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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
序章   エルフの森
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第一話 森の異変

ぼちぼちやっていきます。

 ここはとある世界のとある森。常春(とこはる)の気候の中、森ではエルフ達がのんびり暮らして居ました。

 しかしある日、とあるエルフの女の子が異変を発見します。それはエルフ達に降りかかる、災難の始まりでした。



 ◇



「ハナ~、ちょっといつもの所で、木の実を取ってきて~」

「あい~」


 元気に返事をしたのはエルフのハナちゃん。

 夕食の支度をしているおかあさんから、お手伝いのお願いです。


 ハナちゃんはお母さんの返事に合わせて、ぴょこっと立ち上がりました。

 さあ、いつものように木の実を採りに出かけましょう!


 ……ちなみにどれくらい採ってくるかの指示は、ありませんでした。

 おかあさん適当すぎるオーダーですね。

 でも、ハナちゃんは文句ひとつ言わずに出かけます。


 そう――これはある意味全権委任なのです。


 全てが、ハナちゃんのさじ加減一つにかかってしまいました。


「いっぱい木の実、採ってくるです~」


 そうですね。

 甘い木の実を沢山採ってきちゃうのも、ハナちゃんの気の向くままということですね。


 ぽてぽて。


 おうちのほど近く、歩いてちょっとの所に木の実がたくさん生っている一角があります。

 籠を抱えたハナちゃんは、ぽてぽて歩いて行きました。

 おつかいの内容から察するに、今日の夕食は……甘い木の実の――デザート付です!

 ハナちゃんはご機嫌で歩いて行きました。


 ぽてぽて。


 そうして歩いて行き、しばらくして目的の場所には着いたのですが……。


 そこには――。


「……あえ?」


 なんと! 木の実が生っている居るはずの木々が、枯れているではありませんか!

 それも普通の枯れ方では、ありませんでした……。


「あえあえ?」


 今までにない光景を見て、ハナちゃんはこてっと首を傾げます。


「あ、あえ~? 食べ物がないです! ……ちょっと前はあったのに……」


 異常事態を認識したハナちゃんですが、なにがなんだかわかりません。


「――おとうさんとおかあさんに、知らせるです!」


 自分ではどうにもならないことですので、お父さんとお母さんに頼ることにしました。

 てててっと走って、ハナちゃんは慌てておうちに戻ります。


「おとうさ~ん、おかあさ~ん! 木の実なかったですよ!」


 慌てておうちに飛び込んだハナちゃん、早速事態を知らせます。


 その様子とその言葉に、おとうさんおかあさんもびっくり!


「何だって!」

「ほんとなの!?」

「あい~! 何にもなかったです~!」

「確かめに行こう!」

「わかったわ!」

「こっちです~!」


 そのまま三人でおうちを飛び出し、木の実がたくさん生っていたはずの一角に行きました。

 ハナちゃん走りっぱなしですね。


 とまあ、そんながんばりもあって、三人は程なくして――例の場所に。


「ほ、本当だ……」

「木が枯れちゃってるわ……」


 変な枯れ方をしている一角を見て、ハナちゃんのおとうさんとおかあさんも愕然としています。


「今日の夕食……」


 今日の夕食が減るという危機に、ハナちゃんも愕然です。


「他にもこんなことになっていないか、皆でたしかめてみよう!」


 おとうさんは言いました。

 こんな変な現象、ここだけで起きているわけがないと、なぜかそう思ったからです。


「そうね、これはちょっと変だわ。今までこんなこと無かったもの」


 おかあさんも同意します。

 こうして、森の異変調査隊が結成されました。


「よし、急いで族長に知らせて、皆で手分けして調べてもらうように言おう!」

「ええ」

「あい!」


 おとうさんとおかあさんは走って族長の元へ。

 ハナちゃんもがんばって後を追いかけます。


「族長!」


 シパーン! と族長んちのはっぱ扉を開けて、おとうさんは勝手に入っていきます。


「な、なんだ突然。ヤナ、どうしたんだ」


 族長もびっくり。実はハナちゃんのおとうさん、普段は気弱でひょろっちいのです。

 そんなおとうさんがこれほど血相を変えているのを見て、族長も驚いたのでした。


「族長、大変です! 木の実が取れるあの一角が――丸ごと枯れてしまっています!」

「――な! なんだと!」


 おとうさんの言葉に、族長はさらにびっくりします。


「……それは本当か!?」

「本当です! 今実際に見てきた所なんです!」

「なんにも残ってなかったわ……」


 大人達は深刻そうに話しています。

 あの辺の木の実は、この辺のエルフ族達みんなの食を……まぁまぁそれなりに支えていたのでした。

 それが無くなったとなれば……一大事なのです。


 日本で言えば、ある日突然日本中のコンビニが閉店してしまったというくらいヤバい感じです。

 深夜に突然肉まんが食べたくなっても、もう食べられないのです。

 怖いでしょう?


 ――コンビニが無くなる恐怖はさておき、大人達の会話は進んでいきます。


「でも、昨日はあったんだぞ? それが今日枯れているなんてそんなことが、本当にあるのか?」

「僕も信じられないけど、枯れていたのは確かなんです!」


 おとうさんは続けました。ここからが本題です。


「それで、他にもこんなことになっていたら大変だから、皆で手分けして調べて貰おうと思いまして」

「わかった。今から皆を集める。ヤナも集めるのを手伝ってくれ」

「わかりました」

「私も手伝うわ」


 物わかりのいい族長さんは、半信半疑ながらも動いてくれるようです。

 そうして、おとうさん、おかあさんと族長の三人はバタバタと出て行ってしまいました。


「あえ?」


 大人たちがバタバタする中、第一発見者のハナちゃんは……ぽつんと残されてしまいました。


 きゅるるる。


 ハナちゃんのお腹が鳴ります。

 本当なら今頃、皆で仲良く夕食の筈だったのに……。


 ――大人たちは大慌てで、夕食どころではなくなってしまったのでした。


「お腹減ったです……」


 ぽつんと残されたハナちゃん、やることが無くなってしまいました。


「……おうち帰るです」


 おなかがペコペコのハナちゃんは、とりあえずおうちに帰って――ふて寝しました。



 ◇



 ハナちゃんがふて寝している頃――。


 おとうさんとおかあさん、それに族長は部族の大人達を集めて、ワーワーと辺りを手分けして調べていました。


 その結果――。


「おい! このあたりちょっと枯れかかってるべ」

「こっちもだ!」

「やべえ、泉も水の量がなんか減っちゃってる!」


 ――森の殆どの場所で、異変が始まっていました。


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