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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十二章 この世界に存在しない花
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第五話 毒きのこマイスター


「やきそばいかがっすかー!」

「わりとおいしいよー!」


 ハナちゃんたちと散々遊んで、一休み。

 リザードマンたちが運営する屋台で焼きそばを買って、頂きますだ。

 そして、わりと美味しいというふれこみの焼きそば、ほんとにわりと美味しかった。

 美味しい! と すごい美味しい! の中間くらいの「わりと」だったね。


 カレー粉が隠し味に入っていて、スパイシーな風味が食欲を増進させる味付け。

 色々工夫されているのが、とても良かった。


「わりとおいしかったです~」

「ほんとに、わりと美味しかったですね」

(なかなかのおあじで~)


 一緒に食べたハナちゃんやユキちゃん、それと神様からも好評だ。

 リザードマンたち、なかなかやるじゃないか。

 伊達に、ちたまの調味料を定期的に購入しているわけではないな。


 そうして感心しつつも、食事をとったあとはまったりとした一時に。

 美しい湖畔を眺めて、三人でのんびりとする。

 湖を眺めながら、水遊びをする人々の様子も眺める。


「おさかな、たくさんいるわ~」

「つぎは、つりしてみようか?」

「いいわね~」


 腕グキさんとマッチョさんが、まったりカヌーに乗っていたり。


「このかいりゅうって、およぐのはやいな~」

「いいこね、よしよし」

「がうがう」


 マイスターとステキさんが、海竜クルージングをしていたり。


「ああ~どうぶつちゃんいっぱいだわ~」


 ……動物好きお姉さんが、恍惚の表情で動物達と水辺ではしゃいでいたり。

 みんな、思い思いに楽しんでいるね。

 

「この湖ができて、良かったね」

「よかったです~。みんな、たのしそうです~」

「秋にこんな遊びができるのは、なんだか特別な気がしますね」


 運営はリザードマン世界に丸投げしているので、ほんと楽ちん。

 まったり遊べる、良い所が出来た。

 そして今のエルフ世界は、ちたまとリザードマンの――二つの世界が干渉しているわけだ。

 これは結構な奇跡で、こういうことはあまり起こらない。

 基本的には、ちたまとどこかの世界、という関係なだけだった。


 この湖がなければ、この奇跡は起きなかった。

 巡り合わせとは、不思議な物である。


 そうして、異なる世界同士のコラボにほくほくとしていると……ハナちゃんと神輿がなにやら雑談をし始めた。


(おみずたくさん、もんだいなし~?)

「あい~、みんなたのしんでるです~」

(よかった~)


 ……くるくる飛び回る神輿とハナちゃんが、のんびりと会話だね。

 神様と雑談するというのは、わりと凄いのかなと思うけど……まあハナちゃんだからね。

 それはそれとして。神様は、大きな湖が出来たことについて、気にしているみたいだね。

 まあ……普通はこんなでかい湖が出来たら、大災害だ。

 神様的にも、心配なんだろうな。


(ここにおみずがたまっても、もんだいなし~?)

「もんだいなしです~。いいかんじです~」

(いいかんじ~!)


 森の住人がいたら問題になってたかもだけど、みんな避難してるからね。

 ここに大量の水があっても、問題は起きなかった。

 それどころか、いい感じに淡水を利用している。

 これは、不幸中の幸いかもだ。

 あと、みんなタダでは転ばないって感じだね。


 それに……元の住人であるハナちゃんが、問題なしと言いきった。

 これが良かったのか、神輿はキャッキャと光っている。

 神様、安心出来たみたいだね。


 優しい神様、心配してくれて――ありがとう。



 ◇



「かみさまだ! おだんごたべて! おだんご!」

「たくさんつくったの! つくったの!」

「おそなえもの! おそなえもの!」


 ぽんにゃりと会話していたハナちゃんと神輿のところに、妖精さんがどっとやって来た。

 たくさんのお団子を抱えて、お供えかな?

 妖精さんたちも、神様の計らいでここに来れたことは言ってある。

 それ以降、毎日お団子をお供えしたりと、何かと神様を慕ってくれている。

 神様、村のみんなから大人気だ。


(おそなえもの、たくさん~!)

「どうぞ! どうぞ!」

「おいしいよ! おいしいよ!」

「あや! おだんごたくさんです~!」


 そして、おびただしい量のお団子が……。

 次から次へと、お皿にどんどん積み重なっていく。


 ……妖精さんたち全員が本気を出したら、これくらいの量は簡単に量産できちゃうんだな。

 小さいけれども、人数は沢山だ。力を合わせて、お団子こねこねだね。

 数は力なり。


(きもちたくさん、ありがと~!)

「おそなえもの、ひかった! ひかった!」

「おだんご、きえてく~」

「いっぱいたべてね! たべてね!」

(ちから、もらったよ~!)


 妖精さんのお供えをちまちま食べていく神輿は、ご機嫌だね。

 くるくる回って、ぴかぴか光って。

 もうなんか、元気いっぱいだ。


(いける~)


 ――あ、なんか神輿から……キラキラしたやつが出てきた。

 妖精さんが出す粒子みたいなのが、キラッキラだ。


 ……くす玉を割ったときに、なんか似てる。



 ◇



 ステキな湖畔リゾートがオープンしてから、さらに数日。

 山が真っ赤にそまって、いよいよ秋本番だ。


 そう――秋本番でござる。

 山には食べ物が、たんまりでござるよ。


 ということで、観光客の方々も交えて食料採取となった。

 水遊びも良いけど、山遊びもね! という感じだ。


 今はみんなで山に入って、楽しいイベントの真っ最中だ。

 俺や親父が指導しながら、みんなで山の幸を採りまくり。

 狩猟採取文化のエルフたちにとっては、超楽しいイベントだ。

 もうみんな、キャッキャしながら楽しんでいる。


「なあなあ、このきのこ……すげえうまそうじゃん!」

「それをうまそうとおもう、おまえがわからない」

「あきらかにきけん」

「ピリっとしてる」


 そしてさっそく、マイスターがお約束を。

 赤くてにょろっとした、カエンタケちゃんだ。

 これ、超危険きのこでございます。

 というか、名前がもうヤバいよね。火炎(かえん)て付いてる。

 教えておこう。


「それはカエンタケで、触っただけで――アレします」

「――うわあああああ!」

「ほら、やっぱり」

「おまえは、きのみだけひろっとけって」

「そうしときます……」


 相変わらずの毒きのこマイスターに目を光らせつつ、気を取り直していろんなものを採取していく。


「……お! このきのみ、あかくてうまそうじゃん?」

「それはヒヨドリジョウゴと言いまして、沢山食べるとそれなりの確率でアレします」

「ええ……?」


 ソラニンたっぷりの木の実だよ! さすが毒木の実マイスターだ。

 なんかもう、逆の意味で的確だ。


「……いっそのことさ、おまえがうまそうってやつを、ゆびさしてくれ。おれら、それちゅういするからさ」

「それがいいわ~」

「ぎゃくに、かくじつだよな」

「そうすべそうすべ」

「ええ……?」


 マッチョさんからの提案で、マイスターが毒探知機に任命されてしまった。

 これでマイスターも、大活躍できるかもだ。


「じゃ、たのむな」

「わかったよ……これとか?」


 ん? マイスターがしぶしぶ指さしたのは……天然なめこっぽい。

 なめこちゃんなら、美味しく食べられるけど……。


 ――いや、俺はマイスターを信じる。

 これたぶん――コレラタケだ。

 なめこそっくりで、プロでも騙されるヤバいやつ。

 これは、毒きのこだ!


「これは食べられるやつにそっくりですが、恐らく――アレするやつです」

「そっくりなやつなの?」

「私でも見分けがつかないくらい、そっくりでヤバいやつです」

「ひえええ!」


 凄いよマイスター、出だし順調だよ。

 マイスターやるじゃん!


「ほんじゃ、これとかも?」

「これは……」


 一見しいたけに見える。しいたけはとっても美味しいきのこだ。

 でも、このきのこを割いてみると……あった! 黒い斑点。

 ――これは、ツキヨタケだ。プロでも騙される、第二弾。


「これも食べられるやつにそっくりな、アレするやつですね」

「なんちゅうきけんなやつ」

「おまえ、なんかすげえな」

「そお?」


 ヤバいやつを見分けたのが褒められたので、マイスターまんざらでもなさそう。

 やる気が出たようだ。


「これとかも、けっこううまそうじゃん?」

「お見事! それはスギヒラタケといって、私たちも近年まで食べられるやつとおもって食べてました」


 マイスターすげえ! スギヒラタケを見分けたよ。

 これ、数年前までは毒ないって思われてたやつだからね。

 わりと普通に、食卓に上がっていた毒きのこだ。


「え? しらないでたべてたの?」

「ええ。アレするって気づかずに、ごく最近まで」

「うわあ……」

「そんなこと、あるんだ」

「やべえ、ヤバすぎるよこれ」


 スギヒラタケ、毒があるって気づかずに普通に食べていた。

 しかし、とある切っ掛けで毒があると判明。

 国から注意喚起情報が出て、きのこ狩り業界に今世紀最大の激震走る、の巻。

 これを事前知識なしで判別するとは――本物だ!


「いやほんと凄いですよ。この調子でお願いします」

「そお? ならがんばっちゃうじゃん!」

「いいぞーもっとやれー」

「おまえだけがたのみだー」

「たよりになるわねー」


 俺は素直に讃えたけど、まわりのみなさん棒読みですよ。

 ただ、マイスターはもう……ドヤ顔でやる気十分だね。

 この調子で、頑張ってもらおう。


「これとかこれ! あとこれ!」

「さすがです! それ全部アレします」

「これも?」

「ええ。即アレするやつです」

「いよっし!」


 なんだか、ガッツポーズを取るマイスターだ。

 だけど、それって……マイスターが美味しそうって思ってるやつだよね?

 外れたことを喜ぶようになってるけど、良いのかな?


「これもアレするじゃん?」

「正解! ドクツルタケです」

「もう、なまえに『どく』ってついちゃってる」

「やばさがよくわかる」


 絶好調の毒きのこマイスターのおかげで、なんだかきのこ狩りは順調になった。

 これは、なかなか得難い人材である。


「タイシ~、これたべられるです?」

「うおっ! 天然マイタケ! めっちゃ美味しいやつだよ!」

「おいしいやつです!? やったです~!」


 マイスターの大活躍と共に、ハナちゃんも大活躍だ。

 天然マイタケのでかいやつ、めっちゃ美味しいやつを見つけてしまった。


「タイシ~、あっちのやつとかも、たべられるです?」

「うわああ! コウタケ! 幻のやつ!」

「まぼろしのやつです!?」


 ハナちゃんもマイスターと逆の意味でヤバいな。

 なんか美味しいやつを、的確に発見する。

 ……というか、そっちの松しかないところ、案内してないのに良く見つけたね。

 褒めてあげないとね。


「ハナちゃんすごいよ。今日はごちそうだよ」

「うふ~。ごちそうです~」

「たくさん食べようね」

「あい~!」


 ハナちゃん、今日はごちそうと聞いて、うふうふ状態に。

 うふうふハナちゃんだね。この調子でがんばってもらいたい。


「きのみ、たくさんひろった~」

「かわむきしなきゃ!」

「これ、トゲトゲ以外はおれたちんところのきのみと、そっくりだよな~」


 観光客のみなさんは、キャッキャしながら栗ひろいに熱中している。

 カゴには、イガグリが沢山だ。あとで皮むき器を貸し出そう。


 しかし、湖リゾートに秋の味覚狩りにと、村の観光業は絶好調だね。

 ここで採れた秋の味覚は、湖を眺めながらまったり食べる催しでもある。

 これは、盛り上がるぞ。



 ◇



 ――というわけで、たんまり秋の味覚を採ったあとのお楽しみ。

 湖畔に観光客を含めたみんなで集まり、思い思いに料理して食べていく。


「マイタケ、おいしいです~!」

「こっちのきのこも、おいしいですね!」

「このおりょうり、おうちでもやってみようかしら」

「ふがふが」


 ハナちゃん一家はマイタケの美味しさに驚いている。

 天然マイタケは、ほんと美味しいからね。

 天ぷらにバター焼きに、バター炒めに、ホイル焼き。

 次々に料理が平らげられていく。


「うわ! このどうぐ、かわがかんたんにむける!」

「これ、ほしいわ!」

「これさえあれば、まいにちのおりょうりもらくになるわ」


 あっちの森から来た観光客のみなさんは、栗の皮むき器の便利さにうっとりしている。

 焼いた栗をちょっと冷ましたあと、するすると皮を剥いている。

 彼らはようやくこっちに来れたばかりだから、この道具を使うのは今日が初めてだ。

 ものすごい欲しがっているので、あとで追加調達してこよう。

 多分、凄い売れるぞこれ。


「もっときのみ、やきましょ」

「どんどんやくぞ~」

「たくさんあるぜ」


 しかし、たき火に次々と栗を投げ入れているけど……。

 それ、危なくない?


「お、はじまったな」

「そろそろくるわ」

「じゅんびよーし!」


 ――と思っていたら、ドッカンドッカン爆発しだした!

 焼き栗がたき火の中から飛び出してくる!


「おっと」

「あら」

「そこね」


 ……飛んできた焼き栗を、華麗な身のこなしで避けているぞ……。

 なんだかみんな、慣れている。

 ヤナさんに、あれは大丈夫なのか聞いてみよう。


「ヤナさん、あれって大丈夫なんですか?」

「だいじょうぶですよ。とんでくるきのみをよけられるようになったら、いちにんまえです」

「え? 一人前?」

「ええ。どこでもやっていけるって、みとめられますよ」

「ハナ、まだうまくよけられないです~」


 ……。


 なんだか、そういう文化らしい。知られざるエルフ文化だ。

 爆発焼き栗を、当たり前に避けられるようになったら……一人前。

 そういうのが日常なんだろうな。

 皮に切れ目を入れても、どうしても爆発するやつは出てくるからね。


 ただ……蓋をしたフライパンで焼けば、問題ないんだよね。

 蓋を押さえておけば、別に爆発したって影響がない。


 これは……エルフ文化に色々影響が出そうだから、黙っておくか。

 その文化、大事にしてください。



 ◇



 爆発焼き栗を華麗に回避するエルフたちを眺め、湖を眺め。

 そして美味しい秋の味覚を楽しみながら、楽しく食事会は進んでいった。


「きのこ、おいしかったです~」

「きのこはまだまだあるから、食べたくなったら言ってね」

「あい~!」


 ハナちゃんはおなか一杯になったようで、一休みだ。

 ちょっと休めば、また食べられるようになるかな?

 まあ、今日全部食べなくても良い。まったりと食休みしよう。


 そうしてまったりと湖畔で一服。

 しばらくのんびり湖を眺めていたら、ざぶざぶとなにかがやって来た。

 あれは――。


「――ぎゃう」

「お、海竜ちゃんどうしたの?」

「ぎゃう~」


 やって来たのは、海竜ちゃんだった。

 ぎゃうぎゃうと、何かをくわえてひれをぱたぱたさせている。


 ……遊んでほしいのかな? 今みんな、山の幸料理と食べるのに忙しいからね。

 だれかが来るのを、待ってたのかもしれない。


「海竜ちゃん、遊んでほしいのかな?」

「ぎゃうぎゃう!」

「それっぽいです~」


 海竜ちゃんに聞いてみると、元気にお返事だ。

 遊んで欲しいっぽいね。

 それじゃあ、腹ごなしに海竜ちゃんと遊ぼうか。


「何して遊ぶ? 今は泳げないから、地上で遊ぶことになるけど」

「ぎゃう~」


 遊びについて問いかけると、くわえていた石みたいなのをぽいっと投げた。


「ぎゃうぎゃう~」

「あえ? くわえてもどってきたです?」


 そして投げた石をくわえて戻ってきたけど……。

 これは、ボール遊びみたいなことをしたいっぽいね。

 ……石だと危ないから、ゴムボールを持って来よう。


「ボールの方が良いと思うから、ちょっと持ってくるね」

「ぎゃう」


 海竜ちゃんもそれで良いみたいなので、さっそく休憩所にいってボールを借りてこよう。

 大きめのやつが良いかな?


「いってらっしゃいです~」

「ぎゃう~」


 それじゃ、ボールを借りてこよう。



 ◇



「こっちです~」

「ぎゃう~」


 ボールを借りて戻ってくると、ハナちゃんと海竜ちゃんはすでに遊んでいた。

 さっき海竜ちゃんがもってきた石を、ハナちゃんがぽてっと投げる。

 海竜ちゃんは、その石を拾って戻る。そんな遊びだ。

 石は危ないから、こっちのボールにしようね。

 そのために借りてきたわけだし。


「ハナちゃん、石の代わりにこっちを使ってね」

「あい~」


 ハナちゃんがぽてぽてと歩いてきて、俺に石を渡してボールを受け取った。

 いや、石はそこら辺に置いといても……。


 ――ん? 何だこの石。なんかキラキラしているぞ?

 なんだろ、この石……。


 ……黒いゴツゴツした石に、キラキラと光を反射する、つぶつぶがある……。

 これって、なんかの鉱石かな?

 エルフたちも色々な鉱石を持って来ていたから、その類かも。

 でもなんか、金属じゃないっぽいけど……。透明な、何かだな。


「……あえ? タイシどうしたです?」

「ぎゃう?」


 石を眺めていると、どうしたのかとハナちゃんたちがやってきた。

 ――おっと、石にかまってる場合じゃないか。

 ……場合じゃないけど、なんか気になるんだよな……。


「いやね、この石って綺麗だなって思ってさ」

「あえ? いしです?」

「ぎゃう?」


 石が気になるというと、ハナちゃんと海竜ちゃんも覗き込んでくる。

 なんかがキラキラ光る、へんな石。

 ほんとこれ、何だろ?


「タイシ、ユキにきいてみるです?」


 ユキちゃんに聞いてみようと、ハナちゃんが提案してきた。

 確かにそうだな、そうしよう。


「そうしようか」

「ハナ、ユキをよんでくるです~」


 そして、てててっと走って、ユキちゃんとこに行くハナちゃんだ。

 元気いっぱいだね。


 ――そしてしばらく待っていると、ハナちゃんがユキちゃんを連れて戻ってきた。


「タイシタイシ~、ユキつれてきたです~」

「ハナちゃんありがと。良い子だね~」

「うふ~」


 ハナちゃんの頭をなでなでして、労をねぎらってと。


「それで、私に見てもらいたいものがあるとのことですけど、どうしました?」


 ハナちゃんをなでなでしていると、ユキちゃんが聞いてきた。

 それじゃ、ユキちゃんに石を見てもらおうか。


「海竜ちゃんがこんな石を持ってきたんだけど、なんか気になって」

「この石ですね、どれどれ……え? これ――」


 ユキちゃんが石を見て、ビックリ顔になった。

 何の石か、もう分かったらしい。


「これって、何の石なの?」

「これ――ダイヤモンドの原石ですよ!?」

「え! ダイヤモンド!?」


 ほんとに? ダイヤモンドの原石なんて見たことないから、良くわからない。

 でも、そういわれると、それっぽいような……。


「反射率からすると、そうですね」

「そんなの見てわかるの?」

「ええまあ。……目に秘密がありますから」

「さようで」


 確かに前そんなことを聞いたけど、秘密なので原理がわからない。

 まあ、それはそれとして。

 これがダイヤモンドだとすると……一体なぜここに?


 よくわからないけど、これは――調査の必要があるな。


「ユキちゃん、これ他にもないか、調査してみよう」

「はい! ……フフフ、ダイヤモンドですよ大志さん」

「そうだねユキちゃん、ダイヤモンドだね……ふっふっふ」


 調査しようと提案すると、乗り気な様子のユキちゃんだ。

 だって、ダイヤモンドだからね。

 もし沢山あるのなら……フフフ。


「あや~。わるいかおしたおとながいるです~」

「ぎゃう~」


 ――おっと、顔に出ていた。


 いやいや、これは学術的な興味があってね。

 (よこしま)な感情は……ちょっとしかないよ?

 ちょっとだけしか。


 ……フフフ。


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