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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十一章 エルフ農業(収穫祭)
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第四話 おすそわけ


 森を拡張するにあたって、用地計画は出来た。

 現在の森の大きさは一ヘクタールより少し大きいくらい、ちょっと広い公園程度だ。

 これを、かなりでかい公園程度に広げる。

 ということで、ひとまず新たに二ヘクタールをエルフの森用地として確保した。

 用地計画はこれで良い。いつでもこの二ヘクタールを使える。


 問題は灰の量だ。

 日々の生活で出る灰を活用する計画だけど、そんなに多くは無い。

 ハナちゃんちで、一週間に十リットルバケツ二杯くらいが出る程度。

 マイスターとマッチョさんは料理屋で食べるため、灰がほとんど出ない。


 お料理屋さんとホットケーキ屋さんからは、あわせて一週間でバケツ六杯ほど。

 まあ、全世帯の合計で、だいたいバケツ十二から十三杯分の灰がでる計算だ。


 バケツ一杯で一アールまけるかまけない程度なので、一週間でまあ十アールの灰を撒くことが出来る。

 単純計算で二ヶ月半もあれば一ヘクタールの森をつくることができる計算になる。

 もうそろそろ観光客も戻ってくるころだから、もっと灰が出る。

 そうなれば、もっと森を拡張する速度はあがるだろうけど、これはまだ読めない。

 とりあえず二ヶ月半で一ヘクタールの森を作り出す想定で、計画を実行する。

 ここまでが第一目標だ。もっと広げるかは、それから考える。


 これに並行して、妖精さんたちの家をマッチョさんとおっちゃんエルフが作成する。

 それが出来るまでは、みんなから提供された建築模型のミニチュアハウスに仮住まいしてもらう。

 折角だから妖精さんが過ごしやすいような家を設計するということで、高橋さんのアドバイスを受けながら図面を引くことになる。

 CAD(キャド)を使えば速攻なんだけど、PCが使えないから紙の図面でコツコツ作図するしかない。

 なのでしばらく時間はかかるだろう。

 森の拡張と合わせて、コツコツやっていきたい。


 森の拡張と家の設計は多少の時間を要するため、まずはてっとり早い食糧と被服の提供を行おう。

 食糧は、何種類かの甘味を用意し、他にも小麦粉や何らかの蛋白源を用意して、味見してもらう。

 被服は昨日ユキちゃんから提案を受けた、シルクとピーなんたらコットンの布を用意する。


 それじゃ、物資を調達して妖精さんたちに見てもらおう。



 ◇



 布系はあまり良くわからなかったので、ユキちゃんにお願いすることにした。

 そうして何種類かの布を調達し、その足で甘味なども調達してから村に向かっている。


「悪いね、付き合ってもらっちゃって」

「いえいえ。これもお仕事ですから」

「また今度、お礼をするね」

「楽しみにしてますね。……フフフ」


 ……何をお願いされるんだろうか。

 俺に出来る事にしてほしい。出来る事だと良いな。

 まあそれはユキちゃんからのアクションを待つとして、妖精さんの事をちょっと相談しよう。


「話はかわるけど、あの妖精さんたち、なかなか不思議だよね」

「そうですね……。文化以前に、生態が私たちとかなり違ってますよね」

「基本は食べて遊んで眠る、だろうとは思うけど……きっとなんらかの文化風習は持っているはずだよね」

「知的生命体ですからね。なにかしら決まり事は持っているかと思います」


 確かになんらかの決まりごとは持っていると思う。

 ただ、今の妖精さんたちからは、行動様式や組織立った行動、さらには指揮系統が見えてこない。

 エルフたちが来た時は、ヤナさんが組織の長であるとすぐに分かったし、行動様式もわかりやすかった。

 でも、妖精さんたちの場合、それがわからない。


 妖精さんたちは、集団内での指導者や組織の長などの存在が無いとか?

 そういう存在がいれば、なんらかの代表行動はすると思うんだよね。


「妖精さんたち、だれがトップとかそういう決め事、あるのかな?」

「今のところ、よくわかりませんね。いないのかも知れませんし」

「確かにそういうのは見えてこないね。でもなんとなくまとまりやつながりも見える。不思議な人たちだね」

「ですね」


 ユキちゃんと首を傾げるけど、まあわからないものはわからない。

 これは妖精さんたちとの付き合いのなかから、知っていく必要はあるな。

 ただ、俺的には妖精さんを代表してくれる人は欲しいと思っている。

 何かをするとき、妖精さん一人一人に対して調査や確認をするのは、さすがにきびしいからね。

 五十人くらいいるので、一人ひとり確認していくと時間がかかりすぎて、ろくな行動がとれなくなる。


「まあ、もし代表者がいないというなら、選んでもらわないとね」

「数が数ですからねえ……いないと困りますよね」


 これからも村では色々な公共事業をすることになる。

 その際、ヤナさんのように意見を取り纏めておいてくれる人は、妖精さんたちにも必要になると思う。

 こちらが円滑に物事を進めるためにも、必要だね。

 もし代表者がいない場合は、いずれ選出してもらおう。

 まあ、彼らの生活が落ち着いたらで良いかな。


「あ、そうだ。そういえば妖精さんって、性別がよくわからないですね。見た感じ女の子しかいないように見えましたけど……」

「……そういえばそうだね。でも、『お母さん』て呼ばれてる人はいたよね」

「ちいさな子を連れていましたね。……どうやって繁殖するんでしょうか」

「それもわからないね。ほんと不思議だ」

「不思議ですね……」


 妖精さんに関しては、もうほんとわからないことだらけだ。

 ユキちゃんと話しても、二人で頭の上にハテナマークが沢山出来るばかり。

 謎の妖精さんのことを知っていくには、時間をかけるしかないとは思うけど……。

 これはエルフたちも同様だね。まだまだ彼らの事だって、知らないことが多い。

 焦らず急がず、じっくり取り組んでいこう。


 ――さて、もうそろそろ村に到着だ。

 エルフと妖精さんたち、元気に過ごしているかな?



 ◇



「タイシタイシ~! まってたです~!」

「ギニャ~!」

「ミュ~!」

「あそぼ! あそぼ!」


 村に着くと、ハナちゃんや動物たちがお出迎えしてくれた。

 ハナちゃんの左肩は、羽を痛めたあの妖精ちゃんが乗っかっているね。

 もうすっかり仲良しさんになったようだ。


「ハナちゃんこんにちは。みんなもこんにちは。元気してたかな?」

「げんきいっぱいです~!」

「ギニャニャ~」

「ミュー」

「げんきだよ! げんきだよ!」


 こんにちわの挨拶をすると、みんなで俺のまわりをくるくる走り回る。

 元気いっぱいで何よりだね。

 ハナちゃんの肩にのっている妖精ちゃんもキラキラした粒子を出しているので、ハナちゃんが走るとその軌跡がキラキラしてなんだかおもしろい。


「ちなみにハナちゃん、その肩に乗ってる子と、ずいぶん仲良しさんだね」

「あい~! とぶのがたいへんってきいたから、ハナがおせわしてるです~!」

「おみずをのみにいくの、たいへん。つれていってもらってるの!」


 お、ハナちゃんがお世話してくれてるのか。えらい子だ。

 えらい子は褒めてあげなきゃね。


「自発的にお世話するなんて、ハナちゃんえらいね~。もうなでちゃうから!」

「うふ~」

「きゃい~」


 ……ハナちゃんをなでなですると、なぜか妖精さんもきゃいきゃい喜んでいる。

 お友達が喜んでいるから、自分も嬉しくなっちゃったのかな?


 と、そうだ。水を飲むのが大変と言っていたけど、何が大変なんだろう。

 水が気軽に摂取できないというのはかなりまずいので、理由を聞いて改善しないと。


「ちなみに、なんで水を飲むのが大変なの?」

「おみずがあるところまで、とべないの。とべないの」


 水があるところまで飛べないと。羽根を痛めているからそうなんだろう。

 しかし、妖精さんたちは水をどこから調達しているんだろうか?

 聞いてみるか。


「君たちはどこで水を飲んでるの??」

「あっち、あっち」

「タイシ、ようせいさんたち、すいじばでおみずのんでるです」

「なるほど、炊事場を使っているんだ」

「あい~」


 たしかに妖精さんの指さす先は、炊事場があるね。

 つねに綺麗な水が流れているから、妖精さん達の水飲み場としても確かに向いているかも。

 でも、エルフの森からちょっと距離があるから、ちいさな体では歩いていくだけで一苦労かも。

 ちいさな体で歩いて行って、水を飲んでまた戻る。

 ……これはかなりキツいのではないだろうか。

 なんとかしないといけないな。


「水を気軽に飲めるように、何とかする?」

「ハナがおせわするから、だいじょぶですよ」

「きゃい~」


 ん? ハナちゃんがお世話するって言ってるけど、この水問題には対処しなくていいのかな?


「とくに何とかしなくてもいいの?」

「あい~! ハナ、はねがなおるまでおせわするです~!」

「きゃい~きゃい~」


 どうやら、ハナちゃんが何とかしてくれるようだ。

 そして妖精さんも、お世話するといわれてきゃいきゃいと嬉しそうな感じだね。

 ……ここは下手に手を出さず、ハナちゃんに任せようか。

 本人がそうしたいといっているし、妖精ちゃんも嬉しそうだし。

 たぶんそれが一番良い。


「それじゃハナちゃんにお任せしちゃうよ! そしてえらい子にはもっとなでなでしちゃうから!」

「うきゃ~」

「きゃい~」


 ハナちゃんと妖精ちゃん、ほっぺに両手をあててうきゃうきゃきゃいきゃいだね。

 和むなあ。


「タイシさんこんにちは」

「あ、ヤナさんこんにちは」


 お出迎え組とキャッキャしていたら、ヤナさんたちも広場にやってきた。

 ちょうどいいから、いつものように集会場に集まってもらって計画を説明しようか。



 ◇



「――計画としてはこんなところです。これから忙しくなりますけど、大丈夫ですか?」

「だいじょぶです~!」

「もともとはいをまいたりしてましたので、いつもとかわらないですからね」

「ちょっと、はいをまくはんいがひろがるだけね」


 計画を説明して同意を確認してみたけど、おおむね問題ない感じだね。

 むしろエルフたちはもっと手伝いがしたいような感じすらある。

 まあ、実際エルフたち担当の作業といえば、区画に沿って計画的に灰を撒くくらいだ。

 既存の森には灰を撒いていたから、ちょこっと撒く範囲が増えるくらいだね。


「タイシさんのしごとがふえただけで、おれらはいつもどおりなかんじ」

「わたしたちも、もっとてつだうわ~」


 主だった作業は俺がやる点に関して、エルフたちはちょっと心配顔だね。

 ただまあ、俺じゃ出来ないお仕事がエルフたちにはあるわけだよ。

 それが一番重要なお仕事だったりするんだなこれが。


「みなさんには、私じゃできない大事な仕事がありますよ」

「あえ? タイシじゃできないです?」

「そうだよ。自分はこの村にずっといられるわけじゃないから、いちばん大事なことはできないんだ」

「いちばんだいじなことです?」


 一番大事だけど俺じゃできないお仕事と聞いて、ハナちゃんこてっと首を傾げる。

 まあ簡単な話だね。この大事な仕事は何かを説明して、みんなにお願いしよう。


 その大事な仕事とは――。


「妖精さんたちのそばにいて、常に気にしてあげることだよ。村に常にいられるわけじゃない自分には、それができないんだ」

「あや~……」

「だからね、ハナちゃんやみんなには……妖精さんたちのそばにいて、気にかけてあげて欲しいんだ」


 俺も本当は一緒にいてあげたいんだけど、外でしなければいけない仕事が沢山ある。

 そしてそれは、俺や地球側の人間しかできないことだ。

 だから、しないわけにはいかない。


「妖精さんや村のことをみんなに任せる事ができるから、自分は安心して外でお仕事ができるんだ。だからお願いできるかな?」

「あい~! ハナたちにまかせてほしいです~!」

「むらのことやようせいさんたちのこと、しっかりやります」

「まかせてほしいじゃん」


 俺の言いたい事は理解してもらえたようで、ハナちゃんもみんなもやる気十分だね。

 多分言わなくても妖精さんたちを気にかけてくれるのはわかっているけど、こうして明確に言葉にするとまた認識は変わるはずだ。

 普段何気なくやっているその行動は、とっても大事な仕事なんだよって。


「みんなありがと! ありがと!」


 そして話を聞いていた妖精ちゃんが、キラキラ光ってお礼を言う。

 まあ、自分たちをよくしてくれる話だからね。嬉しいよね。


 さて、それじゃ説明も終わったところで、計画の第一弾を実行しようか。

 まずは食べ物だね。ぶっちゃけこれがキモなので、真っ先に解決したらあとはぐっと楽になる。

 妖精さんを集めて、試食会をしましょう!



 ◇



(ふしぎなおかし~)


 妖精さんたちを集会場に呼びに行ってもらっている間に、神様にお供え物をたんまりとする。

 妖精さんたちはフクロイヌが直接救助したけど、そのフクロイヌを救助するために一番努力したのは神様だからね。

 労いの意味も込めて、高級和菓子をどっさりお供えだ。

 そしてたくさんの和菓子を前に、神社はほよほよ光っている。


「神輿、ちゃんと神社の横に駐車? しているんですね」

「白線引いたら、ちゃんとそこに停めてくれたりするね」

「佐渡旅行で、駐車をきっちり学習したんですね……」


 神棚には神輿の駐車? スペースを設けた。今は乗っていないのか、普通の模型状態だ。

 そのかわり神社がほよっほよ光っている。

 前より元気な感じがするね。旅行に行って、リフレッシュできたのかな?


「……タイシさん。かみさま、たまにみこしにのってどっかいってるみたいです」

「どこかと言うと?」

「このあいだは、おんせんにぷかぷかういてました」

「それはそれは、乗り物を有効活用されているようで」


 ほよほよ光る神社を見ていると、ヤナさんがそんなことを教えてくれた。

 どうやら神様、たまにお出かけをしているようだ。

 ……まあ、神様だから迷子にはならないよね。

 のんびりゆったり、お出かけをお楽しみくださいだ。


(このおだんご、おいし~)


 そうして、のんびり高級和菓子を食べる神様をほんわか眺めた。

 癒されるな~。


「タイシタイシ、ようせいさんつれてきたです~!」

「きたよ! きたよ!」

「なにするの? なにするの?」

「あそぶ? あそぶ?」


 そうこうしているうちに、ハナちゃんが妖精さんたちを連れて集会場にやってきた。

 みんなキラキラ光る粒子を撒いて、ハナちゃんのまわりは花火みたいなことになっている。

 数が集まると凄いね。

 一人ひとり粒子の色が違うから、色とりどりできらびやかだ。


「なにをするの? たのしいこと?」


 羽を痛めた妖精ちゃんも、羽の色を変化させながらやっぱり粒子をキラキラと撒いている。

 ハナちゃんの肩にのって、きゃいきゃい大はしゃぎだ。

 ……この子だけ粒子の色が時間変化するんだな。


 白から始まって、それから青、緑、黄、赤と虹のように変化していく。

 ……高エネルギーから低エネルギーへの変化が起きている?


「タイシ、これからどうするです?」


 おっと、妖精さん粒子のエネルギー遷移について考えている場合じゃないな。

 食糧問題解決の一歩として、試食をしてもらわないと。


「とりあえず、持ってきた食べ物を味見してもらって、よさげな物を選んでもらう感じかな?」

「おだんごおだんご、おだんごつくれる?」

「もちろん作れるよ。おだんごを作るための甘いやつは、こっちにあるからね」

「おだんごつくる~!」

「きゃい~!」


 妖精さん達がきゃいきゃいしながら視線を送るそこには、各種の粉末と糖分が用意してある。

 とりあえず干し肉に麦粉と白玉粉、それに栄養補助としてすりゴマを持って来てみた。

 糖分は蜂蜜、水あめ、砂糖とチョコレートだ。

 砂糖は粘性がないけど、まあ甘い物ってことで用意した。各種粉末に混ぜて使えば良いんじゃないかと思う。

 さて、どれか気に入ってくれると良いな。


「それでは、ここにある食べ物を味見してみてね、この茶色いのは溶けちゃうのでおだんごにできないから、そのまま食べてね」

「おだんごこねこね~」

「おいしいおだんご、つくりましょ!」

「おいしくな~れ!」


 そうしてお団子をこねはじめる妖精さんたち、各種食材をこねこねと丸くしていく。

 なんとも微笑ましい光景だ。

 しかし、粉だとなんでもおだんごにしちゃうんだな。


「かわいいです~」

「あ、もうたべはじめてるわ~」

「こっちのこ、チョコばっかりたべてる」


 ちいさな妖精さん達がきゃいきゃいとお団子をこねる様子を、みんなもキャッキャと見守る。

 見た感じ、チョコレートに人気が集中してるね。

 やっぱりチョコレートは美味しいからかな?


「これおいし~!」

「このしろいこなも、けっこうおいし~」

「こっちのくろいの、あまくない?」


 チョコレート以外では、白玉粉を水あめでこねたのが人気だね。

 小麦粉もまあまあだ。すりゴマはあんまり人気が無いね。

 ゴマはペーストにしたほうが良かったかな?


「これはむり~」

「たべられないな~」

「きもちわるくなっちゃう」


 あ、お肉はダメなんだ。においをかいでしぶい顔をしちゃってるね。

 なるほど、動物性たんぱくはダメなのかな?

 でも牛乳が入ってるチョコレートは食べているよね。

 程度問題か、それともお肉のクセがダメなのかも。


 そうしてきゃいきゃいと一通り味見していく妖精さんたちだ。

 だいたい味見は出来たかな?


「みんなどうかな? これといった物は見つかった?」

「これ、あまくておいしい!」

「でも、ちょっとたりないかんじがする。なんかたりない」

「おなかいっぱいにはなるよ!」


 妖精さんたちは、もぐもぐと試食しながら色々教えてくれる。

 かなりの食欲で、みるみる用意した食材が消費されていく。

 おなかいっぱいにはなるようで、楽しくおだんごをもぐもぐ食べているね。


 しかし、なんか足りないようだ。

 単品じゃ栄養価は補えないのがわかっているから、まあしょうがないんだけど。

 とりあえず、人気のあるチョコレートと砂糖、水あめ、それと白玉粉で様子をみるか?

 足りない分は、花粉荷で補ってもらうとして。


「タイシ、どうです?」

「う~ん。これといってピンと来るものは無いみたいだね。どうするか……」

「むむむ」


 他に何かいい食材が無いか、ちょっと考えてみる。

 となりではハナちゃんがむむむとやっているので、むふむふにするチャンスだね。

 不意打ちなでなでをしちゃお――。


(これどうぞ~)


 ハナちゃんをなでようとしたところで、神輿がほよほよ飛んできた。

 そして器用にお皿を頭? 本体? に乗っけている。

 そのお皿には……きなこ餅があった。

 神様にどっさりお供えしたお菓子だね。おすそわけ?


「……ハナちゃん、神様が何か持って来てくれたけど」

「これどうぞっていってるです?」

(えいようまんてん~。おすすめ~)

「あえ? えいようまんてんです?」


 ん? 謎の声が栄養満点とか言ってるけど。


 きなこ餅と言えばきなこだけど……あ! 大豆タンパク質!

 お肉を食べられない妖精さんには、うってつけのタンパク源だ。


 大豆はタンパク質の他のも栄養価は高いし、餅の部分はもち米で炭水化物豊富だ。

 そして甘くするために砂糖もたっぷり使っている。

 これだけで結構栄養バランス整うね。良いじゃないか。

 神様、ナイスアドバイス!


「神様が助け舟出してくれたみたいだ。これは使えるよ」

「あえ? たすけぶねです?」

「このきなこ餅って、もやしを作るときに使ってる、あの大豆をつかってるんだよ。栄養あるよ」

(そんなかんじ~)

「そんなかんじですか~」


 ということで、神様におすそわけしてもらったきなこ餅、妖精さんに試食してもらおう。


「妖精さんたち、これをたべてみてください」

「おっきなおだんご! たべる、たべる!」

「このきいろいこな、かふんににてる~!」

「おいし~!」

「なかみがしろいね!」


 妖精さんたちはきなこ餅に群がって、もぐもぐと始める。

 中身はモチなので、ちょっとびっくりしているみたいだけど。

 栄養価的にはどうだろうか。


「どんな感じでしょうか」

「いいかんじ! あといっぽ! あといっぽ!」

「たりないの、ほんのちょっと!」


 お、いい感じだ。かなり栄養バランスが整ったようだ。

 でも、あとちょっとが足りないか……。

 ゴマを混ぜたらどうだろう。


 残りのきなこ餅にすりゴマをぱらぱらっと。

 さてどうかな?


「みんな、これならどうかな? 食べてみて?」

「いいかんじ! いいかんじ!」

「たりないかんじ、ほとんどしない!」

「おいしいよ! もんだいないよ!」


 お、いい感じだ。それじゃ、妖精さん達の補助食は……すりゴマを混ぜたきなこ餅にしよう。

 ……なんか、普通の和菓子になったね。

 お店に置いてありそうな感じだ。


「それじゃ妖精さん達、これからこの食べ物を渡すので、おだんごいっぱい作ってね」

「つくるー! おだんごつくるー!」

「ありがと! ありがと!」

「かふんのおだんごも、いいよね?」

「採り尽くさないくらいなら、花粉おだんごももちろん食べて良いよ」

「わーい!」


 よし、これで妖精さんの食糧問題はひとまず解決だ。

 妖精きなこ餅(すりゴマ入り)、これで乗り切るぞ。


「このちゃいろのあまいのもたべたいな! たべたいな!」


 おや? 羽根を痛めた妖精ちゃんは、チョコレートもおねだりだね。

 ずいぶん気に入ったのか、手と口の周りがチョコでべったべただ。

 拭いてあげないと。


「ちょっと拭いてあげるね。じっとしてて」

「きゃい~、きゃい~」


 手と口を拭いてあげると、妖精ちゃんきゃいきゃい喜んでいるね。

 この妖精ちゃんは、なにかしら甘やかしてあげるとすごく喜ぶようだ。

 食いしん坊で甘えん坊さんか。かわいいじゃないか。


 そうしてきゃいきゃい喜ぶ妖精ちゃんを綺麗にしてあげて、甘やかし完了だ。

 ついでに甘やかしで、チョコもあげるとしよう。


「この茶色の甘いのはチョコっていってね。食べたいみたいだからこれも持ってくるね」

「きゃい~!」


 チョコも持ってくると伝えると、妖精ちゃんまたもや大喜びで羽根から粒子を飛ばしまくる。

 ほんとに花火みたい。かなりの喜びようだね。


「タイシ、うまくいったです?」


 きゃいきゃいと花火状態の妖精さんを眺めていると、ハナちゃんから確認が来た。

 神様のおかげで大体上手くいったかなと思う。


「上手くいったぽいね。神様の助言のおかげかな」

「かみさまありがとです~」

「自分からも、神様ありがとうございました。とても助かりました」

(それほどでも~)


 そしてほよほよ光りながら、てれてれの神輿が。

 神様、けっこう照れ屋さんみたいだね。


 しかし神様のお裾分けと助言はありがたかった。

 妖精さんはお肉が苦手のようだから、植物性タンパク沢山の大豆はうってつけの代替食品だ。

 お供え物をおすそわけしてまで協力してくれたのだから、ほんとありがたい。

 これは、なにかお礼をしておこう。


 神様はおいしい食べ物の他にも、ぬいぐるみが好きっぽいから……。

 大量のぬいぐるみでもお供えしてみようか?


「助言のお礼に、大量のぬいぐるみをお供えしてみようかな」

(きゃー! それいいー!)

「あや! みこしぐるぐるとびまわってるです!?」


 どうやら良いみたいだ。それじゃ、次に来るときは大量のぬいぐるみを持ってこよう。


「なんだか良い感じみたいなので、たくさんぬいぐるみを持ってきてみるか」

(きゃー! きゃー!)

「それでいいみたいです~」


 ピカピカ光って飛び回る神輿と、大歓喜の謎の声だ。

 妖精さんに負けないほどキラッキラだね。


(ぬいぐるみ、たのしみ~!)


 そうして、神輿はしばらくピッカピカ光りながら集会場内を飛び回った。

 どうぞ、楽しみにしていて下さい。


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