとくすぐっちゃうわよ~!」

「あやー! きゃはははは!」

「そ~れ、こんどはわきばらこちょこちょ!」

「きゃはははは!」


 和むなあ。



 ◇



「ハナ、おなかがすいたら、ちゃんというのよ。なんとかするから」

「あ、あい~」


 数分ほどして、こちょこちょの刑は無事終了。

 我が子を思う存分くすぐる事が出来たカナさんは、すごく満足そうな顔だ。

 ……ハナちゃんは、笑いすぎてぐんにゃりしているけど。

 まあ、これからはおなかがすいたら遠慮しなくても良くなったね。

 めでたしめでたしだ。


 ――さて、微笑ましい親子の交流が終わったところで。

 電気の話に起軌道修正といきましょうか。

 まずは、ハナちゃんの大発見について褒めておこう。


「話を戻すけど、ハナちゃんこれは大発見だよ。自分じゃ電気を食べようって思いつくのは、無理だったね」

「あえ? むりです?」

「自分たちは、電気を食べられないからね」

「あえ? タイシたちもビリビリきのこ、たべてるです?」


 あ~、まあ。食べてはいる。でも、俺たちちたま人はですね、電気を食べているわけじゃないのですよ。

 ちたま人が食べているのは、電気自体じゃなくてきのこ部分でして。

 電気は放電するがまま、もぐもぐごっくんはしてないのです。

 というか、そもそも電気を噛めないし飲み込めない。


「試しにこの電気を食べようと吸ってみたけど、空気しか吸えなかったよ」

「あえ? たべられないです? ちゅるんってかんじ、しないです?」

「あ~いや、そもそも自分たちは電気を吸えないわけでね」

「あえ?」


 ハナちゃんは、俺たちもあたりまえに食べられると思っていたようだ。

 けど、無理でござるよ。これはエルフたちの、特殊能力だ。

 ……食いしん坊方面での。


「あのねハナちゃん。自分たちは、電きのこのビリビリそのものは食べていないんだ」

「あえ? たべてないです?」

「そう。自分たちが食べているのは、きのこ部分だけで……ビリビリはどっかに流れてしまうわけで」

「わけですか~」


 ハナちゃん、いまいちピンと来てないぽい。

 この辺は、感覚を共有するのは難しいかもね。

 俺だって、ハナちゃんたちが電気を食べたとき、どんな歯ごたえでどんな味かは理解しきれない。

 話を聞いて、「そうなんだ」と思うだけだね。


 ……そういや、電気を食べたらお腹が膨れるのだろうか。

 たしか「別腹」とか言っていた。

 この辺も全く分からないから、聞いてみるしかないな。


「ちなみにだけど、ビリビリを食べたらお腹いっぱいになるの?」

「あや~……、なんか、べつばらっぽいのがいっぱいになるです?」

「さっきも聞いたね。その『別腹』ってやつ」

「あい~、べつばらです~!」


 良くは分からないけど、「別腹」らしい。

 甘い物は別腹、とは違う感じ?

 どっかに、電気エネルギーを貯められる的な仕組みらしきアレがある?

 ソレがアレしてこうなる?


 う~ん、わからん!


「別腹がいっぱいになったら、ほかの食べ物は、食べなくても良いとか?」

「あや~、べつばらは、べつばらです。ビリビリだけだと……むりです?」

「それはそれ、これはこれって感じ?」

「あい! そんなかんじです~!」


 ……どうも電気だけじゃ、体は維持できないっぽいな。

 生命維持は普通の食べ物で、電気はまた別のようだ。まあ電気はエネルギーだからね。

 物質じゃあないから、流石にそこまではって感じなのかも。

 でも、食べると何らかのソレがアレして、「別腹」というどこかしらに貯蔵される、らしい。

 

「このおやつは、おてがるでいいですね」

「みんなたべるようになったから、でんちがたくさん、ひつようになりました」


 ヤナさんとカナさんが、数本目の乾電池をちゅーちゅーしている。

 おやつ食べ過ぎですよ。

 でもまあ、電池が不足しているってそういう事か。

 電池が、エルフたちの新しい「おやつ」になったからなのね……。


「あや~、おやつおわちゃったです」

「じゅうでんしておこうね。ゆうがたまえにはまた、たべられるから」

「あい~」


 電気食べ過ぎの結果、おやつがまた品切れになりましたと。

 まあ単三型の電池だから、容量はそれほどないよね。

 ニッケル水素二次電池だから、一千から二千mAh(ミリアンペアアワー)くらいしかないはずだ。


 ……ん? もっと大容量電池を食べたら、どうなるんだろう?

 たとえば、リチウムイオン電池だったら?

 こいつなら、電池残量が分かる。目で見て判断できちゃうやつだ。


 ……試してみよう。スマホの電気も、食べられるか。

 現在の電池残量は……七十パーセントだね。


「……ハナちゃん、実はこれも電池が入ってるんだ。ちょっと食べみて」

「あや! でんきたべていいです!?」

「いいよ。全部じゃなくて、それなりね、それなり」


 全部食べられると、過放電になるからね。

 リチウムイオンバッテリが痛んでしまう。


「あい~! いただきますです~!」


 俺の心配をよそにハナちゃんは、うきゃうきゃとスマホを受け取った。

 そして、木のストローでちゅーちゅーする。


「あや~、のうこうなビリビリあじと、さわやかなあまみがあるです。これはおいしいです~!」


 しばらく吸った後で、なんかをもぐもぐし始めた。

 あと、そのグルメレポートは……俺には理解が出来ない。

 電池の種類によって味が違うらしいけど、ほんと分からない。

 ……それはそれとして。電池残量はどれくらいかな?


「ハナちゃん、ちょっと見せて」

「あい」


 ハナちゃんからスマホを受け取ってと。

 さてさて、電池残量は――うお! 残り三十パーセントまで減ってる!

 一気に電気が食べられてしまった……。


 しかしこれ、リチウムイオン電池の放電能力を超えてるんじゃないか?

 こんな短時間でこれほどの電力、供給できないはずだけど……。

 でも、電池は減ってる。ユキちゃんにも見てもらおう。


「ユキちゃんこれ見てよ。ごっそり減ったよ」

「……――え? あ、ええ。何ですか?」


 あ、だめだ。さっきまで固まってたから、状況が理解できていない。

 ようやく解凍したってところだ。


 ……あまりユキちゃんには、無理をさせないようにしておこう。

 よそ様の大事な娘さんだからね。きっちり家にお返ししないと。


 しかし、電池残量がわかるもので試すとはっきりわかるね。

 今ハナちゃんは、電気を思い切り食べたわけだ。


「あや~、まんぞくしたです~」


 そして「別腹」がいっぱいになったのか、ハナちゃん満足顔だ。

 おなかというか「別腹」が膨れたせいか、うとうととし始めてもいる。

 ぽかぽかした家の中で、満腹になったらそりゃ眠くなるよね。


「すぴぴ」


 というかもう寝てしまった。

 「別腹」が満たされても、何らかの生理作用は起きるぽい。


「あら、ハナねちゃったわね」

「おふとんでねかせよう」


 カナさんとヤナさんが、おねむハナちゃんを抱えて部屋から出て行った。

 ハナちゃん、ゆっくりおやすみなさいだね。


 しかし、「別腹」とはいえ、お腹が膨れるか……。

 これについて、一つ気になる点がある。

 エルフたちが、妙に電きのこちゃんに執着する点だ。


 俺たちは、電きのこちゃんの電気までは食べられていない。

 でもエルフたちは、その電気も食べているらしい。


 俺たちには何の栄養にもならない電気。

 だけどエルフたちにとっては……「別腹」的ななんかが満たされる。

 あれほどエルフたちが電きのこちゃんに執着するのも、分かるかもだ。


 俺たちちたま人は、電気の味は感じられて、きのこ自体は食べられる。

 でも、エルフたちは電気も一緒に食べている。

 もしかして、俺が思っている以上に……電きのこちゃんはエルフたちにとって「ごちそう」なのかも。

 ……流石に勇者向けは、行き過ぎみたいだけど。物事には限度があるよね。


 まあとりあえず、おおまかな事は分かった。鍵は「別腹」だ。

 いまエルフたちは、おやつが増えて喜んでいる状態だ。

 このまま何もしなければ、「別腹」を満たした段階で満足して止まっちゃうと思う。


 ここから先、何かに応用が出来るかどうか、調べなくてはいけない。

 ハナちゃんの発見を応用して、何か面白い事が出来たら――楽しくなるな!



 ◇



「あや~、よくねたです~」

「ハナ、もうすぐゆうしょくのじゅんびするわよ」

「あや! ねすぎたです~」


 夕方ちょっと前にハナちゃんが起きてきたけど、寝る子は育つだ。

 たくさんお昼寝して、たくさん食べてすくすく成長している証拠だね。


「あ、私もおてつだいしますよ。食材の差し入れもありますから」

「あら、それはありがたいわ。それじゃあユキさん、いっしょにおりょうりしましょう!」

「ハナもてつだうです~」


 女三人、キャッキャと台所に向かって行った。

 俺もこのまま夕食をごちそうになる感じだ。


 そうして一時間くらいして、良い匂いがしてくる。

 今日は焼き魚かな? ハナちゃんのおじいちゃんは、よく湖畔でおかずを釣ってくる。

 おじいちゃんの調子が良い日は、だいたい夕食が焼き魚になるみたいだ。

 これは楽しみだな。エルフ世界の魚、あんまり食べる機会がないからね。


「はい、ゆうしょくできました」

「タイシ~、おさかなやいたです~」

「あと、野沢菜混ぜご飯ですよ。焼き魚と良く合います」


 楽しみに待っていると、ほどなくして夕食が運ばれてきた。

 いつもの野菜たっぷりお味噌汁に、ダイコンおろしを添えた、中くらいの焼き魚。

 あとは……お漬物少々に、野沢菜と炒りゴマと、ちりめんじゃこの佃煮を混ぜたご飯。

 炒め物は、ナスとピーマンとキャベツの油味噌炒めか。

 今日も今日とて、ハナちゃんちの夕食はとても美味しそうだ。


「では、いただきます」

「「「いただきまーす!」」」


 配膳が終わって、みんなちゃぶ台の周りに座って。

 ヤナさんの号令で、待ちに待った頂きますをする。

 さて、俺も一緒に食べよう!


 野菜たっぷりお味噌汁は、いつもと変わらぬ安心の味。

 一口すすると、胃が目を覚ます。

 これから料理を食べるんだっていう、準備が出来る。


 次に、焼き魚を食べる。エルフ世界の湖畔に沢山いる、ニジマスに良く似た魚だ。

 白身魚であるエルフニジマスの身を摘んで口に入れると、ふんわりした食感。

 あまり癖はなく、臭みも無い。良く処理されている。


 エルフニジマスの焼き魚は、味は淡白、塩も少な目。これが第一印象だね。

 だけどそのおかげで、この繊細な魚の旨味が感じ取れるようになっている。

 さらに、パリっと焼き上げられた皮の香ばしさが混ざり合い、味に変化を与えて単調さを感じさせない。

 また、醤油をたらしたダイコンおろしと一緒に食べると、ダイコンの辛みと醤油の風味が合わさり、より味に変化を与えてくれる。


「ハナちゃん、お魚、絶妙な焼き加減と塩加減だよ。お魚を焼くのも上手だね」

「うふ~、うふふ~」


 焼き魚を褒めたら、ハナちゃんうふうふだ。

 淡白な川魚を大量の塩でごまかさずに、少ない塩で逆に淡白さを美味しさに変える。

 練習しなければ、この加減は難しいんじゃないかな?

 魚を焼くのは根気がいるけど、手間をかけた分美味しくなる。

 ハナちゃん、良く出来ましただ。


「……」


 そしてユキちゃんが期待の眼差して見ているので、野沢菜混ぜご飯も食べよう。

 野沢菜は……食感を損なわない程度にみじん切りになっていて、食べやすい。

 ご飯の甘さと野沢菜漬けの塩分と渋みが、甘目に作られたちりめんじゃこの佃煮の味と合わさる。

 ほかのおかずがなくとも、これだけで食べられるくらいの完成度で、ご飯と混ぜる具材の配分もちょうどいい。

 ご飯が多すぎず、混ぜる具も多すぎず。

 白米のおいしさを、これでもかと引き立てているね。


 このご飯と焼き魚を一緒に食べると、いくらでも食べられそうだ。

 思わずバクバクと食べてしまう。


「フフフ……」


 沢山食べる俺を見て、妙に可愛く見えるユキちゃんもご機嫌の様子だ。

 美味しいからね。お代わりしちゃうよ。


 そして混ぜご飯をお代わりした後は、茄子とピーマン、そしてキャベツの油味噌炒めだ。

 油と味噌、そして砂糖とみりんで炒められたナスは、たっぷりと油を吸って噛むごとにじゅわっと味がしみだしてくる。

 そこにピーマンの苦みが被さり、キャベツの甘さが加わる。


 味噌は赤みそでしょっぱいはずなのに、砂糖と油、そしてみりんのおかげで甘辛く、かつ濃厚な味わいが出せている。

 お肉を使わず、野菜のみで構成されている料理なのに、力強くご飯のお供として大活躍だ。


「タイシ~、おみそいためはどうです?」

「もちろん美味しいよ。砂糖とみりんの加減が絶妙だね。理想の味付けだよ」

「うきゃ~」

「ハナちゃん、お料理上手だからいいお嫁さんになれるよ」

「ぐふ~」


 ハナちゃんの喜びようを見ると、この野菜炒めもハナちゃん作だよね。

 褒めたらぐにゃったし。

 味付けが北信や県境地域のそれだから、妙に可愛く見えるユキちゃんに教えてもらったのかも。

 というか、ハナちゃんちの料理、だんだん北信の味付けに似てきているね。

 寒くなってからは特に。やっぱり、同じところに暮らせば、味付けも似てくるんだろうな。

 寒いから、濃い味が欲しくなったりするわけだ。


「おかあさん、おかわりです~!」

「はいどうぞ。ハナ、たくさんたべるのよ」

「あい~!」


 ハナちゃんもお代わりして、もぎゅもぎゅと夕食を平らげていく。

 沢山お食べ。


 ……でも、さっき大量の電気を食べたよね。

 そのうえ、夕食も沢山食べている。もりもり食べている。

 電気を食べたら別腹に行くらしいから、ご飯も食べられるということかな?


 いやでも、その別腹に入った電気は、一体どうなるのだろうか?

 ご飯を食べたら体の栄養になる。食べ物は、成長と生命維持のために使われる。


 ……では、電気は?


 かなりの高エネルギーなのに、別腹に行ってそれでおしまい?

 そんな無駄なこと、生命体の進化で起きるか?


「……」

「あえ? タイシどうしたです?」


 おっと、食事中に考え込んでしまった。

 ……一人で考えていないで、とりあえずの疑問を聞いてみるか。


「えっとね、ハナちゃんたちは電気を食べたら……『別腹』っぽいどこかに入るんだよね」

「あい。べつばらです~」

「じゃあ、その『別腹』に入った電気は、どうなるんだろうって思ってさ」

「あえ? そこそこ、つかうですよ?」


 ん? そこそこ使う? 一体何に。


「わたしは、おんせんがよごれていないか、かくにんするときにつかってますね」

「あとは、やまでたべものをとっているとき、どくがないかとかかしら?」


 え? ヤナさんは温泉の汚れ具合を見るのに使っていて、カナさんは毒草を見分けるのに使っている?


「あと、きれいないし……「きん」ってやつをみわけるときにも、つかいますね」

「ピリっとくるかんじが、ちがうです~」


 は? (きん)を見分けるのにも使っている?

 ピリッと来る感じが違うとな。


 …………。


 エルフたちの過去発言を思い出してみよう。


”ピリッとするやつ”

”ふわっとするやつ”


 もしかして。

 エルフたちは蓄えた電気を――放電できるのでは。

 この「ピリっとくるやつ」や「ふわっとするやつ」とは、その放電した電気を使って……電気抵抗を判別していたのでは。

 エルフたちは、物性を電気抵抗を使って、見分けている?

 電気抵抗で、毒性を見分けている?


 さらにだ。


”たとえば、みぎはあっちですね。ひだりはそのはんたいがわ”


 ……平原の人たちは、ちたまの南北を見分けた。前知識なしにだ。

 これは……電気を使って磁場を発生させて、見分けていたのでは?

 エルフ惑星は、地磁気があると推測される。

 彼らは自分たちで磁場を発生させ、それにより惑星の地磁気とその極性を判別している、としたら?


 ……。


 証拠は、そろっている。

 妙に可愛く見えるユキちゃんに、ちょっと話してみよう。


「みょ――おっとユキちゃん、エルフたちって……もしかして放電出来るんじゃないかと思う」

「みょ? ……放電ですか。いやまあ、有り得る話だとは思います」

「ユキちゃんが来る前から、なんか不思議だったんだ。ピリっとくるとか言ってた部分」

「そうなんですか?」


 ほんのちょっとした疑問だったけど、おかげで覚えていた。

 やっぱり、エルフたちは油断ならないな。

 彼らはやっぱり、ファンタジーの住人なんだ。

 彼らは自分の色々な力に、まだ気づいていない。

 そして俺も、彼らのすごいところ……まだ全然わかっていない。


 ふふふふふ。これは……面白くなってきたぞ!

 エルフたちの凄い所、電気を食べる能力。その根幹である――「別腹」。

 これ、分析すれば――上手く活用する方法、出来そうだ!


 ふふふふふ。


「あや~、タイシまたわるいおとなのかおです~」


 ふふふ。もちろんハナちゃんにも協力してもらうよ。

 明日、ちょっと実験してみよう。

 それがうまく行けば、エルフたちはただのエルフではなくなる。


 そう――電気エルフとなるのだ!


「これ、絶対悪い事考えてますよね」

「まあ、タイシさんのかんがえですから。わるいようにはならないかと」

「タイシ、またおもしろいこと、おもいついたです?」


 おっと、悪い顔になっていたようだ。引き締めないと。

 ……ぐふふ。


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