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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第九章  エルフ観光
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第六話 俺も私も


「それでは、また来ます」

「おげんきで。いつでもかんげいします」

「また来るです~」


 村に最後まで残っていた、元族長さんと数名のエルフ達がとうとう帰還です。

 彼らはまたもや、たくさんの塩とお酒を積んであっちの森に帰って行きました。

 これで観光客エルフは、全員村を後にしました。


「静かになっちゃったな~」

「賑やかすぎたとも言う」

「また来るけどな」


 賑やかだった村が落ち着いて、ちょっと寂しくなっちゃいましたね。

 でも、あっちの森ではまだまだ順番待ち状態です。

 そのうち、また大騒ぎになるでしょう。それまで一休みです。


「またおおぜいこられますので、それまでゆっくりしましょう」

「のんびりするです~」

「そだな」

「お洋服も作らなきゃいけないものね」


 しんみりしかけた空気を、大志がやわらげます。

 でも、大志もちょっとさみしそう。

 そんな大志を見たハナちゃん、んしょんしょと大志によじ登って肩車です。

 そうして大志の頭をぽふぽふしながら、ハナちゃんは言いました。


「タイシ~。ハナとお魚釣りするです~」

「お、つりか。いいねえ。おおものねらっちゃう?」

「あい~! 大物狙うです~!」


 寂しそうな大志を元気づけようと、ハナちゃん遊びのお誘いですね。

 大志もなんとなくハナちゃんの心遣いを察したのか、明るくお誘いに乗りました。


「それでは、私も参加します」

「お魚料理、新しいのに挑戦してみようかしら」

「あ、ムニエルというのがありますよ」

「私にも教えてほしいわ~」

「私も習いたいわ」


 キャッキャする二人を見て、ヤナさんとカナさんも仲間に加わりました。

 雪恵もお料理指導で参加表明です。

 今日のお昼は、川魚のムニエルになりそうですね。

 さらに、新しい料理に興味を持った腕グキさんとステキさんも加わりました。


「俺も仲間に入れてくれ」

「じゃあ俺も」


 そんな様子を見て、どんどん参加者が増えていきます。

 皆でのんびり釣り糸を垂らすのも良いですね。


「それじゃ、みんなでつりをしましょう」

「のんびりお魚釣るです~」


 参加者いっぱい、ハナちゃん嬉しくてニコニコです。

 観光客があっちの世界に帰ってしまっても、村には皆が居ます。

 村人だけでも結構賑やかで、寂しくはありません。


「……ハナちゃん、ありがとうね」

「あえ?」


 遊びのお誘いで元気づけようとしてくれたハナちゃんに、大志はお礼を言いました。

 が、ハナちゃん何のことだかよくわかりません。

 コテンと首を傾げちゃいました。


「ハナちゃんやみんながいてくれて、よかったってことさ。にぎやかでいいね」

「あい~! ハナたち賑やかです~」


 観光客が帰っても、皆が居れば村は賑やか。

 今日も一日、ワイワイと過ごしましょうね。



 ◇



 ――場面は変わって、あっちの世界の、とある平原――。


「ばふふ」

「ばう~」

「ばうばう」


 平原では、フクロオオカミの群れがのんびりゆったり過ごしていました。

 日向ぼっこをして、うとうとごろごろ、ゆるゆるですね。


 そんな群れに、トコトコと誰かが近づいてきました。

 褐色の肌、銀色の髪、そして一頭のフクロオオカミを携えています。


 ――平原のお父さんと、家族のフクロオオカミです。


「やあやあ君たち、こんにちは」

「ばう~」


 群れに近づいたお父さん、にこやかに挨拶をします。

 お父さんの隣を歩いていたフクロオオカミも、ばうばうと挨拶です。


「ばう、ばうばう」

「ば~う」

「ばうば~う」


 群れの皆も、のんびりと挨拶を返してくれました。

 なんともゆる~い雰囲気です。


「君たち、お腹は空いていないかな? 良い物があるんだ」

「ばう?」

「ばうばう?」


 良い物と聞いて、群れの皆はひくっと反応しました。「なになに?」とでも言いたげな、好奇心いっぱいの目でお父さんを見ています。

 群れの皆が興味を持ったのを確認したお父さん、フクロオオカミのフクロからキャベツをひょいっと取りだします。


「これはキャベツって言ってね。とっても美味しい野菜なんだ」

「ばう!」

「ばう~ばう~!」

「ばうう~」


 とっても美味しい野菜、群れの皆の視線はキャベツに釘付けです。

 彼らにとって見たこともない植物を珍しそうに見ています。

 あ、よだれを垂らす子も居ますね……。


「ここで出会ったのも何かの縁、皆にキャベツをおすそ分けするよ。はいどうぞ。こっちもどうぞ」

「ばうばう」


 フクロからひょいひょいキャベツを取り出し、群れの皆に配って行きます。

 ものすごい量ですね……。


「ばう~!」

「ばうばうばう!」


 キャベツをもらった群れの皆、大喜びで食べ始めました。

 地球で品種改良されたおいしい野菜に、群れの皆はもう夢中です。


「それじゃ君たち、また逢うことがあったら、仲よくしてね」

「ばう~!」

「ばうばう」

「ば~う」


 群れの皆におすそ分けをしたお父さん、挨拶をしてトコトコと戻って行きました。

 一期一会。平原の人らしい、さっぱりとした出会いと別れですね。


「ばう~」

「ばうばう」


 美味しい食べ物をもらった群れの皆は、余韻にひたってばうばうしています。

 またもやゆる~い空気が漂って……あれ?


「ばう……」


 群れの中でひときわ大きな体、そして立派な毛並みをした一頭が……なんだか物足りなさそうな顔をしています。

 体が大きいから、足りなかったようですね。


「ばう~……」


 あのおいしい植物、他にないかをキョロキョロと探します。

 でも、もう全部食べちゃった後ですから、当然見つかりません。


「ばう……」


 いくら探しても見つからないので、あきらめかけたその時――。


「ばう!」


 ――なにかを閃いたようです。

 そのまま、くんくんと地面のにおいをかぎ始めました。


「ばう~」


 何かのにおいを見つけたのか、嬉しそうに遠吠えをすると、トテテテとにおいをかぎながら歩き出しました。

 ……平原のお父さんの通った後をたどっているようです。

 また、キャベツをおねだりしに行くのかな?


「ばうばう」

「ばう」

「ば~う」


 群れの皆も、後をついて移動し始めました。大移動です。

 くんくんとにおいをたどるボスオオカミを先頭に、ぞろぞろと移動していきます。

 彼らは……一体どこに向かうのでしょうか?



 ◇



「挨拶は終わった?」

「ああ。喜んでいたよ」

「けっこう大きな群れだったかな~」


 群れにおすそ分けをして戻ってきたお父さん、お母さんと娘ちゃんと合流しました。

 フクロオオカミには世話になっている平原の人達は、群れを見つけたらこういったおすそ分けを良くしていたのでした。

 一人一人でちょっとずつ。だけど、皆の分を合わせたら――大量になります。

 こうして、広い平原や沢山の森と、細かいおつきあいをしているのでした。

 ちりも積もれば山となる。

 平原を旅する彼らにとっては、小さいけど大切なお付き合いなのですね。


「それじゃあ森まであと少しだ。気合いれて行こう!」

「「おー!」」

「ばう~!」


 平原の人達にとっての故郷の森まで、あと少し。

 お父さんは自転車にまたがって、気合を入れます。


「自転車があると、やっぱり早いな」

「いつもより、倍以上早いかな~」

「リアカーも驚くほど頑丈よね」

「ばう」


 村で手に入れたリアカーと自転車を、有効活用しているようですね。

 のんびりキコキコ、それなりの速さで平原を進んでいきます。

 フクロオオカミも、重量物をフクロに詰めるより、車輪のあるリアカーで引いたほうが楽ちんです。

 この分なら、普段よりずっと早く目的地に着けそう。


「帰ったら、皆にお土産くばるぞ~」

「喜んでくれるかな~」

「カメラは絶対喜ぶわよ。間違いないわ」

「ばう!」


 平原の人達、故郷の森に向けてラストスパートです。

 快調に平原を進んで行くのでした。


 そして数時間後――。


「足がガクガク……」

「気合入れ過ぎたかな~」

「ちょっと調子にのっちゃったわ……」

「ばう?」


 気合を入れ過ぎて疲れちゃったお三方、足をモミモミしながら休憩です。

 自転車は人力ですからね。適度な休憩、大事です。

 ゆっくりのんびり、帰りましょう。



 ◇



 そして翌日――。


「――今度こそ到着だ!」

「やっと着いたかな~」

「あのとき無駄に気合を入れなければ、もっと早くについてた気がするわ……」


 まあ何とか、故郷の森に帰ることができたようですね。良かった良かった。

 平原の人たちの故郷の森は、それなりに回復していて、それなりの大きさでした。

 そして、そこそこの大きさの自分たちの村にたどり着きます。


「皆~! ただいま~!」

「元気してたかな~?」

「お土産いっぱいあるわよ~!」


 自転車に乗ったまま村に突入するお三方、ぶんぶんと手を振り凱旋です。

 そんな三人をみた村人は――びっくり!


「おいおい……何だそりゃあ」

「ホネホネしてる~」

「新種の動物か!?」


 村人たちは三人を囲んで、自転車についてあーでもないこーでもない、やっぱあれかな? それかもね? などなど大騒ぎです。

 何人かは、適当なことを言っていますね。

 まああれですね。珍しい物を見てキャッキャしちゃう村人なのでした。


「おいこれ! 荷車か?」

「荷車で旅をするなんて、なんちゅう贅沢」

「なにこれ……木製じゃなくて、変な素材で出来てんな」

「ばう?」


 おまけにリアカーも発見してしまいました。

 自分たちの知っている荷車とは素材からして違うので、目をまん丸にして驚いています。


「皆どうしたのかね? えらい騒ぎだけど」


 ワイワイキャッキャと大騒ぎの広場に、一人のお婆ちゃんがやってきました。

 なんかの石の首飾りを付けた、ちょっと豪華な衣装のお婆ちゃんです。


「あ、族長。ただ今戻りました」

「おやおや、お帰り……ってなんじゃそりゃあ!」

「自転車かな~」


 立派な衣装を着たお婆ちゃんは……族長さんでした。


 なんでお婆ちゃんが族長をやっているかというと――。

 ――族長を出来そうな男衆は、皆旅に出ちゃうからです。


 ちなみに消防団も女ばかりですね。

 男が旅に出ちゃうのだから、これはもう仕方がありません。


 ……それはそれとして。


「お前さん達、一体どこに行ってたのかね?」

「それなんですが、こんな事がありましてですね……」


 族長のお婆ちゃんの質問に応えて、三人は今まであった出来事の説明を始めました。

 あっちの手前の森が枯れたこと、食べ物が尽きて困ったこと、大志とハナちゃんに助けられたこと……。


 やや過剰な演技で経緯を説明していきます。あ、お父さん今ちょっと話盛りましたね。

 お父さん天幕張るの失敗してたでしょ?


「――あっちの手前の森が、枯れてしもたか……」

「なにそれ怖い~」

「他人事じゃねえ……」


 お父さんが若干話を盛ったことには気づかない皆さんですが、森が枯れた話に戦々恐々です。

 なんたって、森が無くなることの怖さを知っている人達ですから。


 この世界で森が失われるという事は、地球で言えば――国家が消える、という事と同じです。

 森が枯れたと聞いた平原の人達、ぷるぷるぷると震えます。


「それで、二人に連れられて洞窟をくぐったら……不思議な村があったんです」

「見たこともない物ばかりだったかな~」

「夢を見ているかと思いました」


 ぷるぷるしている皆さんはそのままにして、三人は話を続けます。

 洞窟の先にある不思議な村、不思議な食べ物に不思議な道具。

 そして、不思議な人――大志達の事も。


「そのタイシさんって人が、取り残された人達を助けてたのか」

「無事でえがった~」

「それ、話盛ってね?」


 今度はお父さん、話盛ってませんよ。全部ホントの事です。

 ですが、あまりに不思議過ぎて半信半疑の人も沢山です。

 でも、ホントのことだと証明するのは簡単ですね。


「ぬっふっふっふ……これを見ても、そう言えますかな?」

「あれ、見せちゃうかな~?」

「ふふふふふ……あれ、出しましょう」


 証明が簡単なものだから……半信半疑の皆さんに対して、お三方は不敵な笑みを浮かべます。

 ――超ドヤ顔です。

 毒草大好きな誰かを思い出すほどの、ドヤ顔です。


「ぐっ……なんという自信だ!」

「ものすごい不敵な感じ」

「一体なんだというのだ……」


 あまりのドヤ顔に圧倒さた皆さん、ずずりと後ずさりました。

 しばらくの間、広場に……意味不明な緊張が走ります。


「ぬふふふふ……まずは、この道具を見てもらいましょうか!」

「見てもらうかな~!」

「凄いわよ~!」


 そういうとお父さんは、ぴょいっとカメラを取り出しました。

 謎の物体が出てきて、皆の目は釘付けです。


「……それは何の道具なんだね?」

「聞いて驚いてください。何とこれは――見たままの風景を、そのまま写し取る道具なのです!」

「さっきの話にでてきたやつかね?」

「そうですそうです。これがその道具です」

「「「おおおお!」」」


 話に出てきた道具が実際にあるということで、皆どよめきます。


「というか、その自転車とリアカーも、その村で手に入れたものですから」

「あ……」

「……そうだった」

「俺の目は節穴だったようだ」


 そんな節穴エルフ達は置いといて、お父さんはカメラを構えます。


「それでは実演してみせましょう。皆さん並んで並んで。はい、撮りますよ~」


 パシャリとフラッシュが光って、撮影完了です!


「なんか光ったぞ!」

「眩しい~」

「目が~」

「ぴっ!」

「今の風景が、この紙に出てきます」


 カメラのフラッシュに大騒ぎする皆を放置し、お父さんは出てきたフィルムを手に取りました。

 ……なんだか、エルフ以外の鳴き声も聞こえたような気がしますが、気のせいかな?


「ほら、見てください。だんだんと――絵が浮かび上がってきますから」

「ホントだ!」

「まじで写し取れてる!」

「なにこれやべえ!」


 インスタントフィルムが自己現像され、じわじわ像が浮かび上がって来ました。

 そして、その様子をみた村の皆は、ぷるぷるです。

 固唾(かたづ)を飲んで、写真を見つめるのでした。


「……どうやら本当みたいだね」

「それで、これがその村で撮ってきた写真と言う奴です」

「ホントだ……」

「見たこともないおうち」

「皆笑顔ね」


 カメラを実演されたうえで村の写真を見せられたので、皆さん納得ですね。

 今度は不思議な村の写真に、首ったけになりました。


「不思議なこともあるもんだねえ……」

「あれは夢だったんじゃないか、と思うこともありますが……これがありますからね」

「実際にあったことだって、信じるしかないかな~」

「夢みたいな話だけどね」


 村であった出来事を思い出して、三人はうっとりです。

 優しい人達が居て、綺麗なおうちとふかふかおふとん、ほんわか温泉、そして美味しいお料理。

 特に、燻製と卵料理が絶品です。

 思い出してじゅるりとしてしまいました。


「もっと話聞かせてくれ!」

「写真も見せて!」

「このカメラってやつ、俺らにも使えんの?」


 本当にあるのだとようやく信じられた村の人達に、質問攻めに合う三人です。

 わーわーと集まってくる皆を押しとどめ、リアカーを指さしました。


「お土産に美味しい物やお酒も持ってきました。宴会がてら、お話をしましょう!」

「お酒!」

「美味しい物~」

「宴会やろうやろう!」


 美味しい物やお酒と聞いて、村人のテンションは最高潮です。

 こうして、平原の人たちの村は夜通し騒ぎ続けたのでした。



 ◇



「え? 皆あの村に行きたい?」

「気持ちはわかるかな~」

「分かるのだけど……」


 三日後、おうちでのんびり過ごしていた三人のところに、村人がどっと押し掛けます。

 そんな皆さんは……旅装束で、準備万端のご様子。

 気の早い人達です。


「卵料理食べたい」

「自転車とリアカー欲しいな」

「珍しい動物がいるんだって言うじゃない」

「私はお酒」


 お土産で宴会して、さらに楽しかった話も聞きました。もう皆我慢できません。

 あ、族長のおばあちゃんも旅装束ですね……。

 族長が村を空けるのって、ダメなんじゃないでしょうか?


「リアカーはあと五台あるのだよね? フクロオオカミ達もやる気十分だよ」

「キャベツに首ったけになってたぞ」

「むしろ勝手に、フクロオオカミ達だけで行きそうな気配」

「皆、いつの間に……」


 村にいるフクロオオカミ達も、既にキャベツで買収済みのようです。

 昨日村の皆に配ったのが、仇となったようですね。

 こんな感じで、いつの間にか旅の準備が完了していることに、お父さんは(おのの)きます。


「ほらほらお前さんがたも準備しな。お昼には出発するよ」

「ええ……?」


 帰って来たばかりなのに、もう旅が始まります。

 三人とも、目が点になってしまいました。


 ――こうして、平原の人達は大志達の村に向かって、旅立ったのでした……。


 さらに、その道中。


「えらい大勢で旅してんな。……まさか――森になんかあったか!?」

「いやいや。面白い村があるってんで、皆で行こうってことになったんだよ」

「面白い村?」


 旅の道中、平原の仲間に出会うこともあります。

 旅していた彼らは、大勢で移動するのを見てびっくりして質問してきます。

 そして理由を聞くと……。


「俺も行きたい! 連れてってくれ!」

「ええ……?」


 話を聞いた仲間は、目的地を変更して大志達の村に行きたいと言い出します。

 三人は――断りきれません。

 道中そんなことが何回かあり、気づいたらどんどん人が増えていきました。


「これ、ヤバイかな……」

「あの村、そんなに大勢で過ごせる造りじゃなかったけど、どうするの?」

「どうしよう……」


 三人とも頭を抱えてしまいます。

 頭を抱え過ぎて、寝起きでもないのに髪の毛ボッサボサになっていますね。


 ……そんなボサボサは置いといて、彼らの知るあの村はあくまで避難所でした。

 細々こぢんまりとした運営をして、ぼちぼちやっていたのです。


 そんな村にこんな大勢で押し掛けても――受け入れが可能かは、怪しい所なのでした。


「卵料理、楽しみだな~」

「早く着かないかしら」

「動物達、待っててね~」

「私はお酒」


 そんな三人をよそに、旅の一行はウッキウキ。

 道中の写真を撮りつつ、不思議な村を目指して旅を楽しんでいます。


「あああ……また増えたかな……」

「あ! いつの間に!」

「もはや制御不能だわ……」


 日を追うごとに人が増えていきます。

 もはや事態は、三人の手を離れていました。

 だんだんと事のまずさを認識し始める三人ですが、もうどうにもなりません。


 ――制御不能となった平原の人たちのキャラバンは、賑やかに村を目指すのでした。



 ◇



「という事がありまして……」

「どうしようも無かったかな……」

「申し訳ないです……」


 村に到着した三人は、まず真っ先に大志にごめんなさいをしました。

 三人の後ろには、村に到着してキャッキャと大はしゃぎの平原の人たちの集団が……。

 リアカーすし詰め、フクロオオカミも八頭、徒歩で付いてきた猛者もいます。


 三人は申し訳なくて、ペコペコペコペコと頭を下げまくりですね。

 しかし、そんな三人と後ろの大勢を見た大志――ニヤリとします。


「タイシ、お客さん沢山です?」

「たくさんだね。また、むらがにぎやかになるよ!」

「あい~! 賑やか、間違いなしです~!」


 ハナちゃんも、大志に釣られてニヤリとしちゃいました。

 そして、大志は振り返って――村の皆を見ます。


「――準備はできてますよ」

「宿のお掃除、ちゃんとやってあるから」

「お料理、沢山作るわよ~」


 村の皆も大志を見て――ニヤリとしました。


 この村はもう、観光客を受け入れる仕組みが出来ています。

 お客さんがた~くさん。稼ぎ時です!


 そんな皆を見た大志、ニヤニヤ顔からさわやかな営業スマイルに切り替え、平原の人たちに向き合い言いました。


「みなさん――ちきゅうへようこそ!」

「歓迎するです~!」


 大志とハナちゃん、歓迎のあいさつです。

 二人とも、にこにこ笑顔で、とっても嬉しそう。


「タイシさん、まずは卵入りラーメンで歓迎しようと思うのですが、どうでしょう?」

「いいですね。ヤナさんにおまかせしても?」

「任せてください。それじゃ皆! 準備しよう!」

「腕が鳴るわ~」

「おっとお母さん、ケガしてる場合じゃないから鳴らさないでね」

「あらららら?」


 ステキさん、腕をがっちり押さえてケガを未然に防ぎます。

 これからお客さんが沢山ですから、ケガをしている場合ではないですからね。

 ……まあそれはそれとして、村の皆も動き出しました。

 一気に村が活気づいて来ましたね。


 ――それでは、また賑やかな日々の始まりです!

 皆で一緒に、盛り上げましょう!


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