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~startup~

4月19日

翌日,ネットには昨日のハッキング事件に対して様々な

コメントが溢れていた。

《管理人ざまぁ()》《この国からいなくなれ。》

《日本終了のお知らせwww》《自業自得》《潰れちまえ》

コメントはcivil net全体の不信感に溢れ,管理人や

管轄である消費者庁へのバッシングで溢れかえった。

コメントの中にはアフィリエイトサイトによって

煽られて被害を受けた人達による歓喜のコメントや

アフィリエイトサイトに客を奪われた個人ブロガーの

腹いせのコメントも見受けられた。


4月19日 午前8時 府中地区 電子災害研究所

この頃俊哉は那智に呼び出しを喰らい,所長室にいた。

「今回の事件。概要は知っているな?」

「...はい。」

「どうして呼ばれたは分かるか?」

まだ俊哉は那智の気持ちを計りかねていた。

「いえ.,.しかし責任を取る覚悟はできています。」

「その言葉に嘘はないな?」

那智は静かに俊哉に聞いた。

「も,もちろんです!」

「それでは今回の事件は緊急対策室室長の君に担当

してもらう。」

「...へ?」

以前那智の前で危険性はないと発言してしまい,

後でその発言を後悔した俊哉としては

今回の事件で室長の解任を覚悟して来たのだが,所長の

予想外の言葉に唖然としてしまった。

「あの.,どうして私になったんですか?」

「どうしてって..今やネットワーク自身で自らを守る

事ができる今の時代になんの為に緊急対策室なんていう

前時代的な部署があると思ってる?まさにこうゆう

時の為じゃないのか?違うのか?」

「いえ..以前所長に無責任な発言をしてしまい,本当に

申し訳ありません。」

「その事を謝る必要は無い。あの時点では誤作動の可能性

も捨てきれなかったし,私もあんなことを言ったが

正直只の推測に過ぎなかったからな。しかし今回の攻撃で

故意に行われた事が確かになった。これで君も危険性が

認識出来ただろ。」

「それは..勿論です。」

「しかも今回はネットの免疫システムの裏をかいたやり方

で行われた。今回のような攻撃は専門の人間,もしくは

協力者がいた組織であることは確実だ。しかも君は

まさに専門分野じゃないか。だから君を指名したんだ。

不満か?」

「いえ,分かりました。必ず犯人を特定し,逮捕に

繋げます。」

「良し。それじゃあ早速他のメンバーを集めて会議を

開いてくれ。私は科捜研と話をつける。」

俊哉はこの話を聞き内心驚いた。

(驚いた..本当に協力なんてしてくれるのか?)

「分かりました。それでは失礼します。」

俊哉は会議を開くため急いで自分のデスクに戻った。



4月19日 三郷地区 talakancomplex社内

千尋が部屋から降りて来ると,タラさん意外誰もいなかった

タラさんはデスクに座り,いかにも退屈そうにあくびを

していた。昨日は作戦が成功して千尋以外はみんな

下で喜びあっていたのかとても賑やかだった。

千尋も誘われていたのだが,千尋自身はその輪の中に

入っていく事が出来ず,戻ってすぐに部屋に戻って

寝てしまっていたのだった。

(あんまり..皆の迷惑にはなっちゃ駄目。...私は

まだ来たばっかりだから...)

今日は昨日の影響かまだ皆が降りてくる気配は無かった。

『あの...昨日はお疲れ様でした。』

この言葉を言われたタラさんは不思議そうな顔をして,

『何いってんの?頑張ったのは君たちでしょ。

俺は何にもしてない。君もこんなことしたの初めてだった

だろうによく出来たな。』

こう言われると言葉に詰まってしまった。

『いえ...仲間の人が大丈夫だって言ってくれたので...』

『あのさぁ...まさか周りに合わせようとしてる?』

(えっ...)

『いえ...そんなことは...』

『じゃあなんでそんなに人の顔色を伺ってるの?』

『......』

『まだ来たばっかりだから良く思われようとしてるなら

それは杞憂。少なくとも此処では皆自分のままに

活動してる。此処は利益団体の企業じゃない。それぞれ

思うことがあって集まるコミュニティだ。自分自身を

繕う必要はない。まあゆったりと自分をもう一度考えて。』

『...有難う...ございます。』

その言葉には耳を貸さずタラさんはまた大きくあくびをした。



4月19日 午前10時 府中地区 電子災害研究所

研究所の一室である緊急対策室には室長の俊哉の他,

8人の部下の研究員が集まっていた。

「まずは今回の事件の概要だ。昨夜午前0時,消費者庁

が管理しているcivil netに所属している複数の

アフィリエイトサイトが同時にハッキングされた。

その事は皆知ってるね?」

研究員全員がうなずいた。俊哉は研究員に事件状況を

確認していく。

「Ddosに使われたデバイスの数はどのくらい?」

「えーと...攻撃のピーク時の数は9,5810と計測結果が

出ています。」

「遅い時間にしては随分な数だね。次に敵はどうやって

免疫システムを掻い潜ったんだい?」

「攻撃時に使われたウイルスですが自滅するプログラム

が入っていたらしく検出は出来ませんでした。しかし

免疫システムを掻い潜った事からして裏口を使った事は

考え難いですね。」

「使われたウイルスの再現はできる?」

「何とか。このウイルスですがファージを誤認させる

パターンのプログラムが組み込まれていた様です。」

「そのウイルスを表示してみて。」

研究員がデバイスを操作し俊哉達の目の前に写し出した。

すると一人の研究員が,

「ここじゃ無いですか?ここのパターンです!」

研究員が指差したところが赤く表示される。

「これもエンベロープの一種だね。このパターンは

過去の事件で使われたことがあったっけ?」

俊哉が研究員達に質問をしてみたが研究員達は全員首を

横に振り否定の意を示した。

「また新しいパターンが現れたね..本当に筍の様に

次から次へと...」

「本当ですよ..確かこのエンベロープは以前地方のサーバー

クラックとは別物だった筈です。」

「後,ウイルスの表示画面はこんな感じです」

その表示画面が写し出されると,

「ああ..これは間違えるな..」

「まるでそっくり..」

と研究員が囁きあっていた。俊哉は向き直り、

「皆はどう思う?これは単独犯か組織犯罪か?」

「どっちとも言えないですね...Ddosの攻撃なら単独

でもする事が出来るので...」

「さっきの画面でも間違えた人は相当数いると思うので

まだ分かりません。」

するとまた一人の研究員が思いついたように,

「そう言えば犯人ってどうしてこの時間に攻撃を仕掛ける

事が出来たんですか?」

「そう言われて見れば確かに」

「この時間に攻撃する事が出来たのも,画面表示を似せる

事が出来たのもこの通信会社の社員,または元社員の

可能性は考えられませんか?」

「そうか。...いやでも待って。それだったらどうやって

ウイルスを手にいれたんだい?」

「搬送業者に似せて社内にもって来させたとか,または

ウイルス作成者と親密な人間と言う可能性も...」

「待ってよ。それじゃあ協力者がいる前提じゃん?単独犯だって自宅でウイルスを作って

自宅で撒き散らした可能性だってあると思うけど?」

「そもそもその時間じゃあ社内にはいない。ネットホスト

か自宅でしか可能性はない。可能性としては自宅の方か」

議論が白熱してきた時俊哉が水を差すように

「そう言えばこのウイルスのパターンからみて自作かな?

それとも作成ソフトを使ったりしてる?」

「どうでしょう.,.このエンベロープのパターンは

今まで使われたことはないと思いますけどプログラム自体は

作成ソフトのプログラムパターンと酷似しています。

恐らくは作成ソフトで製作したと考えられます。」

「作成ソフトの流通ルートって分かる?」

「プログラムの作成ソフト自体はごまんとあります。

どのソフトかが明確にわからないと...」

「このパターンのソフトって分かる人いる?」

すると奥に座ってた研究員の一人が

「これなら見たことあります。確か"黒客万来"っていう

ソフトだった筈です。以前このソフトで作ったウイルス

の被害シミュレーションをしたことがあります。」

「どのルートで購入したか分かる?」

「いえ..そこまでは。でも詐欺グループから押収された

物なのでその流通元を当たって見たらどうでしょう?」

俊哉はうなずいて,

「良し。このソフトの購入者リストを至急作成。購入者に

クラッキング経験者を割り出すことそれと同時ハックに

対応するためこのエンベロープを解析して類似する

エンベロープに対応する抗体を作成する事。分かった?」

「「「分かりました!」」」

そして方針が決まり,俊哉を初め研究員達はそれぞれの

作業を開始した。


所長室にいた那智はデスクトップデバイスに繋いだ黒い

バイクのヘルメット状のデバイスを頭にかぶって

通信を開始していた。

虚数空間(イマジナルエスパース)起動(オン)

すると機械が応答して

音声(ボイス)正常(クリア),顔色(フェイス)正常(クリア),

本人(ユーザー)確認(グッド)

接続(コネクション)開始(スタート)


那智が"虚数空間"に着くと既に那智に呼び出された

科捜研所長の比企吉員(ひきよしかず)が待っていた。

「何だいきなり呼び出して。仕事の邪魔だ。」

いきなり呼び出され仕事の邪魔をされた為なのかあまり機嫌が

良さそうには見えなかった。

(あまり機嫌が言い様には見えないな...まあ当然か

公安組織から連絡したんだからな...)

そんな吉員の表情を見ながらわざとらしく明るい挨拶を

交わした。

「こんにちは吉員さん。旭川での仕事はどうですか?

いきなり呼び出してすいません。」

そんな那智の挨拶が聞こえていない様な目をしていたが,

「...用件は何だ。」

対応するのが面倒だと云わんばかりに話の先を要求した。

(...食いついた..!) 

「あのですね。私達と協力をして下さい。」

那智は何気ない様子を見せつつ単刀直入に言った。

「.....,...それは無理だ。」

吉員は暫く黙ったままだったが,短く呟いた。

(そうそうその反応。順調順調。)

「何故協力が出来ないのか私に説明して貰えますか?」

すると吉員は答えにくそうに

「仮に私がそれを了承したところで我々の上層部がいい顔を

しない。それに今回はそっちの得意分野だ。我々は

手伝う事が出来ない。残念だな。」

(その言葉を待っていたんだ。)

内心笑みをこぼしながら那智は吉員にけしかける様に

「本当にその様にお思いですか?」

「...どういうことだ?」

「今回の事件について吉員さんはどのくらい情報を

持っていますか?」

「そうだな。まあ大体は..」

「今回の事件は複数のアフィリエイトサイトを狙った

事は知っていらっしゃると思います。」

「.....」

「実はこの事件を起こした犯人の目的が別に合ったことは

知っていますか?」

「.....」

「犯人がアフィリエイトサイトを乗っ取り情報を駄々漏らし

にされたのですがそれを実行するには消費者庁の管理

サーバーにサイトを通じて侵入する必要があります。

そしてその後管理サーバーに侵入してサーバーがダウン

した数秒間に消費者庁のcivilnetを管理している人間の

ID一覧がコピーされた形跡がある様なんです。これだけ

言えばどういう危険があるかお分かりになると思います。」

「それは...本当なのか?...そんな...」

ネットセキュリティが専門ではない科捜研の所長でも

一介の公務員としてその危険性は十分に認識出来た。

「お考えの通りです。そのIDを使い新たな事件が起きる

可能性があります。事件はこれだけでは絶対に終わりません。

これは政府全体に対する挑戦です。しかも...」

ここで那智は言葉を敢えて濁らせた。

「何だ,いきなり。どうした?」

さっきの様子と打って変わって吉員は那智に対して

先の言葉を急かした。

「もしそのような事態に陥った場合,非難は間違いなく

あなた方警視庁に向かいます。なんせ今まで国の

セキュリティの象徴なんですから。そうしたら国民の

政府信用度はただ下がり,警察官は無能の集まりだと

ずっと言われるでしょう。そのイメージを覆すのは並大抵

の事ではいかないでしょうね。」

その言葉を聞いた吉員は無能と馬鹿にされるイメージを

描き恐怖を抱いた。

「成る程。我々が協力した方が得だと言うのは分かった。

しかし我々が協力してもこのような犯罪には対処

出来ないじゃないか?」

(後もう一押し。)

「いえ,そんなことはありません。今回の事件でも現場の

特定,指紋採取等協力して貰いたい事は沢山あります。

是非上層部にも進言して頂きたい。この事件は警視庁と

警察庁の溝を埋める絶好の機会だと。」

吉員はまた暫く黙っていたが

「分かった。我々科捜研は今回の事件に全力で協力する。

上層部にも公安と組む様に進言してみよう。」

そして吉員が帰る時に那智が

「あなたなら分かってくれると思ってましたよ。

予想道りに動いてくれて有難うございました。」

これを聞いた吉員は

(...全部掌の上で踊らされてたのか。全くいまいましい。

しかし奴の言ってた事は正論,仕方ない。今回は大人しく

踊ってやろうじゃないか。)

こうして科捜研と電災研の秘密会合によって警察庁と

警視庁のパイプが築かれた。











皆さま。"ゴキブリ達に祝福あれ!!"

なんだかんだで5話までかく事ができました。

今回は俊哉達取り締まる側の物語です。

いよいよ盛り上がっていくと思いますが千尋達は呑気に

日常を送っております。(なにやって( -_・)?だ‼)

全く。

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