最終話【蟹料理】
学校の屋上で対峙するカニタマと蟹座以外の生徒たち。
「みんな、将棋はやるか?」
「まあ、たまにやるけどよ……」蟹座以外の生徒たちのリーダー格の生徒がぽつりといった。
「将棋の戦法で一時一世を風靡したものに【カニカニ銀】というものがあるんだ。【カニカニ銀】だぜ。獅子金とか、天秤玉とか、そんな戦法があるか?ないだろ?」
押し黙る蟹座以外の生徒。
「それから大阪プロレスの看板レスラーにグラン・ナニワって人がいるんだ。この人は蟹のマスクをかぶって戦う人で、ロープに乗って蟹歩きをしてからチョップをくり出すプレーで子供たちから大人気なんだ。蟹座以外の星座のマスクをかぶって戦うプロレスラーがいるってのか?」
これに対して蟹座以外の生徒たちは反論ができない。カニタマはいう。
「わかってもらえたか?おまえらがバカにする蟹というのは、このくらい強くて、偉大で、多くの人々に親しまれているものなんだ」
そのとき、蟹座以外の生徒のひとりが思い出したようにいった。
「……そ、そういえば、オレのかあちゃん、蟹料理が好きなんだよな」
「……うちの家族もそうだぜ」
「……ああ、タラバガニなんか最高だよな」
そんな彼らにカニタマは微笑みながらいった。
「みんな、やっと蟹のすばらしさをわかってくれたようだな。ありがとよ」
━━翌日、学校の体育の授業でサッカーがおこなわれた。そのとき、カニタマをはじめとする蟹座トリオが、フォワードを任されたのはいうまでもない。【終わり】