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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十二章 この世界に存在しない花
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第十一話 騒動が終わって


 湖できちゃった事件から始まり、ダイヤ原石事件、灰化花事件が起きた。

 それらの事件は、神様による――妖精世界の洪水排水事業に収束。

 これにて一件落着となった。


(きょうのおしごと~おわったよ~)

「かみさま、おつかれさまです~」

(ちかれた~)


 排水の光景を観光化し、神様に孤独な作業をさせないようにした。

 これによって、神様ぱわーの消耗も抑えることはできた。

 ただ、お仕事なので……やっぱり疲れはあるようだ。


「はい神様、お風呂にしましょう」

「かみさまのおふろ、じゅんびできてるです~」

(いやしのひととき~! すてきなおふろ~!)


 神様の仕事が終わった後は、疲れを癒してもらうために……専用のお風呂を用意した。

 とはいえ、ぬる湯で満たしたタライに、ユキちゃんお勧めの高価な入浴剤を入れただけのものだけど。

 しかし神様的には、これがとっても癒されるらしい。


 ……女神様の入浴だから、その癒される光景は見たことが無いのだけど。

 ハナちゃんやユキちゃんが、神様をお風呂に入れてもてなしてくれている。

 ぷかぷかとお湯に浮かんだり沈んだりで、ご機嫌になっているとは聞いてはいる。

 いちおうタライはヒノキで作られているので、総ヒノキ造りのお風呂に高級入浴剤のお湯を満たした、豪華なお風呂ではある。

 神様、小さいけれど豪華なお風呂を、ご堪能下さいだ。


「お、おはだ~。にゅうよくざい~」

「え、えすて~」

「もっとうつくしくなれるやつ~」


 ちなみに、高価な入浴剤やエステの存在を知ってしまった……女子エルフたち。

 彼女たちがうわ言のように、「入浴剤」とか「エステ」とかつぶやく光景が見られるようになった。


 すいません……今の村のインフラだと、ちょっと無理なのです。

 ゆっくりお湯に漬からないと効果がでないそうで、今現状ではちょっと。

 温泉は源泉掛け流しなので、入浴剤を入れるとすぐに流れてもったいない。

 入浴用のお湯を沸かす設備もないので、入浴剤入りお風呂の実現はちょっと難しい。

 一回分で五百円もする高価な入浴剤風呂は、今のところ神様限定ということで。

 ちなみに高価な入浴剤だけあって、お肌にすごく効くらしい。


 そしてエステは、すいません解決方法が思いつきません……。

 だってユキちゃんと神輿がキラッキラになったコースは、二時間で八万円ですから。

 この金額だとちょっと無理なんです。気軽には行けないわけですね。

 どう解決するかは、ユキちゃんが何とかしてくれると思いますので、しばしお待ちを。


 ――ええそうです。丸投げです。


 ということで一部女子エルフたちが「おはだが~」となってしまった。

 けどまあ……村はまた平穏を取り戻した。

 色々な騒動も収まったので、そろそ冬支度の準備を始めないといけない。

 宿泊施設へのストーブの設置、薪の確保と安全な保管、そして豪雪対策などなど。


 それに、エルフたちの衣類や寝具も冬対策をしないと。

 今はまだそれほど寒くはないけど、十一月に入ってから一気に寒くなる。

 物の調達は親父がやってくれているので、俺は工事やら説明会やらをしないといけない。

 これから急いで始めないとね。



 ◇



「これでストーブの設置は全部終わったかな」

「じゃあ次は雪囲いとか方杖(ほうじょう)での補強だな。急いで始めよう」

「そっちは高橋さんに任せても良いかな? 俺は温泉施設の養生を確認してくるから」

「良いぜ。こっちはやっとくから、養生みといてくれ」

「悪いね。それじゃ頼んだ」


 準備は着々と進んでいく。

 温泉拡張工事は大詰めで、新たに拡張した浴槽はほぼ完成だ。

 あとは養生具合を見て、問題なかったら清掃をしてお湯を張るだけ。

 温泉建屋は、基礎工事中だ。まあ、十一月中には壁と屋根は作れる。

 本格的な建屋として内装を作るのは、春になってからかな?

 それまでは、内装は打ちっぱなしのそっけないもので我慢だ。


 ちなみにビー玉ダイヤちゃんは、速攻売れた。

 魔女さんの蓄えで何とか買える額にしたから、あっという間だった。

 ブツを手にした魔女さんは、嬉しさのあまり気絶したとかなんとか。


 そこまで喜んで貰えたなら、安くした甲斐があったな……と思っていたら。

 噂を聞きつけた他の宝石魔女さんからも、欲しい欲しいと依頼が沢山来てしまった。

 詳しくは聞いていないけど、なんか凄い術が出来るそうだ。

 ユキちゃんからも増産のお願いが来たので、そのうち作業しようと思っている。

 エルフたちもたまに原石を拾ってきてくれるので、素材集めは問題ないからね。


 そして一番原石を拾ってきてくれるのは、消防団長さんだ。

 近代化された村の消防団を見て、とてつもない可能性を感じたらしい。

 この運用をあっちの森でも実現するため、金策に走った。

 暇を見つけてはダイヤの原石を探して、ちいさい原石をよく拾ってきてくれる。

 その努力の甲斐あって、それなりのお金を手にすることに。

 すぐさま相談を受けたので、色々お勧め装備を提案して――。


「こ、これがむせんきのいっしき……おおおお!」

「この一式を上手く運用すれば、最大で十六人に同時指令を出せます」

「むせんき、じてんしゃ、ぼうぐにいろいろ……」


 ――団長さんの前に、消防団近代化装備がずらりと並ぶ事となった。

 数を増やした無線機や、マウンテンバイク数台。

 消火器やら救急セットやら非常食やらライトやら。


 あとはヘルメットやプロテクターも、お試しで購入だ。

 これらの防具は、バイク用CE規格品にしてある。

 この規格のバイク用品は、かなり頑強に作られているからだ。

 骨折するような転倒でもかすり傷に軽減できる水準で強度があり、とても高性能だ。

 これを装備すれば、様々な状況でのケガを防げるはず。


「このそうびがあれば、ひろいはんいを、みまわりできます。すごいしょうぼうだんができる!」

「運用について分からないことがありましたら、聞いてください」

「はい! こちらでしばらく、べんきょうしていきます」


 元団長さんはひとまず、村で消防団運用の研修だね。

 この装備代金は、ひとまず団長さんの立て替えとしておく。

 そして後々、村の共有財産として返却してもらうよう、アドバイスはしてある。

 あっちのエルフ世界でも、公共事業を支援してくれる人が増えると良いかなと思う。


「きのみのかわをむくやつ、たくさんください!」

「これ、みんなほしがるわ」

「おみやげにしたいんです」


 そして栗の皮むき道具は、予想通り大ヒットした。

 今までは、ほんと苦労して皮を剥いていたそうだ。

 エルフの食生活に革命を起こす道具だったらしく、発注が五百個とか来てしまった。

 今メーカーさんに発注しているので、もう少々お待ちくださいだ。


 そして小麦もようやく収穫した。

 播種した時期がアレで、日照不足も相まってあまり収量は期待していなかったのだけど……。


「大志、結構収穫出来たけどさ……」

「あの時期に撒いてあの天候だったから、あんまり期待してなかったけど、これは……」


 俺も親父も驚きの結果だった。

 収量は撒いた量の七倍程度で、あまり力を入れていなかった割には豊作になった。

 これなら、来年はもっと力を入れても良いかもしれない。

 ちゃんとした小麦畑をつくれば、かなりの豊作が期待できるかもだ。


「ここも田んぼと同じに緑肥(りょくひ)として、クリムゾンクローバーを撒いておく?」

「そうしとくか。ただ……なんか最近、クローバー類の値段が高騰してるんだよな」

「高すぎるから、今年は緑肥やめるって家もあるみたいだね」

「なんでアレが高騰するんだろうな?」

「意味わかんないよね」


 親父とそんな話をしながら、来年についての計画を軽く練っていく。

 来年は、秋に撒くなら「ゆめちから」、春に撒くなら「はるきらり」を栽培するのも良いかもしれない。

 これらはパン市場で国産小麦を大躍進させた、革命的な品種だ。

 上手く行けばエルフ村で、自家栽培小麦によるパン焼きが出来るかも。

 こんなことを考えられるくらいは、小麦も上手く行った。一安心だ。


 ――ただ、一つ気になることがある。

 小麦畑では、キンキラエルフ麦は出て来なかった。


 麦自体は普通で、とくにエルフの森の香りがするという事も無い。

 ……コメと麦で、なぜ違いが出たのだろうか。

 どちらもエルフたちが世話しているけど、コメだけキンキラ植物が出来た。

 この違いは気になるところだけど、今の所は……どうしてそうなったのかが分からない。

 何か、法則でもあるのだろうか?

 ……ここは観光地化してないから、それが理由だったりして。


 とまあ、一部気になる出来事がありつつも、エルフ村は平和に日々を過せている。

 ここまで平穏に戻れたなら、そろそろ遊ぶ時間も作れるかな?

 色々あったので、今だハナちゃんへのご褒美はちょっとお預け状態だ。早くかなえてあげないとね。

 ステキな湖畔のリゾートで、一緒に遊ばないと。



 ◇



「タイシタイシ~、こっちでおよぐです~」

「じゃあ浮き輪を用意するから、ちょっと待ってね」

「あい~」


 大まかな仕事は終えて、ようやくハナちゃんとのんびり遊べるようになった。

 今日は一日、湖畔のリゾートでのんびりだ。


「あ、大志さん。また灰化した花が流れてきてますよ」

「これは違う種類の花だね。チューリップに、似てる?」

「沢山の花がついているところは、サルビアみたいですね」


 ユキちゃんも化粧水作成が落ち着いたので、お誘いした。

 彼女もちょっと仕事しすぎな感があったので、息抜きになれば幸いだ。

 ……しかしエステの効果がまだ残っているのか、なんか全体的につやつやしている。

 水着姿になると、つやつや具合が良く分かるね。


「……エステ効果凄いね」

「ふふふ……あのお値段は、伊達じゃ無いんですよ」

「とっても綺麗だよ」

「ふ、ふふふふふふふ……」


 素直に褒めたら、ユキちゃん凄くご機嫌だ。

 これで隠しミッション達成だね。ひと安心だ。

 祟りが怖いから云々もあるにはあるけど、実際綺麗だからね。


「タイシ~、こっちにもおはながあるです~」


 ユキちゃんの隠しミッションクリアでほっとしていると、ハナちゃんが灰化花を拾って見せてくれた。

 また新しい種類の花っぽくて、面白い形をしている。

 鳥の羽のような花びらが、蓮の花のように折り重なっているね。そしてデカい。


「結構流れ着いてますね」

「最近、灰化花が増えてきた感じはする」


 神様の排水事業により、ダイヤの原石やら灰化花がどっと流れてきた。

 これにより、妖精さんのダイヤ道具材料が豊富に取得できた。わりとほくほくだ。

 どんどん妖精さんの道具が充実していくので、見ていて楽しい。


 それと灰化花の流入によって、妖精世界にどんな花が咲いていたのか段々わかってきた。

 色とかはわからないけど、形ははっきりしている。

 珍しい物や面白い形をしたものは、持って帰って家に飾ったりしている。

 観光客もこの灰化花をおみやげに持っていくので、ぜひとも飾ってくださいだね。


「ぎゃう! ぎゃうぎゃう!」

「あえ? あそんでほしいです?」

「ぎゃう~」


 そうして色んな灰化花を眺めていたら、海竜ちゃんがやってきた。

 遊んで欲しいようで、前ひれをぱたぱたさせて構ってアピールだ。

 それじゃ、思いっきり遊んであげようか。


「今日は三人で海竜ちゃんに乗って、最高速を試してみる?」

「いいかもです~」

「そ、それでは……しっかり捕まらないといけないですね」

「ぎゃう」


 スピードの向こう側に行こうと提案すると、みんな乗り気だね。

 ただ、ユキちゃんはなんで手をわしわししてるのかな?


「タイシ、いくですよ~」

「ぎゃう~」


 ユキちゃんの不審行動に気を取られていたら、ハナちゃんがもう海竜ちゃんに乗って準備を整えていた。

 まあ、細かいことは気にせず今日は思いっきり遊ぼう。



 ◇



「おもいっきり、みずあそびしたです~」

「割れた腹筋の感触……フフフフ」


 午前中は思いっきり水遊びをして、ハナちゃんご機嫌となった。

 約束していたことは守れたので、俺も一安心だ。

 ……ユキちゃんはなんだか手つきが怪しいけど、若い娘さんだから色々あると思う。

 怖いので触れないでおこう。


 それはそれとして、午後は何をして遊ぼうか。


「ハナちゃん、これから何をして遊びたい?」

「みずうみのまわり、のんびりみてまわりたいです~」

「じゃあそうしよう。水着から普段着に着替えちゃう?」

「あい~!」


 のんびり見て回りたいと言うことなので、普段着に着替えて散策だ。

 歩くと疲れるので、ボスオオカミにお願いして乗っけてもらおう。


「背中に乗っけて欲しいけど、良いかな?」

「ばう!」


 すっかり仲良しになったボスオオカミの背中に乗っけてもらい、いざ出発!

 ボスオオカミは背中に乗っけてもらっているとき、首筋を撫でると凄く嬉しそうな顔になる。

 なでなでしながら、散策と行きましょう。


「おさんぽおさんぽ~、のんびりです~」

「この辺りは、川の近くだね」

「いろんなもの、ながれついてるです~」

「ば~うばう」

「あ、ダイヤの原石がありますね」


 綺麗な湖畔を眺めながらお散策をしていると、川の近くにたどり着いた。

 この川は排水事業で水が流れてくる川で、色んな物が落ちている。

 灰化花、ダイヤの原石、ただの石ころなど。

 今も、ボスオオカミがダイヤの原石を見つけてくれた。


「ばう」

「いつもありがとう。お礼に、村に帰ったらトウモロコシあげるね」

「ば、ばう~!」


 ダイヤの原石を渡してくれたボスオオカミにトウモロコシをあげるというと、もう大喜びでばうばう走り出す。

 けっこう速い。三人乗せているのに、すごいね。


「ばう~」

「あや! ここにダイヤのげんせき、たくさんあるです~」

「ホントだ。これはトウモロコシ、沢山用意しないと」

「ばうばうばう~!」


 そして大喜びのボスオオカミ、ダイヤの原石が沢山あるところに連れてきてくれた。

 これはもう、トウモロコシをたらふく食べさせてあげないとね。

 群れのみんなにも振る舞って、トウモロコシ祭りでもしちゃおうかな?


「ここって、妖精世界の水が流れてくる川だね」

「この川が曲がっているところに、原石が溜まりやすい見たいですね」

「さっそくひろうです~」


 素材が沢山あるので、のんびり散策から素材採取モードに変更だ。

 これも散策イベントの一つとして考えれば、結構有意義かも。


「ひろうです~、ひろうです~」

「あ、大きいの見つけた」

「こっちは小さいのがいくつか」


 ボスオオカミから降りて、今は水が無い川で原石を拾う。

 なかなかの収穫だ。

 そして、原石の他にも沢山の灰化花が溜まっていた。


 ……妖精世界が水没したとき、まだ無事な花があったとは聞いている。

 その無事な花が流れてこないか、期待して何度も川を見に来てはいる。

 ただ、流れてくるのは灰化したものばかり。

 ダイヤの原石も嬉しいのだけど……無事な花が流れてきたらもっと嬉しい。


 もし無事な花が流れてきたなら、もしかして妖精世界の花をこの世界で復活出来るかと思っているのだけど……。

 いまだ、流れてこない。無い物ねだりなのかな?


「……タイシ? どうしたです?」

「考え事ですか?」

「ばう?」


 無事な花が流れてこない事をちょっと残念に思っていると、みんなが心配して顔をのぞき込んできた。

 ……これはいけないね。心配かけちゃったようだ。


 無事な花が流れて来るかどうかは、俺が勝手に期待していることだ。

 このほのかな期待は、俺の心の中だけにしまっておこう。

 口に出してしまうと、他のみんなも期待してしまうから。


 ――そして結局流れてこなかったら、がっかりさせてしまう。

 もしそうなっても……がっかりするのは、俺だけで良い。

 他の人にまで、俺の期待を押しつけちゃだめだからね。


「……まあ、色んな花があったんだなって思ってね」

「これとか、凄い大きな花ですよね」

「ようせいさんの、おうちになりそうです~」


 ユキちゃんとハナちゃんは、ひときわ大きな灰化花をよっこらしょと持ち上げてキャッキャしている。

 確かに、妖精さんが住めそうな大きさだ。

 お花の中でおねむすると言っていたけど、こういう花を利用していたのかもしれないな。


「ばうばう~」


 そしてボスオオカミは、俺の顔をペロペロ舐めてくれた。

 ……なんだか、慰めてくれているようだ。

 俺が何かを期待して、勝手にがっかりしているのを気づかれちゃったかな?

 勘の鋭い子だから、あり得るかもだ。


「……色々ありがとうね。俺は大丈夫だから」

「ばう~」


 ボスオオカミをなでなでして、この件は終了だ。

 気を取り直して、ダイヤの原石を拾おう。



 ◇



「タイシ~、こっちにもダイヤあったです~」

「お、それはなかなか大きいね。良い物見つけたね」

「あい~!」

「あ、こっちにもありましたよ。大きい原石が」


 ハナちゃんたちと、のんびりダイヤの原石拾いを続ける。

 後ろではボスオオカミがのんびり、俺たちを見守る。

 ここで沢山集めておけば、宝石魔女さんたちに提供できる期間も短縮できる。

 ちょっくら、気合い入れましょうかね。


「けっこうたくさん、あつまったです~」

「これくらいあれば、大丈夫かな?」

「問題無いと思います」

「ばう~」


 一時間ほど採取して、けっこう沢山集まった。

 これくらい採取出来れば、宝石魔女さんたちのご要望には答えられるかな?

 こちらとしても、とってもお安く提供するとは言えそこそこの金額にはなる。

 温泉設備がさらに強化できそうで、顔がニヤけちゃうね。


 そんな作業をしていると、なんか水が流れる音が聞こえてきた。

 どうやら、神様の排水事業が始まったようだ。


「あ、もう始まったみたいだね」

「かみさま、がんばってるです~」

「水が流れて来ましたね!」


 上流の方から水が流れてきたので、川から出よう。水に濡れちゃうからね。

 そして水が流れて川になった様子を見ていると、色んな物が流されてくるのが見える。


「いろんなものが、ながれてくるです~」

「今日は、何だか……お花が多いね」

「また、ダイヤが流れて来ると嬉しいですけど」


 三人でぼ~っと川を眺める。たまには、こういう時間も良いかもだ。

 水が流れる様子を見ると、心が落ち着く。

 洞窟から離れているので、水の勢いはさほどでも無くちょうど良い感じだ。

 しばしの間、この光景を楽しもう。


「……あえ?」


 数分くらいぼ~っとしていたら、ハナちゃんのエルフ耳がぴこっと立った。

 そして首を傾げて、なにやら不思議そうな顔だ。

 何か変な音でも、聞こえたのかな?


「タイシ、なんかこえがきこえるです?」

「声が聞こえる? なんの声かな?」

「なんかキャーキャーいってるこえです~」

「キャーキャー?」


 俺には聞こえないけど、遠くでの出来事かな?

 詳しく聞いて、異常事態なら駆けつけないと!


「あや! ちかづいてくるです~」


 ん? 近づいてくる?

 声の主は、こっちに向かって移動しているってこと?

 どっちの方向からだろう?


「どっちの方向から?」

「あっち! あっちです~!」


 ハナちゃんが指さしたのは――川の上流。

 洞窟のある方角だ。


 ……あ、俺にもなんか聞こえてきた!

 確かに、なんだかキャーキャーという声っぽいのが聞こえる!

 ――いったい、何が向かってきているんだ?


 ハナちゃんが指さした方角、川の上流を目をこらして見てみる。

 ……ん? 何だあれ?


 色の付いた何か――灰色じゃない何かが、流れてくるぞ?



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