表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

~civil net2~

千尋のその言葉を聞いた時,5人が一斉に千尋の

方を向いた。そしてタラさんが

『ほう。それはどんな方法だ?』

『それは...端末のアップデートの時間に偽の通知を送る

っていう...』

『ちょっと待て。時間は分かってるのか?』

『はい...明日の午前0時です...』

『なんでそんなこと言い切れる?』

『明日はこの会社の前回のアップデートから125日になります。

この会社は私が働いてた時に取引先のひとつだった

ところです。以前私も今回のアップデートプログラムの

開発スタッフだった事があります。今回アップデート

する会社の開発スピードの限界が125日なんです。』

『じゃあ午前0時の確証は何だ?』

『通常通信量の少ない午前0時から午前5時の間に

アップデートプログラムを配信するんです。ですが

端末に対する攻撃を最小限にするためにユーザーが

確認できる可能性が最も高い午前0時に配信するんです。』

『待った。以前開発に携わっていたって事は

その会社が独自に使ってる構文や関数も知ってるの?』

『はい...一応。』

その言葉を聞いたメンバーはそれぞれ考え混んで

暫く静かな空気が流れた、

『....という感じです...どうでしょうか?』

千尋が恐る恐る聞いてみると,

『成る程。それならいけるかもしれない。』

『同感です。只..』

『...問題は時間ね。正直その作戦でいくつもりならかなり

急がないと。』

『ねえねえ。どうする~~?』

ダビドがタラさんに判断を求めると,タラさんは

『考えるまでも無い。解決すべき問題がその方法で克服

する事ができるなら,それを行う為の手間は惜しまない。

やっと作戦の成功への道が開けたのだから。』

『では決まりですね。彼女の作戦を採用します

異論はありませんね?』

すると全員首を縦に振り,同意を表した。

『よーし。じゃあ明日作戦を開始する。という訳で

今日の仕事は終わり。各自自由時間です。』

すると千尋意外の5人は自分の部屋に戻る者,ゲームをする者

等自分達の時間を有意義に使っていた。

(え...嘘でしょ?まだ午後の2時だよ...)

『あの..いいんですか?』

『え?ああ大丈夫だよ~。どうせ滅多にやる事無いし。』

するとタラさんが千尋に手招きをしながら、

『ああ,そうそう。新人くんちょっと来て。』

(....?...)

そしてしばらくタラさんは千尋の眼を見つめ、少し考えてから

『うん。今日から君のニックネームは"変態"で。』

その言葉に周りにいた人間だけでなく千尋本人も唖然と

してしまい、暫く言葉を発する事も出来なかった。

(え...?)

『あの...私のどういうところが...その...変態なんですか?』

するとタラさんは心底びっくりしたように、

『え?自分で自覚してなかったの?ある意味凄いな。

敢えて云わせて貰うけど結構態度に出てる方だと思う。』

又々千尋にとって思いもよらない言葉だったので千尋は心底

恥ずかしい気持ちになってしまった。

『....///』

『あーごめんごめん。ところで本題なんだけど、今日から

ここに住んで貰うから。後で他の奴が案内してくれる。』

千尋にこう言った後近くにいたヤシンをよんだ。

『あの"収集癖"くん。ちょっと』

そう呼ばれるとさっきまでソファーに寝転びながら携帯端末

でダウンロードしたゲームで遊んでいたヤシンが2人の近くに

やって来た。

『すいませんがあなたの端末を貸して下さい。明日に返し

ますので。』

千尋は従った方が良いのかわからなかったがタラさんや

ヤシンが有無を言わさない空気を出していたので仕方なく

ヤシンに端末を差し出した。

千尋の端末を受け取ったヤシンは階段を上がって行った。

『よし。用事も終わったし明日から大変だからもう部屋に

戻った方がいい。明日からよろしく"変態"くん。』

(......。)

すると今までの様子を見ていたダビドが近づいてきて

『終わった?嫌じゃなかったら僕が案内するよ~。』

『お願いします...』

そして千尋はダビドの後について行った。その途中、千尋が

疑問に思うことをいくつか聞いてみた。

『あの...さっき言われたのって...一体何ですか?』

『ああ~ニックネームのこと?別に気にしないよ~ニックネーム

で呼ぶ人もいるし名前で呼ぶ人もいるよ~』

『私...変態だって...//』

『でもあの人のつけるニックネームって結構当たってるからね

君も自覚してないだけで本当に変態かもよ~』

『あの...因みにあなたのニックネームって..何なんですか?』

『う~ん。"無自覚"だってさ。自分も未だにわかんないや。』

(私もそっちの方が良かったよ...泣きそう。)

『そうですか...』

そうして会話していると、ダビドが

『着いたよ~今日はここを使ってね~一応ベッドとかシャワー

とか一通りは揃ってるからね~』

そうして案内されたのは社員寮の3階の部屋だった。3階には

他にも10室が並んでいた。

『ゆっくり休んでね~僕はまだ手伝わないといけない事が

あるから~あっそうだ。今のうちに荷物ここに運んで

置いたら~?』

『あ..ありがとうございます...。』

『じゃあまた明日ね~』

部屋に入った千尋は取り敢えずベッドに寝転んだ。

ベッドの上に寝転んだまま千尋は眼を閉じてみた。しかし

辺り一面に暗闇が広がってるだけだった。何だか大切な

友達が突然いなくなってしまった気分だった。

(捕まってからずっとこんな感じ...寂しいよ...)

千尋がまた眼を開いて仕方なく身体をベッドから起こした。

千尋は元いた部屋の荷物をとってくる為,外に出た。

自宅に向かう途中では学生や社会人等様々な人が楽しそうに

歩いていた。そんななかで犯罪者として,またテロに加担して

いるという自分の事実が残酷に自分に立ちはだかった。

すでに千尋は何気ない日常生活と云うものがどういうものか

判断がつかなくなっていた。


歩いて2時間後,千尋は自分がいたアパートに戻った。

犯罪者として特定されている千尋は公共交通機関の使用が

制限されている。バスは一応使えるのだが,千尋は他人の視線

が嫌で使う事が出来なかった。

部屋を管理している都市住宅管理事務局のインターネットから

住宅変更を申請してみると,千尋の管理パスの認証番号

が認識され,自動的に区役所に連絡されるのが確認された。

すると区役所から電話がかかって来た。

「ご利用ありがとうございます。今回持田千尋様は住宅変更を

申請されたようですが,変更先の住所を教え下さい。」

女性の声紋に似せた機械オペレーターの声に従い,千尋は

会社の社員寮の住所を言った。

「はい。認識しました。それでは次にご職業,職場の名前

もしくは学校名をお答え下さい。」

「社会人,タラカン·コンプレックス?...です。」

「情報を認識しました。暫くお待ち下さい。」

すると10秒程で,

「会社を確認しました。住所は三郷。職種は企業サービスと

なっております。間違いは誤差いませんか?」

「はい。間違いありません...」

「それでは改めて申請が適切かどうかを判断させて頂きます。

暫くお待ち下さい。」

そして1分後,

「あなた様の申請が受理されました。ついては区役所より

引っ越しの支援サービス等も受けられますが,いかが

なされますか?」

「ああ...大丈夫です.,.」

「承知しました。本日はご利用ありがとうございました」

こうして行政の了承を得て千尋は部屋から荷物を運んだ。

千尋の部屋の荷物は数理計算用のデスクトップデバイス,

数冊の本,鍋とゴム製の包丁だけだった。

(重いのは...サーバーくらい...かな?)

部屋の荷物をまとめて見ると,大きいバックと,サーバーを

入れる衝撃吸収材入りの段ボールに収まった。

こうして千尋は荷物を新たな住所に運んで行った。


部屋に帰る途中,近くの公園に立ち寄った。

その公園は以前タラさんにスカウト?された公園だった。

千尋はその時座っていたベンチに腰を掛けてこれからの

自分を想像して見た。

(......わかんないや。)

捕まるまで前は自分の未来が見えていた筈だったのに,

捕まってから自分の将来がわかんなくなっていた。

この時間はまだ公園内に人の姿がちらほら見受けられた。

彼らはドローンで遊んだり,アンドロイドと会話したり,

今の時間を楽しんでいる...様に千尋には見えた。

(はあ...帰ろう)

暗くなるまで時間を潰した後,また荷物を持って新しい

住所に帰った。

会社に戻るとヤシン達にプログラムのアドバイスをした後,誰とも眼を合わせず真っ直ぐ部屋に向かい

何もする気になれす,ベッドに横になった。


4月18日 午前6時  talakancomplex社内


『ちょっと!早く起きてくれる?』

シユンが千尋のドアを叩きながら千尋を起こそうとして

大きな声をあげていた。ところが千尋は元々の寝相の悪さ

からか起きてこない。

『早く起きなさい!なにしてんの?もう皆集まってるの!

あなたも早く来なさい!』

シユンがさらに大きな声で呼ぶが,千尋は起きない。

『早く起きないとドアノブ爆破するから‼』

スヨンにとって最大限の脅し文句を出したが,千尋の返事は

無かった。

『お願い。早く起きてよ。私も愚痴られるでしょ。

お願いだから早くきて。』

どんな催促も無駄に終わってしまい,シユンは泣き言を

言い出した。そんな泣き言から5分後,

『ふあぁ~おはようございます...さっきから夢の中で声が

聞こえてたので今起きました...ふあぁ~あれ?どうしたん

ですか?』

ようやく起きてきた千尋の髪の毛はあらゆる方向に

逆立っていた。そんな千尋の呑気そうな様子を見たシユンは

『そう...もういい。早く来なさい。』

最早怒る気力も無かった。

シユンに連れられて千尋も一階に降りてくると,既に全員が

揃っていた。

『やっと来たか。"変態"を相手にするのはいくら"支配"でも

大変なのか?』

『うるさい。本当に爆破しなかっただけ感謝して欲しい

くらい。あなたも起きる時はさっさと起きてよ。次は本当に

爆破するからね。』

『大丈夫ですよ。あんなの脅し文句ですから。』

『そうそう。大胆爆破なんかしたら周りに多少成りとも

音が漏れることぐらいシユンちゃんだってわかってるよ~』

『音が漏れない様にドアノブを爆破するなんて訳無いから。

私もそれくらいできるし。』

『ハイハイそれくらいそれくらい。起きたならさっさと並ぶ

作戦を説明するから。』

そして2人が3人の列に並んでからタラさんは作戦を説明

した。

『今から5人には起業支援した会社にアフターサービスケアに

向かって貰う。5つの会社はいずれも今日がアフターサービス

の日になっていた。そしてケアが終わった帰りに

ネットホストのインターネットからウィルスを侵入させ,

そしてここに戻る。"収集癖"くん。ウィルスの説明

宜しく。』

『分かりました。それでは皆さんこれを見てください。』

そう言ってヤシンが取り出したのは外見がメモリー

そっくりの代物だった。

『この中にウィルスが入っています。このメモリーを

デバイスに差すと,ウィルスが挿入されます。また

ネットホストの監視カメラ対策の為に画面表示ではデータの

ダウンロードの表示に似せておきました。

ウィルスはエンベロープで包まれた状態でサーバーに侵入

します。これも政府のウィルス防止システムを欺く事が

目的です。』

『説明どうも。また俺からも1つ忠告がある。個人で連絡

するときはメールでする事。外で怪しい言葉を使用

しないこと。以前捕まった密入国斡旋業者の摘発事件の際,

顔を隠していたのに特定されたことから監視カメラと一緒に

盗聴機も仕掛けられている可能性がある。』

(そっか...だからあの時...)

千尋はタラさんが雑談だけしていた理由が分かった。

『因みにこの辺りにはまだ監視カメラがある様子はない。

それでも最大限気をつけるように。』

他のメンバーが今までと違い真剣に耳を澄ましていた。

『良し。じゃあ作戦開始。決してボロを出さないように。

ああ,"変態"くんは犯罪者扱いだしこの近くの会社に

行って貰うことにする。アフターサービス業務はやった事

ある?』

『いいえ...ずっと研究室に閉じ籠ってましたから..。』

『そうか,じゃあ会社までの地図とそこで行うことを端末に

指示しておくからその通りに動いて。』

『......はい。』

『その他はやる業務も分かってる筈だからその通りに。

じゃあ開始。』

そして千尋も依頼された会社に行こうと準備していたとき

ダビドが近付いてきて,

『ごめ~ん。はい,君の端末。ヤシンくんと協力して端末内

のアプリから個人情報を提供出来ない様に僕達の代用アプリ

に全部変えておいたよ~。後,端末内にあった発信器も

取っといた。』

『何で..私の端末の中に..そんなのが..』

『別に君だけじゃあないよ~。殆どの人の端末には発信器が

あるからね~。ほら何処かで落としたとき,電源がない状態

でもすぐ見つける事ができるからね~。』

(まあ。今の時代他の人の端末を勝手に使えるわけ無いから

只の詭弁だけどね。)

千尋は今までの行動が何処かに筒抜けだったのかと考え,

とてもうすら寒い気分になった。

『まあ~余り考え無いで~初めてなんだし。じゃあね

また後で~』

(いい人...なのかな..?)

ダビドを初めここにいる人間は少なくとも根はいいのかも..

と千尋は考えた。


千尋が会社のアフターサービスを終えたのは午後の3時だった。

千尋が向かったのは会社の近くにあった製薬分子デザインの

設計会社だった。

仕事の内容は実験体に使う病変人間モデルの設計,

薬理反応の計測結果をデータベース化する事だった。

午前7時からずっと開発室に閉じ籠っていたことになる。

仕事が終わって千尋は駅前のネットホストに立ち寄った。

その入り口で自分のパスを機械に認識して中に入った。

ネットホストの中はとても静かだった。

機械に指示された小部屋に入りデスクトップデバイスを

起動させた。

そして適当なサイトで渡されたメモリーをデバイスに指した。

(誰も来ません様に...)

ウィルスがサーバーにダウンロードされている間中,

心の中で祈り続ける事しか出来なかった。

やがてウィルスがダウンロードされたと分かった時,周りに

迷惑にならない様に素早くネットホストを後にした。

(カメラで不審がられないかな...怖かった...)

外に出た千尋は歩いている人々にどんな風に写っているか

とても不安だった。

(私怪しくないかな...大丈夫...だよね?)

千尋は仕事が終わって今までの行動を振り返って見た。

(ネットホストに入って...メモリーを差して...目立たない

様に出ていく...うん,大丈夫。..)

会社に戻るまでの間,千尋は周りの目線がとてつもなく

怖かった。只ひたすら怪しまれない様にと願いながら歩いた

千尋は自分の心臓の音をこれほどまでに意識したことが

今まで一度も無かった。


千尋がようやく戻ってくると,もう既に何人かが会社に

戻って来ていた。

ミーシャが千尋の方を向いて,

『遅かったな。なんだそんな顔して。そんな緊張したのか?

全く先が重い遣られるな。』

『仕方ありません。彼女はここに来たばかりなので緊張

したんでしょう。』

『あの...この作戦を成功させる為にはどのくらいの数が

必要なんですか?』

するとヤシンは少し考え込んだ後,

『そうですね..理想とする数は一万といった所ですが

この作戦が成功するかは赤の他人に掛かってますからね。

どうにも言えません。』

『......そうですか...』

その後,残りのメンバーも戻ってきて,準備ができた事を

各自タラさんに報告した。


午前0時,あらゆる人達のデバイスには通信会社から

更新のメールが一斉送信されてきていた。

「あっ。更新通知来てる。更新っと」

規格を最新にしておかなければ自分のデバイスがクラック

されてしまうという恐怖があった人々は容易くメールの

通知通りに更新ボタンを押した。



同時刻 府中地区 電子災害研究所

《警告。ネットに対する攻撃を確認。》

その頃,ネットの免疫システムが自らの異常を察知した為,

研究所内ではDdosの攻撃に対する対応に迫られていた。

「攻撃目標は!!?」

那智が研究員に確認すると,研究員は

「civil netに所属している複数のアフィリエイトサイトの

ようです。」

「BOT化されたデバイスの数はいくつなんだ?」

「システムが認識した予測値はおよそ5万だそうです。」

「直ちに電子災害警報を発令。警報レベルは2。

乗っ取られたデバイスについては強制終了措置を取る様に。

とにかく急いで!」

(どうして侵入された時点で認識しなかったっ..!)

研究所から警報が出され,強制終了措置もとられたが

二分後にはアフィリエイトサイトへの侵入は完了

してしまっていた。

(何も...出来なかった...)

俊哉はDdosの嵐のような速さの攻撃に対して自分の認識の

甘さを心から痛感した。

















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ