第3話【謎のジャンケン】
キャンサーのデスマスクはしかたがないとして、蟹というものになにか長所はないものだろうか?━━カニタマは必死に考え続けた。必死に調べ続けた。そして蟹座以外の星座の生徒たちを黙らせられる事実をいくつも突き止めることに成功した。
━━ある日の放課後、カニタマは蟹座以外の星座の生徒たちを屋上に呼び出した。
「なんだよカニタマ。ついに蟹だけにぶくぶく泡を吹く芸でも身につけたのか?」
この発言にほかの生徒たちがウケケケと嘲笑をあげる。そんな彼らに向かってカニタマは唐突に『ジャンケン……』といった。それに対して蟹座以外の生徒たちは条件反射的にグーを出した。一方、カニタマはパーだった。結果はパーのカニタマの勝ちに終わった。
「な、なんだよ、いきなり」
「おまえ、ジャンケンやりにここに呼び出したのか?」
突然のことにやや戸惑い気味の蟹座以外の生徒たち。彼らにカニタマは再びジャンケンを挑んだ。するとまたしても蟹座以外の生徒たちがグーで、カニタマがパーを出していた。
3回目。カニタマが『ジャンケン……』というと、蟹座以外の生徒たちは今度はチョキを出した。そしてカニタマはパーを出し、2勝1敗となった。そこで謎のジャンケンは終了となる。
「カニタマ、いったいなんなんだよ、今のジャンケンは」
怪訝な様子の蟹座以外の生徒たちに、カニタマは落ち着いて説明した。
「ジャンケンってフェアなイメージがあるけど、実はけっしてフェアじゃないんだ」彼はいった。「グー、チョキ、パーの中で最も出しにくいのがチョキなんだ。これはわかるだろ?」
すると蟹座以外の生徒たちはグー、パーのあとにチョキを出しながら『う、うん、たしかに……』といった。カニタマは続ける。
「そのためジャンケンではチョキの使用頻度が最も低くなるんだ。残りはグーとパー。相手がこのうちのどちらかを出してくるものと仮定すると、ジャンケンというのはパーが最も負けにくいという結論になるんだ。よってジャンケンはパーが最強ということになるんだよ」
聞き入る蟹座以外の生徒。
「事実、今オレたちはジャンケンをやって、パーのオレが2勝1敗で勝ち越した。パー最強説の裏づけだ」
「それがどうしたってんだよ」
「つまりだな。最強のパーを倒せるチョキこそが、真のジャンケン最強というわけなんだよ」カニタマはいった。「チョキといえば蟹の代名詞だろ?そのくらい蟹は強くて偉大だということなのさ」