第三話 初雪だ!
三日後、天気予報が外れ始めた。
どうも大気が不安定なようで、気象予報士もかなり苦労している模様。
今はまだ十五℃程度だけど、一気に冷え込む可能性もあるとか。
もし一気に冷え込むと大変まずいので、慌てて村の様子を見に行く事にする。
親父は仕事で留守なので、今日は一人で向かおうと出発の準備をしていると――呼び鈴が鳴った。
何だろう? 回覧板かな?
来客を確認すべくインターフォンの画面を見てみると、ユキちゃんだった。
冬物に身を包み、防寒対策バッチリな出で立ちだ。
それはそれとして、直接うちに来るとは、どうしたのだろうか?
とりあえず上がってもらってから、理由を聞こう。
「ユキちゃんこんにちは。まずはリビングに行こうか」
「こんにちは。それでは、おじゃまします」
ユキちゃんをリビングに待たせて、濃いめに淹れたあったかいお茶を持っていく。
湯呑みをコトリと置いて、まずは一服。二人でお茶をずずずとすすり、一息だ。
……さて、一息ついたところで、要件を聞こう。
「それで、今日はどうしたの?」
「今朝はやく、魔女さんに呼び出されて……『これを使ってみて』と言われまして。例の防寒の話ですね」
「あ、相談してくれたんだ」
「ええまあ……これなんですけど」
そういうと、ユキちゃんは手に持っていた袋から、反物みたいなのを取り出した。
……これが、魔女さんから渡されたものかな?
「というわけで、これが魔女さんからの提案だそうです」
「布だよね?」
「はい。なんでも『マジカルヒー○テック』とか言うそうです」
「どこかで聞いたような名前だね」
「ですよね」
今目の前にあるのは、黒い良く伸び縮みする布だ。
名前はムニクロの大ヒット商品にそっくり。けど、それゆえ分かりすい。
名前の通り、発熱する布なんだろう。
「この量の布で、お値段三十万円だそうです。製造原価で」
「高いね……」
「ですよね」
一反で三十万円の、超高額な布でござる。
しかし、なんでこんなに高いんだろうか。
「高額になる理由って、聞いてる?」
「はい。増幅石をふんだんに使う必要があるのと、ミクロン単位の粉末加工でお金がかかるそうです」
「あ、増幅石を使っているんだ。なら高くなるのもしょうがないかもだね」
「ですかね」
増幅石は元々高いし、高度な粉末加工をしたら、それもお金がかかる。
おまけに少量生産だから、量産効果も出せない。まあ妥当な製造原価だろう。
それはしょうがないとして、問題は性能だね。
「この布の諸元って聞いてる?」
「マイナス五℃くらいの環境であれば、これ一枚でそこそこイケるそうです」
「それは凄い」
かなりの高性能じゃないかな? この布でインナーを作って、上から着込めばマイナス十℃でもへっちゃらなのでは。
実際どうなのかはわからないけど、まずは試そう。
ということで妖精さんたちに布を提供して、妖精向けヒートテッ○をこさえてもらおう。
◇
ユキちゃんを車に乗せて、村を目指す。
気温はそれほど寒くないけど、なんだか黒い雲がちらほらと。
大気が不安定な感じで、これは一気に寒くなるかもだ。
冬対策がまだ完全でないうちに一気に寒くなられると困るけど、お天気のことだからどうしようもない。
ただ、どうしようもないけど……どうにかしないといけない。
そうして若干の焦りを感じつつ、村に到着。
さっそく妖精さんに声をかけて、お試しで服を作ってもらう事になった。
「あったかいふく、つくりましょ~」
「わりとあつでだね! あつでだね!」
「ぺたぺたはって、できあがりだよ! できあがりだよ!」
三人の妖精さんが代表して来てくれて、集会場でぽんにゃり服作り。
ストーブが焚かれて暖かい集会場にて、村のみんなとその様子を見守る。
そうして見守る中、二時間ほどでインナーは完成した。
縫製はせず接着で済ませると、こんなに早く出来るんだな。
さて、実際に着てもらって、どんな感じか確かめよう。
「きがえてくるね! まっててね!」
羽根を補修した妖精ちゃんが試着するようだ。
別室にぴこぴこ飛んで行ったので、ちょっと待とう。
「きてみたよ! かなりあったかいよ!」
「ほんと? ほんと?」
「ふしぎなぬの~」
三分ほど待って、妖精ちゃんが着替え終わる。
黒いレオタード姿みたいな恰好になったけど、これはこれで可愛いね。
ヤナさんが着ると全身タイツ戦闘員になるのに、妖精ちゃんが着るとバレリーナだ。
この違いはなんだろうね。雰囲気の違いかな?
……まあそれはそれとして、あったかいのは間違いなさそうだ。
具体的には、どれくらいだろうか?
「これでもっと寒くなっても、やっていけそうかな?」
「たぶんだいじょうぶだよ! このままおそとにでても、あせをかくかもだよ!」
どうやら問題ないようで、今日の寒さでも外で過ごせそうとのこと。
それじゃ、これを量産してもらおう。
ただ、すぐには出来ない。出来上がるまで、集会場に避難してもらおうかな?
ここならストーブを炊いておけば、ぽかぽかのんびり過ごせる。
インナーが出来上がるまで、俺が火の番をすれば良いだろう。
――よし、これで妖精さんたちはひとまず何とかなった。
ユキちゃんのおかげだね。お礼を言わないとだ。
「ユキちゃんありがとう。これで妖精さんはなんとかなりそうだよ」
「お役に立てたのなら、何よりです」
「これからも頼ると思うけど、よろしくね」
「ふふふ、任せてください」
お礼の言葉を伝えると、ユキちゃんふんわり微笑んだ。
たまに挙動不審なところがある彼女だけど、色々と頼りになる。
加茂井家には、頭が上がらないな。
じゃあ次は動物たちだね。この辺どうするかだ。
これは俺より動物たちを知っている、エルフたちに相談したほうが良い。
というか、外の空模様はどんどん悪化してきている。
もう気温が下がり始めているから、早い所なんとかしないと。
みんなに懸念点を説明して、一緒に対策を考えてもらおう。
「実は今、森やお花畑に住む生き物たちを寒さから守るためには……どうしたら良いかと悩んでまして。一緒に考えて頂けたらと」
「タイシタイシ、もりはだいじょぶかもです?」
……ん? ハナちゃんが俺の服のすそを、クイクイしながら言ってるけど。
森は大丈夫? なにが大丈夫なんだろう?
「森が大丈夫って、どうして?」
「もり、なんかあったかいです?」
「え? 森が暖かい?」
「あい。うすぎでも、もんだいないくらいです~」
薄着でも問題ないとな。……確かにこないだ森に入ったとき、寒くは無くて過ごしやすかった。
でも、たまたまじゃない?
「そういえば、おはなばたけもあったかいぞ」
「そこも、ぽかぽかですごしやすいです~」
あれ? 今度はマイスターが、花畑も暖かいとか言い始めた。
ハナちゃんも同意しているから、マイスターの気のせいってわけでもない?
……妖精ちゃんにも聞いてみよう。
「ねえ、お花畑って、あったかいの?」
「とくにいしきはしてないけど、ここよりはずっとあったかいよ! あったかいよ!」
「おはなのなかでねても、へっちゃら~」
「おなかをだしてねると、だめだけどね! だめだけどね!」
体の小さな妖精さんたちがあったかいというくらいだから、確かにそうなんだろう。
この子たちは体が小さいから、気温の低下には超敏感なはずだ。
どんどん放熱してしまうのだから。
……そういえば。
妖精さんたちは、今まで特に――寒がってはいなかった。
気温が十五℃を切ればかなりキツいはずなのに、居住区で薄着のままきゃいきゃいしていた。
森の小動物たちだって、森の中をぴょこぴょこ動き回っている。
……そういえば。
夏に森で過ごした時、涼しかった。
あのときは日陰で風通しも良いからだと思っていた。
でも、エルフの森ではない場所は、それなりに暑かった。
……そういえば。
こないだお花見をしたとき、なんだかぽかぽか陽気だった。
今日はあったかいな~なんて思っていたけど、家に帰るとめっちゃ寒かった。
そういえば。
今この村には、異世界の植物群が二つもある。
それらの植物が――まともなわけがない。
だって一晩で大増殖する、スキあらば増えちゃうよプランツなのだから。
まともな植物のわけがないのだ。
…………。
「……ユキちゃん、どう思う?」
「思い返せば、色々と心当たりが……」
ユキちゃんも記憶をたどった結果、やはり「あれ?」となったようだ。
二人で顔を見合わせる。
「――ちょっと、森とお花畑を確認してみたいと思います」
「私も行きます」
「ハナもいくです~」
とりあえず確認してみようということで、いざ外に出る。
すると――数時間前とはうってかわって、気温が下がっていた。
そして、冷たくさらさらとした風が「ザアア」と吹いている。
風が頬をなでる感触が、いつもとは違う。
これは……雪が降る前に吹く、特有の風だ。
ということは、この上空にある雲は寒気によりできた雲だな。
――まずいぞ、もうすぐ降ってくる。
「これは、もうすぐ降りそうだね」
「そうですね。でも、これくらい寒ければ森の温度差もわかるかも」
「それはあるね。早速だけど、森に行こう」
ユキちゃんも雪国出身なだけに、この風が降雪の前兆というのが分かっているね。
というわけで、上着を着ていそいそと森に行く準備を始める。
「おれもいこ」
「わたしもいくわ~」
「いきましょ! いきましょ!」
みんなも一緒に来るようで。ゾロゾロと集会場から出てきた。
そして外に出て「さむっ」とか言っている。
いきなり気温が下がったからね。防寒具を来てくださいだ。
「なんだかきゅうに、おそとがさむくなったです~」
「もしかしたら、今日は雪が降るかもしれないよ」
「あえ? ユキです?」
雪が降ると言ったら、ハナちゃんこてっと首を傾げる。
ユキちゃんのことだと思ってるみたいだね。
「私の名前は、雪の恵みって意味でユキエっていうの。空から降ってくる、雪が由来なのよ」
「なるほどです~」
ユキちゃんが名前の由来を説明して、ハナちゃんすっきり顔だね。
さて、ハナちゃんの疑問も解決したところで、防寒具を着て森に行こう。
◇
配布した防寒具をエルフたちに来てもらい、いざ森へ。
妖精さんたちも寒そうにしていたので、マジカルヒート○ックの布で包んであげる。
「あったかいね! これはいいね!」
「おそと、さむくてびっくり! びっくり!」
「いきがしろいよ! ふしぎだよ!」
布の中は大変温かいようだ。ぬくぬくとした顔になっている。
そんなきゃいきゃいとはしゃぐ妖精さん海苔巻を抱え、森までテクテク歩いていく。
その途中――。
「……あえ?」
ハナちゃんが立ち止る。どうしたんだろう?
「ハナちゃん、どうしたの?」
「タイシ~、なんかしろいやつ、おっこちてきたです?」
「白い奴……あ!」
――とうとう雪が降ってきてしまった。初雪だ。
こりゃまずい。これからガクっと冷え込むぞ。
「タイシ~、これなんです?」
「これが雪だよ。まあ、かき氷と似たようなものかな」
「かきごおりです!? たべるです~」
かき氷みたいなものと聞いたハナちゃん、ちらつく雪をぴょんぴょんぱくぱくと食べようとする。
それ、食べても美味しくないよ。ただの氷の結晶だからね。無味無臭だからそれ。
「かきごおりだって」
「そらからかきごおりがふってくるとか、すてき」
「たべほうだい」
ああ……ほかのエルフたちも、キャッキャと雪を食べようとしている。
いや、甘くないですから。美味しくないですからそれ。
「すくなくて、あじがよくわからないです?」
「そもそも味はしないよ。ただの凍った水だから」
「あえ?」
「かき氷が甘いのは、あの色の付いたやつが甘いからだよ」
「あや~、そうですか~」
ハナちゃん残念そうだけど、まあ仕方がない。
「あじ、しないんだって」
「よのなか、うまいはなしはないのだ……」
「ざんねん」
キャッキャしていた他のエルフたちも、残念そうだ。
まあそれより、早く森に行こう。
「それじゃ、森に行こうね」
「あい~!」
気を取り直して森に向かう。
道中、エルフたちはちらつく雪を珍しそうに見上げ、キャッキャとはしゃぐ。
まあ……彼らにとっては、かなり珍しい気象現象だからね。今はまだ、楽しめるだろう。
これからどんどん雪が降ってくると、たぶんげんなりすると思うけど。
そして雪にキャッキャするみなさんと一緒に、ようやく森に到着。
そこの気温といえば――。
「……何これ、あったかいぞ」
「春先みたいですね……」
――森は、暖かかった。間違いなく、森の中は周囲とは気温が違う。
ちらつく雪も、すぐに溶けてなくなってしまうほど。
実際どれくらいの気温かはわからないけど、ユキちゃんの言うとおり春先みたいだ。
温度計もってくりゃ良かったな。今度持って来よう。
「ぽっかぽかです~」
「もりのなかがあったかいのって、ふつうじゃないの?」
森はぽかぽか陽気で、ハナちゃんキャッキャしている。
マイスターは、これが普通だと思っていたようだ。いやいや、普通じゃないですよ。
……しかし、これで森の中がなんかおかしい事はわかった。
次は花畑だ。
「森は分かりました。次はお花畑に行きます」
「いきましょ! いきましょ!」
「いくです~」
海苔巻状態から抜け出した妖精さんたち、案内してくれるようだ。
ぴこぴこと飛ぶ妖精さんのあとに続いて、妖精さん居住区の花畑へ向かう。
「あれれ? みんなでどうしたの? どうしたの?」
「いらっしゃい! おだんごたべる? おだんご!」
「あそびましょ~」
花畑に到着すると、妖精さんたちがお出迎えしてくれた。
みなさん薄着だけど、元気にぴこぴこ飛んでいる。
そして――やっぱりぽかぽか陽気だった。
「ここも、春先みたいだね」
「森よりは、若干気温が低いかもですね」
「でもこれくらいなら、おひるねできそうです~」
春のような陽気の花畑に雪がちらつくという、意味不明な状態だ。
こちらも、降った雪はすぐさま溶けて消えていた。
「このしろいの、なあに? なあに?」
「へんなのふってきた~」
「ちべたいね! おもしろいね!」
妖精さんたちも雪がめずらしいのか、受け止めてはきゃいきゃいとはしゃいでいる。
お団子にしようとかき集めている子もちらほら。
「とけちゃうね? とけちゃうね?」
「おだんご、つくれない~」
「ふしぎ! ふしぎ!」
花畑は暖かいので、雪をかき集めてもすぐに溶けてしまう。
それでも妖精さんたち、初めて見る雪に大はしゃぎだ。
――しかし、これではっきりした。
一気に気温が下がっただけに、森と花畑の暖かさが際立つ。
寒くなった今ならわかる。これは――おかしい。
「……大志さん、これもしかして――結界じゃないですか?」
「だとしても、気温というか環境を恒常化させる結界なんて……聞いたことないよ」
「確かに……」
ユキちゃんは「結界じゃないか」的に思ったようだけど、なんとも言い難い。
結界ほど厳しい感じはしない。なんというか……ゆるやかふんわり、と環境を維持しているきらいがある。
これは、どちらかというと――。
「――シェルター、もしくはバイオスフィア」
ふと、そんな言葉が口を突いた。
エルフの森や妖精花畑は、自然に任せず環境をなんらかの力で維持しているのではないか、と。
そこにいる生物を守り維持していく、スフィア。
――そんな気がした。
「不思議ですね……」
「これは、なんというか……凄いね」
環境を維持して守る、不思議な植物。
そしてそれに育まれた、エルフや妖精さん、そして生き物たち。
根源である植物がなんだかぽわっとしているので、それに育まれた存在も、ぽわっとしちゃうのでは。
「おだんご、おいしいです~」
「たくさんたべてね! おびただしいりょうがあるよ! あるよ!」
「たべきれないです~」
……ハナちゃんが妖精さんの花粉お団子を貰って、パクパク食べ始めたね。仲良しさんだ。
もうほんと、ぽわっとしてるね。ぽんにゃり時空だ。
しかし、エルフの森と妖精花畑がスフィアとして機能して、冬でも暖かいのであれば。
森や花畑の中にいる限りは、安心できるかもだ。
これなら、心配事がだいぶ減らせる。
というか、エルフの森が水を大量に吸収するのは、温度維持のための媒体として使っている点もあるのかもしれない。
水は熱容量が大きいので、うってつけの媒体ではある。
吸収した水がどこへいっているのかは、わからないけど。
まあ、なんにせよひと息つけるね。助かった。
そしてひと安心出来たので、回りを見る余裕も出てきた。
「――! ――!」
「あえ? クモさんおおはしゃぎです?」
早速周りを見てみると、虫さんたちは雪にも動じずにぴこぴこ飛んでいる。
青色クモさんは、なんだか雪に大はしゃぎだけど。
虫さんたちがこれほど元気なら、多分大丈夫だよね。
「――、――」
そして青色クモさん、大はしゃぎで花畑から飛び出していく。
雪が珍しいのかな?
「……」
「あえ? もどってきたです?」
「震えてるね」
大はしゃぎだった青色クモさん、しばらくしてぷるぷるしながら戻ってきた。
やっぱり、花畑の外は寒かったようだ。あんまり外に出ないよう、お願いしておこう。
「しばらくの間外は凄く寒くなるから、あまり外に出ないのが望ましいかな?」
「――!」
まるで「わかったよ!」と言うように、青色クモさんが頷いた。
そして、糸を主るしゅると出したかと思ったら、なにかを編み始める。
……まあ、わかってくれたようなので一安心だね。
「おそと、さむいの? さむいの?」
「かなりキてるよ! きをつけてね! きをつけてね!」
「おそとにでるときは、これをきましょ~」
「なになに? なになに?」
いまいち、花畑より外の寒さに気づいていない妖精さんが多いみたいだ。
その辺は羽根を補修した妖精ちゃんが説明してくれるようで、妖精ヒートテッ○をみせたりしている。
そのあたりは、彼女にお任せしておこう。
でもまあ、見た限りでは森も花畑も大丈夫そうだね。
ハナちゃんが教えてくれていたから、ある程度は予想できた。
大慌てせずに済んだので、助かった。お礼を言っておこう。
「ハナちゃん、教えてくれてありがとうね。これでだいぶ楽になったよ」
「ハナ、おやくにたてたです?」
妖精さん謹製のお団子をもぎゅもぎゅしているハナちゃんに話しかけると、エルフ耳がぴこっと立った。
役に立てたか、気になるらしい。
「もうとっても役にたったよ。森のこと、自分はあんまりわからないからね」
「タイシのしらないこと、ハナがおしえるです~」
「おねがいね」
「あい~!」
これからも色々教えてくれるようで、ありがたいね。
……しかしだ、これでさらに、大きな懸案事項が生まれた。
エルフの森も妖精花畑も、すごい力を持った植物なわけだよね。
一晩で大増殖し、大量の水を吸収することが可能で
さらに環境を安定させて、食べ物も沢山実らせる力がある。
そんな凄いのが……エルフ世界でも妖精世界でも、灰化しちゃったわけだ。
これ、まずいんじゃないの? という懸念事項が浮かび上がる。
一体なぜ、あのような大災害が起きたのか。
なぜ、彼らの住む場所だったのか。
何故、同じ灰化をしたのか。
エルフ世界の森と、妖精世界の花。一見別に見えるこれらに、何かの共通項があるのだろうか。
というか、無いわけがないと思う。森と花畑は、何かが共通している。どこかが共通している。
ただ……それが何かは、分からない。
色々推測は出来る。でも……情報が無くて、根拠を確定できない。
なんかこれヤバそうだから、情報をもっと集めよう。
現段階で変な推測をすると、アレかもしれない。すごい間違いやらかしそう。
というか、もう結構やらかしているわけで。
……俺は、エルフ世界で同じことが起きても何とかなるよう、物流を発達させようとしている。
それはだんだん、成果が出始めた。なんとかなるかな、と思い始めていた。
――その矢先に、予想外の方から灰化がやって来た。妖精世界で、似たような事が起きた。
俺の知らない世界で起きてしまったので、対処も何もない。そんなの、予想もしなかった。
これは、結構なやらかしだ。もうほんと、ごめんなさいだ。
……しかしあの灰化現象、これで終わりなのだろうか。
もし、また次にどこかの世界で起きてしまったら――。
――絶対に、この村にたどり着いてもらわないとね。
ここまでたどり着けば、もうこっちのものだ。
食べ物たくさん、ぽかぽか温泉にぽかぽかお布団、そして楽しい催しもたくさんだ。
村人だってのんびりぽやっとしていて、優しい人ばかり。
もし、今後も避難する人たちが訪れるのなら――大歓迎しないと。
この村で、思う存分過ごしてねって、迎え入れてあげたい。
そして、仲間として受け入れてあげたい。
いまなら人手もたくさんあるから、何とかなる。なるよね?
……なったら良いな?
まあ、そういう場合もあると言うことも想定して、これからは備えよう。
心構えが出来ていれば、動きも速くなる。
ーーどんと来いだ!




