第九話 電源たち
電きのこちゃんを発生させるためには、なんかの木にカミナリを落とす必要がある。
ただ、そんなに都合よくカミナリは落ちてこない。
というわけで、次の実験だ。
別にカミナリでなくても良いのか、確認だ。
「ではみなさん、次の実験に移りたいと思います」
「どんなじっけんをするです?」
「たのしみ~」
「なんだろな~」
みんなでエルフの森に行き、電きのこちゃんが生えてくるなんかの木の周りに集まる。
電きのこちゃんを収穫し終わった場所なので、今は一本も生えていない。
ここで、ちょっとおおざっぱな実験を行うのだ。
それでは、機材を準備しましょう!
「タイシ、おりょうりするです?」
「カセットガスコンロと包丁を用意して、何をするのですか?」
いそいそと実験機材を用意していると、ハナちゃんとユキちゃんから突っ込みが来た。
そうなんです。お料理の準備をしているのですよ。
「ここでおりょうりするの?」
「おいしいものかな」
「でも、ざいりょうがないわよ」
ほかの見物人エルフたちも、首を傾げてお料理機材を見ている。
材料は持って来てあるんだなこれが。
それを見れば、何をしたいかがわかるだろう。
「これから作る献立は、これです!」
どどーんと黄色電きのこちゃんと、マジックワサビちゃんソルトを掲げる。
そう――勇者向けを作るのだ!
「あや! それはヤバいやつです!」
「なるほど、それで放電させるわけですか」
「そう言うこと」
この村でお手軽に電気バリバリできる方法といったら、これだね。
まずはこの勇者向けによる放電にて実験して、大まかなところを掴みたいわけだ。
成功するかはわからないけど、とりあえずだね。
「タイシ、ハナもおりょうりてつだうです~」
「それじゃ、薄切りにしてくれるかな」
「あい~」
ハナちゃんもお料理を手伝ってくれるようで、キャッキャと電きのこちゃんをスライスしていく。
あとはマジックワサビちゃんソルトをふりかけて、炙るだけだ。
美味しくな~れ!
「というわけで、勇者向けが出来上がりました」
「それで、誰が食べるのですか?」
「――あ」
「ハナはえんりょしとくです~」
ユキちゃんの突っ込みで、最大の問題にようやく気付いた。
そういえば食べる人を選定していなかったのだ。
……俺も出来れば遠慮しておきたい。さらにハナちゃんも速攻遠慮した。
どうしよう。誰か、犠牲――おっと勇者になりたい人はいないかなっと。
「……」
「ぴゅーぴゅー」
「あ、フクロイヌとあそぼう」
「ギニャ?」
他の方々に目線を送ったら、みなさんさっと目をそらす。
……勇者になりたい人、いないようだ。
これは困った。俺が食べないといけないか?
(ごちそうのよかん~)
犠牲――おっと勇者が見つからなくて困っていたら、神輿がやって来た。
神様も電きのこちゃんが大好きだから、調理時の匂いにつられたようだ。
そして――ナイスタイミング!
食いしん坊神様に、お願いしてみよう。
「神様良い所に。お供え物がありますよ」
(ほんと!)
「あや! みこしすごいはやさです~!」
「ひゅいんっておとがしたわ~」
「めにもとまらぬはやさ」
神輿に呼びかけると、猛スピードでこっちにやってくる。
ほよほよ光っているので、知らない人が見たらまさにUFOだねこれ。
(おいしそうなおそなえもの~)
そして勇者向けの上でくるくる回る神輿だ。
今か今かとお供えの時を待ち構えているので、早速お供えをしましょう!
「では神様、こちらをどうぞ!」
(わーい!)
ぴかっと光って勇者向けが消え、エルフたちはずざざっと後ずさる。
そして――。
(おいし~!)
「あや! ビリビリきたです~!」
「いつ見ても恐ろしい光景ですね……」
神輿がビリビリバリバリと放電し始め、壮絶な光景が展開される。
「う、うわあ……」
「あんなやばいおりょうり、つくれちゃうの……」
「やばすぎ」
「じごくえずって、こういうことをいうんだな……」
神輿放電を見たあっちら辺の森のエルフたち、ぷるぷるふるえはじめた。
……そういえば、彼らは勇者向けを見るのは初めてだったか。
ちょっと刺激が強かったかな?
そうして神輿が放電しているうちに、電撃の軌道が曲がり始めて――なんかの木に電撃が集中する。
いいぞいいぞ! なんかの木が電撃を吸収し始めた!
おまけに、謎の渦巻き模様も浮かび上がったぞ!
「ほら見て下さい、木が電気を吸収していますよ」
「うわあ! すげえ!」
「こんなんなるのね」
「はじめてみた!」
あっちら辺の森のエルフたち、なんかの木が電気を吸収するさまを見てさらにびっくりだ。
どうやら、落雷の瞬間と電撃吸収の様子は見たことが無かったようだ。
……まあ、広い森のどこかで一瞬だけ起きる現象だからね。
そうそう見られるものではないのだろう。
そうしてみんなで、しばらく神輿電撃を見守ったのだった。
(おいしかった~)
――やがて神輿の電撃は収まり、辺りは静かになる。
電気を使い果たしたわけだ。さて、それでは電きのこちゃんは生えたかな?
根元を確認して……と、生えてない。
「あえ? なにもおきないです?」
「生えてきませんね」
「電気が足りないのかもしれないな。追加でやってみよう」
(おそなえもの~!)
再び勇者向けを調理すると、神輿がくるくる回って喜ぶ。
謎の声も嬉しそうなので、追加実験は問題なさそうだ。
「では神様、焼き立てです」
(おいし~!)
「さらにもういっちょ!」
(ごちそうたうさん~!)
「どんどん行きますよ!」
(みなぎってきたー!)
もうじゃんじゃか焼いて、出来たそばからお供えをしまくる。
神輿はごちそうを沢山食べられてご機嫌な様子で、電撃を放出しまくりだ。
しかし――。
「あえ? はえてこないです?」
「これだけやってもダメか……」
「何かが足りないんですかね?」
黄色電きのこちゃん一本分の勇者向けでも、電きのこちゃんは生えてこなかった。
ユキちゃんの言うとおり、何かが足りないのだろうか?
……実験の方向性を、ちょっと変えてみようか。
「このままだと生えてこない気がするから、何か違う事をする必要があるかも」
「ちがうことです?」
「そうそう。同じことばかりしていても、ダメっぽそうだからね」
と言うわけで、どういった方向にするかだけど……。
どうしようかな?
……魔王向けを作ってみるか? いや、それはさすがに危ない。
あくまで理論上の存在だ。現世に降臨させてはならない予感がする。
ではどうするか……。
「タイシ、こまってるです?」
「まあそうだね。これ以上強力なのは、ちょっと危ないなって思ってて」
「魔王向けは止めましょう。変なの出て来そうです」
「俺もそう思う。ただそうすると、これ以上のものは用意できないんだよね。どうしよう」
「ハナ、ちょっとかんがえてみるです。……むむむ」
レシピを知っているユキちゃんは、すぐに魔王向けに思い至ったようだ。
大将のレシピにはドクロマークが書いてあったので、よほど危険だということで。
俺も試す気はない。ちなみにドクロマークは大将の奥さんが書いたものだ。絵心あるね。
そしてハナちゃんは、色々考えてくれるようだ。可愛くむむむと考え始めた。
ここはひとつ、むむむむハナちゃんの発想に期待してみよう。
「むむむ、むむむ」
「あら、ハナかわいいわね~。なでちゃうから!」
「むふ~」
「じゃあぼくも」
「むふむふ~」
色々考えていると、カナさんとヤナさんがハナちゃんの頭を撫ではじめた。
むむむむハナちゃんは両親にかまってもらえてむふむふだ。
ほんわかする光景だね。
「あえ?」
「ハナ、どうしたんだい?」
実験の事はそっちのけで微笑ましい光景を見ていると、しばらくしてハナちゃんの耳がぴこんと立った。
何か思いついたのかな?
「あえ? そういえば……」
そしてハナちゃん、ヤナさんの方をじっと見る。
「そういえばおとうさん、あのゆうしゃむけ、たべたことあるです?」
「あるよ。ぼくはゆうしゃだからね!」
ハナちゃんがそう聞くと、ヤナさん胸を張って自慢げな顔だ。
「おれもあるぞ」
「おれも」
マイスターとマッチョさんもヤナさんの隣にならんで、三人とも誇らしげだ。
誇らしげなのは良いけど、さっき勇者向けを食べる人探したら、三人とも目をそらしたよね?
「……あれ、たべたひとがいるんだって」
「まじで」
「すごいというか、なにかがおかしいというか」
神輿から出る電撃を見てぷるぷるしていた、あっちら辺の森のみなさん。
勇者向けを食べたというヤナさんたちをみて、またぷるぷるふるえだす。
あれを生身で食べたと聞いたら、そりゃ引くよね。
味はとっても美味しいんだけど、やっぱりビジュアルが衝撃的でして。
「おとうさんたち、ちょっときてほしいです~」
「どこにいくのかな?」
「こっちです~」
とかそんなやり取りをした後、ハナちゃんがぽてぽてとヤナさんたちを連れてこっちにやってきた。
勇者三人を連れてきて、何をするのだろう?
「ハナちゃんどうしたの?」
「タイシ、みんなでいっしょにたべたら、どうなるです?」
「ん? みんなで一緒に食べる?」
「あい。みんなでいっしょにたべて、ビリビリだしてみたらどうです?」
――なるほど! 人数を増やして実験しようということか!
確かにそれなら、一度に発生させられる電気は増える。
やってみる価値あるな。
「ハナちゃんそれ良いね! じゃあ試しに実験してみよう!」
「あい~! じっけんするです~!」
「え?」
「いまなんて?」
「あれ、おれらもたべるの?」
ハナちゃんの提案に乗って、実験してみよう!
……連れてこられた三人は、なんだかぷるぷるし始めたけど。
まあ大丈夫だよね。この前も無事だったから。
……あ、ただ三人に食べてもらうだけではなく、ちょっと工夫をしよう。
みんなで手を繋いでもらって、両端の人は木に手を当てる。
こうすれば、電気を無駄なく伝えられると思う。
――というわけで思いつきを話して、フォーメーションを組んでもらう。
まずヤナさんが木に手を当て、マイスターとマッチョさんの順で手をつなぐ。
そしてマッチョさんは――俺と手をつなぐ。
そう、俺も勇者として参戦だ。
……だって、人を使うなら俺も加わらないとね。
実験責任者は俺だから、他の人への示しとして参加しないと。
というわけで、ヤナさんと俺が端っこになって、木に手を置く。
(たのしそう~、なかまにいれて~)
おや? 神輿が俺の頭の上に。
神様、自主参加ですか。
……電きのこちゃんを食べたいだけじゃないですよね?
「やけたわ~」
「これでいいのよね」
そして腕グキさんとステキさんが、焼き立てほかほかの勇者向けをお皿に盛り付けている。
腕のいい二人の事だ。教えたレシピを守って、美味しく調理してくれたことだろう。
「はい、ひとりひとつずつよ~」
「くちをあけてね」
あれよあれよという間に、手をつないだメンバーの口に勇者向けを放り込んでいく腕グキさん母子。
俺の口にも放り込まれて――美味しい。噛んでないのに、この時点で香ばしさが食欲を引き立てている。
「タイシ~、ぶじをいのるです~」
「無理しないでくださいね」
そしてハナちゃんとユキちゃんが、心配そうにこちらを見ている。
ハラハラドキドキといった感じだ。
もう準備は整っている。後戻りはできない。
「……」
「――」
手をつないだ皆と目配せをして、お互いの覚悟を確認する。
みんな、勇者の目をしている。戦いに赴く、男の目だ。
頼もしい仲間たちだ。
では、実食――。
(おいしー!)
――そして、森は電撃に包まれた。
◇
電きのこは無事生えました。勇者が最低三人は必要なようです。
「こんなにからだをはるのね」
「じっけんて、たいへん」
「まさにゆうしゃ」
電きのこ研究で大幅な進展があったけど、あっちら辺の森エルフはぷるぷるふるえている。
あまりにあまりな光景だったようだ。
四人プラス神輿の電撃は、まさに終末の光景だった。
映像は残してあるから、飲み会のお笑いネタとして活用しよう。
「タイシ~、かみのけツンツンです?」
「お疲れ様でした」
そして今勇者たちは、髪の毛ツンツン状態だ。
まだなんか、電気がピリピリしている感がある。
「うまくいってよかったです」
「ひさびさに、すげえビリビリだった」
「おれら、ゆうしゃだよな?」
実験を成功させた勇者たちは、誇らしげな顔だ。髪の毛ツンツンだけど。
彼らには協力してもらったお礼として、美味しいお酒を後で贈ろう。
これから寒くなるから、ブランデーが良いかな?
まあなんにせよ、これで電きのこちゃんの人工栽培に目途がついたわけだ。
勇者が三人入れば、そこそこいい感じに栽培できちゃう。
設備を必要とせず、必要なのは黄色電きのこちゃんとマジックワサビちゃんソルトがあれば良い。
これであれば、あっちら辺の森エルフたちだけで、何とかなるはずだ。
栽培方法は、ひとまずこれで良いことにする。
そして、今回の実験で一つの事がわかった。
電きのこちゃんに重要なのは、電流量ではなく電圧だ。
勇者向けで放電される電気は、電流は微弱だ。ただ電圧がべらぼうに高い。
このため、見た目は派手だが感電しないのだ。テスラコイルの実験と似たようなものだね。
また、なんかの木は高電圧によりなにかを励起しているように見える。
もしかしたら、このなんかの木は――加速器だったりして。
静電加速器と、なんか似てる。
もしこの木が高電圧を利用して粒子を加速させ……元素を作っていたりしたら。
作り出した元素を利用して、急速に成長したり謎現象を起こしていたりしてね。
その副産物が、あの電きのこちゃんなのかも。単なる想像だけど、そうだったら面白い。
実際、灰化したエルフの森植物を分析したら……とんでもない量のカルシウムマンガンクラスターを作れる元素が存在していた。
この元素を調達するには、自分で生成したほうが手っ取り早い。
もしかしたら、エルフの森は……水と空気と電気さえあれば、必須元素を自前で生成しちゃうかもしれないのだ
通常の植物なら地面から吸い上げるその必須元素を、自前で生成してしまう。
そんな凄い植物なのかもしれない。
……まあ、想像は膨らむけど確かめる術はない。
シンクロトロン放射をしているかどうか、確認できたら良いんだけど……。
こうして、エルフプランツの謎が、また一つ増えてしまったのだった。
◇
「では、わたしたちはもりにかえります」
「ビリビリきのこ、たくさんつくりますね」
「きょうりょくしてくださって、ありがとうございます」
電撃騒ぎから三日後、あっちら辺の森エルフたちは岐路についた。
彼らはこれから森に帰って、犠牲者――おっと勇者を選定する儀式に入るそうだ。
勇者に選ばれた方は、頑張って頂きたい。
勇者特典のお酒も渡してあるから、見つかるとは思う。
きっとなんとかなる。なるはず。……なったらいいな。
「また、きてほしいです~」
「きのこたくさん、たのむな~」
「どうちゅうおきをつけて~」
村人エルフたちは、あっちら辺の森エルフたちの姿が見えなくなるまで、手を振って見送る。
ハナちゃんたちも、今まで交流がなかった森のエルフたちとの交流だっただけに、結構楽しかったようだ。
自分たちのしらない森で、知らない文化を持っていた人々だ。良い刺激になっただろうね。
俺からしても、きのこ大好き文化のなかなか面白い方々だった。
これからもこんな交流や、知らない森の人が訪れてくれたらいいなと思う。
そうしてあっちら辺の森エルフたちを見送って、村へと帰還。
ほっと一息ついていると、ハナちゃんがぽてぽてと俺の方にやってきた。
「タイシタイシ、これでビリビリきのこ、いつでもたべられるようになるです?」
「そうそう、それだいじ」
「うちのもりにはえてるやつ、そろそろかずがこころもとなくて」
ハナちゃん他村人エルフ達が、電きのこ栽培の行く末について聞いてきた。
というか、うちのエルフの森に生えている電きのこ、そろそろ在庫切れしそうだからね。
「あっちら辺の森で上手く栽培が出来れば、多分どっさり持って来てくれると思う」
「それまでにたりなくなったら、どうするです?」
ん? なんだかハナちゃん、緊張気味で聞いてきたけど。
栽培は簡単だから、問題ないよ?
「そりゃもう、元気な男性陣の中から勇者を選定して、ビリビリ栽培するよ」
「それなら、ひとあんしんです~」
足りなくなったらうちでも作れるので、特に問題はない。
ハナちゃんもそれを聞いて、心底安心している。
エルフ耳がへにょっとたれて、たれ耳ハナちゃんになるほど安心している。
……そんなに電きのこの栽培、心配だったの?
「よかったわ~」
「あのビリビリ、さすがにわたしたちじゃむりだもの」
「おんなでたすかったわね」
あれ? ほかの女性陣のみなさんも心底安心しているけど。
「……おれら、あれやるの?」
「まじで」
「おとこには、やらねばならぬときがあるのだ」
うって変わって男性陣、悲壮な面持ちだ。
あれ? もしかしてハナちゃんや女性陣が安心してたのって。
……自分たちは、ビリビリしなくて良いからって事?
「おとうさん、がんばるです~」
「う、うん。がんばるよ」
「おれら、もうなれた」
「いがいとくせになるじゃん?」
……どうやら、村人エルフたちも出来れば遠慮したいらしい。
わりと平気そうなのは、三人の勇者エルフだけだね。
まあ、しばらくは勇者たちが踏ん張る方針で行こう。
「あ~みなさん、無理強いはしませんので、しばらくは私たちで何とかしますよ」
「まじで」
「いやでも、それはそれで、もうしわけないかんじ」
「さすがになあ」
無理強いしない点を伝えると、男性陣はホッとしたような申し訳ないような顔になった。
さすがにあれはね。勇者向け放電芸は、若干ネタ交じりのノリでやるものだからね。
「まあみなさん、あれはネタとノリでもって、勢いでやるものですから」
「わたしたちも、よったいきおいでしたね」
「ほとんどそれ」
「のみかいネタだったじゃん?」
ヤナさんや他の勇者たち、みんなでわははと笑う。
あれをネタで済ませられる胆力があるから、勇者なのだとも言える。
これらネタ勇者たちには、その勇気を讃えてブランデーを贈りましょう。
これは勇者のみが得られる、けっこう良いブランデーだ。
あっちら辺の森エルフたちも、勇者特典としてブランデーを購入している。
一つの文化として根付いたら、面白いかもだね。
じゃあさっそく、ブランデーを勇者たちに手渡そう。
「そうそう、勇者向けで電きのこを生やした方には、こちらのお酒を贈りますので」
そう言いながら段ボール箱に入っている、ブランデーを三本取り出す。
ヤナさんたち、すぐさま酒瓶に目が釘づけになった。
「え? おさけですか? よろしいので?」
「なんたって勇者ですから。はいどうぞ、強いお酒ですよ」
「これはうれしい」
「ゆうしゃやっててよかったじゃん!」
ブランデーを渡すと、三人とも嬉しそうに酒瓶を抱える。
電きのこちゃんを三本生やせば、だいたいブランデーが一本買えるくらいの利益にはなる。
大盤振る舞いしても黒字になるから、遠慮なく配れちゃうのだ。
「電きのこをつまみに、このブランデーをちびちび飲むと美味しいですよ」
「おお、いいですね」
「よるになったら、のんでみるじゃん」
「いっしょにのもうぜ」
ワイワイと盛り上がるヤナさんたち、お酒のボトルを見てニッコニコになった。
電きのこちゃんを食べながらブランデーという、ある意味電気ブランをお楽しみくださいだ。
――さて、これでひとまず大きな仕事は終わったかな。
ようやく、のんびりできそうだ。
◇
のんびりできそうだと思っていた矢先、佐渡に焼き物研修に出ていたメンバーが帰ってきた。
先に村に帰ってきていた佐渡観光メンバーと合流し、写真を見せ合ってキャッキャしている。
どんな様子だったか、ちょっと聞いてみるか。
「親父、研修どうだった?」
「おおむね問題は無かったな。楽しく焼き物研修してたぜ。教える方も、楽しそうだった」
「それは良かった」
報告は色々来ていたけど、おおむね問題はなかったということで。ほっと一安心だ。
ただ、おおむねってことは細かい問題は合ったわけだ。
それはなんだろう?
「細かい問題はあったんだよね?」
「まあな。こっちじゃ分単位で行動することも良くあるが、エルフたちにはキツかったようだ」
「そもそも、そういう生き方は不要な世界だからね。無理もないと思う」
「まあな。三時間単位が今の所限界だったから、研修計画は練りなおしてもらっている」
こちらの世界では当たり前の、分単位スケジュールは流石にキツかったようだ。
厳密な時間でもって、時計を見ながら予定をこなすのは彼らの文化に無い。
そこまで頑張らなくても、問題なく生きていけるからね。
そんなエルフたちには、あんまり無理強いせずのびのびと学んでもらいたいものだ。
ただ、のんびり学んだらどれくらいかかるだろうか。
「それで、感触としてはどれくらいかかりそうかな」
「ゆっくり教えて、春位には形にはるだろうとは言ってた。長くて半年は見といて欲しいと」
「なるほど、半年ね」
半年なら、結構早い方かもしれない。ゆっくり教えてもその期間で形になるなら、かなりの実力では。
陶芸おじさんがそういうのだから、おそらくその期間さえあれば物には出来るだろう。
目標が見えてきたね。
「あ、タイシさんタイシさん、やきものたのしいです!」
「ありがとうございます!」
「ぼくたち、なんとかやれそうです!」
「いろいろ、べんきょうになりますね!」
「どうやってかたくするかは、はなしをきいてわかってきましたああああ!」
親父と話していると、テンションMAXの五人組に囲まれる。
みなさん写真を見せてくれたけど、一生懸命土をこねる光景が移っている。
陶芸おじさんはニコニコ顔だね。
写真からでも、楽しそうな雰囲気が伝わる。いい感じに研修はできているようだ。
「みなさん、研修を続けても問題ないですかね?」
「ありませんありません!」
「やけるようになるまで、がんばります!」
「ゆめにちかづいてきたああああ!」
……目が血走っているけど、やる気はさらにみなぎったようだ。
それじゃあ、引き続き頑張ってもらおう。
「では、引き続き研修頑張ってください」
「「「はーい!」」」
平原の人は焼き物を学び、あっちら辺の森エルフはきのこ栽培を学び。
目標に向かって努力するのは、なかなか眩しいね。
彼らを見ていると、俺も頑張らないとって思う。
「みんな、すげえなあ~」
「あたらしいことはじめようって、がんばってるわね」
「おれらも、なんかかわったことするかあ~」
平原の五人衆がはしゃぐ様子を見た村のエルフたちも、なにやら刺激されたようだ。
彼らもなにがしかの目標を持って、研鑽に励むことができるような。
そんな何かを見つけてくれたら、いいなと思う。
この村のエルフたちだって、やればできるはず。
できると思う。出来たら良いな?




