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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十一章 エルフ農業(収穫祭)
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第九話 前哨戦、開始


 午後、台風が近づき天気も荒れ始める。

 まだ雨は降っていないけど、黒い雲が高速で流れ始めた。

 これは、あと数時間もしたら大雨になるだろう。


 現在は動物達や妖精さんたちの避難は終わっていて、今は集会場の別室でおひるね中だ。


「ギニャ……ギニャ」

「ニャ……」

「すぴぴ」


 フクロイヌたちはみんなで固まっておねむで、妖精さんたちは建築模型の中でおねむだ。

 この集会場にいれば安全なので、のんびり過ごしてもらいたい。


(むにゃ……)


 そして神様も神輿に乗って、ぬいぐるみの箱の中でおひるね中だね。

 今は人や動物達が大勢集会場にいるから、安心してるっぽい。

 こちらも、のんびりおひるねしててね、という感じだ。


「んご~」

「ぐー……ぐー」

「んごご」


 親父と高橋さん、それとおっちゃんエルフも一緒に仮眠中だ。

 夜の見回りを担当するので、今は体を休めるときだね。

 これからはシフト体制になるので、交代で仮眠を取ることになる。

 高橋さんたちのシフトの時は、俺やヤナさんたちが仮眠する番だ。

 この辺は状況に応じて、臨機応変に組み替えることになると思う。


 ――さて、こっちの避難組と仮眠組は大丈夫そうなので、俺は消防団のお手伝いをしよう。

 装備の点検や見回りの確認と、不寝番の時間割り当て等やること沢山だ。

 気合いれて行くぞ!


 ということで、隣の部屋に移動する。

 そこでは、消防団員のみなさんが装備の点検をしていた。

 ピカピカの装備品を身に着け、どういう使い方をするのかや、ちゃんと使えるかの確認中だね。


 消防団の装備品としては、ヘルメットにヘッドライト、ロープにライフジャケット、雨具に携帯救急道具などだ。

 これらは元々消防団の標準装備品だけど、今回は組織的に行動するということで、新たな装備品も持ってきた。


 今、ヤナさんが指令となって、その新装備の動作確認中を始めるところだね。

 姿が見えないマイスターとマッチョさんが、確認試験の担当かな?


「あ~。こちらアルファ、きこえますかきこえますか。どうぞ」

『こちらブラボー。かんどりょうこう、きこえます。どうぞ』

『こちらチャーリー。まじできこえます! どうぞ』


 そう、新たな装備とは――無線機だ。

 エルフ初、電波通信機器の運用が始まったわけだ。


 トランシーバー型の無線機で、デジタル簡易無線登録局のやつだ。

 登録が必要だったので、ギリギリになってようやく導入できた。

 これならこの村全域以上の距離をカバーできるので、消防団の活動において強力な武器になる。

 今までは中央で団員を指揮して組織的に行動する機会が無かったため、導入の必要がなかったものだ。

 今回は中央指揮の必要があるため、導入の運びとなった。


「タイシさん、これすごいですね! とおくのひとと、かいわができちゃうなんて!」

「やべえ~。これはやべえ~」

「まじできこえちゃった!」


 無線を初めて試したヤナさんは、なんかもうすごい大はしゃぎだね。

 そして外から帰ってきたマイスターとマッチョさんも、おめめキラッキラだ。

 まあ……こういうゴツい無線機は、俺も子供の頃高橋さんと橋の工事をする際に使ってけっこう興奮したものだ。

 気持ちはよくわかる。キャッキャしちゃうよね。


「このどうぐ、すごいかっこいい――……」

「あ、またなんかでてきた」

『え? まじで?』

「戻しときますね。あと接着も」

「あがが」


 メカ好きさんも無線を手にして、若干アレが離脱気味だったのですぐに戻す。

 そろそろ木工用ボンドの接着力、落ちてきたかな?

 沢山塗っといたけど、どれくらい持つかもうちょっと様子を見よう。


「これがあれば、たんぼのみまわりちゅうになにかあっても、すぐにれんらくできますね!」

「ええ。増援が欲しい時や、何か救助が必要になったとき役立ちます」

「すげええ~」

「べんりだな~」

「カメラといいこれといい、すげえどうぐがあるんだな~」


 興奮気味のヤナさんだけど、どのように運用するかはしっかり分かってるね。

 通信は集団行動する際の生命線だから、有ると無いとじゃ大違いだ。

 これでわざわざ集会場に戻ってこなくても、連絡を取り合える。

 他のみなさんも理解はできているようで、無線機を眺めてキャッキャしている。


 この無線機の運用としては、コールサインで呼び合うことになる。

 アルファが、司令部からの通信で、主にヤナさんが担当。

 ブラボーが親父、チャーリーが高橋さん、デルタが俺。

 エコーはユキちゃんだ。


 俺と親父と高橋さんは、消防団員のみなさんとローテーションでペアを組んでいく。

 このコールサインは、もう覚えてもらった。


 そして、簡単な通話ルールも教えてある。「こちら○○」で通話を初めて、終わったら「どうぞ」で通話を終了する。

 ほんとに簡単な所だけだけど、これをするとしないとでは通話のやりとりで大幅な違いがある。

 簡単なのでエルフたちはすぐに覚えて、使えているね。

 これで無線の運用は大丈夫だろう。


「ちなみにタイシさん。これってどこまでとおくでも、おはなしできるの?」

「それ、きになるじゃん?」


 無線機をこねくりしていたマッチョさんとマイスターから、通信距離についての質問が来た。

 通信距離には、ある程度の制限があることを教えておこう。

 

「どこまでもってわけでもないです。話せる距離には、限界はありますね」

「そうなんだ~」

「そこは、げんかいがあるんだ」


 限界はあると聞いて、ちょっと残念そうな感じだね。

 まあ、電波法は守らないと他の人に大迷惑かけちゃうからね。

 そこはしょうがない。

 この村、外界の電波が入るようになってるからね。


 ……電波が入らないようにもできるけど、遺跡に行くのがちょっとめんどい。

 携帯電話の電波も入らなくなっちゃうから、かえって不便になるのもある。

 まあ、今のところは電波法を守って、ありがたく電波資源を使わせてもらう方針のままでいこう。


「ちなみに、どれくらいのきょりまでつかえます? ここからたんぼくらいまで、とかですかね?」


 ヤナさんも通話距離は気になるようで、具体的な数字を求めて来たね。

 原っぱで見通しが良いと、五ワット出力だから十キロはいける。

 ただ、この集会場から通信するとなると……まあ木とかがあるから五キロってところか。

 メートル法を使いこなしてきたヤナさんにわかりやすく、メートル換算で伝えよう。


「五千メートルです」

「えっ?」

「五千メートルです」

「……え?」


 五千メートルと伝えると、ヤナさんきょとんとした。


「……ごせんめーとる?」

「五千メートルです」

「……」


 ヤナさん、動かなくなった。

 千という単位が出てきたから、距離がいまいち想像できないのかな?

 それじゃあ具体的に、五キロはどの辺かを伝えてみよう。


「五千メートルは、あっちに見えている山くらいの距離ですね」

「ええ……?」

「……すげくね?」

「あっちのやま、かなりとおいよな?」


 ……まあ、時速三キロで歩いたとすると、五キロ先の目的地に到着するには……。

 五割る三で、一.六六か。まあ普通に歩いて約一時間四十分ってところだ。

 距離的には十分か。


「とりあえず距離は十分かと思いますので、今日だけとは言わず消防団活動にお使いください」

「こんなすごいそうび……いただけるのですか?」

「村と人の安全を守るためには、絶対必要なものですからね。維持して行くには手間もありますが、おいおい覚えて頂けたらと思います」

「はい! しっかりおぼえます!」


 村にとって有用かつ必要な装備だからか、ヤナさんも無闇な遠慮はしなかったね。

 この装備があれば、消防団が強力な組織になる。

 それはすなわち――村と村人の安全につながる。

 安全にかかわることは、ヤナさんも素直に受け入れてくれる。これは、こっちも助かるね。

 あとで、充電の方法や緊急時に乾電池を使うアダプタなんかも用意しよう。


「うわあ~。これしょうぼうだんのそうびになるんだ~!」

「すげえええ!」

「きあいはいるな!」

「しょうぼうだん、かっこよくなってきてる!」


 無線機が消防団の標準装備になると聞いて、他の団員も目をキラッキラさせて喜ぶ。

 気合がみなぎったようで、マッチョさんは腕立て伏せとか筋トレ始める始末。

 今から体力つかうと、夜がきついからね。ほどほどにね。ほどほどに。


 ――そんなこんなで、みんなと集会場で台風襲来に対して準備していく。

 やがて雨が降ってきて……。

 台風襲来の前哨戦が――始まった。


「――あめ、ふってきましたね」

「いよいよか」

「やっぱり、おてんきがふだんとちがう」


 雨音を耳をピクピクさせて聞いて、さらにじっと外を見つめるヤナさんだ。

 同じく、他のみなさんも外を見た。

 どうやらみんな、今までの天気とは何かが違うことを感じているようだね。


「ついに始まりました。ただ……この雨は台風本番ではなく、前哨戦です」

「まだまだ、ほんばんじゃないんですね」

「ええ。これから――長いですよ」

「こころして、とりかかります!」


 これからが長いと伝えると、ヤナさんキリっとした顔で俺を見た。

 きっちり団長の顔をしているね。さすがエルフたちの族長だけある。

 ここぞと言うときは、頼りになるのがヤナさんだ。


 それじゃ、前哨戦の開始を宣言しよう。


「これより、台風警戒態勢を――開始します!」

「りょうかいしました!」

「がんばんべ!」

「いくぜ!」

「おー!」


 他の消防団員も、声をだして気合を入れる。

 さあ、前哨戦の始まりだ。



 ◇



「あめがふってきたね! ふってきたね!」

「どうなるんだろ、どうなるんだろ」

「しんぱい~」


 みんなで気合を入れていると、妖精さんたちがおひるねから起きてきた。

 これから騒がしくなるから、良い時間に起きてきたね。


(おうちですごそ~)


 お、神輿も神棚に戻って行った。

 ほよりと駐車スペースに収まり、光が神社に入っていく。

 神様……なかなか駐車が上手ですね。


 こうしておひるね組が起きてきて、集会場がにぎやかになってくる。

 そんな賑やかな中、集会場にさらに賑やかな面々が訪れた。


「タイシ~、おにぎりもってきたです~!」

「おかずもありますので、待機中はこれで栄養補給してください」

「たくさんつくったわ~」

「さめてもおいしいのにしたから、たくさんたべてね」

「ヤナ、これをたべてがんばって」


 ハナちゃんとユキちゃん、そしてカナさんと腕グキさん母子(おやこ)だ。

 台風警戒中の食事として、おにぎりや惣菜などを作ってきてくれた。

 消防団活動のの支援ということで、お願いしていた仕事だ。

 後方支援は、とても大事だからね。


 そして食事を持って来てくれた女性陣は、みなさんポンチョ姿だ。

 このポンチョ装備だと、エルフ世界の大雨でもなんとか行動できる。

 優れものの雨具だね。


 でも、まだ雨はそれほど降っていないからか、ポンチョもそれほど濡れていないね。

 そういう時を見計らって、準備してくれたんだろうね。

 時間的にちょうど良いから、とてもありがたい。


「あれ? なんかとうめいなのがかぶさってる」

「なんだろこれ」

「くえるのかな?」


 お、マイスターたちが食事を見て、見慣れないものに気づいたようだ。

 ハナちゃんたちが持って来てくれた食事は、ラップで包まれている。

 雨に濡れないようにできるし、料理が乾かないですむからね。


 でも、ラップを見たことが無い消防団のみなさんは、不思議顔になっている。

 マイスターとかが食べ始める前に、ラップについて教えておこう。


「これはラップと言いまして、食品を包んでおくものです。食べられません」

「こうやって、とりはずしてたべるです~」


 説明のためか、ハナちゃんがおにぎりのラップをぺりりとはがして……おにぎりをもぎゅもぎゅ食べ始めた。

 とても美味しそうに食べているね。エルフ耳がへにゃっと垂れてる。


「……おなかがへってきましたね」

「おれも」

「おにぎり、おいしそうだな~」


 ハナちゃんが美味しそうに食べる様子を見て、団員のみなさんもおなかが減ったようだ。

 それじゃ、みんなで食事をしよう。


「では、みんなで食事をとりましょう。ハナちゃんたちも、そのポンチョを脱いで一緒に食べよう」

「あい~! みんなでおにぎりたべるです~」

「ご一緒させて頂きますね」

「はい、やさいいためもあるわよ~」

「こっちもたべてね」


 台の上に、ドカドカとおにぎりや惣菜が置かれる。どれもおいしそうだ。

 まずは神様にお供えして、それからみんなで食べよう。

 これとこれと……あとこれかな?

 紙のお皿も用意してあるので、お供えも安心だね。


「それでは神様、これはお供え物です。どうぞお食べください」

「かみさま、どうぞです~」

(ありがと~!)


 さっそく、ちまちまとおにぎりが消えていく。

 ひとくちひとくちって感じだね。


(おにぎり、おいし~!)


 どうやらご満足いただけたようだ。神社がほよほよ光り始める。

 これでお供えは完了したので、俺たちも食べ始めよう。

 まずはやっぱり、おにぎりからだね。

 どれにしようかな……と。


「タイシタイシ~、ハナのにぎったおにぎり、たべてほしいです~」

「ハナちゃんが作ったおにぎりね。じゃあそれを頂こうかな」

「あい~! これです~」

「……おっきいね」


 どのおにぎりを食べようか目移りしていると、ハナちゃんがおにぎりを持って来てくれた。

 ハナちゃんが握ったおにぎりだ。そして……妙におおきい。

 まあるい巨大おにぎり、こんにちわだ。

 ……これ、二合くらい使ってないかな?


「これも、ハナがつくったですよ~」

「野菜炒めとトン汁だね。では、頂きます」

「いただきますです~」


 野菜炒めとトン汁もてんこ盛りだけど、俺的には量が合ってありがたい。

 ハナちゃんのお勧めするまま、おにぎりを一口食べる。


 あ、これ思ってたより――美味しい。

 塩味だけのシンプルな味付けだけど、なんだか旨味がある。

 ……エルフ岩塩つかってるな。これは良い。

 わりと貴重なエルフ岩塩だけど、惜しげもなく使っていてとても美味しい。


「ハナちゃんのおにぎり、とっても美味しいよ。これは良いね」

「えへへ、えへへ」


 褒められたハナちゃん、耳をぴこぴこさせてご機嫌だ。

 にこにこしながら、俺の食べる様子を見ているね。

 それじゃ次は、野菜炒めとトン汁を食べよう。


 まずは野菜炒めを一口――と、これも美味しい。

 火をしっかり通した方が美味しい野菜と、あまり火を通さずにシャキシャキさせた方が美味しい野菜、どちらも上手に炒められている。

 ちゃんと炒める順番と火の通し方、確実に上手になっているね。


 では、トン汁はと……味が濃厚だ。

 しょっぱいわけじゃないけど、しっかりとした味が感じられる。

 ……なるほど、エルフの森で採れた具材を使っているね。


 蛍光色の実が、ジャガイモみたいにホクホクと崩れる。

 そしてそれが、この濃厚な味をまろやかにしてくれる。

 ただ煮込むだけじゃなくて、組合せに気を使っているね。


 ハナちゃんの料理、どれも美味しい。上出来だ。

 これは、思いっきり褒めないとね。


「ハナちゃんほんとお料理上手になったね。どれもとっても美味しいよ」

「うきゃ~」

「これからも、ハナちゃんに色んなお料理作って欲しいな」

「ぐふ~」


 無事、ハナちゃんはぐにゃりました。

 これから大雨になるけど、ぐにゃらせちゃって大丈夫かな……。

 ……後先考えてなかった。


「ぐふふ~」

「ハナ、ごきげんだね」

「おんなのこだもの」


 あ、ヤナさんとカナさんも、ハナちゃんの頭をなでなでし始めた。

 ハナちゃん、もっとぐんにゃりしちゃったよ……。


 まあ、かわいいから良いか。良いよね。良いに違いない。



 ◇



 そうして楽しくキャッキャと食事をし、お腹いっぱいに。

 それからしばらくして――雨が本降りになってきた。


「あや~。あめつよくなってきたです~」

「これからもっと雨が強くなるから、頃合いを見て家に帰るんだよ」

「あい~!」


 ザーザーと雨が降る音が集会場に響き、台風の接近を告げる。

 警戒態勢はもう敷いているけど、これから本番って感じだね。


「きょうは、わたしたちもハナちゃんのおうちにおせわになるわ~」

「おじゃましますね」

「みなさん、ゆっくりしていってください」


 腕グキさんとステキさんは、ハナちゃんちにお世話になる。

 女二人で台風の中過ごすのは、ちょっと不安があるからね。

 挨拶されたカナさんも、にこにこと二人を受け入れてくれる。


「私もハナちゃんの家で待機しますので、何かあったら連絡します」


 そしてユキちゃんも今日はハナちゃんちに待機して、連絡要員だ。

 コールサイン「エコー」から通信が入ったら、それがユキちゃんだ。

 何かあったらハナちゃんちか集会場に駆け込めば、無線で一気に状況を共有できるという手はずだね。


 ――と、そんなことをしている間に、雨がどんどん強くなってきた。

 ザーザーという音から、ゴウゴウという音に変わってきている。


 そろそろ女性陣には家に戻ってもらって――お! すごい光った!

 カミナリだ!


 そしてすぐに轟音が鳴り響く。……これは近い!

 エルフの森にでも、落ちたかな?


「あや! カミナリおちたです~!」

「すっごいのきたー!」

「これはいいですね! いろいろげんきがでそうです!」

「もりに、ビリビリきたー!」


 ん? エルフたちがなんかキャッキャし始めたぞ?

 結構近くに落ちたけど、怖くないのかな?


(かみなりー! すごいのー!)


 お、神社もほよっほよ光ってテンションあがっている。

 ……カミナリがおちるの、嬉しいの?


「……」

「かみなり、こわいの! こわいの!」

「きゃー!」


 妖精さんたちはエルフや神様と違って、雷が怖いようだ。

 模型の家ににげこんで、おふとんに頭をつっこんでぷるぷるし始める。

 ……頭隠しておしり隠さずだね。

 失礼かもしれないけど、すごいかわいらしい。

 ぷるぷる妖精さんたちだ。


 ……あんまり人のおしりを見るのもアレなので、エルフたちに話を戻そう。

 なんでそんなに喜んでいるのか、理由を聞いてみるか。


「みなさん、カミナリで喜んでいるみたいですけど、どうしたのですか?」

「カミナリがおちると、もりとかがげんきになるです~!」

「カミナリがおちたところにしかはえない、おいしいきのこがあったりします」

「ほかにもいろいろ、いいことあるのよ~」


 ……良くはわからないけど、森にカミナリが落ちると色々良い事があるらしい。

 電気刺激が効くのかな?


 ……まあ、危ないのでカミナリが鳴っているときは、なるべく外に出ないようにしよう。

 

 ――と言っている間にまた落ちた! 

 ズズンと、腹に響く重低音の雷鳴だ!


「これは、きのこたくさんです~」

「たのしみだね」

「あい~!」

(おそなえもの~!)


 カミナリが落ちるたびにキャッキャするみなさんと、お供え物を期待する神様。

 こんな状況でも、みんな食いしん坊さんだね。


「きゃー! きゃー!」

「ちかくにおちたー!」

「どっかーんて! どっかーんて!」


 そして頭かくしておしり隠さず、の状態でぷるぷるする妖精さんたち。


「ギニャ……ギニャ……」

「ニャ~……」


 さらにフクロイヌは、カミナリが落ちても寝たまんま。

 でろんと伸びて、いっこうに起きる気配が無い。

 周りは大騒ぎなのに、なかなかどうして神経が太い。


 ……カミナリがおちてから、キャッキャぷるぷるすぴぴと……集会場はよくわかんない状況になった。

 なんだろね、これ。


 今は雨がゴウゴウと降り、カミナリがズドンと落ち。そして辺りは薄暗い。

 そんな中、エルフたちはキャーキャーとはしゃぎ。

 妖精さんたちはキャーキャーとぷるぷる。

 同じ「キャー」でも意味が違うけど、賑やかではあるね。


 ……まあ、このカミナリが収まったら女性陣はハナちゃんちに行ってもらおう。

 それを見送ったら、俺たちは見回りを開始だ。

 消防団のみんなと、村や畑を守るぞ!


 ――と思っているうちに、またまたズドンとカミナリが!

 何なのこの台風、カミナリ落ち過ぎじゃない? 普通台風って、あんまりカミナリ落とさないよね?

 もうほんと近い。俺もちょっとビックリするくらいだ。


「――ビリビリ、またきたー!」

「きのこたくさん、かくじつです~!」

「かみなりこわくないの? こわくないの?」

「キャー!」

「ギニャ……ギニャ……」


 ……みなさん、元気があって良いってことで。

 この調子で、みんなで元気に――台風を乗り切ろう!


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