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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十章  えるふのなつやすみ
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第二十話 海中散歩


 楽しいお昼の後は、小休止の後また海遊びだ。

 今日はのんびり泳ぐほかに、シュノーケリングもする予定となっている。

 ということで、海竜ちゃんの案内でよさげなポイントまでカヌーで移動する。


「ぎゃうぎゃう」

「ここがお勧めかな?」

「ぎゃう」


 海竜ちゃんがとあるポイントで旋回を始める。

 どうやらここがお勧めポイントらしい。


「それじゃ早速始めよう」

「思いっきり楽しみますよ!」


 俺のカヌーに同乗のユキちゃん発案のイベントだけあって、気合い十分だね。


「いよいよですね」

「たのしみです~」

「どんなものがあるのかしら」

「ギニャ」

(おさかな、みたい~)


 第一陣の参加者は神様と俺、ハナちゃんとヤナさんカナさん、そしてユキちゃんにフクロイヌだ。

 フクロイヌはどうしても付いて来たがったので、カヌーにのせてご招待だ。

 シュノーケルはつけられないけど、一緒にぷかぷか浮いて楽しむくらいならできる。

 さて、では始めましょう。



 ◇



「おさかな、たくさんです~」

「これはたのしいですね!」

「かおをつけたまま、いきができるのってすごいです」

(な、ながされる~!)


 ハナちゃん一家は、シュノーケリングに大感動している。

 海竜ちゃんおすすめポイントは水深がそこそこあり、沢山の魚が泳いでいる。

 なんというか、すごい絶景だ。

 でも、神輿は油断すると流されてしまうね。

 そのたびに海竜ちゃんが抱えて、元の位置に戻してくれているけど。


「大志さん、この下を潜ってみません? 魚が沢山いる岩場がありますよ」


 そしてユキちゃんから、素潜りのお誘いが来た。

 俺は息継ぎなしで長時間潜れるけど、ユキちゃんは大丈夫かな?


「自分は素潜り得意だけど、ユキちゃんはどう?」

「私も結構潜れますよ。問題ありません」

「じゃあ行こうか」

「はい!」


 問題ないそうなので、一緒に素潜りをすることに。

 フィンがあるので、すいすい潜れるね。


『そこ、そこに沢山お魚がいます』

『ほんとだ、行ってみよう』


 このシュノーケルは顔を覆うマスク型なので、水中でも発声ができる。

 なのでマスクを伝って水に音波が伝わり、耳まで届く。

 音はこもって聞き取りづらいけど、会話が可能なのが良いね。

 あんまり会話すると、息継ぎが必要になるけど。


 そうしてユキちゃんとうふふあははしながら潜水すると、お魚の大群に遭遇だ。

 なんという素晴らしさ。これは、潜らなければ見られない。


『うわあ~。これは凄いですね!』

『良いもの見れたよ。ユキちゃんのシュノーケリング案、大成功だね』

『ふ、ふふふ……順調』

『順調だね』

『え、ええまあ……』


 ユキちゃんが順調だというので、確かにイベントは順調だと思ってそう返した。

 そしたらなんだか微妙な反応……。

 なんか違うのかな?


『そ、それより、あっちにも行ってみましょう』

『わかった』


 一回息継ぎをして、また潜水。今度は海底目指して潜っていく。

 隣を泳ぐユキちゃんは、すいすいとなめらかに泳いでいる。

 人魚のようにしなやかに泳いでいて、なんと言うか幻想的だ。


『あ、変な生き物がいます! 殻に入ったタコさんみたいな……』


 そうして潜っている途中、ユキちゃんが変な生きものを発見した。

 その指さす先にいるのは――タコブネ!


『うわ! これタコブネだよ! こんな時期には普通みられない劇レア生物だ!』


 ゴボボっと俺の吐いた息が泡となって登っていき、そして尽きる俺の肺の空気。

 驚いたので、一気に空気を使い切ってしまった。


『ホントですか!』

『おっと息が……ちょっと息継ぎ――』

『あ、私も』


 最後まで話せなかったけど、ユキちゃんには伝わった。

 慌てて浮上して思いっきり息を吸い込み、再度潜水だ。

 タコブネがいた位置まで急いで戻る。


 潜って間もなく、ユキちゃんが指をさした。

 会話をすると空気を使ってしまうので、無言でジェスチャー方式に切り替えたね。


 そしてユキちゃんが指さす先にはまだ、タコブネがふよふよとのんびり泳いでいた。


『かわいい~』

『これはツイてる』

『ふふふ』


 そして、しばらく会話も少なげにタコブネと泳ぐ。

 たまにユキちゃんと目が合い、お互いにっこりする。

 二人とも息が続くので、会話を抑えれば結構長いこと潜っていられるね。


 そのうち魚の群れが通り過ぎていったり、俺たちの回りを回遊したり。

 タコブネと泳ぐうちに、回りは賑やかで美しい光景となった。


『わあ……海、来て良かったですね』

『そうだね。楽しいね』

『ええ』


 空気を使いすぎないよう気をつけながら、そんな会話をする。

 珍しい生きものと楽しい海中散歩、素晴らしい。


 やがてタコブネはすいすいと泳いで、沖の方に向かっていった。

 あんまり早く泳げないようで、ふよふよのんびりとした感じだ。


 タコブネとはここでお別れだね。楽しい一時をありがとうだ。


 しかしすごい貴重な体験、できちゃったな。

 かなり満喫できたので、そろそろ水面に上がって一休みするか。


 上に向かって指をさすと、ユキちゃんも頷く。

 それじゃ、上に戻ろう。


『……――?』


 ユキちゃんが手を差し出してきたので、その手を掴んで浮上する。

 ちらりをユキちゃんの方を見ると、その目はにっこりしていた。

 会話は無かったけど、正解だったみたいだね。



 ◇



「タイシ~、どうだったです?」


 上に上がって休憩していると、家族で遊んでいたハナちゃんたちが泳いできた。

 素潜りはとても良かったから、ハナちゃんも誘おうかな。


「凄く良かったよ。ハナちゃんも来る?」

「いくです~!」


 素潜りに誘うと、ハナちゃんやる気になったね。

 俺の所まで泳いできて、背中にしがみついてキャッキャしている。


「あ、わたしたちもごいっしょしてよろしいでしょうか?」

「もぐってみたいです」

「ぎゃう」

(もぐる~)


 ヤナさんカナさんと、神様も参加したいみたいだ。

 それじゃちょっくら潜りましょう。


「ギニャギニャ」


 そしてハナちゃんたちに遅れて、フクロイヌがのんびり泳いでくる。

 フクロイヌもなんだか、海を堪能しているみたいだ。

 さっきの変な世界で散々泳いだけど、あれはあれ、これはこれって感じかな?


「あ、それじゃ私はフクロイヌさんとカヌーでのんびりしてますよ」

「ギニャ!」

「それじゃ、お願いするね」

「はい」


 ユキちゃんは素潜りをかなり堪能したので、一息入れるみたいだ。

 フクロイヌもユキちゃんにかまってもらえると聞いて、大喜びでカヌーの方に泳いでいった。

 ではさっそく、ハナちゃん一家を案内しよう。


「では潜ってみますか。無理だったら、上を指さして下さい。浮上の合図です」

「わかったです~」

「うえをゆびさす、ですね」


 その他簡単なジェスチャーを教えて、素潜りを開始する。


『ぎゃうぎゃう』


 ハナちゃんと神輿は俺に捕まり、ヤナさんカナさんは海竜ちゃんに掴まって潜っていく。

 みんなは俺やユキちゃんほど息が続かないだろうから、気をつけてあげないとね。


『――、――』


 お、ハナちゃんが何かを指さしている。

 なんだろ……あ、魚の群れがいる。近づいてみよう。


 他のみんなにも指をさして魚を教えて、一緒に近づく。


『――!』

『!!』

『――』


 そうして魚の群れに近づき、下に回る。

 すると、頭上に見事な幾何学模様が展開された。

 小魚たちが一瞬で向きを変え、そのたびに光を反射して美しく輝く。

 それはまるで、大自然が描く――壮大なモザイク絵画だ。


 ――これは、美しい。素晴らしい自然だ。

 ハナちゃん一家もその様子に見とれていて、お目々まん丸なのが見て取れる。


(おさかな~! きれい~!)


 そして神輿はまたもやミラーボール状に光って、その光に釣られて魚が寄ってくる。


(およ? かこまれた?)


 あ、神輿が魚の大群に囲まれたぞ。


(きゃははは! くすぐったい~!)


 そして魚につつかれまくる神輿が……。

 つつかれてくすぐったいのか、くるくる回っているね。

 ……救助しよう。


(……ありがと~)


 魚の群れに手を突っ込んで神輿を引き寄せると、くすぐられすぎてぐったりしていた。

 なんというか、面白い神様だ……。


『――』


 お、ハナちゃんが上を指さした。息継ぎの合図だね。

 ゆっくり浮上してあげよう。

 他のみんなも、一緒に行こうか。


『上に戻りますよ、一緒に来て下さい

『――』

『……――』


 ヤナさんカナさんも良いみたいで、こくこく頷いているね。

 じゃあ浮上しましょう!


 ――そして十数秒後、無事みんなで浮上だ。


「――すっごかったです~! おさかな、たくさんです~!」

「ゆめみたいなこうけいでした……」

「いまのふうけい、えにかきたいです……」

(おさかなに、つつかれた~)


 ハナちゃんは今の光景に感動したのか、大はしゃぎだ。

 マスクを外してキャッキャしている。

 そしてヤナさんカナさんは、うっとりとしているね。

 カナさんは絵に残したいようだから、村に帰ったらアクションカムの映像を切り出してプリントアウトしてあげよう。


「タイシ~! もういっかい! もういっかいもぐりたいです~!」

「いいよ。それじゃもう一回行こうか」

「あい~!」


 そうして、ハナちゃん一家やユキちゃんと何度もシュノーケリングや素潜りを楽しんだ。

 美しい海の風景を堪能できて、最高の一時だった。



 ◇



「たのしかったです~」

「他のみんなも、きっと喜びますね」

「海竜ちゃん、他のみんなをお願いね」

「ぎゃう」


 素晴らしい光景が見られて、みんなほくほくで浜辺へ戻る。

 第二陣のみなさんも、きっと楽しめることだろう。

 さて、俺たちは浜辺へ戻って、のんびり浅瀬で過ごそうかな。


「これから戻ったら、浅瀬でのんびり過ごそうと思うけどどうかな?」

「あい~! のんびりするです~」

「フクロイヌと波打ち際を走ったりしようね」

「ギニャ! ギニャニャ~」


 ハナちゃんは、のんびりするので良いみたいだね。

 フクロイヌは遊んで貰えるとあって、大はしゃぎで顔をペロペロ舐めてきた。

 毛が長いから、濡れたモップのようになってべっしゃべしゃだけど……。

 まあ、あとで洗ってあげよう。


 そうしてみんなでカヌーに乗って、のんびりと浜辺へ戻る。


「お、かえってきた」

「どうだった? たのしかった?」

「すっごくたのしかったです~! おすすめです~!」

「そうなんだ! たのしみだな~」


 浜辺へ戻ると、みなさん待ちわびていたようだ。

 さっそくシュノーケルマスクを渡して、海中の風景を堪能してもらおう。


「ヤバいほど楽しかったですよ。みなさんどうぞ見てきて下さい」

「うわあ、きたいばくはつ~」

「いくべし」

「おれのじまんのフネ、のせちゃうよ」


 第二陣の方々の期待を、これ以上ないくらい盛り上げておく。

 みなさん、お楽しみ下さい。


「いってきまーす!」

「これをつけておけば、うごくしゃしんがとれるんだっけ」

「あかくひかったらみたいよ」


 そうして第二陣の方々は、キャッキャしながらシュノーケリングポイントに向かっていった。

 アクションカムを貸したので、あとで映像を見せてもらおう。


「タイシタイシ、フクロイヌとのんびりあそぶです~」

「ギニャ~」

「私も仲間に入れて下さい」


 みんなを見送ってほどなく、ハナちゃんとフクロイヌから遊びのお誘いだ。

 さっき言ったとおり、のんびりと浅瀬で過ごしたり、浜辺をフクロイヌと走ったりだね。

 ユキちゃんも参加希望なので、三人とフクロイヌとで過ごそう。


「ここにも、おさかないるです~」

「浅瀬には小魚がたくさんだね」

「かわいいです~」

「ギニャン」


 浅瀬には小さな魚がぴこぴこ泳いでいて、ただそれを見ているだけでも楽しい。

 沢山の生命が、そこに生きていることを実感できる。


「のんびりぷかぷか浮いてみようか」

「あい~」

「ギニャ」


 そんな小魚たちがいる所で、みんなでぷかぷか浮いてみる。

 ゆったりと流れる一時は、とても贅沢だね。


「ギニャギニャ」


 そしてフクロイヌがこっちに泳いできて、じゃれつく。

 村でも甘えん坊な生きものだったけど、さっき救出してからもっと甘えん坊になったかも。

 孤独に異世界でおぼれていたので、その反動かもしれないな。

 ここは、思いっきり甘やかそうか。


「ほら、だっこしてあげるよ」

「ギニャ~」


 そうしてフクロイヌが胸の上にのってきて、俺はラッコ状態でフクロイヌを抱える。

 ぺろぺろ顔を舐めて甘えてくるフクロイヌだけど、しょっぱくないかな?

 まあ、甘えたいみたいだから、好きにさせよう。


「しかし、フクロイヌさんはなぜあんな所にいたんでしょうね」

「ふしぎです~」


 俺に甘えるフクロイヌを見て、ユキちゃんとハナちゃんは首を傾げる。

 まあ、俺はそれを確かめる方法に心当たりはある。

 話しておくか。


「なぜフクロイヌがあの場所にいたかは、くすぐればすぐ分かると思うよ」

「あえ? くすぐるです?」

「それって……」


 そう、フクロイヌが無意味にあの場所にいたとは思えない。

 きっとなにか、意味があったはず。

 そして、フクロイヌと言えば……。


「フクロイヌと言えば、お腹のフクロになんかいるよね」

「いるですね~」

「え、ええまあ……」


 ここまで言えばもう、二人とも分かったよね。

 きっとなんか、フクロにいるぞこれ。


「ギニャ?」


 そうしてくすぐるれば分かるという話をしていると、フクロイヌがお腹をこちらに向けて期待の眼差しだ。

 くすぐって欲しいのが良くわかる。


「タイシ、くすぐっちゃうです?」

「確かめますか?」


 二人は今くすぐって確認しようとしているけど……やめとこう。

 なぜなら――。


「――今くすぐると、なんかが沢山出てくるよ。ごまかし切れないね」

「あや~……たしかに」

「……やめましょう」

「ギニャ?」


 そう、いまくすぐってなにかまろび出てきたら……さすがにごまかせない。

 謎動物が沢山出てきても、ごまかす術が今はないわけだ。

 その状態でまろび出しちゃったら……とんでもない大騒ぎになる。

 ポリスメンが来るのは確実だ。

 それはちょっとね。


「ギニャ~……」


 そしてくすぐって貰えないとなんとなく気づいたフクロイヌ、残念そうだ。


「今はちょっと無理だけど、村に帰ったら思いっきりくすぐっちゃうから」

「ギニャ!」

「あや! フクロイヌしっぽばくはつです~」

「ものすごい、期待の眼差しですね……」


 村に帰ったら思いっきりくすぐるよと言うと、フクロイヌのしっぽがボワっと膨らんだ。

 そしてものすごい期待の眼差し。

 ほんと、くすぐって欲しいんだね。村に帰ったら、もうよってたかってこちょこちょしよう。


「もうちょっと待っててね」

「ギニャ」


 フクロイヌも納得してくれたようだし、ひとまずこれで良い。

 彼がなにを連れてきたかは、村に帰ってからのお楽しみだ。


「どんなどうぶつ、でてくるですかね~」

「楽しみですね」

「ギニャ~ン」


 村に帰ってからの、一つの楽しみが出来たね。

 さて、一体何が起きるかな?


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