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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第十章  えるふのなつやすみ
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第十三話 神輿の行き先


「もうすぐイルカショーが始まるから、みんなさそって見に行こうか」

「いいですね! みんなを呼んできます」

「じゃあ自分ははこっちの方で声掛けするよ。手分けしよう」


 イルカショーが始まるので、ユキちゃんと手分けしてみんなを集める。

 存分にイルカたちの芸を堪能してもらおう。


 そしてほどなくして全員集合し、いざイルカショーへ。


「タイシ、もっとまえにいかないです?」

「水がかかる催しがあるから、この辺がいいよ」

「みずがかかるですか~」

「ここなら、その可愛い洋服も濡れたりしないんだ」

「うきゃ~」


 服を褒められてハナちゃんてれてれだ。

 とっておきのよそ行きだから、むやみに汚すのはちょっとね。

 水がかかることを了承して最前列に陣取る人たちもいるけど、俺たちはここで良い。

 ゆっくり見物しよう。


「このもよおしって、みずがかかるんですか?」

「そうです。あの辺りは、ずぶ濡れになります」


 ヤナさんも聞いてきたけど、イルカショーはだいたい最前列に水をぶっかけるからね。

 あれはあれで楽しいけど、濡れても大丈夫な装いじゃないと困ることになる。


「きをつかっていただけて、ありがとうございます」

「ハナちゃんのお洋服、すごく良く出来てますから」

「それはうれしいですね」


 ヤナさんの作った服を褒めたら、凄く嬉しそうな顔をした。

 服作りのことは良くわからないけど、今ハナちゃんが着ている服は見た目からもう出来が良いのが分かる。

 これ、洋裁店とか出せる水準じゃないかな。

 こういった手工業的作業なら、エルフたちは良い仕事してると思う。

 専門家がいない分、各自で技術を上達させるしかなかったからかもしれないな。

 なんにせよ、個人の技量については平均的に高い。

 何かの産業をおこすための、ひとつの材料にできるかもな。


「あ! 始まりますよ」

「きたです~!」


 そうこうしているうちに、イルカショーが始まった。

 元気なアナウンスとともに、イルカたちがジャンプしたり立ち泳ぎをしたり、ボールを投げ合ったり。

 高橋さんの世界で見た、海竜ウォッチングさながらの多芸っぷりだ。


「すごいです~!」

「イルカ、かわいい~」

(ああやっておよぐんだ~)


 ハナちゃんとユキちゃんは、俺の両脇で大はしゃぎだ。

 イルカが芸をするたび、キャーキャーと声が上がる。


 そして謎の声も楽しげで、神輿もなんだかキャッキャしている。

 神様も、イルカショーを堪能しているようだ。


「ぎゃうぎゃう!」

「泳ぐのはまたあとな。明日思いっきり泳げるから」

「ぎゃう~」


 水がかかりまくる最前列では、高橋さんと海竜ちゃんがショーを堪能している。

 海竜ちゃんは泳ぎたくてしょうがないようだけど、さすがにここで泳がせたら騒ぎになるね。

 今日は我慢していて欲しい。


「うみのいきもの、すごいな~」

「あんなにたかくとべるとか、すてき」

「おれのじまんのこどもたちも、おおよろこびなのだ」


 他のみなさんも、ワーキャーぱちぱちとショーを堪能している。

 かわいく芸をするイルカたちを見て、大喜びだね。


 初日は移動が主体の計画だったけど、良い思い出が出来た。

 寄り道するのも、いいもんだ。


「ママー! ここにも宇宙人がいるー!」

「イルカは実は宇宙人だったっておはなし? 夢があるわね~」

「パパも子供の頃、そんな本読んだな~。ム○だっけか」

「ちがくて!」


 しかしあっちの親子連れは、賑やかだね。

 家族三人、仲良くキャッキャしている。

 ……そのはずだ。



 ◇



 イルカショーを見終わった後は、フードコートで一息入れる。

 イルカスタンドを登り切ったところの三階部分が空いていたので、みんなでソフトクリームを食べることに。


「あまくておいしいです~」

「ちべたい~」

「あまいねっ! おいしいねっ!」


 かき氷とは違う食感、違う甘さの氷菓に子供たちがキャッキャしている。

 歩き回って疲れた状態で食べるソフトクリームは、とても美味しいね。


「こんなおかしもあるんだ~」

「うずをまいているのが、いいかんじ~」

「おいしいな~」


 ソフトクリームの盛り方も気に入ったようで、やっぱりうずまきが好きなんだ。

 エルフ文化的なものかな?


「それで、このあとはどうします?」

「時間になったら呼びますので、それまでみなさんのんびり見学していただいてかまいませんよ」

「ハナ、あっちをみにいきたいです~」

「一緒に行こうか」

「わーい!」


 閉館時間は五時なので、まだまだ見学はできるね。

 もうちょっと見学したあと、売店にでも寄ってお開きにするか。



 ◇



 水族館をたっぷり堪能して、時間になった。

 みんなをあつめてミュージアムショップに向かう。


「たのしかったです~」

「すいぞくかん、すごかったですね」

「たくさんしゃしんをとっちゃいました」


 ハナちゃんはおとうさんおかあさんと手をつないで、キャッキャと大はしゃぎだ。


「これからお土産物を買えるお店に行きますので、お金に余裕があればお土産を買うのも良いかもしれません」

「おみやげですか」

「お菓子や工芸品の小物、それにぬいぐるみなどが売ってますね」

「あや! ぬいぐるみがあるです!?」


 お、ハナちゃんがぬいぐるみに反応したな。

 そういう物は、エルフたちも作ってたぽい。


「ぬいぐるみは沢山あるから、楽しみにしててね」

「あい~! たのしみです~」


 そうしてみんなでお店に入る。

 中は水族館グッズであふれていて、定番のお土産が沢山あった。

 定番のイルカのぬいぐるみも、当然あるね。


「ハナちゃん、ここにぬいぐるみが沢山あるよ」

「あや! かわいいです~」

「これ、ほしいわ~」

「かわいい~」


 ぬいぐるみを見たとたん、女子エルフが群がる。

 ぽふぽふしたりもみもみしたりと、思い思いにぬいぐるみを堪能しているね。


「あや! これ! これがすごくかわいいです~」


 そしてハナちゃんは、おきにいりのぬいぐるみを見つけたようだ。

 水色イルカちゃんのぬいぐるみだね。ハナちゃんが胸に抱けるくらいの大きさだ。


「これ、ほしいです~」

「タイシさん、これってかえるのですか?」

「もちろん買えますよ。ここに値札があって……二千円ですね」

「それくらいなら……」


 エルフたちにとってはそこそこのお値段になってしまうけど、買えないってほどの値段ではないね。

 花の蜜と唐草模様果物ちゃんを売ったお金があるので、みんなまあまあ現金は持っている。


「よ~し! ハナ、これをかってあげるよ」

「ほんとです!? おとうさんありがとです~」

「ハナ、よかったわね」


 どうやらヤナさんは、ぬいぐるみを買ってあげることに決めたようだ。

 ハナちゃん大喜びで、ぬいぐるみを抱えてぴょんぴょんしている。

 その様子が可愛いのか、カナさんはニコニコしながらハナちゃんをなでている。


「うれしいです~」

「これ、どこでおかねをはらうのですか?」

「そこですよ。一緒に行きましょう」

「ありがとうございます」


 と言うことで、ぬいぐるみをお買い上げだ。

 ……会計の時、店員のお姉さんが「なぜ五百円玉だけで……」と首をかしげていたけど。

 村ではお札は取り扱っていないので……まあ見逃してくださいだ。


「これとか、可愛いですね。アシカさんですよ」


 ユキちゃんもお気に入りを見つけたようなので、これは俺がプレゼントしよう。


「お、確かに可愛いね。それは俺がユキちゃんにプレゼントするよ」

「え? よろしいのですか?」

「お世話になってるからね。これくらいは」

「ありがとうございます!」


 これからも色々世話になるから、こうしてお礼をしておかないと。

 貴重な女手は逃してはならない。


「わたしはこれがいいわ~」

「これもかわいいわね」

「これもいいんじゃない?」


 そしてほかの方々も、思い思いにお土産を選んでいる。一番人気はぬいぐるみだね。

 女子エルフさんたちが、ぬいぐるみを抱えてキャッキャしている。


「このぬいぐるみ、おれがかうよ」

「いいの~? うれしいわ~」

「これは、おれがおかねをだすじゃん?」

「ありがとう! だいじにするわ!」

「いつもせわになってるからな」

「やさいいためいがいも、つくってくれたらいいんだけどな~」


 マッチョさんとマイスターは、それぞれ腕グキさんとステキさんにぬいぐるみをプレゼントしているようだ。

 さりげなくお料理の献立について要望を混ぜているあたり、抜け目がない。


 そうして他の方々もお土産を買っていく中で、神輿がじっと滞空しているのを見つける。

 ほよほよと……ひとつのぬいぐるみの前で。桃色イルカちゃんだね。

 ……欲しいのかな?


 俺も神様には世話になっているから、プレゼントしちゃおうか。


「あーあーせっかくだから、神様のお供え物も買いますかー」

(いいの!)

「どれがいいかなー。沢山あるから迷うなー」

(これ! これこれ!)


 途端に神輿がせわしなく動き始める。

 そして、ほわほわと桃色イルカちゃんのぬいぐるみが光った。

 やっぱりこれか。


「これがいいかなー。それともこっちかなー」

(きゃー! こっちー!)


 あえて迷うふりをすると、神輿がくるくるときりもみ飛行を始める。

 ……そんなにこのぬいぐるみが欲しいの?


「タイシタイシ、なにしてるです?」


 神輿がやきもきする様子を見ていたら、ハナちゃんがやってきた。

 袋にはいっている水色イルカちゃんのぬいぐるみを、大事に抱えているね。

 今、神様のお供え物を選んでると説明しとこう。

 そうすれば、ハナちゃんが神様とやりとりしてくれる。


「神様のお供え物を買おうと思ってね。どれが良いか選んでるんだ」

(これ~)

「これっぽいです?」

(そうそう!)

「じゃあこれにしようか。桃色イルカちゃんだね」

(やたー!)


 今度はくるくると横回転を始める神輿だ。目が回らないのかな?

 ……まあ、さんざんじらしたけど桃色イルカちゃんを購入だ。


 会計を済ませて、神様にお供えする。


「では神様、お供え物になります」

(ありがと~!)


 そしてぬいぐるみがあっという間に消える。


(ふわふわ~)

「まぶしいです~」


 またもやミラーボール状に光る神輿だけど、光が結構強いね。

 喜んでいただけで、何よりです。

 そしてとても嬉しいのか、俺とハナちゃんの周りをひゅんひゅんと飛ぶ。

 うーん、まぶしいっ。


「宇宙人がぬいぐるみ買ってもらってる……」

「あら、ぬいぐるみが欲しいの?」

「え? う、うん……」

「じゃあパパが買ってあげよう! どれがいいか選んでね」

「いいの? わーい! パパだいすきー!」

「うへへ」


 どこかのお子さんもぬいぐるみを買って貰えるようで、大はしゃぎだね。

 パパ大好きって言われたお父さんもでれでれになっていて、とても微笑ましい。

 よかったよかった。



 ◇



 みんなでお買い物を済ませて、水族館を後にする。

 それぞれぬいぐるみやキーホルダー、それにお菓子を抱えてほくほく顔だ。

 思い出の詰まったお土産、良い買い物が出来たみたいだね。


「すげえたのしかったな~」

「うみのいきものたくさんとか、すてき」

「このしゃしん、おれのじまんについかするのだ」


 駐車場を歩いてバスにむかう最中でも、みんな写真を見せ合ったりしてキャッキャしている。

 いろんな生き物をみて、催し物も見て、さらにお土産も買えた。

 水族館をおもいっきり堪能して頂けたようで、何よりだね。


 それにしても、今日は単なる移動日程なのにこれほど楽しめるとは。

 現時点でこれほど楽しいなら……佐渡に着いたら、どうなっちゃうんだろうか。

 明日が楽しみだ。


「タイシさん、きょうはこのあと、どうするのですか?」

「今日はこのあと泊地で夕食を食べた後、近くにある温泉でまったりですかね」


 そしてバスに乗り込む際にヤナさんから予定の確認が来たので、軽く説明をする。

 もう夕方だから、夕食を食べて温泉に入って寝るだけだ。

 夜更かししないで、明日に備える計画だね。

 ついでに夕食の献立も教えておこう。


「ちなみに夕食はカレーにする予定です」

「カレーです!? ハナ、カレーだいすきです~」

「たくさん作るからね。おなか一杯食べよう」

「あい~!」


 夕食の献立がカレーと聞いて、ハナちゃん嬉しいのかくるくる回りだした。

 フリルのついたスカートがふわふわして、妖精が飛んでいるみたいだ。

 でもカレーに喜ぶ妖精……。まあ、可愛いからいいよね。



 ◇



 みんなでカレーを作ってたらふく食べた後、近くの温泉施設にやってきた。

 今日一日の疲れをここで落として、ぐっすり眠ろう。


「みなさん、ここで温泉に入れますので、ゆっくりのんびりしましょう」

「タイシタイシ、おうちのなかに、おんせんあるです?」

「村の外はだいたいそうだよ。建物の中にあるね」

「あえ~。いろいろちがうですね~」


 村では露天しかないから、建物の中にある温泉を珍しがっているね。

 ロビーできょろきょろするハナちゃんだ。

 軽く施設の説明をしておこう。


「ここは大きな温泉というか浴槽がありますので、みんなで一度に入れます」

「あや! みんなではいれるです!?」

「男女別にはなっちゃうけど、みんなで入れるおっきな温泉があるよ。ほらこれがその写真」

「あえ~。すごそうです~」


 ロビーに張ってある浴場の写真を指さすと、ハナちゃん興味津々になった。

 写真を見つめて耳をぴこぴこさせている。


「みんなでおんせんはいれるんだって」

「おっきなおんせんとか、すてき」

「おれのじまんのわがこと、せなかをながしっこするのだ」


 他のみなさんも、大きな温泉と聞いてワクワクしているね。

 それじゃ、男女別になって脱衣所に向かおうか。

 女性陣の引率は、ユキちゃんにお願いだね。


「ユキちゃん、女性陣の引率をお願いしたいけどいいかな?」

「大丈夫です。お任せください」


 今日はなんだか機嫌のユキちゃんだけど、引率をニコニコしながら引き受けてくれた。

 それじゃお任せしましょう。


「女性のかたは、ユキちゃんの指示に従ってください」

「わかったわ~」

「すてきなおんせん、たのしみ」

「おかあさん、せなかながすです~」

「ハナのせなかもながしてあげる。ながしっこしようね」

「あい~!」


 というわけで、女性陣がユキちゃんの周りに集まった。

 あとはお任せだ。


「女性陣のみなさん、私のあとについてきてください」

「「「はーい」」」


 そうしてユキちゃんは女子エルフたちを引率して、女湯の方に歩いていく。


(おんせん、たのしみ~)


 そして女性陣の後を、ほよほよ~っと追いかける神輿が。

 そのまま女子エルフたちと一緒にのれんをくぐって……女湯に入っていった。


 ん? 女湯?


 …………。


 ――え! 女神様だったの!?



 ◇



(ビール、おいし~)


 とりあえず温泉上がりの神様に冷えたビールをお供えして、沼にはまってもらう。

 女神様でもこの沼にハマるのが確認できたので、風呂上りにビールシステムはかなり強力ということが判明した。


 しかし、どうやって温泉に入ったんだろう。

 神輿はなんだかぐんにゃりしてて、それにほかほかしているけど……。

 ユキちゃんに聞いてみるか。


「……ユキちゃん、神様どうやって温泉に入ってたの?」

「神輿のまま、ぷかぷかと湯船に浮いてましたね……」

「乗り物にのった状態で、そのまま温泉……?」


 それ、温泉入る意味あるのかな?


「かみさま、ちゃんとからだをあらってから、おんせんはいってたです~」

「リンスもしてましたね。みこしがつやつやしてます」


 ……神輿のままで? 確かに、なんだか神輿がツヤツヤしてるけど。

 神様、器用すぎませんかね。


「えらく器用な神様ですね」

(それほどでも~)

「あや! みこしぴっかぴかひかってるです~」


 器用と言われて喜ぶ謎の声、そして光る神輿。

 この神様、フリーダムすぎる……。


 とまあ色々あったけど、温泉にも入っておねむの時間だ。


「ハナちゃん、おやすみ」

「タイシおやすみです~」


 隣のテントにもそもそと入っていくハナちゃんにおやすみの挨拶をして、俺も寝ることにする。


(のみすぎた~)


 そして調子にのってビールを沢山お供えしたら、神様が酔ってしまったようだ。

 ……さっきよりぐんにゃり度が増しているね。

 本体は木製、装飾品は金属製の神輿なのに、なんで柔らかくなってるんだろ。


 素材は剛体なのに、あきらかに軟体になっているということは……。


 まさか、乗っているというより――憑依してたりとか?


 ……。


 ……ちょっと試してみよう。

 この辺がいいかな。


(およ?)


 神輿の脇腹あたりをくすぐって確認だ。こちょこちょこちょ。


(きゃはは!)


 くすぐった途端、ぷるぷるする神輿。

 そしてくすぐったそうに笑う謎の声。


 ――やっぱり。


 乗ってるというより、神輿が化身になっちゃってないかな……。

 どうしよう、これ。


 ……もういっちょくすぐっとくか。こちょこちょこちょ。


(きゃははは!)


 おっと、神輿があおむけにひっくり返った。くすぐりすぎたか。

 この辺にしとこう。



 ◇



 とりあえず神輿は俺と親父のテントに持って来て、枕元に置いた。

 男二人のテントに、酒に酔わせた女神様の化身をご招待だ。

 ……これだけ聞くと大問題だけど、ガワが神輿なので問題は無いだろう。

 言われなきゃ女神様だってわからない。


「神様はこの毛布をお使いください」

(ありがと~)


 そして神輿を毛布の上にぽふっと置いてあげたら、もぞもぞと潜っていった。

 そんなところも器用ですね……。


 ……まあ、細かい事は気にせず早い所寝よう。


「そろそろ寝よう。お休み」

「お休み。しっかり休んどけよ」

(おやすみ~)


 だれともなくお休みの挨拶をすると、親父も謎の声も返事を返して来た。

 それでは、明日にそなえて、ぐっすり休もう。


(もうふ、ふわふわ~)


 そしてふわふわ毛布の中で、しばらくもぞもぞする神輿であった。

 存分にふわふわ毛布をご堪能ください。



 ◇



 ――翌日、朝。

 今日はいよいよ、フェリーに乗って佐渡に渡る。

 体調も万全。今日から旅の本番が、始まる。


 テントから這い出して周囲を見渡すと、もう何人かが起きだしていた。

 元気な様子で歯磨きやテントの撤収を始めている。

 おはようの挨拶をしよう。


「みなさん、お早うございます」

「タイシ~。おはようです~」

「おはようございます。いよいよですね」

「おっきなフネ、たのしみです」


 ハナちゃん一家も起きていて、テントを折りたたんでいた。

 みなさん昨日はたっぷり食べてたっぷり休んだので、元気いっぱいだ。

 丁度いいので、今日の予定を確認しておこう。


「今日は船に乗って佐渡に渡ってから、海水浴場に行って思いっきり泳ぎます。いよいよですよ!」

「フネ、たのしみです~!」

「せんごひゃくにんものれるフネ、じっさいにみたらどんなかんじなんでしょうね」

「いまいちそうぞうができてないのですけど、なんだかすごそうです」


 今の所興味は船に集中しているようだ。

 ハナちゃんは楽しみでしょうがないのか、くるくる回っているね。


 そして今日もハナちゃんは洋服を着ているけど、昨日とは違って紺色のシックな服だった。

 ハナちゃんがくるくる回るたび、スカートがふわふわと舞ってかわいさ爆発だ。

 ほんとに妖精みたい。


「ハナちゃん新しいお洋服だね、とっても似合っていて可愛いよ」

「ぐふふふ~。ぐふふふふふ~」

「やっぱり、いっしゅんでしたね」

「おんなのこだもの」


 またもやハナちゃん一瞬でぐにゃったけど、そんな様子を見てヤナさんとカナさんはにっこにこだ。

 なごやかな朝のひと時である。


(きょうもはやおき~)


 そして俺のテントから神輿が這い出てきた。

 神様も無事起きたようで、ほよほよと飛行を始める。


「かみさま、おきてきたです~」

(おはよ~)

「おはようです~」


 そうして俺たちの周りをほよほよと飛び始める。

 朝から元気いっぱいですね。


「タイシさん、おはよう」

「よくねたな~」

「じゅんびしましょ」


 ほよほよと飛ぶ神輿とキャッキャしていると、他のみなさんも続々と揃ってくる。

 それじゃ、出発の準備を始めよう。


 準備が終われば、いよいよだ。

 新潟港に行って、フェリーに乗るという一大イベントが始まる。

 そして佐渡に着いたら、思いっきり海水浴だ。

 今日は一日、大騒ぎになること間違いなしだね!


「それではみなさん、準備が終わったらいよいよ佐渡ですよ!」

「ついに、このひがきたです!」

「いよいよなんですね!」

「すてきなたびにしましょう!」


 いよいよ佐渡に行くということで、みなさんのテンションも上がってきた。


「今日こそ旅の本番です! みんなで思いっきり楽しみましょう!」

「「「おー!」」」


 こうしてみんなで気合いを入れ、今日が始まった。

 それでは――旅の本番を始めましょう!


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