第八話 美しい物、飾りましょう
その後湖を調べたところ、灰色の花が沢山沈んでいることが分かった。
――明らかに、おかしい。
前回ダイヤモンド調査隊が潜って調べたとき、こんな物は無かった。
……みんな曇りなきまなこで、さらに清らかな心で探していた。
だから、見逃すとは考えにくい。そうであってほしい。
「目がくらんでたからなあ……」
「すまん、原石以外見てなかった」
「記憶にございません」
あてにならなかった。
高橋さん、親父、ユキちゃんの順で無体な回答が返ってくる。
……まあ、少なくとも俺ははっきり覚えている。
そのとき灰色の花は――無かった。
そしてだ、ダイヤときて灰色の花と言えば……妖精さんだ。
ダイヤモンドが出てきて、次は灰色の花。
これ……関連付けて考えるな、と言う方が難しいでござる。
妖精さんに見てもらわないといけない事案だね。
……ただ、水に沈む灰化花の光景がちょっと。
まさに妖精さん世界の、水没したアレそっくりな光景なわけで。
これを見せたら……トラウマを刺激しそう。
この状態で連れて行くのは、ちょっとアレだ。
ダイヤの原石と灰化花だけ、集会場で見てもらおう。
ということでハナちゃんと親しい、あの妖精ちゃんを呼んでくる。
灰化花とダイヤの原石を見せて、「これ知ってる?」と聞いてみた所――。
「このおはな、しってるよ! しってるよ!」
――はいビンゴ。
羽根を修復した妖精ちゃん、きゃいきゃいと知ってるアピールだ。
「この固い石も、知ってるよね?」
「しってるよ! しってるよ! わりとそこらへんに、ごろごろあったよ!」
コンボ! これもそれっぽい。
……というか妖精ちゃんの世界、ダイヤの原石がごろごろしてるのか。
貴重な素材なら、あれほど気楽に道具を作ったりしないよね。当たり前か。
でも、これで確定だ。
この世界に存在しない花は――妖精世界の花。
妖精世界にあった「モノ」が、佐渡とエルフ世界に出現した。
――そういう、事になる。
なぜ佐渡に? そしてなぜエルフ世界の湖に?
……謎は深まるばかりだけど、考えなくては。
だって……。
「タイシとあそぶの、ちゅうだんになっちゃったです~」
謎だらけで、ハナちゃんとゆっくり遊べないからね。
色々わかれば、安心して遊べるというもの。
「ハナちゃん待っててね。これが何とかなったら、また遊ぼう」
「あい~! ハナもおてつだい、するです~!」
さあ、灰化花の謎を解こう。
ハナちゃんと、思いっきり遊ぶために。
そして……妖精さんたちに、安心してもらうために。
◇
まず初めに、巫女ちゃんのお父さんに連絡を取る。
灰化花の発見状況をもう少し詳しく聞いて、推理の材料にする為だ。
それと……一つのお願いもしなきゃね。
ということで、お電話かけましょう!
『はいもしもし、大志君?』
「はい、大志です。お久しぶりです」
『久しぶりですね! 元気してました?』
「それはもう、すごい元気ですよ」
和やかに挨拶をし、多少の世間話をする。
となりのご家族にお料理を差し入れすると、めっちゃくちゃ喜ぶとかそんな話を聞いた。
護衛さんち、食いしん坊なのかな?
あと、護衛さんちの息子さん、なんだか表情が硬くて心配だとも。
……それ多分、護衛任務で緊張してるんですよ。言えないけど。
そんな楽しい世間話をしばらくしたところで、要件を切出す。
「そうそう、テレビみましたよ。化石の第一発見者とか」
『あー、あれ見ちゃいましたか。どうでした? 変な風に映ってませんでした?』
「ごく普通でしたよ。あと、良いお店ですね」
『それは良かった。カメラ映りは一安心ですね。あと、お店は僕の自慢なので……褒められるとすごい嬉しいです』
そしてまた雑談に脱線する。まあ、楽しい会話なので焦ることもない。
雑談を交えつつ、発見した状況を聞いていく。
『パパー! なんか宇宙人さんのけはいがするー!』
――ちょっ! 巫女ちゃん、電話越しに俺のオーラを探らないで!
というか、デジタルデータからじゃ普通探れないでしょ!?
そうしてドタバタするも、なんとか状況を聞き出すことができた。
大体はテレビで話した内容、そのままだった。
ただ、テレビでは話していなかった情報が、一つあった。
『……ほんとはアレ、公開するのを迷ったんです』
「迷う? 大発見ですよね?」
『あの化石は、何かおかしいです。それを公開するのは、果たして良いことなのかと……』
どうも未知の物体に対して、どう対応するか迷いがあったようだ。
とはいえ、公開してもらわなかったら、俺が事態を把握できなかった。
佐渡でも出現していたという、重要情報がわからなかった。
『恩師が言うには……わけわかんない物を隠すと、余計背負うから――もうぶちまけちゃえよ! ……って言ってました』
「なんとなく、その教授さんの人柄が分かりました」
『今もお世話になってまして、頭が上がりませんね』
公開する後押しをしたっぽいので、俺も頭が上がらないかもな。出来た人のようだ。
何はともあれ、教授さんありがとう。巫女ちゃんのお父さんもありがとうだ。
おかげで、少なくともここに一人、大いに助かった人間がいますよ。
まあ、とりあえず必要な事は聞けたな。
俺からの話はこれくらい……あ、一つお願いをしないとね。
「ひとつ思ったのですけど……。あの化石、研究のために厳重に保管するより、そこらに飾った方が良いと思いますよ」
『え? 飾るのですか? あの貴重なものを?』
「だってあの化石――とても美しい花じゃないですか。しまっておくのは……勿体ないですよ」
『あ……』
サクラに良く似た、妖精世界の花。そして灰化してしまった花。
だけど、それでもあの花は美しかった。
せっかくそんな美しいものを発見したのに……しまっておくのは、勿体ない。
『――ははは! 目が覚めました! ……そうですよね、それで良いんですよね!』
「ええ。植物が花を咲かせるのは、見て欲しいから。であれば、飾って見てあげましょう!」
『そうします! 研究なんてほっぽって!』
巫女ちゃんのお父さん、なんだか急に元気になった。
目が覚めたと言っているけど……詳しくは聞かないでおこう。
巫女ちゃんのお父さんは、心底花が好きなんだなってのは伝わってきた。
それだけわかれば、俺としてはもうそれ以上知る必要はない。
同時に、あの灰化花は……ふさわしい人物の手に渡ったのだなと、安心できた。
灰化してしまってはいるけれど、大切にしてください。
それは、妖精さんたちの――故郷の一部、だったものですから。
◇
一つの用事は終わった。
巫女ちゃんのお父さんの話から裏付けが取れたのは、発見した場所と日時。
俺たちが洞窟から異世界に行った、翌日に発見している。
これらの情報を元に、データを取り寄せた。
日本海洋データセンター、いわゆるJODCのサービスである「海の相談室」から海流データを提供して頂き、流れを調べる。
「海流のデータからすると、ほぼ間違いない。あの洞窟から――海岸に向かう潮流がある」
「ぎゃう?」
「あ、いや。海竜ちゃんじゃなくて」
「ぎゃう~?」
「あ、ちょっとまって。後で遊んであげるから。まってまって」
「ぎゃうぎゃう~」
呼ばれたと勘違いした海竜ちゃんが、顔をぺろぺろ舐めてくる。
あ、後で遊んであげるから。
……。
とりあえず海竜ちゃんをかまいながら、話を続ける。
「……自分たちが洞窟に入っている間、妖精さん世界と佐渡の海は繋がっていたぽい」
「どこからが入口かは、良くわからないんですよね?」
「洞窟の中は暗かったし、妖精さん世界も早朝みたいに薄暗かったからね」
ただ、あの洞窟と妖精さん世界が繋がったとき、妖精さん世界から多少流出したって感じだ。
だから佐渡で、妖精世界サクラの灰化体が発見された、と推測している。
「佐渡の件はまあ、わかった気がする。でもさ、なんでエルフ世界でも同じような事が起きたんだ?」
「それはこれから調べるところ」
親父から、エルフ世界の妖精世界物質発見について聞かれた。
けど、まだプランを練ってはいない。
ただ……。
「原石や灰化体は、湖発見時には無かったと思ってる」
「あったら、最初の調査時点で気づくわな」
「リザードマンたちが、詳しく調べてくれたからね。普通は見つかる」
「まあな」
高橋さんが、自信ありげな顔をする。
彼らは水のプロだから、最初に調べてもらって気づかないとは考えにくい。
というか、俺も潜ったわけで。少なくとも、記憶に残っている範囲ではなかった。
「個人的には、原石出現は湖開きのあとだと思う」
「時期的にはそうだな」
何故後から出現したのか、どうして出現したのかはわからない。
わからないけど、一つ気になることはある。
ボスオオカミが原石を見つけてくれた、あの川の跡だ。
もしかしてあれは――妖精さん世界から、水が流れ込んだ跡なのでは?
湖開きの後、あれがこうしてそうなって、水が流れ込んだと。
そこらへんの、あれこれそれを調査する必要はあるね。
周辺にいくつか川の痕跡があったので、それも含めて気になる。
――よし! 調べてみようじゃないか。
この世界に存在しない花、どこから来たの? 計画発動だ!
◇
まず始めとして、例の謎の川を定点観測することにした。
タイムラプス機能のあるアクションカムを何台か買ってきて、お金の力でゴリ押しだ。
楽ちん!
タイムラプスモードだと、拡張バッテリ付での稼働時間は十時間ほど。
じゅうぶん使えるはずだ。
というわけで、ちまちまとカメラを設置していく。
「タイシ~、これでわかるです?」
「そうだったらいいなあって思うよ」
「てさぐりです~」
「こっちは設置おわりました」
ハナちゃんとユキちゃんに手伝ってもらい、ちまちまとカメラを設置していく。
地面に杭を打って、そこにカメラを括り付けるわりと大変なお仕事だ。
俺はもっぱら、杭打ち係を担当する。これ、力仕事だからね。
「こっちもおわったです~」
「全部設置できましたね」
「二人ともありがとう。あとは、明日確認だね」
「あい~!」
「楽しみです」
ほどなくしてカメラの設置と設定を終えて、ひとまず作業完了!
あとは、明日のお楽しみってね。
「それじゃ、後は湖でのんびり遊ぼう。大人海竜にみんなで乗って、周辺を回ろうよ」
「あや! いいかもです~!」
「わあ、楽しそうですね!」
二人とも乗り気なので、これで行きましょう。
さあ、思いっきり遊ぼうじゃ無いか!
◇
――翌日、カメラを回収して集会場でデータを確認する。
が、タイムラプス写真を一つの動画にまとめるのが、これまた時間がかかる。
そして、カメラは沢山ある。またまた時間がかかる。
スクリプトを組んで自動化したけど、完了するには一時間以上かかるかもだ。
その間やることが無いので……昼寝でもしようかな。
長時間かかるタスクをコンピュータにまかせて、自分はお昼寝。
……これがAIだったら、反逆されてるかも。
もし将来超高度なAIが実用化されたら、重労働を課さないで労ってあげよう。
そんな益体もない事を考えながら、集会場でのんびりお昼寝をば。
……なんだろ、なんか重い。
なんかふわふわした重量物が、沢山のっかっているような――ZZZ。
◇
一時間ほどお昼寝した。
起きたら、なんだか体中に動物の毛が付いていたけど……。
何があったのだろうか?
まあそれは気にしないことにして、タイムラプス動画を見よう。
どれどれ……お、だいたい結合できてるな。さっそく再生しよう。
「あえ? タイシどこいってたです?」
「しばらく、姿が見えなかったですけど」
動画を見ようとしたら、ハナちゃんがぽてぽてやって来た。
ユキちゃんも一緒だね。
どこに行ってたのと聞かれたけど、ずっと集会場にいたよ?
「自分はずっとここにいたよ。お昼寝してたんだ」
「あえ? どうぶつたちしかいなかったです?」
「森の動物たちが、折り重なってお昼寝してましたよ」
ハナちゃんはこてっと首を傾げたけど、動物たちも来てたんだね。
折り重なって寝ていたらしいけど、何故ここで?
理由は分からないけど、体中についた動物の毛の原因はわかったかも。
「動物たちの陰になって、見えなかったのかもね」
「そうかもです~」
「裏側まで確かめなかったですからね。多分そうかと思います」
謎が解けてすっきりだね。
さて、一つの謎が解けたところで、次の謎に移ろう。
動画を見て、何が起きているか調べないとね。
「そうそうハナちゃん、動く写真が出来たよ。みんなで見てみよう」
「あい~! みるです~」
「何か写っているといいですけど……」
動画が出来たというと、二人は集会場に上がって来た。
そしてすぐさま、ノートPCのディスプレイを覗き込む。
視聴の準備は出来たようだから、再生しましょう!
「……こっちは何も映ってないですね」
「あや! すごいふしぎなかんじです~」
「時間が過ぎていくのが、早回しでわかるよね」
「おもしろいです~!」
ハナちゃんはタイムラプス動画が新鮮なようで、お目々まん丸にして喜んでいる。
雲の動きや太陽の動きがはっきりとわかるので、見てると楽しいよね。
ただ……このカメラは、特に何も捉えていないようだ。
別カメラの映像を見てみよう。
「じゃ次はこれね……へえ、ハナちゃんたちのところ、月が二つあるんだ」
「あえ? みっつあるですよ?」
「え!? 三つもあるの?」
「あい、みっつあるです~」
ハナちゃんたちの星は、衛星が三つもあるんだ。
あんまりハナちゃん世界の夜を過ごしたことはないから、わからなかったな。
前にハナちゃんと冒険したときは、みっつとも新月だったのか見えなかった。
……月が三つもあるなら、全部新月になる瞬間も珍しいのかもしれない。
ワサビちゃん、エルフ世界では苦労してそうだな。
「この映像も、何も映ってませんね」
「おつきさま、こんなうごきしてるですか~」
「次見てみよう」
エルフ世界の天体やら、ワサビちゃんやらに思考が逸れた。
そして、このカメラも収穫なしだった。
はい次。これは……ダイヤの原石を発見した川だね。
「――あっ! 水が流れてきました!」
「ほんとです~!」
――ビンゴ! この川になぜか水が流れた。
時間は……。あてにならないな。
エルフ世界の一日の長さがわからない。
ただ、暗くなってからだな。カメラを設置してから……九時間から十時間後くらいか。
カメラの連続使用時間、ギリギリだ。
この時間経過具合だと……みんな寝ている時間だ。
そりゃ、誰も気づかないというもの。
「……夜中になにかが起きてるってことかな? これは」
「ダイヤの原石といい、この川……怪しいですね」
「めっちゃ怪しい」
「あやしいです~」
とりあえず容疑者は見つかった。これからこの川を捜査だ。
「この川を調べてみよう」
「いくです~」
「オオカミさんに乗せてもらえるよう、お願いしてきますね」
そうして移動の準備を始め、いざ出陣!
洞窟を抜けて、目的地へと向かう。
「……? なんだか洞窟のまわり、湿ってない?」
「朝露ですかね?」
「ハナたちのところも、あさはさむいです~」
なんだか気になるけど、今は置いておこう。川の調査をしないと。
そしてものの十分ほどで、目的地にたどり着く。
「――やっぱり、水が流れた跡があるね」
「ここなんて、まだ水が残ってますよ」
川に向かうと、水が流れた痕跡があった。
あったというか、映像では実際に流れてたから当たり前だね。
じゃあ、この川はどこに向かっているかと言うと……。
「川をたどってみよう」
「わかりました」
「いくです~」
川とたどって、のんびり進む。すると……すぐに湖にたどり着いた。
間違いない、あの謎の川の水は――この湖に流れ込んでいる。
「これでかなり確証に近づいたね。あの川の水は、妖精さん世界の水っぽい」
「ここまで揃うと、疑うのが難しいですね」
「いろんなもの、ながれてくるです~」
さて、これで妖精世界物質の流入経路は分かった。
それじゃ最後は、あの川の源流はどこかを知ることだ。
二度手間になるけど、川を戻って源流を探そう。
「今度は川をさかのぼって、源流を探すよ。大丈夫かな?」
「はい、大丈夫です」
「もんだいないです~」
二人から同意が得られたので、今来た道を引き返す。
歩いてくれるボスオオカミには、追加報酬としてトウモロコシを進呈だ。
「ば、ばう~!」
ボスオオカミ、超大喜び。もしゃもしゃとトウモロコシをかじり始める。
夢中で食べているので、しばらく移動が出来なくなった。
ま、まあ急いではいないから、いいよね?
◇
ボスオオカミが落ち着いた後、今度は源流探しに移る。
順調に川をさかのぼって、移動していったのだけど……。
「あえ? ここできえちゃってるです?」
「……ここから土の質が変わってるんだ。川が出来たところは、もろい土なんだろうね」
「これ以上はたどれませんね……」
源流探しは暗礁に乗り上げてしまった。
が、こんなこともあろうかと――秘密兵器がある!
「そこで秘密兵器です。――ダウジングロッド!」
「え? それ使えますか?」
「へんなどうぐです?」
俺が取り出したダウジングロッド、いわゆるただの鉄の棒を見たユキちゃん、訝しげだ。
でもね、これ水脈探しに結構使えるんだよね。
水源探しだから、使えるかと思って作ってみたわけだ。
針金を曲げて数十秒で作ったやつだから、ダメ元ではあるけど。
「まあまあ、やってみようよ」
「ダメ元ですけど、しないよりはマシですね……」
「だめもとです~」
というわけで、ボスオオカミから降りて三人でダウジングをすることに。
ハナちゃんには、使い方を教えておこう。
「ハナちゃん、これはこう持って、その辺を歩くんだ。それで、先がこう開いたら……そこになんかがあるよ」
「わかったです~」
ハナちゃん元気に、ダウジングロッドを構えてぽてぽて歩き始める。
それじゃ、俺もダウジングを始めよう。
「どこですか~、なんかあるですか~」
「私はこっちを調べますね」
「じゃあ自分はこっち」
三人で手分けして、地味な作業を行う。
しかし、まったくもって反応しない。
「やっぱダメかな?」
「ま、まあ……もうちょっと続けてみましょう」
地味な作業に飽きてきたけど、もうちょっと続けてみよう。
さて、ハナちゃんはどうかな?
……ん? ロッドの先が開いてるけど。
「ハナちゃん、なんか見つけた?」
「このへん、はんのうしまくりです~」
ハナちゃんがキャッキャしながら、右に行ったり左に行ったりする。
……確かに、ある方向を向くとロッドが開く。
「タイシタイシ、こっちのほういってみるです~」
「そうだね。行ってみようか」
「あ! 私のロッドも反応しましたよ!」
ユキちゃんのロッドも、ある方向に反応した。
俺もやってみよう。
……反応しないでござる。
「俺だけ反応しない……」
「もうちょっと軽く握ってみては?」
「こうかな?」
「はんのうしたです~」
……握る力加減を間違えておりました。
俺の今までの調査は、無駄だったのだ……。
……気を取り直して、ロッドが反応したほうに行ってみよう。
本来はこういう使い方じゃない気がするけど、それは置いといて。
「あっちに行ってみよう」
「いくです~!」
「しゅっぱーつ!」
三人でくるくる向きを変えながら、ロッドが反応する方へと進む。
その後には、ボスオオカミがトテトテついてくる。
はたから見ると、意味不明な集団な気がしなくもないけど……。
まあ気にしないことにして、調査を続ける事数分たった頃。
ロッドがバリバリ反応する箇所を発見した。
そこは――。
「ここは……」
「タイシ、すいげんはこれです?」
「水源に反応したのか、それ以外の要因に反応したのか。判断が付きませんね……」
俺たちがたどりついたのは――いつもの洞窟、だった。