表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十三章 エルフだってできるもん!
187/448

第十話 小腹が空くです~……あえ?


 電きのこちゃん騒動が一段落つき、エルフ村はまた平常運転に戻りました。

 平原の焼き物五人衆と志郎も佐渡へと旅立って行き、今頃佐渡でキャッキャしていることでしょう。

 そして大志も、陶芸おじさんに顔を出しに行くという事で一緒に佐渡へ行ってしまいました。

 そんなわけで、ちたまにあるエルフ村ではエルフたちだけで、村を運営中です。


 さて、大志が目を光らせていないエルフ村は……今どんな感じでしょうか?

 ちょっと、ハナちゃんのおうちを覗いてみましょう。


「ハナ、今日は炊き込みご飯よ。鶏肉ときのこたっぷり!」

「わーい!」


 どうやら夕食の時間になったようで、カナさんとハナちゃんが台所でキャッキャしていました。

 今日は炊き込みご飯のようですね。カナさんがしゃっしゃとおコメを研いでいます。

 ハナちゃんは、ちょっと豪華なご飯が出ると聞いてキャッキャと大はしゃぎ。

 和やかな風景ですね。


「あっちら辺の森の人たちがたんまりきのこを持って来てくれたから、しばらくきのこ食べ放題よ」

「食べ物沢山、いいことです~」


 電きのこちゃん研究に訪れたあっちら辺の森エルフたち、ものすごい量のきのこを持って来てくれました。

 毎日きのこを沢山食べても、来年くらいまではもつくらい。

 食べ物が沢山あって、ちたまエルフ村の住人は、ほっくほく笑顔なのでした。


 今日も今日とてきのこ料理、美味しいきのこがた~くさん。カナさんもほくほく笑顔でお料理をしていきます。

 そんなカナさんの所にぽてぽてと歩いて行ったハナちゃん、おかあさんに話しかけます。


「おかあさん、ハナも何か手伝うです?」

「今日はそれほど手間がかからないから、大丈夫よ。ハナはのんびり待ってて」

「あい~」


 ハナちゃん偉い子ですね。お母さんにお手伝いがないか聞いています。

 ただ、今日はお手伝いしなくても良いみたいです。

 ハナちゃん素直に、お部屋で待つことにしました。

 たまには、夕食が出てくるのを待つだけなのも、良い物です。


「炊き込みご飯~、楽しみです~」


 台所を出たハナちゃん、ぽてぽてと歩いて居間に向かいます。

 夕食が出来るまで、あと一時間くらい。さて、何をして遊ぼうかな?


 ――その時の事です。


 きゅるる。


 ハナちゃんのお腹の虫が、可愛い音を出しちゃいました。


「あや~、おなか減ったです~」


 今日の献立を聞いちゃいましたので、ハナちゃん一気にお腹が減っちゃったようですね。

 育ち盛り食べ盛りですので、すぐお腹が空いちゃうハナちゃんなのでした。


「もうすぐ夕食だから、我慢するです~」


 そうそう、もうすぐ夕食なのですから、もうちょっとだけ我慢しましょうね。


「我慢です~、我慢です~」


 きゅるるとお腹の虫の音と合わせて謎の歌を歌いながら、間食を我慢してぽてぽてと居間に向かうハナちゃんです。

 そして、無事居間に到着。

 そこには、カナさんを除いた家族のみんなが、寛いでいました。


「おやハナ、今日のお手伝いは良いのかい?」

「お母さんが、今日は大丈夫って言ってたです~」


 居間にやって来たハナちゃんを見て、ヤナさんが問いかけました。

 いつもなら、お母さんのお手伝いをしている時間ですから。

 問いかけられたハナちゃんは、今日はお手伝いしなくても良いと伝えます。


「そうなんだ。じゃあ、一緒にのんびり待とう」

「あい~」


 理由が分かったので安心のヤナさん、ハナちゃんを誘ってのんびりくつろぎます。

 ハナちゃんもぽてぽてとヤナさんの方に歩いていき、ぽてっと座りました。

 夕食までもう少しです、のんびり待ちましょう。


「……あえ?」


 しかし、ハナちゃん何かを見つけました。ちゃぶ台の上に、何かが置いてあります。


「お父さん、これタイシが実験に使ってたやつです?」

「そうだよ。電気ってやつに興味があったから、借りてみたんだ」


 ハナちゃんが見つけたのは、乾電池ソケットと豆電球、そしてモーターでした。

 電きのこちゃん実験の時に使ったあれですね。

 その道具に、ハナちゃん目が釘づけになりました。


「ハナも興味があるなら、使って良いよ」

「ハナも使って良いです?」

「もちろんだよ。タイシさんも『みんなで色々実験したら良いですよ』って言ってたから」

「わーい! ハナも実験するです~!」


 大志から許可が出ていると聞いて、ハナちゃんウッキウキです。

 明るくなったり回ったり、不思議な不思議な道具と、そして電気。

 ハナちゃんは前回の実験で、とても電気に興味を持っていたのでした。


「じゃあまずは、明るくしてみようか」

「あい~」


 ハナちゃんはヤナさんにいわれた通り、乾電池と豆電球を繋ぎます。

 すると、ぺかっと明るく光が灯りました!


「何回やっても、面白いです~。不思議です~」

「確かに、電気って不思議だね。おうちもこんなに明るくなるし、カメラも動く。……タイシさんは『力』って言ってたかな?」

「次は、くるくる回すです~」


 ハナちゃん、電球をぺかぺかさせながら、キャッキャと遊びます。

 ちなみに、実験に夢中でお父さんの話は聞いていません。

 がんばれヤナさん。


「電気~電気~、謎の力です~」

「タイシさんたちの所というか、このちたまって所は、色んな出来事の原理を解明していて、凄いよね」

「謎の文明です~」


 ただのニッケル水素電池と、ただの豆電球。

 それでも、エルフたちにとっては驚愕の技術です。

 電気と言う謎の力を変換してしまうなんて、エルフたちには魔法にしか見えません。

 このエルフたちにとっては謎だらけのちたま文明、興味が尽きないのでした。


「そうだ、実験が終わったらきちんと充電しておくんだよ。そこのなんかの箱で」

「あい~」


 楽しく実験するハナちゃんを見て、ヤナさんがなんかの箱を指さして言います。

 エルフ曰く「なんかの箱」とは、ソーラーLEDライトのバッテリーユニットですね。

 名前は覚えていませんが、使い方は覚えています。

 このバッテリーユニットには給電機能もあるので、いつもカメラの電池や携帯電話の電池を充電していたのでした。


 そうしてぺかぺかくるくると実験をしていると――。


「――ハナ~、ちょっとお料理運ぶの手伝って~!」

「あい~!」


 お母さんから声がかかりました。待ち望んだ、おいしいお料理が出来たようです。

 実験はおしまいにして、ハナちゃんはんしょんよと道具を片付け始めました。


「電池は充電しとくです~」

「よしよし、偉いぞ」

「うふ~」


 乾電池もヤナさんにいわれた通り、充電器にカチカチとセットしてお片づけ終了です。

 すぐさま、お母さんのお手伝いの為、ぽててっと居間を後にしたのでした。

 さあ、今日はきのこの炊き込みご飯です。

 たくさん食べて、すくすく育ってね!



 ◇



 ――その日の深夜二時ごろ。ハナちゃんのおうちでは、みんなすぴぴとおねむしていました。

 しかし……。


 ぱち。


「……あや~」


 むくりとハナちゃんが起き上がりました。こんな夜中に、どうしたのかな?


「あや~、お腹空いたです~」


 おなかを抱えたハナちゃん、可愛くきゅるると腹の虫を鳴らします。

 どうやら、お腹が空いて目がさめちゃったみたいですね。


「最近なんだか、お腹が減るです~」


 育ちざかり食べ盛りのお年頃、隙あらばお腹が減ります。

 そんなハナちゃん、きょろきょろと周囲を見渡しました。


「んが~……がっ」

「すやすや」

「ふが~」


 家族のみんなは、あったかお布団でぐっすりおねむ中でした。

 起きているのは、ハナちゃんだけ。


「……」


 そんなみんなを起こさないように、ハナちゃんそっと布団から出て、壁にかけてあった上着を手に取り羽織ります。

 そして、ぽてぽてと歩き出しました。


「あややや、さぶいです~」


 ひんやりとした冬の夜の中、明かりもつけずにハナちゃんはぽてぽてとおうちの中を歩きます。

 月明かりだけが、頼り。一人でどこかへ向かうようです。


「食べ物あるですか~」


 ハナちゃんが向かった先は、台所。

 ここなら、食べ物がまあまあ置いてあります。

 ハナちゃん、夜食に何かつまみに来たようです。


「明かり、つけるです~」


 台所用の照明を点け、視界を確保したハナちゃん、がさごそと食べ物を探し始めました。

 しかし……。


「あや~、おやつ切らしてるです~」


 棚をあさっていたハナちゃんですが、どうやらおやつは無かった模様。

 可愛いエルフ耳がペタンとなってしまいました。


「他に食べられるもの、あるですか~」


 しかしハナちゃん諦めません。またもやがさごそと棚を探します。

 しばらくして、ハナちゃんのエルフ耳がぴこんと立ちました。


「サバ缶めっけたです~」


 どうやら良い物見つけたようですね。ハナちゃんキャッキャとサバ缶に手を伸ばして……ひっこめました。

 どうしたのかな?


「……これ、明日の朝食に出すやつです~」


 ハナちゃんが見つけたサバ缶、明日の朝食用だったのですね。

 今食べたら、明日の朝食から一品減るという大惨事に見舞われます。

 当然ハナちゃんは怒られちゃうので、諦めるしかありませんでした。


「……あとは、タクアンですか~。これも朝食用のやつです~」


 ついでに切り分けてある沢庵も見つけたようですが、夜食としてはちょっとアレですね。

 おまけにこれも明日の朝食用です。食べちゃうと明日の朝困るのですが……。


「ちょっとだけ、つまむです~」


 そうしてハナちゃん、沢庵を二切ればかしカリコリかじります。

 二切れ位なら、減っても誤差ですね。たぶん誤差です。


「全然足りないです~」


 明日の朝食をこっそり消費したハナちゃんですが、流石に沢庵二切れでは足りません。

 きょろきょろと台所を見回して、食べ物を探しますが……。


「……あや~、食べられそうなもの、もう無いです~」


 ハナちゃんガックシ、もう食べても大丈夫そうなものは見当たりませんでした。

 ハナちゃんちは大家族なので、食べ物はすぐなくなっちゃいます。

 今日はちょうど、在庫切れの時期のようですね。


「諦めて寝るですか~」


 とうとう夜食をあきらめたハナちゃん、とぼとぼと台所を後にしました。

 そして、みんなが寝ている部屋に到着。

 電気が付けられないので、そろりそろりと手さぐりでお布団に戻ります。


 そのとき――カタっとハナちゃんの手に何かが当たりました。


「あや~、みんな起きなかったですか~」

「んごご~……んがっ」

「すや~」

「ふが」


 ちょっと物音をたててしまいましたが、みんなは起きなかったようです。

 ハナちゃんほっとして、手に当たったものを見ました。


「あえ?」


 手に当たったのは、おなじみの物。

 それを見たハナちゃんは――。


「……むむ? むむむむ?」


 ――何かを考え始めました。むむむむハナちゃん、耳をぴこぴこさせて、何かを考えています。


「むむ?」


 冬の冷たい夜の中、月明かりに照らされたハナちゃん、考え事です。

 そうしてしばらくむむむむとしていたハナちゃんですが――


「……あえ? これイケるです?」


 ――何かを思いついたようです。

 エルフ耳をぴこっと立てて、じっとそれを見つめ始めました。


「試してみるです~」


 そしてハナちゃんは、何かを――食べ始めたのでした。


「やっぱり、これ食べられるです~。思った通りです~」



 ◇



 ――朝、今日はとっても良い天気! 冬の快晴の中、ハナちゃんちでは、朝ご飯の準備が始まりました。


「あやややや……今日は一段と冷えるです~」

「夜晴れていると、朝はとっても寒いわよね」


 昨日の夜は晴れていたので、放射冷却が起きたみたいですね。

 一段と冷え込む朝ですが、今日も元気に朝食の用意を始めます。

 ご飯を炊いてお味噌汁を作って、火を使っているのでだんだんお部屋も暖かくなってきました。


「じゃあハナ、この缶詰をお皿にあけてくれるかしら。手を切らないように気を付けてね」

「あい~」


 カナさんにお願いされて、ハナちゃんお料理の盛り付けです。

 といっても、温めたサバ缶をお皿にあけていくだけですが。

 ハナちゃんちの今日の朝食は、白いご飯に野菜たっぷりお味噌汁、ダイコンや葉っぱ物のお漬物にサバ缶と卵焼きです。

 けっこう美味しそうですね。サバ缶は体に良いので、なかなか悪くない献立です。


「サバ缶~サバ缶~、朝からごちそうです~」


 ハナちゃんもサバ缶は大好きなので、ご機嫌で準備をしていきます。

 昨日の夜中に食べちゃわなくて、良かったですね。

 ちなみにハナちゃんちでは、サバ缶は水煮派のようです。


 そんな感じでなごやかに進む朝食の準備ですが、カナさんの手が止まりました。

 なにか異変を感じ取ったようです。


「……あら? タクアンがなんか少ないかしら?」

「うきゅっ!」


 ――おっと、カナさんが沢庵の目減りに気づきかけています。

 昨日の犯行がばれそうになって、ハナちゃんうきゅっとビクビクしちゃいます。

 ハナちゃんぴんち!


「……気のせいかしらね。ハナ、これも盛り付けお願いね」

「あ、あい~。盛り付けするです~」


 危機は脱しました。ハナちゃんのつまみ食い事件は、迷宮入り決定!

 ハナちゃんいそいそと沢庵を盛り付けて、証拠隠滅に勤しみます。


「あら? ハナのタクアン、ちょっと少ないけど良いの?」

「え、えへへ。だいじょぶです~」

「そお? ハナ、食が細くなった?」

「き、今日はたまたまそんな気分です~」


 昨日ハナちゃんが食べちゃった分は、自分の分の盛り付けを少なくしてプラスマイナスゼロにしたようです。

 これでハナちゃんのカルマは消えましたね。めでたしめでたし。

 カナさんはハナちゃんの食が細くなったのかと首を傾げますが、むしろ逆ですね。

 より沢山食べるようになったのです。育ちざかりですからね。


 そんなこんなで無事朝食は出来ました。

 さあ、みんなで美味しい朝食、沢山食べましょう。


「では、いただきます」

「「「いただきまーす!」」」


 ヤナさんの号令で頂きますをして、みんなでもぐもぐ朝食です。

 特に今日はエルフたちにとってのごちそう、サバ缶があります。


「サバ~、サバ~、ご飯と食べると、最高です~」


 ハナちゃんはもうご機嫌で、ご飯とサバの水煮を食べ始めました。

 口の中で「ほろほろ」とほどけるサバの身に、旨味がぎっしり詰まった脂分が絡みつきます。これを熱々ご飯と一緒に食べたら――もう絶品!

 ほのかな塩味が油のしつこさを引き締め、するすると食べられちゃいます。


 そして良く漬かったお漬物で箸休めをし、つぎにふわふわ卵焼き。若干甘めに味付けしてあって、口の中に優しい卵の風味が広がります。

 最後にあったかお味噌汁を、ずず啜ってほっと一息。落ち着いたら、またサバをつまんで、ご飯をもぐもぐして。

 美味しい朝食沢山食べて、今日も一日頑張りましょう!


「ハナ、沢山食べるのよ」

「あい~」


 ご飯をお代わりして、ハナちゃんお腹いっぱい食べました。

 たくさん食べて、おっきく育ってね。


 そして、美味しく朝ご飯を食べ終わった後。

 お茶を飲みながら一休み。


「お腹いっぱい食べたから、今日も一日頑張るとしよう。雑貨屋の商品、発注表を作らないとね」

「私は地図を書くわ」

「ふがふが」

「あらあら」

「俺は、今日のおかずの為に、湖で釣りをしてくるかな」


 おうちのみなさん、お仕事の準備を始めました。ヤナさんは張り切って別室に行き、ほかのみんなも何かを準備しています。

 みんな働き者なので、なにがしかお仕事をしているのですね。


「ハナも、湖のそばでハクサイつくるです~」

「タイシさんから、種をもらったんだっけ」

「あい~」


 今日のハナちゃんのお仕事は、白菜栽培のようです。

 ヤナさんがハナちゃんに聞いていますが、大志から種を貰っていたみたいですね。

 冬と言えば白菜たっぷりの鍋ですから、大志なかなかのチョイスです。


「じゃあ俺と行こうか」

「いくです~」


 お爺ちゃんは釣りで湖に行くので、ハナちゃん一緒にお出かけです。

 ハナちゃんもいそいそと準備を始めました。

 んしょんしょと服を着込んで、種をポッケに入れて、あとは……。


「あれ? ハナ、それを持って行ってどうするの?」

「あえ?」

「ほら、それをどこで使うの?」

「これです?」


 しかし、ハナちゃんが準備する様子を見たカナさんん、首を傾げて聞きました。

 ハナちゃんがんしょんしょと用意した物の中に、野菜栽培にはおよそ必要がない物が混じっていたのです。

 カナさんに用途を聞かれたハナちゃん、にぱっと笑顔で言いました。


「これ、おやつです~」


 ハナちゃん、「ソレ」を手に持ってキャッキャしています。

 え? それって……。


「これ、おやつ? ハナ、何を言っているの?」

「あえ? これ食べられるですよ?」

「え?」


 カナさん、さらに首を傾げてしまいましたが――ハナちゃんは食べられると言います。

 カナさん、わけが分からなくて固まってしまいました。


「おいハナ、そろそろ行くぞ……て、カナは何を固まっているんだ?」

「お母さん、これ食べられるって教えたら固まったです?」

「え?」


 そしてお爺ちゃんも固まります。


「ふが?」

「あらあら?」


 ひいおばあちゃんも、お婆ちゃんも固まります。


「あれ? みんなどうしたの?」


 異変を感じ取ったのか、ヤナさんが別室から出てきて――。


「これ、食べられるって言ったら、みんな固まるです?」

「え?」

「あや~……お父さんも固まったです~」


 ――みんな、固まってしまったのでした。



 ◇



「……それで、これは本当に……食べられるのかい?」


 しばらくして、おうちのみんなは解凍しました。

 ヤナさん、ハナちゃんの持っている「ソレ」を見て、半信半疑の様子で聞きます。


「あい~! これ、結構おいしいです~」


 ハナちゃんにぱっと笑顔で、「ソレ」を掲げます。

 ハナちゃんが掲げたのは――ニッケル水素乾電池!

 ……電池?


「どうやって食べるの? 固くてかじれないわよ」

「こうやって、吸うです~」


 ハナちゃんが実演を始めました。単三型ニッケル水素電池を、チューチュー吸い始めます。

 そして、しばらく吸った後……もぐもぐと何かを噛み始めました。

 さらに――パチパチと髪の毛から火花が!


「歯ごたえ、あんまりないです~。味は……ピリっとして癖がないです?」


 ハナちゃん、「何か」をもぐもぐと食べながらグルメレポートです。

 ねえ、それ……一体「何」を食べているのかな?


「僕も試してみよう」

「私も。吸えば良いのよね」

「あい~! ちゅるんって感じで、口の中に入ってくるです~!」


 まるで麺みたいな言い方ですが、ちゅるんって感じらしいです。

 ヤナさんとカナさんも、電池をちゅーちゅー吸い始めました。

 すると――。


「ほんとだ! ちゅるんって来た! ……あ、これ結構美味しい」

「確かに歯ごたえはあんまりないわね」


 ヤナさんとカナさんも、「何か」をもぐもぐし始めました。そして火花がパチパチ。

 ――ねえ、一体それ、何?


「あ、うめえ」

「あらあら」

「ふがふが」


 お爺ちゃんお婆ちゃん、ひいお婆ちゃんも電池をちゅーちゅー。

 そしてもぐもぐパチパチ。

 みんなで美味しく、「何か」を食べています……。


「でもハナ、よくこれが食べられるって思ったね」


 ヤナさんがもぐもぐしながら、ハナちゃんに問いかけました。

 普通これ、食べようとは思いませんからね。当然の疑問です。

 それに対してハナちゃん、こう言いました。


「ビリビリきのこのビリビリ、タイシは『電気』って言ってたです?」

「確かに、言っていたね」

「この電池も、同じビリビリってタイシ言ってたです?」

「……それも確かに」


 確かに、大志は言っていましたね。このビリビリは電気だって。

 と、いう事は……。


「ビリビリきのこのビリビリは電気で、食べられるです。だったら――電池のビリビリも食べられるです~!」


 ハナちゃんはおててを広げて、キャッキャしています。

 なるほど、電きのこちゃんの電気が食べられるのなら、同じように電池に蓄えられた電気も食べられるという事ですね。

 当然の理論的帰結ですね。


 つまりハナちゃんは、電池の電気を――食べちゃったのです!

 このエルフたち……電気を「もぐもぐ」食べてしまうことが――出来ちゃうのです!

 

「これ、みんなにも教えるです~」

「あ、それ良いわね。みんなのおやつが増えるわ」

「早速みんなを集めて、教えよう」

「あい~!」


 ……大志、早く佐渡から帰ってきた方が良いですよ。

 なんか、エルフたちが変なことを始めましたよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ