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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十章  えるふのなつやすみ
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第二十三話 女子エルフ、お肌ぷるぷるへの道


 花火大会が終わって、一行は旅館に帰還しました。

 夜空に咲く不思議な炎をみて、エルフたちはもうおおはしゃぎ!


「花火、凄かったです~!」

「旅行、来てよかった~」

「素敵な思い出、できちゃった~」


 キャッキャとはしゃぐエルフたち、トコトコうきうき歩きます。

 そんなエルフたちに、大志が声をかけました。


「みなさん、これからはじゆうこうどうになります」

「あえ? 自由行動です?」

「うん、おんせんにはいったり、へやでくつろいだり。すきにすごしてね」

「あい~! ハナ、温泉はいるです~」


 大志が自由行動を告げると、ハナちゃんは温泉に行くと言いました。

 さっそくお部屋に戻って、浴衣に着替えます。

 神輿もぴかぴか光っているので、一緒に温泉に行くのかな?


「温泉~あったまるです~」

「それでは、私もハナと温泉に行きますね」

「お母さんも温泉です~」


 ご機嫌で浴衣に着替えて、準備完了です。

 タオルを持って、いざ温泉へ。


「じぶんはフクロイヌとあそんでいるから、ゆっくりはいってきてね」

「ギニャ~」

「あい~!」


 フクロイヌをなでなでする大志に見送られて、二人は温泉に向かいました。

 神輿もほよほよと後をついて行っているので、一緒に入るのですね。


「あら二人とも、温泉に入るのね~」

「私たちも温泉に来たの」

「みんなで温泉、はいるです~」


 脱衣場に行くと、腕グキさんとステキさんもおりました。

 温泉仲間も増えて、ハナちゃんご機嫌です。

 キャッキャとはしゃぎながら、手ぬぐいをもってぽてぽてと洗い場に向かいました。


「お母さん、背中流すです~」

「じゃあ、私も後でハナの背中を流すわね」

「あい~」


 ハナちゃんとお母さん、仲良く背中を流しっこです。

 お母さんとのんびりほのぼの、体を洗います。


 一足先に神輿が体を洗い終え……サウナに直行していきました。

 神様、割とシブい楽しみ方ですね。


「お母さん、あれ何です?」

「アレはね、熱いお部屋みたいね」

「ただ熱いお部屋に入って、なにするです?」


 サウナに直行した神輿を見たハナちゃん、こてっと首を傾げます。

 温泉も無いのに、なぜ? という感じですね。


「ユキさんから聞いた話では……熱いお部屋で汗をいっぱい出すと、お肌がぷるっぷるになるらしいの!」

「あや! そういうお部屋です?」

「そうらしいの。ねえ……一緒に入ってみる?」

「行ってみるです~」


 カナさん、雪恵からサウナについて聞いていたようです。

 というか、お肌がぷるっぷるという辺りでうずうずしていますね。

 サウナとは、初心者が一人で入るのは若干ハードルが高い施設です。

 ハナちゃんを口実に、自分で入りたいだけではないでしょうか?


「ほら、髪をこれで巻いて、上げなさいね」

「あい~」


 体を洗い終わって、タオルを巻いて髪をあげたら準備完了です。

 さあ、サウナに入りましょう!


「あや! 熱いです~!」

「うわ、こんなお部屋なのね……」


 そうしてハナちゃんとカナさんがサウナに入ると、その熱気にあわあわ。

 ちょっとたじろいでしまいました。


「あ、おふたりもきたんですね」


 果たしてサウナには、先客として雪恵がいました。

 神輿を膝の上にのせて、汗だっくだくです。

 神輿もなんだか、ぐんにゃりしていますね。


「ユキさん、これでお肌がぷるっぷるになるんですか?」

「ええ。ふきでものがでにくくなったり、けっこうおはだにこうかがありますよ」

「……頑張ります!」

「あや! お母さん気合いみなぎったです~」


 お肌ぷるっぷると改めて聞いたので、カナさん気合いが入ってしまいました。

 そして雪恵の隣に座ります。


「ハナも座るです~」


 お母さんの隣に、ハナちゃんもぽてっと座りました。

 そうしてしばらく、じりじりと蒸されます。


「そういえばユキさん、髪が短いのにタオルを巻いているのね」

「ええ。サウナはあついので、かみがいたまないようにですね」

「ユキ、気をつかってるですね~」

「こういう、こまかいところがだいじなの」

「なるほどです~」


 そうして女三人雑談しながら、サウナで過ごします。

 五分くらい経ったでしょうか、サウナになれていないハナちゃんとカナさん、そして神輿がギブアップします。


「あえ~。もうダメです~」

「私も、限界……」


 ふらふらと立ち上がるハナちゃんとカナさんです。

 神輿もふらふら上昇し、外に出るみたいですね。

 そんな蒸されエルフと蒸され神輿に、雪恵が声をかけます。


「からだをさましてから、またサウナにはいるをくりかえすといいですよ」

「わかりました」

「冷ますです~」

「そのよこにみずぶろがありますので、あせをながしてからはいるといいですね」


 雪恵が指さす先には、水風呂がありました。


「あの水のお風呂って、そういう物だったんですね」

「ええ。みずあびするときもちいいですよ」

「水浴びするです~」


 雪恵がお勧めするまま、ふらふらと水風呂に向かうハナちゃんと神輿ですね。

 汗を流して、さあ冷ましましょう!


「あややややや……ちべたいです~」


 水風呂に浸かってぷるぷるハナちゃん、神輿もぷかぷか浮かびます。

 ぷかぷか浮かぶ神輿はぴっかぴか光って、なにやら快適そう。


「……あえ? なんだかすっきりです~」


 ハナちゃんと神様、サウナと水風呂の良さをどうやら理解できたようです。

 すっきりさっぱりした様子で、ちょこっと休憩。


「あら? そこのお部屋に入ってたのかしら~」

「どんな感じだった?」


 ハナちゃんと神様がのんびり休憩していると、腕グキさんとステキさんがやってきました。

 この謎の熱いお部屋、実は興味津々だったようですね。


「ユキの話しだと、お肌ぷるっぷるになるみたいです?」

「行くわよ~」

「ぷるっぷるが待ってるわ!」


 そしてサウナに消えていく二人なのでした。

 しばらくして……。


 じりじり、じりじり。


「お肌……ぷるぷる……」

「美しくなるのよ……」

「美肌……美肌……」

「あ、あの。みなさん?」


 他にも何名か温泉にやってきた女子エルフたちですが、みんなサウナで蒸されていました。

 その必死――おっと美を追究する様子に、雪恵はタジタジです。

 ぷるっぷるお肌のためなら、熱いのもがまんしちゃう女子エルフなのでした。


 蒸された後は水風呂、汗を流して冷やします。


「あや~……これは良いですね~」


 ハナちゃん、この歳にしてシブいお風呂の入り方を会得してしまいました。

 中年くらいからハマり出すこの入り方、お子さんが会得するのはなかなか通ですね。

 神輿もハナちゃんと一緒になって、サウナに入り水風呂に入り、ぴかぴか光ります。


「冷ますべし」

「お肌、引き締めるわ~」

「ぷるっぷるお肌~!」


 ハナちゃんと違って、他の女子エルフたちは目的が別ですね。

 あこがれのぷるぷるお肌を求めて、ちょっと目が据わっております。

 彼女たちはそっとしておきましょうね。


「そろそろ、温泉入ってあったまるです~」


 存分にサウナと水風呂を堪能したハナちゃん、今度は温泉を堪能するようです。

 神輿もほよほよ飛んで、一緒にお風呂に入ります。


「良い温泉です~」


 そうしてハナちゃんと神輿は、のんびりお風呂にはいりました。

 ほんわかぐんにゃり、たれ耳ハナちゃんです。


 こんな感じで、ハナちゃんと女性陣は温泉を楽しんでいったのでした。



 ◇



「お肌、ぷるっぷるになったわ!」

「やったわ~!」

「ぷるっぷる~!」


 そして温泉を堪能した女性陣、ほかほかぷるぷるお肌でお部屋に帰ります。

 カナさんはなんだか踊っていますが、周りの人の視線が集まってますよ。


 それはさておき、今度はお部屋でのんびりしましょう。


「タイシ~、温泉入ってきたです~」

「お、ハナちゃんおはだぷるぷるで、きれいだね」

「うふ~」


 お肌ぷるぷるハナちゃん、大志に褒められご機嫌です。

 ちょっとだけ、お母さんの気持ちがわかったかな?


「ほらヤナ、お肌ぷるぷるよ!」

「う、うん。綺麗だよ」

「でしょでしょ!」


 ヤナさんも無事ミッション達成です。

 夫婦円満の秘訣ですね。


「それじゃハナちゃん、のんびりごろごろして、ねむくなったらねちゃおうね」

「すぴぴ」

「もうねてる!」


 そしてほよほよと漂ってきて、ふとんに潜り込む神輿。


「かみさまも、もうねてる!?」


 大志の隣のおふとんで、ハナちゃんもうおねむです。

 イルカのぬいぐるみを抱えて、にこにこすやすや、かわいい寝顔ですね。

 神輿も同じおふとんに潜り込んで、ぐっすりおねむなのでした。


「私たちももう少ししたら、寝ましょうか」

「そうですね。あしたはやおきして、ちょっとおよぎますか」

「良いですね。泳ぎましょう」


 ハナちゃんたちが寝てしまったので、ヤナさんと大志もそんな話をしています。

 今日は早く寝て、明日に備えましょう。


 さて、ハナちゃんたちのお部屋はのんびり平和ですね。

 他のお部屋はどうでしょうか?


 腕グキさんたち、独身女三人のお部屋を見てみましょう。


「……てごたえはあるんですけどね」

「今一歩、あとちょっとな気はしてるのよ~」

「でもそこから先が……何ともなのよね」


 女三人、なにやら顔を突き合わせて女子会です。

 その目は獲物を狙う――狩人のよう。

 何を狙っているかは、聞かないことにしましょうね。


「アレをつかうとき、かもしれないですね」

「前に言ってた、アレかしら~?」

「さりげなさが大事な、アレよね?」

「ええ――アレです」


 ……なにやら不穏な空気です。

 これ以上は危険なので、他の部屋に移りましょう。

 マイスターとマッチョさんのお部屋ですね。


「ガッハッハ! このお酒、うめえ~」

「こっちのお酒も、結構いけるじゃん?」


 お部屋を散らかして、ガハハと酒盛りですね。

 お土産で買ったお酒を、もう飲んでいます。

 でもお土産ですよね? それ。今飲んで良いのかな?


「このお酒すげえぜ、一杯飲んでみ?」

「効くー!」


 まあ、楽しそうだからそっとしておきましょう。

 あと、お部屋は片付けておいて下さいね。


 その他のお部屋は、家族でのんびりとしています。

 今までの写真を見たり、デジカメで動画を見たり。家族でキャッキャと楽しそう。

 ……独身組のお部屋だけ、なんだかダメな感じでしたね。

 とくに狩人――おっと独身女性三人組のお部屋が……。


 まあ……そんなこんなで楽しく夜は更けていったのでした。

 さて、もうおねむとなった大志たちのお部屋は、みんなもうおねむでしょうか?

 最後にちょっと覗いてみましょう。


「う~ん、う~ん……」

「ぐふふ~、ぐふふ~」

「ギニャ……ギニャ……」


 ハナちゃんは大志にガッシとしがみつき、神輿は大志の胸の上でもぞもぞぴかぴか。

 そしてフクロイヌは大志の顔の上でぐっすりお休みです。

 ……大志はうなされているけど、大丈夫かな?


 まあ、大丈夫と言うことにしておきましょう。

 大志、頑張ってね。



 ◇



 ――そして翌日になりました。


 とうとう旅行の最終日です。

 起きてすぐ旅館近くの海でしこたま泳ぎ、その後チェックアウトまで温泉に浸かり。

 朝から海と温泉旅館を堪能しました。


 そしてついにチェックアウトとなり――。


「それではみなさん、これからフェリーにのってかえります」

「旅行、終わっちゃうです~」

「楽しかったな~」

「あっという間だったわね~」


 とうとう帰る時間です。もうバスで港まで来てしまいました。

 そして旅行が終わると言うことで、ハナちゃんちょっと残念そう。

 ほかのエルフたちも、ハナちゃんと同様名残惜しそうに佐渡島を振り返ります。


「なごりおしいですが、かえりのフネもまたごうかですよ」

「あえ? 豪華な船です?」

「たぶんだけど、くるときにのったフネより、なかはひろいよ」

「まじで!」

「たのしみ~」

「どんなんだろ~」


 名残惜しそうだったみなさんですが、もう次に乗る船の事で頭がいっぱいになりました。

 行きの船はなかなか楽しかったので、帰りの船も楽しみなようですね。

 途端にキャッキャし始めました。


「ほら、もうフネがきましたよ」

「あや! あれがそうです!?」

「そうそう、おっきなフネだから、びっくりしないようにね」

「だいじょぶです~」

「いっかいみたので、さすがにだいじょうぶでしょう」


 大志はびっくりしないでねと念を押しますが、エルフたちだってすでに一回大型船を間近で見て、経験済みです。

 さすがに、もう気絶はしないでしょう。

 さすがにね。


「さすがに、また気絶とかはないよな~」

「一回見てるものね~」

「まさかね」

「また気絶するとか、それはちょっと」


 余裕しゃくしゃくのみなさんですね。

 さて、そうこうしているうちに、両津港に帰りのフェリーが近づいてきました。

 どんどん近づいてきます。

 ちなみに帰りのフェリーは、行きのフェリーより大きい奴です。


「お、ほんとにちょっとおおきいですね」

「……――」

「タイシさん、あんのじょうですよ」

「やっぱりか……」


 タイシたちの後ろには、気絶したエルフたちがおりました。

 お約束を忘れない方々ですね。



 ◇



「あやー! この船、中がなんだか豪華です~」

「ほんとに広いですね……」

「かっこいい……あがが」


 気絶から立ち直って船に乗ったエルフたち、行きの船と違う内装にキャッキャと大はしゃぎ。

 エントランスホールはきらびやかで、みんなのお目々もキラッキラです。

 メカ好きの人は、魂的なアレが出たそばから大志が詰め込んでいます。

 大志、だんだん手慣れてきてますね。


 それはさておき、乗船してテンションが上がったエルフたち、さっそく船内を探検です。

 デッキに出て外を眺めたり、食堂を発見してじゅるりとしたり。

 あっちこっちを探検して、出航前から大はしゃぎです。


 そしてこれから佐渡を離れて、本土に帰ります。

 いよいよ、楽しい旅も終わりに近づいてきました。


「もう、旅も終わっちゃうですか~」


 デッキで名残惜しそうに外を見るハナちゃん、ぽつりとつぶやきます。

 写真で見た海、あこがれの海。

 それからみんなで頑張って――夢を叶えました。


 バスに乗って、船に乗って――そして海にたどり着いて。 

 海水浴をして、おいしいものを食べて、お料理もして。


「えへへ」


 カヌーに乗って謎の世界でフクロイヌを助けて、戻ってきて。

 海に潜ってお魚を見て、フクロイヌと海辺で遊んで。


「うふ~」


 ひょんな事から陶芸体験になって、みんなでロクロを回して、良いこと思いついて。

 そして旅館で大はしゃぎして、お刺身をたべて。

 花火を見て――感動して。


「うきゃ~」


 そして大志は、「お洋服似合ってて可愛いね」と毎回褒めてくれて。


「ぐふ~」


 今日までの思い出が、浮かんでは消え浮かんでは消え。

 大志やみんなとの楽しい思い出、よみがえります。


「……あえ?」


 ……でも、そんな夢の時間は――今日で終わり。

 村に帰って、明日からはいつもの日常に戻ります。


「あや~……」


 旅の終わり、祭りの終わり。

 ハナちゃんは何とも言えない寂寥感、寂しさを感じました。

 お耳もへにゃっと垂れ下がり、見るからに寂しそうです。


「ハナちゃんどうしたの?」

「タイシ~……」


 そんな様子を見た大志は、ハナちゃんに話しかけました。

 ちょっと心配そうですね。


「タイシ~。旅、もう終わっちゃうです?」

「そうだね。もうおわっちゃうね」

「あや~……」

「たびがおわるの、ざんねんかな?」

「あい~……」


 あれほど楽しかった時間です。終わるのは寂しい物ですね。

 でも、ハナちゃんには帰るおうちがあります。

 おうちに帰って、いつもの生活に戻らないといけませんね。


「えっとね、こうかんがえたらいいよ、たびってのはね――」


 大志は、ハナちゃんに語りかけました。

 さあ大志、ハナちゃんを元気にしてあげましょう。


 だって――元気なハナちゃんが、一番ですからね。


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